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美術館・博物館・デパートでの展覧会を訪ね歩き、近代建築を見て周り、歌舞伎・映画・物語に溺れる日々の『遊びに行った日を記す』場所です。 

屏風の世界

出光美術館の屏風の世界を堪能した。
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毎年この6~7月半ばの展覧会は和の良い展示が続くけれど、今年はまた本当にいい展覧会だった。
それは「見せ方」に因るところが大きいのかもしれない。
従来とは違う有機EL照明とやらを使った展示で、天然に近い明度などに設定されている。
図録でも屏風を本来の折り目を見せての掲載で、これがまたなかなかよかった。

1.日本式屏風の誕生
こうした章ごとのタイトルが、拡散する意識をまとめてくれるので、たすかる。

山水屏風 残闕 南北朝時代  表具も素敵だった。今では軸物になって。右幅では手前の赤い欄干の橋がいい。柳が揺れている。やや仏画風な味わいもある。
左幅は山中を行く貴人。四角い傘を差し掛ける従者。扇持ちもいる。
松ばかりではない木々。なんとなくそれを見て始皇帝を思い出す。始皇帝は山頂に多くの自分の碑を建てさせたから。

日月四季花鳥図屏風 室町時代  春の風景と秋の風景と、どちらも甲乙つけがたいが最近は秋の美に惹かれる。しかし目は右から左へ向かう。即ち春を見てからの秋なのである。
秋の美は春があるからこそ生まれる美なのだと知る。鳥たちの様子も違う。
緑の濃い屏風。花びらが散る。白いモコモコの桜。雉がくつろぐ春。嵌め込みの金の満月。
屏風自体の縁がまた綺麗なつくりになっている。螺鈿。
秋の風景に鹿が溶けつつある。(剥落が鹿を秋の野に飲み込もうとする)
萩から現れ出ようとする鹿はどこを見ていたのか。銀の半月がある。

四季花木図屏風 伝・土佐光信  紅梅に始まり赤ユリも咲き、ついには川へ落ち行く紅葉が現われる。「紅葉筏」と言うそうだ。いい言葉を聴く。
しかしながら楓の尖った△△△がなにやら「タスケテ~」風にも見える。
楓は「蛙手」が語源だったことを思い出す。

四季花鳥図屏風 能阿弥   最古の水墨画屏風だそうだ。以前は水墨画に恐怖に近い嫌悪感さえあったが、最近はその静けさに惹かれるようになった。
いや、水墨画だから静かでなくてはならないわけではない。そこのところがわかってきたのは、この能阿弥あたりの作品を見てからだと思う。
濃淡の美。豊かな自然風景。
目つきの悪い鳥は叭叭鳥か。鳩もいれば潜む鴛鴦もいる。雁も飛び、雀を見返る白鷺もいる。それにしても目つきの悪い鳥たちが固まって口を開いているのは、立ち話にイソシムご婦人方のようにも見えて仕方ない。

四季花鳥図屏風  伝・雪舟  右にピンクの牡丹がパッと咲く。その曲線に対する無骨なほどの直線の竹。雀が飛ぶ。どっしりした松の幹には鳩。左の水面にはピンクの蓮が開いているが、白鷺がそれを目掛けて急降下するらしい。
ピンクの花の位置がとてもよかった。
  
西湖図屏風 狩野元信 室町時代後期  蘇東坡(蘇軾)ゆかりの蘇堤(Ω)、白楽天ゆかりの白堤(=)。それらが混在する街。いいなぁ。
何年前か、上海の近代建築を見に行ったときも、結局いちばん良かったのは明代の蘇州の庭園だった。むかしむかしに極められた土木・建築様式がやっぱり面白いのだ。
小さなジャンクや投網する人の姿もあった。

屏風で横長になった目を引き締めてくれたのは、小さな工芸品たちだった。
「沈金菊文四方盆」は暗く静かで、「堆朱蓮文盆」はパッと明るかった。パッという語感がピッタリ!な蓮の咲き方。
「蝶蒔絵経箱」は全面に群蝶。鱗分を思わせる梨地。
「女郎花蒔絵硯箱」は江戸時代の美意識を感じた。駒が見返るのは何か。乗り手はどこへ消えたか、硯の浦に沈んだか。

