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美術館・博物館・デパートでの展覧会を訪ね歩き、近代建築を見て周り、歌舞伎・映画・物語に溺れる日々の『遊びに行った日を記す』場所です。 

もういちだん、怖かった話を。

先日も東北での体験を書いた私ですが、弾みがついて、もう一つ書いてみます。
これは知る人ぞ知る大阪北摂のとある洋館の話です。

『ねこ屋敷』

大阪梅田まで電車で15分というよい場所にあるのに、その洋館は長らく放置されたままだった。
今ならいつ頃に建てられたか推察出来たろうが、二十年以前の子供の目には、ただただ古い古い洋館にしか見えなかった。
隣の小学校の校区にあるので、中学生になるまで近い割には行かなかったが、行くのも憚られるような『何か』があった。
ねこが大量に棲んでいたと言う話や、一人暮らしのおばあさんが死んだ後、猫がどんどん増え続けたとか、色々と耳にしたが、そのどれもが本当のようで、嘘のようだった。
判断する材料はない。

あるとき女性週刊誌にもその洋館が取り上げられていたので、やはり世間でも取り沙汰されているのだと、子供心にも妙に感心した。
中学になり、隣の小学校の連中からあの洋館の中に入ったと言う話を聞かされた。中は一階までしか入れなかったが、ぼろぼろで床があちこち腐っていたり、蘇鉄が巨大化してジャングルみたいだったり、プールに土が埋まっていて、猫が走っていた、と言うような話ばかりだった。

「・・・行こうか」「二人でか」
私とツレとは多少野次馬な元気少女だった。
私はおばから犬の散歩にその洋館前まで来たときの、恐怖体験を聞いていたので、ちょっと逡巡したが、真昼だし、と言うことで賛成した。

私たちがついたときには、やはり洋館は鎖されていて、巨大な蘇鉄が屋根より高く伸びていたし、二階の塔屋の窓は外から板張りされていた。
門には有刺鉄線が巻かれている。
それでも足をかけた途端、どこからともなくピアノの音がした。
この界隈はお屋敷町で、ピアノの音など珍しくもないが、まるで私たちの行動を見守っているように不意にピアノの音がしたのだ。
足を外すと、ピアノは止まる。かけると始まる。
その攻防が何度続いたかわからない。
とうとう無視して木に手をかけながら有刺鉄線を乗り越えようとすると一段と激しくピアノが鳴り続けた。
私たちは恐怖に駆られながらも、それでも門の一番上に手をかけようとしたが、何の弾みか、いきなり私はそこから滑り落ちた。
膝に痛みが走る。見ると、まるで『巨大な猫が爪で引っ掻いたような』三本の傷が走っていた。ピアノは鳴り続ける。
叫びそうになったとき、向こうから同じクラスの少女が現れた。
その途端、ピアノの音色が、確かに変わった。

結局その子の家で足の怪我を治してもらったが、私は長らく膝に『猫の爪痕』を持つようになった。

二度とそこには行かなかったが、残像は常に瞼に残っていた。
妙に気だるい気分と共に。

そして、十年後、新聞に小さな記事があった。
市がとうとうあの土地をさる企業に売却することになり、屋敷を壊すために解体屋と職員と、牧師さんを派遣したところ、土で埋まったプールから何か小動物の骨らしきものがぽろぽろと出てきたそうだ。

今ではその屋敷跡はこぎれいな社宅になり、周囲のお屋敷もマンションにだいぶ姿を変えた。
しかし、今でもあの屋敷を知る者は多くいる。私の膝の傷跡は今では全く見えなくなったが、あのピアノの不思議さも傷の形も、いまだに深く記憶に刻まれている。一体なんだったのか、未だにわからない。わからないし、わかってはダメだとも思う。

ある一定以上の年代の人で、北摂に今も住む人なら、もしかすると似たような経験がある、というかもしれない。


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コメント
とうとう書いたね。ねこ屋敷。にゃおおぉ~ん
今晩は嵐。
あなたの部屋の北側の窓の外には・・・
きゃああ。ババ猫。
(隣家では「マリちゃん」と呼ばれていたが・・・)
2005/08/15(月) 21:39 | URL | ジツマイ #.8bT96/M[ 編集]
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