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美術館・博物館・デパートでの展覧会を訪ね歩き、近代建築を見て周り、歌舞伎・映画・物語に溺れる日々の『遊びに行った日を記す』場所です。 

誕生!中国文明

「誕生!中国文明」 大いに楽しむ。
数ある古代文明の中でも特に中国文明に深いアコガレがある。
それも特に青銅器が大好きだ。
これは諸星大二郎の諸作品を読んで育ったせいだと思う。
「孔子暗黒伝」で知った饕餮に惹かれたのは初読の頃からだから、随分長いファン歴だ。
'89年秋、初めて東博に来たとき、東洋館で諸星の描いた文物の実物を目の当たりにし、
「・・・これがそうか」と思った。
憧れていたものの実物と対峙する。
そのときの心持はちょっと表現しにくい。
また併行して陳舜臣の著作も読みふけっていたので、古代中国そのものに親しみがあった。
ミュージアムをハイカイするようになっていよいよ愛情が深まるばかりになったが、その始まりはこの東博からなのだ。
ありがとう、東博。
とても楽しみにしていた展覧会へ、わたしは入ってゆく。
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展覧会には三つの柱があった。
第1部 王朝の誕生
第2部 技の誕生
第3部 美の誕生
タイトルを見るだけで心が湧き立つようだ。

1 幻の初期王朝 夏(前2000年頃?前1600年頃)
わたしが憧れ始めた頃は、まだ夏王朝の存在が半分は証明されていなかった。

動物紋飾板  今回のスターである。チラシにも美麗な緑色が光っていた。
チラシを最初に見たとき「・・・巨神兵?」と思うような風貌だったが、実物は小さく愛らしかった。
前17?前16世紀に生まれたそうだ。
伝説によると夏王朝の滅亡は前16世紀だから末期の文物なのかもしれない。

爵や鈴、玉刀などがある。何千年も昔でもこうした高度な技術が生きていることを改めて思い知る。
他に白と黒の対の「カ」と呼ばれる焼き物がある。字は禾の下に皿。三本足の器。
これはとても魅力的な焼き物だが、その頃から「白と黒の対」が活きていたことを面白く思う。
二元論がどうのということでなくとも、その対比を当時の人々も好んでいたのか。

関係ないがインドのタージ・マハルも今の白だけでなく王様用の黒も建造予定があったと言うが、あれはあれだけで強い魅力があるから、やはりなくてよかったとも思う。

2 王朝の確立 商・周(前16?前8世紀)
近年は「商」と呼ばれるようになった殷代。
「殷」という呼称も次代の周が決めていたものだから、やはり「商」が正しいのかもしれないが、わたし個人は「殷」がとても好きだ。
殷の滅亡を描いた物語は実に多い。
わたしが最初に読んだのは小学五年のとき、わたなべまさこの「白狐あやかしの伝説」での妲己の物語だった。
そこらのことは東博2007年の特別展「中国 悠久の美」展感想にも色々書いている。

関西には中国の青銅器がたくさんあって、奈良博、泉屋博古館などは常設室があり、白鶴美術館も豊かなコレクションを見せてくれる。
東京ではこの東博と根津美術館がすばらしい。
常設でもこれだけ楽しいのに、特別展として河南省の名品がドッと空を飛んできたのだから(海からかな?)本当に嬉しくて仕方なかった。
饕餮くーん饕餮くーん、とつぶやきながら場内を歩くブキミな女、それがわたしだ。

戈  カ。刃物。「海のトリトン」の持つオリハルコン製の短剣に似ている。
歯の部分が玉製のものもあった。そちらは柄が青銅。

西周に入り、また様相が変わってくる。
ジコウ  可愛い。悪魔っぽい。背に蓋がある。可愛い。
トラの尻尾の刀も可愛い。
古代中国はちょっとした動物園でもある。

綺麗な玉璧を見た。これを見ると「完璧」の故事を思い出すが、その話を知ったのはコメディマンガ「伊賀野カバ丸」からだった。
こうしてみると、本当にマンガから色んなことを教わってきたなぁ。