2.物語絵の名場面
わたしの好きな「絵に物語があるもの」が表れた。知る物語も知らない物語も、どちらも楽しい。

天神縁起尊意参内図屏風 室町時代  物語の大意を解説から写す。
「勅命により法性房尊意が菅原道真の怨霊の猛威を鎮めるために宮中に参内しようと賀茂川にさしかかった時、雷雨で荒れ狂う川を尊意の法力によって開き渡るという北野天神縁起における場面」を描いたものだそうだ。
・・・日本にもモーゼみたいなのがおったわけですね。
牛飼舎人たちも大変だったろう、牛は頭を低くして突進中。眼の大きい黒ベコ。カメラ目線の牛。なかなか実録もの風な趣があって面白い。

業平東下り図屏風 伝・俵屋宗雪  色々といたたまれないことを仕出かしたり、なんだかんだの逃げの旅。日本人は大昔から一旦逃げてしばらく都落ちしてからなら、罪を赦されることになっている。法律ではなく何というのか、魂の風習なのか。
金屏。富士山頂のズンズンズンとした三連がはっきりくっきり。主従はちょっと怯えてもいるように見える。

宇治橋柴舟図屏風 桃山時代  柴は茶と青とに色が分かれている。水車の水は永遠にこぼれ続ける。しかしその水の形容はまるで女の髪が落ちてゆくようにも見える。
岸の柳も左右、違う柳だった。季節の違いなのか、柳と楊の違いなのか。

蟻通・貨狄造船図屏風 伝・岩佐又兵衛  働く人々の表情がいい。笑う子供ら、ハグキむき出しの従者たち、よくできた竜頭などなど。明るく煌びやかな色彩がイキイキしている。キャラがわりと大きく描かれているから迫力がある。
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三十六歌仙図屏風 伝・岩佐又兵衛  これは巧い構成だった。上部にずらずら並ぶ三十六歌仙たちと、下部には色んな説話の1シーンが文琳型の枠内に描かれている。
二十四孝から釜堀の話やゾウさんたちが工作手伝う話、牛若vs弁慶、若衆たちの宴会などなど・・・こういうのが面白いのだ。

岩佐勝友の源氏物語図屏風、源氏物語澪標図屏風などを見ると、大阪にあった出光美術館を思い出す。むかしむかし出光で「源氏絵」展が三期に亙って開催され、大いに楽しませてもらったのだ。あれから、どこでどんな源氏絵屏風を見ても、必ず出光を思い出す。
わたしにとって「源氏絵」は出光で見たものが全ての原点なのだ。

「源氏絵色紙散蒔絵硯箱」は次々と源氏の名シーンが現われるようで、まるで可愛いアルバムのようだった。
「金襴手孔雀文双耳壷」ホイットニーの手が入ったのかと思うくらい。赤地に金の絵。明代の壺だが、この影絵のような孔雀文は本当に、世紀末的な美がある。

3.風俗画の熱気と景観図の大空間
いちばん好きな世界。大勢の人々が何かしているのが面白くて仕方ない。
まず前期に出かけたので、その感想。

南蛮屏風 桃山時代  カラフル~~♪ 船から大砲をいっぱい出してる。カノンカノン♪働く船乗りたち。一方の陸地でもみんなざわざわ。(ざわ・・・ざわ・・・だと福本伸行ですね)
このズボンがまた面白い。・・・今の腰パンのヤツラの対極みたいな。
 
江戸名所図屏風  これは特に好きな屏風で、これまでもマジメに見てきたつもりだったが、それでも初めて気づいたシーンが多かったりする。
'03年にはこの屏風をメインにした展覧会もあった。
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キャラの顔立ちが好きなのですよ。こういう顔立ちのキャラが好きなのです。
それで「何に気づいたか」と言うと、喧嘩に巻き込まれて転ぶ座頭。杖を探す手が妙に可愛いのだ。その手の可愛さが意識に残る。
それと色子屋で耳かきしてもらう僧侶。なかなかいやらしい顔つきなのがいい。
前々から気に入ってた、蒸し風呂屋の客と湯女たち、人形芝居の小屋、街中を行く傀儡師、物売りたち・・・いいねえ。
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(キセルにタバコつめる男の子、サッカーの長友選手に似てる・・・)
それにしても風俗画と言うものは、何度見ても・どこから見ても楽しめるものだなあ。

