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美術館・博物館・デパートでの展覧会を訪ね歩き、近代建築を見て周り、歌舞伎・映画・物語に溺れる日々の『遊びに行った日を記す』場所です。 

「型が生みだす、やきものの美」を見に兵庫陶芸美術館へ行った

急に思い立って立杭焼の里にある兵庫陶芸美術館へ向かった。
JR相野駅からバスで15分弱ということだが、その相野までが遠い。
阪急で宝塚まで出てJRに乗り換えて相野で降りたが、見渡す限り何もない。
IMGP8352.jpg立派な里山。

ちょっと学校が見えるが、本当にコンビニもマクドもお店も何もないのだ。
宝塚までは子供の頃から数え切れぬほど来ているが、その向こうには数回しか来ていないが、こんなにのどかな地とは思いもしなかった。
基本的に都心ではない遠隔地に行くときは人と一緒に出向き、喋ってる間に目的地に着く、というシステムを採っているが、思い立っての外出では一人で行くしかない。
朝イチから出かけ、開館5分前に待合いのイスに座ったりしていたが、見えるものは山ばかりなり。

兵庫陶芸美術館は本当に敷地も広く、建物も何棟にも分かれていて、大きな美術館だった。
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この地の立杭焼は日本六古窯の一つと言うことだが、向かいの徒歩10分ほど先の地は、窯元ばかりで、実際にバスの車窓から登り窯なども見えた。
また三田市や丹波篠山は古くからしいたけなどが有名で、しいたけ狩などの施設もある。
以前から気になっていた「しいたけ・かさや」もこの近くにあるらしい。
(しいたけで「かさ」やという名がとても気に入っているのだ)

今回は「型が生み出す、やきものの美 柿右衛門・三田」という企画展が見たくて、飛んできたのだった。
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ろくろ製法の陶器より、型を使うて成型する磁器にひどく惹かれる。
今回の展覧会はそのわたしの嗜好をもろに衝く内容なのだった。
このチラシを見ているだけでそそられもしたが、万難を排し、遠出した甲斐のある展覧会だった。
全部で4章に分かれて、やきものと、その土型などが展示されている。
全部で600点を越すやきものだが、前後期の展示替えでほぼ半数が展示されている。
全品を楽しく、また真剣に眺めたが、そのうちの15点ばかりが特別によかった。
一般的にどうと言うのはわからない。あくまでもわたしの嗜好に沿う15点である。
しかし鍋島以外はあいにく、殆ど画像がない。
ないが優れたチラシをここに挙げることで、だいたいのところを想像してほしいと思う。

1.土型に刻まれた精緻な文様 欽古堂亀祐の仕事
2.土型が明らかにする製作技法 亀祐の土型より
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この2章では地元の三田焼と王地山焼のやきものと、その土型が展示されている。
上段左端の卍は惜しくも前期展示だった。
右から二つ目は三田焼の台鉢だが、どちらも釉薬がとても濃く掛かっている。
わたしが気に入った三田の「青磁猿鹿文方形鉢」もまた釉薬が大変濃く掛かっていて、見込みの猿と鹿が細かい柄を埋もれさすほどだった。
どことなくアンリ・ルソーを思わせる構図で、妙に可愛い。
これが土型形成ということは、ほかにも同一品があるわけだが、今出来なのをショップでみつけた。

青磁牡丹文八角型小皿  これも濃く掛かり、まるで元代の青磁のような趣がある。
しかし見込みの牡丹はシュールなまでにほのぼのと美しかった。

同一の土型から生まれた三つのやきものに、違う色付けをする。
一つは青磁、一つは青磁と文様部分に蝋引きして素焼風にみせ、一つは色絵にする。
煎茶用の「青磁牡丹文四方茶心壺」がそれである。
全体に青磁が掛けられたものは、大き目の貫入が入り、それがひどく魅力的だった。
また文様だけ蝋引きしたものは、どうしてか貫入が全く無く、青い羊羹のような滑らかさがあり、これはこれで面白い味わいがあった。
そして色絵に仕立てられたものは、どことなく中華風な趣があり、同じ型から生まれても、全く別な顔を見せてくれた。

