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美術館・博物館・デパートでの展覧会を訪ね歩き、近代建築を見て周り、歌舞伎・映画・物語に溺れる日々の『遊びに行った日を記す』場所です。 

オルセー美術館展2010ポスト印象派

これまで何度も「オルセー美術館展」があり、その都度「よかったな」と感銘を受けてきたが、今回もまた「やっぱりいいな」と声を挙げている。
実際にパリのオルセー美術館に行ったときの記憶と言えば、作品よりも元・駅だった建物の構造だったり、巨大な時計などで、メインは夜間開館日の閉館までいた挙げ句、ホテルまでタクシーに乗ったはいいが現金を使い果たしていて、アルジェ系の運転手に「この友人を人質にしてくれ、部屋までお金を取りに行く」と交渉したこと。
友人は絶句したし運転手もあわてて「¥でいいよ」と言い出したこととか。
・・・ろくなことしか思い出せないな。
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多くの作品がきていて、多くの人々が集まっているので、絵の前にたつのもなかなか難しいが、見たいものはじっと見れたので、嬉しかった。
ポスト印象派というククリの中に入る画家の作品群がある。20世紀にハナサキをつっこんでいる時代。それらを眺めるのは面白かった。

第一章1886年 最後の印象派

モネの日傘の女性、睡蓮の池など「いつ・どこで」見ても、やっぱりよい絵も来ている。

モネ ボルディゲラの別荘  竜舌蘭か、手前にある植物を見ているといかにも暑そうな感じがする。ちょっとルノワール風な。

ノルウェー型の舟で  舟のことはよくわからないが、これはフランスの舟と違う形なのか。三人の女が池らしきところで釣りをしている。水面に彼女たちが映る。静かな池。映画「黄昏」を思い出す。
いや違う。「黄昏」がこのモネの描く空気を映像化した、という方が正しいのかもしれない。

ドガ 階段を上がる踊り子tou246-1.jpg
壁の赤茶色と少女たちのチュチュの薄水色との対比が目に残る。ざわめきまで聞こえてくるような。
こういう作品を見ると、秋のドガ展がとても楽しみになってくるのだ。

ピサロ ルーアンのボワルデュー橋、夕日、靄のかかって天気  橋桁がやたらしっかり描かれている。強固な橋桁。わたしは「水辺の土木」に関心があるので、絵がどうのとか言うより、こういうものを見るとそちらに関心がどーっといってしまうのだ。

第二章 スーラと新印象主義

スーラのポーズする女の習作が色々あった。
ところがこの点描をジッ と見ているとブラウン管を思い出してしまう。
恣意的に点描を用いたのでなく、科学的根拠の下に意識的にその手法を確立したスーラ。
だからある種の法則があるのだろうが、それを見ているうちにブラウン管を思い出すのはどういうことか。三原色で成り立つブラウン管。暖かいブラウン管。
わかるようでわからないが、どちらにしろそんなことを思い出しているようでは、スーラの作品に関心があまりわかなかったのがバレてしまうな。

しかしシニャックの女たちはよかった。
きらめくもので成り立つカラダがそこにある。
そうなるとこれは完全にシュミの問題になる。
スーラに関心が湧かずとも、シニャックが素敵だと思うのは、嗜好の方向の話だ。
他にもリュスの点描を見ていると細切れの人参をここに加えたい気がしてくるし、点を打つにしても大変だろうと思ったりで、絵を楽しむより別なことを考えてしまうのだった。

ジョルジュ・レメン ハイストの浜辺  どう見てもSFだ。ナゾな配置。ナゾだ。シュールというよりも。時々こうした絵を見ることで気分がハイになる。
ハヤカワ文庫の表紙にこの絵が加わればどんなに素敵だろう。本気でそう思う。

