FC2ブログ

美術館・博物館・デパートでの展覧会を訪ね歩き、近代建築を見て周り、歌舞伎・映画・物語に溺れる日々の『遊びに行った日を記す』場所です。 

花鳥風月の美 応挙から仁清へ 香雪美術館

香雪美術館で「花鳥風月の美 絵画と工芸 応挙から仁清へ」を見た。
二階建ての美術館に入った途端、目に入るのが抱一の十二ヶ月花鳥図押絵貼屏風。
モノクロで小さい図版だがここに挙げる。
tou249-1.jpg
抱一の十二ヶ月花鳥図は大体どれを見ても「いいなあ」と思うのだが、ここのは特にいい月があった。
左から二つ目の十一月、ミミズクがいる図。このミミズクは飼われているので止まり木とひも付きだが、このミミズクの愛らしさはちょっとやそっとではないぞ。
ミミズクだから耳が立っているが、全身ほわほわで、その目の丸々と愛らしいのには、見るこちらがキャンとなった。丸い大きな目には可愛いアイラインが上下にキリッと伸びている。周りに飛び交う鳥たちはちょっとイジワルな感じもするが、このミミズクはそんなこと気にせず、大きな目を爛々と光らせていた。
余りに愛らしいので、このミミズクだけつれて帰りたいくらいだった。
連れ帰ってなんとする?撫でまくるのだ! ・・・と言うくらい、本当に可愛かった。
他の月の絵もいいものがあるが、このミミズクを見てはかすんでしまう。
一階に入った瞬間、パッと目を引く屏風なのに、よくよく熟視したらあんなに愛らしいものがいるのだから、結局はそこで終わってしまうのだ。
ああ、シマイに近い月でよかったなぁ。

可愛い壷がある。
青花 花鳥文広口壷  「大清雍正年製」の銘がある。この文様は花鳥とあるが、鳥のいない風景だった。細かい花唐草が隙間なく下地を埋め尽くし、本当に綺麗だった。
景泰藍ケイタイランと呼ばれる種類。濃密な美がそこにある。

七宝 花鳥文大花入  これも清のもので、竜がモザイク風に埋め込まれている。実に大きい花入れで、地は明るいトルコブルー。そこに様々な花鳥がある。
この七宝は有線七宝。掐絲琺瑯(コウシ・ホウロウ)と言うそうだ。

二階へ上がると、江戸時代のいい絵が工芸品共々、配置もよい感じにこちらを向いている。

芳崖 紅葉小禽図  モノクロだが今回のリーフレットに選ばれているので画像がある。
tou249.jpg
やはり「花鳥風月の美」を体現するのはこうした作品だとつくづく思った。

雅邦 月下群狐図  三匹のよく肥えた狐たちがお月見でもしているような風情。ファミリーなのか友達なのかはわからない。狐たちそれぞれの表情が面白い。トボケた顔つきもいれば、眠たそうなのもいる。それにしてもよく肥えている。
寂しい狐たちではなさそうだ。

宗達 烏図  宗達はピン動物をよく描くが、これは烏。なんとなくファンキーな烏。両羽を挙げているが威嚇ではなくノビでもなく、ラジオ体操ぽい。可愛いなぁ。

とにかく今回の展覧会での動物画の可愛さはちょっと類を見ないくらい。
花鳥風月の美と銘打ってるが、この数点を見ただけで「香雪に棲むどうぶつたち」展とか開いて欲しい、とつくづく思ったね。
それで小さい図録とか出してくれたらええねんけど。
tou250.jpg

応挙 菜花遊猫図  これがまた実にスゴイ。わたしはこれまで応挙=幽霊とわんこと孔雀とトラという意識が強かったけど、この絵を見て初めて「写生画の大家」ということを思い知らされた。
リアルであってリアルでない、しかし絵空事ではない、実感のある絵。凄い、と思った。
葉の花を背にした白地に黒ぶちの猫が左前足をちょっとばかり前に出して、こちらを見ている。昼間だから眼は金の海の中に三日月を描いている。
そしてその前(画面向かって左側)にはスミレが小さく咲いている。
何と言う猫の可愛さか!!カメラ目線の猫は静かに端座しつつ、こちらを意識している。
なんというイキイキした絵だ。
この絵が1795年に描かれたとは、到底思えない。つい今、描いたばかりのような新しさがある。その新しさとは絵が今風とかそんなことではなく、「リアルタイム」な実感というべきものだった。素晴らしい猫の絵だった。
17073001.jpg