面白かったのは青磁虎文硯塀で、この虎は「山海経」に出てくる山神のような顔つきをしていた。世にどれだけ同胞がいるか知らないが、一匹だけで見れば何気にのどかな風情がある。

それにしても土型は、それ自体が興味深い。
和菓子を作るのに木型の版があるが、それと共通する面白さがある。
私は全くの職人芸より、多少人工的な技能が入った工芸品・工業品が好きなのである。

3.土型から生みだされた優美なうつわ 柿右衛門窯の仕事
4.土型が伝える生産の側面 西日本の窯場より
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実際のところこの3章4章が目当てで来たのだが、こちらは完全に鑑賞&賞玩だったが、先の2章は発見&感心という状況だった。

先般「誇り高きデザイン 鍋島」で見たシャッシャッシャッと線が走る「花文」皿の親戚筋に当たるような、放射線状のデザインがここにもあった。
あちらが打ち上げ花火だとすれば、こちらは線香花火といったところで、もっと線は細かった。しかし見るほどに魅力的な出来である。

チラシに出ている柴田夫妻コレクションの伊万里・花文折紙形皿は、色絵と青磁だけでなく白磁もあった。どれも本当に優美極まりない作品で、正直なところ「この作品」に惹かれてここまで来たといっても、過言ではない。
色絵のほうで、右端の葉の部分が一部白く見えるのは剥落のせいだと知ったのも、実物を前にしたからだ。
その剥落がまた微かに銀色に光を残すのが綺麗だった。
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柿右衛門ではひどく魅力的な皿があったが、チラシにその名が別な皿に当てられていた。
染付雪輪松文隅入長方形皿  左上に雪輪が可憐に集まり、左下に矮い松林が広がる。
その空間に、小さな青い染みのような、帆掛舟が二艘。
なんとも言えず平和で静かな風景がそこにある。いつまでも眺めていたい風景画だった。

鍋島では先般紹介した「椿」と「桜花籠文」が出ていて、それだけでわたしはニコニコである。そして更紗文の魅力的な皿も並び、やはり色鍋島の魅力は深い、と改めて思い知った。
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これまでは土型形成ばかり見てきたが、一点だけ木型形成の大皿があった。
明治九年の有田焼の染付である。その竜虎文の大皿は四尺もあった。120cm。
いかにも明治、な構図だが、この木型がまたすごかった。
地元大工のヒトが寄せ木で拵えたもので、知らずに見れば何の道具がわからないままだ。

他に源内焼の蝶や鯛に可愛いものがあった。
そして常設の企画室では、地元の丹波焼がずらーっと並んでいた。
これらは大きいものならわたしも好きだ。つまり玄関脇に置くとか、庭に設置するとかしたいタイプ。芭蕉の鉢植えなどもするなら、これでやってみたい。
そうした安心感があるやきものだった。

美術館にはレストランがある。
地元で評判の、野菜をよく使うレストランである。
ランチコースは一種類。
前菜、パスタ、デザート。みんな手の込んだお料理でありながら、素材の旨みを前面に押し出している。
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南瓜のバニラ煮込み、デザートのまくわ瓜シャーベットにはびっくりした。
野菜には甘味だけでなく苦味も活きていて、おいしかった。

さて帰途のバスである。
行きはこの美術館まで来たが、次のバスはここから徒歩10分ほどの立杭公会堂前まで行かねばならない。12:25のバス。それを逃すと15:25までない。
サイトには徒歩5分とあるが、とんでもない。
美術館が広大な敷地にあるため、場所によっては15分かかるのである。
わたしは時間を気にしながらランチをいただき、てくてくとバス停へ向かった。
橋にも公会堂の前庭にもやきものが使われている。
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駅では一時間に2本の電車を待った。
やっと電車が来て宝塚で降りたとき、本当にほっとした。
わたしは日曜は宝塚までなら気楽に行けるのだが、それより西に行くのは、かなりの気合が必要なのだった。
一時過ぎの宝塚・花のみちを手塚記念館へ向けて歩き出し、そこでようやく「帰ってきた」実感が生まれたのだった。
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