第三章 セザンヌとセザンヌ主義

セザンヌのよさが徐々にわかるようになってきたのはこの十年くらいのことで、それ以前はセザンヌをどうも避けていた。絵そのものに文芸性・叙情性を求める様なわたしでは、確かにセザンヌを避けるのも当然だったろうが、近年はそのセザンヌとセザニズムに走った画家たちの作品に深い興味を持つようになったのは、やっぱり自分も進歩したのではないか、と思う。
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水浴の男たち  森の中の泉で水浴する人々を多く見てきたが、この「水浴する男たち」は特によかった。身体の筋肉の張りがいい。そしてその身体と空の雲の色合いがとても心に残る。

たまねぎのある静物  芽を吹きすぎたたまねぎ。絵を描くうちに時間が経ちすぎて食べれなくなりつつあるのかもしれない。そんなことを考えている。
へんなことを思い出している。「ドグラマグラ」の九相詩絵。
たまねぎにはまだ時間がある。茶色い背景がまだその生を保っていることを教えてくれる。

ドニ セザンヌ礼賛  絵としてどうこうではなく、こういう絵はなんとなく嬉しくて好きだ。内輪ウケみたいなところがけっこう好きなので、楽しく眺めた。

第四章 トゥルーズ=ロートレック

近年ロートレックの回顧展を幾つか見てきたので、ここにある三枚を眺めると、それだけで嬉しい気持ちになる。
娼婦である「赤毛の女(化粧)」にしてもその後姿は魅力的だった。赤毛女への偏愛を感じる。そして「女道化師シャ=ユ=カオ」の黄色いヒラヒラが目の前を泳ぐと思ったら、どう見ても凶状持ちのようなツラツキの「黒いボアの女」が現われる。
イジ悪さと親しみとがもつれ合った世界がそこにある。

第五章 ゴッホとゴーギャン

このあたりに来ると、やっぱり人の多さに参った。

ゴッホ アニエールのレストラン・ド・ラ・シレーヌ  白塗りのベランダ・コロニアル・スタイルの店舗。花が伝い這う。その佇まいに惹かれて描いたのだろうが、この建物が目の前にあればやっぱりわたしもパチパチと撮影するだろう。

馬車、アルル郊外のロマのキャンプ  子供らがいる。オランダ人のゴッホがロマの人々をどう見ていたかは知らない。少し離れた地点からの絵。
色々考え込んでしまうので去ることにした。

星降る夜  理屈を書くのはやめて、やっぱり綺麗だと思う。好きな一枚。これが見たかったので嬉しい。右から見たり左から見たり。

アルルのゴッホの寝室  これはだいぶ前に便箋になったのを購入している。この部屋にいるとバランスを崩しそうになるなと思いつつ、割りに好きなのだ。なんとなくこの絵を見ていると清志郎の歌が流れてくる気がするのだ。

ゴーギャン タヒチの女たちtou246-2.jpg
右のピンクのワンピースの女の姿勢を見ていると、猫背と言うより大阪弁で言う「ブンコ」に近いなと思う。猫背よりもっと背を曲げてしまうあれ。この姿勢が内臓を圧迫し、背骨を湾曲するのだが、着物を着ていた人は帯を負うようなカタチでそれに親しんでもいた。
しかしこのタヒチの女がなんでそんな姿勢なのか、そのことに妙な関心が湧く。
これはひどくなると顔が腹辺りに来るが、身体が柔らかくないとムリな状況でもある。このタヒチの女の身体の柔らかさを想像する。
ゴーギャンの描くタヒチの女たちは誰も彼もが柔らかそうな肉体の持ち主だった。

第六章 ポン=タヴェン派

実際にオルセー美術館で見て記憶に残っている作品が現れたのでちょっと嬉しい。

エミール・ベルナール 愛の森のマドレーヌ(画家の妹)  湖への道に寝転ぶマドレーヌ。最初に見たとき何かの寓意画かと思ったが、今回はそうは思わなかった。ただ赤色が意識に残るばかりだった。