カク国という国があった。始皇帝が出るまで中国は大小色々な国家があった。
そのうちの一つカク(字は出力しそうにない)の太守夫人の墓から出土したものが集まっている。
玉覆面  色んなカタチの玉が集まって顔を構成するパーツになっている。隙間は一体何で埋められていたのか。布か、それとも。

3 競い合う国々 春秋・戦国(前8?前3世紀)
このあたりの時代も実に面白いエピソードが多くて、とても好きだ。
もう饕餮くんはいなくなるが。

編鐘があった。ちゃんとセットで並んでいる。ここでは音色を聴くことは出来ない。
京都の泉屋博古館ではその音色を聴くことができる。
それを思いながら眺める。展示ケースの向こうは黒い装いに見えた。
闇からの声が届くような気がする。

六戈戟  トーテムポール風な飾りが可愛い。
虎形鼓座  木製のトラで渦巻き柄モンな奴。<気>がみなぎる様子。

しかしここで凄い展示を見た。
ブツそのものが凄いというより、展示そのものが素晴らしかったのだ。
九鼎、九鬲といった容器たちがズラズラズラーッと一斉に並んでいるのだ。
この風景は素晴らしかった。
これは実際に見てみないとわからないトキメキに満ち満ちている。
はろるどさんの記事に素敵すぎるお写真があるのでご紹介する。
本当に凄いので、ぜひぜひこのコーナーを大いに楽しんでほしいと思う。
何周くらいぐるぐる回ったかな?自分が映り込むのがまた楽しくてね♪
知らないヒトの影を追うのも面白かった。

4 大帝国の形成 前漢(前3?後1世紀)
「項羽と劉邦」の物語がまたまた大好きで、展示を見ると好きな小説の一節やマンガの1シーンが思い浮かぶ。(横山光輝のそれですね)
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金縷玉衣があった。170cmくらいなのか。永城市芒とう山僖山1号墓出土ということだが、以前見たそれは同時代だが、河北省 定州市 八角廊村 40号墓からの出土品。
やっぱりこれは「孔子暗黒伝」を絶対に思い出す。ユラ?と起き上がる金縷玉衣の恐怖。
副葬品の葬玉シリーズがなかなか面白い。耳栓・鼻栓に蝉型の含玉・・・まではわかるが、玉豚がよくわからない。ちょっとナゾのブーブー。

馬車の部品色々、功賞品の金モノなどなど。
そういえば項羽は出し惜しみしたのでいよいよ人望が無くなったのだった。
ケチであることが敗北の原因の一つだと言うのも面白い。


第2部 技の誕生
1 暮らし
戦国?北宋まで1600年くらいの時代の中で生まれた文物が来ている。
その中でも七層楼閣が素晴らしい。
後漢の時代にはこうした明器がよく作られたようで他にも見ているが、それにしても高い。
入り口の前には犬かなんかがいる。働くヒトもいる。CGで構築の再現が見れるのも楽しい。空中通路があるのもいい。
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明器はあの世のドールハウスグッズだから、見ていて可愛いものが多すぎる。
炉  5匹のセミを焙ってる。(食べるのか!?)
池  ガァガァな家禽たち。
動物の解体  これは初めて見た。フィギュアと言うシロモノですな。下で犬が肉かぶるのが印象的。海洋堂とコラボしてほしい。

先般みたばかりのマーブル柄の陶製枕や白地枕をみる。
マーブル柄のは大安寺によく残ってたと「大遣唐使展」などで知ったが、白地のは送子観音をモティーフにした絵柄のもので、まぁめでたい系というかお願い系と言うか・・・

2 飲食の器
シュミに走って好きなものだけを挙げる。
漢代のガラス杯がたいへんに綺麗だった。青色ガラス。これは本当に綺麗。
唐代の金製五花形杯はポピー風な花形で、ガレあたりが作りそう。
北宋のどうやら汝窯のものらしき、青磁套盒が静謐な美に満ちていた。
同時代に鈞窯で生まれた澱青釉碗は思わず嬉しい声を挙げてしまうほど、綺麗だった。