景文 三社図三幅対  タイトルはそれで絵はハト、朝日に波、シカというものだから、ちょっとした判じ物になっている。解説によると、ハト=八幡様の使い(源氏。岩清水八幡宮)、朝日に波=伊勢神宮(皇室)、シカ=春日大社(藤原氏=公家)ということで、三社(三者=武士・公家・皇室)が仲良くすることを祈願した絵らしい。
こういうのを見ると、わたしなんぞはウシ(天神様=学問の神様)、狐(お稲荷さん=商売繁盛)、トラ(阪神タイガース)で三幅対を頼みたくなるぜ。

芦雪 長春小鳥図  デタッ文鳥!まだ咲かずに閉じている紫木蓮の木に小鳥たち大集合!先頭に止まるのは芦雪お得意の文鳥さん。みんな向き方々向いてるけど、どこか直線的で、それがありえない感じがして、面白い。蝶も寄って来ている。中には最近は滅多に見ない黄色い蝶もいる。ああ、本当にいいな。

狙仙 猪図  ブヒ。秋草の上に寝転ぶ。これが湿地帯ならヌタとかいうのね。それを猟師が狙うのがヌタ待ち。萩に猪ではなかったが、いかにも秋らしい。

沈南蘋 竹雀図  この人の絵、ですか?・・・という雰囲気の絵。大和絵にしか見えない。竹に青い朝顔が絡んで咲く中に チイチイパッパッ チイパッパッ な群雀たちがいる。
描き方も構図も特徴がない。しかしわるい絵ではない。ただこの人が描いたのか、と言う不思議さは残る。

梅逸 墨梅図  梅逸らしい「これでもかっ」な密な梅梅梅。多々梅。濃淡を利用するのではなく、一色で(同一レベルの色)梅と幹とが濃厚に描かれている。

江漢 青鷺遠村図  江漢の描く動物達はどうもエラソォである。この鷺もむろんその傾向が強い。エラソォというのは感じの悪いものだが、彼の動物達のエラソォさは「思慮深そうな」エラソォさなのである、と思った。

鳥尽図  作者不明の中屏風。上段は金銀砂子で、下段は竹の柵の向こうに鳥の楽園、というイメージの世界が広がっている。
わたしはトコヨノナガナキドリはニガテだが、小禽は好きだし、猛禽も大好きだ。ここは「小鳥遊」=タカナシの世界だった。木々を飛び交う小禽たち。地には花が咲き小さな池には水鳥が泳ぐ。秋草が主に咲くが、ちょっとばかり紫陽花もある、おや、まだ子供のハヤブサもいた。可愛いなぁ、この丸い頭に大きな目玉に小さくても鋭い嘴。
この屏風はよっぽど鳥の好きな人が誂えたのに違いない。
全然関係ないが、京都に通称「鳥の風呂屋」と呼ばれる銭湯があるそうだ。ガラス窓の向こうに多くの鳥を飼うているからだと言う。
奈良の上村淳之さんのお仲間みたいな感じですね。

工芸品では釜のよいものや仁清の桜花文透鉢、乾山の立葵透鉢などおなじみの素敵な器が出ていた。まったく涼しくていい感じがする。
そして兄弟コラボの小禽図額皿。笑う千鳥。

蒔絵の硯箱も実にたくさん出ていたが、下絵を狩野栄川が描いた、九条家伝来の吉野山図蒔絵硯箱および文庫がかなりよかった。彫師もわかっている作品だが、桜の描き方がとても濃やかで、繊細な愛らしさに満ち満ちている。

しかしいちばん心惹かれたのは、銘のない吉野蒔絵茶箱。
この吉野山の桜の描き方が、山の中の桜ではなく、森のようにしか見えなかった。
桜の森の桜の闇を蒔絵が生み出している。それも夜の闇ではない。光る道がある。
本当にこれは真昼の暗黒の桜だった。
こんなに濃密な空間は見たことがない。

茶箱の中にセッティングされていた香合は布袋が座すもので、先ごろ畠山記念館で見たものの親戚のようだった。
やはり見に行ってよかった展覧会だと思う。
7/19まで。
関連記事
スポンサーサイト



最近の記事
月別アーカイブ
カテゴリー
全ての記事を表示する

全ての記事を表示する

フリーエリア