ジョルジュ・ラコンブ 紫の波  和風。波の表現が風呂敷の唐草模様を思わせる。和の波だと思う。

第七章 ナビ派

なかなかこのあたりの画家の展覧会がないので、今回は大いに喜んだ。

ポール・セリュジエ 護符(タリスマン)、愛の森を流れるアヴェン川  この絵をエポックメーキングにしてナビ派が結成。不透明釉薬で焼かれた七宝焼のような作品。

ドニ カルヴァリオの丘への道  キリストの道。被り物をしたシスターたちが靄けたキリストにくちづける。この服装はもっと後代のものだから、錯誤があるのだが、もしかするとそうではなく、シスターたちがキリストの道を再現して歩くところへキリストの幻影が現われた、と解釈すべきなのかもしれない。

ドニ ミューズたち  木々の隙間に戯れるミューズたちが見える。カフェ風。そしてその森は小金井公園のそれのように見える。

ボナール 白い猫tou244.jpg
この猫とは20年くらい前に知り合いになった。うーんとノビたら確かにこうなる。可愛いなぁ。ボナールもよく猫を描く。フジタ的と言うより国芳的な感じで猫が現われる。

第八章 内面への眼差し

象徴主義の作品が現われて嬉しい。かなり楽しみにしていた。

モロー オルフェウス  時間をかけて眺めた。モローの中でも特に好きな一枚。
最初に見たのは画集からだが、そのときから変わらず好きな作品。
八つ裂きにされたオルフェウスの首と竪琴を抱き上げる女と、遠景の女たちと。
なにかしら静かな哀しみを感じるのだった。

ルドン 目を閉じて  よく知られていることだが、武満徹がこの絵からインスピレーションを受けて「閉じた眼」を作曲しているが、あの曲想を思いながら絵の前に立つと、不思議な優しさを感じる。
自分も眼を閉じてみる。絵も音楽もシャットアウトされるか?いいや、そんなことはない。
眼を閉じて絵の前に立つと、残像はより鮮やかに瞼に広がり、音楽はいよいよ深く染みとおるのだった。

ルドン キャリバンの眠り  これはまた好きな作品で、キャリバンが可愛すぎるのが楽しい。元ネタの「テンペスト」は蜷川演出とピーター・グリーナウェイのそれを見たが、グリーナウェイでのキャリバンはピーター・ガブリエルが演じていて、手足の長いワルそうな奴だったが、ここでのキャリバンはくるくる丸く寝る可愛い姿を見せている。
首に羽根のオバケも出るが、本当に可愛い。掌に納めてやりたくなるくらい、可愛い。
こういうキャリバンは可愛がって育ててみたくなる。

ボナール ベッドでまどろむ女  これは初見。ちょっと開きすぎですよ。しかし今風なおねえさんではある。111年前も今も変わらないか。

ボナール 男と女  オルセー美術館でも見て、ポストカードを購入している。(日本で買う根性がないわたし)
何と言うても猫がいい。猫が二匹ばかり寄ってくるのがいい。キジと白と。
今夜は愉しかったからいいけど、ダメな日にはその猫の爪をニュッと出して、カレの背中を引っかいてやれ・・・・・・!

ヴァロットン 夕食、ランプの光  ランプに猫の柄がついている。可愛い?。しかしここの家族はちょっとこわい。

クノップフとハンマースホイの女たちが隣同士に並んでいた。
「マリー・モノン」の横顔と、「休息」する(たぶん)イーダの後姿と。
この二枚の絵があたりの温度を静めたような気がする。

第九章 アンリ・ルソー

二枚だけとはいえ、これが見たさに足を運んだ人も多いと思う。
わたしもここにある二枚にドキドキした。

戦争  小学五年生のとき、担任がこの絵の複製画を出して色々話をしたが、彼はゴーギャンとルソーとの区別がつかず、話が混ざり合っていた。
小学生のわたしの目にはこの「戦争」が焼きついているが、彼はその後もこの絵を生徒に見せながらゴーギャンの生涯の話をしたのだろうか。