3 アクセサリー
玉か金のアクセサリーなわけですね。
玉羊が小ちゃくて可愛い?。虎型の笄飾りなんて、阪神タイガース公式グッズで販売できそう。可愛いものが多かった。

第3部 美の誕生
1 神仙の世界
西周時代の神面が三枚。厭な感じの横顔、正面向き、エノケン似の顔など。
博山蓋鼎や羽人なんぞは去年の「道教の美術展」を思い出す。
画像石もあって嫦娥や仙人のモティーフが刻まれていた。
鎮墓獣はえらそー。

2 仏の世界
10世紀の獅子がなんだか親しみがある。前田青邨が描きそうな顔立ちだからか。
三彩舎利容器がカラフルで綺麗。力士と獅子つきというセキュリティOKなタテモノ形。
北宋の頃の天王や力士立像が可愛いのだ。力強いのに愛嬌ある。ムンッという感じ。

それで開封市から出土した准胝観音坐像磚、文殊菩薩坐像磚、地蔵菩薩坐像磚、不動明王坐像磚・・・みんな北宋のものだと思うと、水滸伝を思い出すのだった。

3 人と動物
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やっぱり可愛いのは漢代のわんこ、唐代の楽舞俑など。
漢代前半の闘犬像はフィギュアぽいが、この時代に闘犬賭博が盛んだったことを示してもいる。

4書画の源流
何が気に入ったと言っても、南北朝時代の画像磚。フルカラー。1500年ほど前のものがよくここまで褪色もせず残っていたことにも驚く。絵柄も面白い。
出行図なんぞは変に楽しそうに見える。武器を担いでいるはずなのに釣りに行くような雰囲気がある。男装の旗持ち・香炉持ちなどはレストランの給仕ぽいし。
これは楽しくて何度も何度も見た。
よっぽどいい保存状態のお墓だったのだなぁ。発掘後52年経っても崩れもしていない。
某タカマツヅカ古墳と大違いやなぁ。

あああ、本当に楽しかった。
内覧会に行けなかったのは残念だが、夜間開館でこうして楽しめて本当に嬉しい。
ますます好きになった。
展覧会は展示替えなしで9/5まで。その後は来春まで九州や奈良を渡る。



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コメント
No title
遊行さんこんばんは。記事中でご紹介くださりありがとうございます。展示が本当にキレイでしたよね。青銅器の一括展示は思わず「おお!」と声を上げてしまいまそうになりました。

>唐代の金製五花形杯はポピー風な花形で、ガレあたりが作りそう。

ガラスも見事でしたね。仏像あり、金細工ありとバリエーションに豊富な展示で楽しめました。
2010/07/29(木) 21:57 | URL | はろるど #sZuoGHFE[ 編集]
☆はろるどさん こんにちは
あの一括展示は本当に素敵でしたね~~
インスタレーションとお書きになってましたが、その通りやと思いました。

青銅器好きなのでわくわくしましたが、実に多くの見事な工芸品が眼に残ってます。
2010/07/30(金) 12:34 | URL | 遊行 七恵 #-[ 編集]
No title
汝窯の青磁が出ていたので、しっかりと見てきました。
河南だけでもこれだけの展覧会ができるのですから底知れないものがありますね。
2010/08/01(日) 10:47 | URL | とら #8WYMted2[ 編集]
☆とらさん こんばんは

> 汝窯の青磁が出ていたので、しっかりと見てきました。

綺麗でしたね~ 東洋陶磁美術館で展覧会があってから、わりと気をつけて見てますが、やっぱりよろしいですねぇ。清楚で上品。

> 河南だけでもこれだけの展覧会ができるのですから底知れないものがありますね。

やっぱり侮れません。連綿と歴史が途絶えることなく続いている国、次は何が出てくるか予測も出来ません。
2010/08/01(日) 23:56 | URL | 遊行 七恵 #-[ 編集]
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