世界地図・万国人物図屏風 江戸時代  色んなところでこの手の屏風を見ているが、どれもこれも妙に楽しいし、好奇心が募る。
万国人物、世界各国の民俗というか、各国の男女の風俗が描かれている。それがまた『本物』かどうかこちらではよくわからないところが、いよいよ面白くて仕方ないのだ。
そして各民族の人々が妙に艶かしいのがいい。漢語表示の国家名もいいし。
大明、高麗、日本、韃靼あたりは多分リアルな表現なのだろうが、その先はまことに怪しい。それが楽しいのだ。基本は男女一組なのだが、民族によっては一人の女に二人の男などもあり、その関係性を色々妄想するのも面白い。最後には小人族もある。こちらは多数。
地図はナントカ法によって描かれているようだが、海にはクジラもいればイルカも飛んでいる。なんだか気宇壮大で楽しいぞ。

阿国歌舞伎図屏風 江戸時代  まだ初期の作のようだ。茶屋遊びする若衆を演じる阿国。桜の下の小屋。享楽気分がいい。
わたしが最初に出雲の阿国を知ったのは、小学生の頃に見た人形劇「真田十勇士」からだった。そのときの阿国たちの歌声がまだ耳に残っている。
それからだいぶ年月が経ったが、どこかで「阿国歌舞伎図」を見るたびに、他の阿国図を思い出す中で、ジュサブローの人形も必ず思い浮かぶのだった。

大坂夏の陣図屏風 長谷川等意  これは「戦国のゲルニカ」と呼ばれたあれとはまた違うものだが、ここにも残虐なシーンがところどころ描かれている。敗残兵をむしりとる、首ナシ足ナシの死体など。逃げる町人への乱暴は描かれていないが。

歌舞伎・花鳥図屏風 江戸時代  若衆歌舞伎。二人の美青年が踊る。優美な顔立ちの二人。
ときめくなぁ。遊女歌舞伎も賑やかでいいが、こちらの二人へのときめきのほうが大きい。
揃いの装束も似合っている。カブリツキで眺めるココロモチ。わくわくした。
しかしこれは以前は若衆歌舞伎・遊女歌舞伎図屏風という名で、裏の花鳥図は出ていなかったと思う。

古九谷のいいものが色々出ていた。
色絵葡萄文大皿  藍色の葉と緑の葡萄がいい配置に描かれている。色も濃く出ている。
色絵山水文大皿  山水と言うても家がある。山家と言うイメージではなく、どちらかと言えば倉庫のように長い家。後は人のいない光景。なんとなくコワイ。

これらが優しい照明の下にあるのだ。見慣れたやきものがいつにも増して綺麗に見える。
出光の演出に感心するばかりだ。
やっぱり「照明」というものは本当に大切だとこの数年痛感している。
東博でのプライス・コレクション展、阿修羅展、大阪市立美術館の三井寺展などで照明の凄さと言うものを教えられてきたが、本当にそれは重要なことだと思う。
今回の出光でも感心するばかりだ。
マンガで□⊡とか△▵▵でピカピカなのを表現するのがあるが、ホント、そんな感じでピカピカキラキラ見える。

元禄年間の桜花蒔絵徳利が大きいのにはびっくりした。これは実用したのか?
面白いのは樽乗人物形酒器。古伊万里とポルトガル製のとが並んでいる。顔の表現がそれぞれ面白い。ニホンのはビミョ?だし、ポのはいかにも酒飲みな顔をしている。
他にも多くの楽しいやきものがいい具合に配置されている。
楽しく眺めて歩いた。

お茶をいただきながらお堀を見ると、抹茶色より濃い緑色をしていた。
展覧会は7/25まで。後期展示は7/6から。こちらは風俗画ではなく景観図が現われる。
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