今回、この絵を見ながら「彼岸島」を思い出していた。剣を握る指の形など。勝手な想像だが、「彼岸島」はこの絵を見て思いついたのではないか、とチラッと思っている。

蛇使いの女  可愛い。夜に笛を吹いてはいけません、蛇が来ますよ・・・という俗諺がそのまま活きている熱国。白い満月の下でピーと笛を吹けば、大小さまざまな蛇が来る。
眼ばかり白い女の笛は蛇だけでなくトリまで呼んでいる。
ここはアマゾンのような気がする。それも16世紀のアマゾンに違いない。
「アギーレ 神の怒り」での川の両岸に潜む原住民の悪意。アギーレたち白人が来なければこうして満月の下で機嫌よく笛を吹いて蛇を呼ぶばかりだったのに。
そんなことを思いながら、自分も小さく口笛を吹いてみた。

第十章 装飾の勝利

壁画装飾を見るのはなかなか楽しいが、さすがに疲れてきた。
申し訳ないことにここはさらさらと見るばかりで印象が薄かったりする。
とはいえ公園や水の戯れなどを自邸の装飾にするというのは、やはり西洋文化だと当たり前のことを改めて思い知る。
飽きてしまわないような大掛かりな絵が必要なのだった。

この展覧会は大人気で、開館時間も変更されたらしいが、そうすることで多くのお客さんが楽しめるのはいいことだと思う。
それにしてもやはりオルセー美術館の所蔵品はすばらしかった。
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コメント
No title
ナビ派とか象徴主義とか、印象派に比べると一般大衆にはなじみにくいと思われるテーマをうまく説明していて、好企画ですね。
蛇使いにやられました。アギーレですか。クラウス・キンスキーの狂気を思い出します。
2010/07/07(水) 06:36 | URL | 一村雨 #-[ 編集]
アギーレとフィッツカラルド
☆一村雨さん こんにちは
目の付け所が巧かったですね。
面白い展覧会でした。

> アギーレですか。クラウス・キンスキーの狂気を思い出します。

大好きなんです、本当に。
キンスキーのあの表情がたまらないです。
2010/07/07(水) 12:32 | URL | 遊行 七恵 #-[ 編集]
地獄の黙示録
オルセーから話がそれますが、マーロン・ブランドやマーチン・シーンの狂気の表情もたまらないなぁと思いました。
ドアーズのジ・エンドが鳴り響きます。
2010/07/10(土) 06:03 | URL | 一村雨 #-[ 編集]
Re: 地獄の黙示録
☆一村雨さん こんばんは

> マーロン・ブランドやマーチン・シーンの狂気の表情もたまらないなぁと思いました。
> ドアーズのジ・エンドが鳴り響きます。

マーロン・ブランドの「大佐」は怖かったです。マーチン・シーンはあの映画のイメージがとても強かったので、息子のチャーリー・シーンにもそうしたものをついつい期待したら・・・いや、あれはあれは狂気のコメディアンとでもいうべきでしょうかね。

「ジ・エンド」は本当の意味で絶望的な歌でした。
わたし、時々仕事で失敗して取り返しがつかないときあの歌を歌いますもの。
(それで自己回復させるときはRCサクセション「わかってもらえるさ」なんですが)
2010/07/10(土) 22:08 | URL | 遊行 七恵 #-[ 編集]
No title
ドガ良いですね。。

すごくミーハーですが
生身で見たい(*^_^*)
2010/07/15(木) 00:31 | URL | ひろりん #-[ 編集]
☆ひろりんさん こんにちは
ドガはやっぱりよかったです。

映像で見るのと実物で見るのとはまったく違いますね。
やっぱりいいものは本物がベストです。
2010/07/15(木) 12:44 | URL | 遊行 七恵 #-[ 編集]
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