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美術館・博物館・デパートでの展覧会を訪ね歩き、近代建築を見て周り、歌舞伎・映画・物語に溺れる日々の『遊びに行った日を記す』場所です。 

棟方志功 旅と祈り

大丸ミュージアム京都で「棟方志功 祈りと旅」展が27日まで開催されている。
棟方志功は死後三十年以上経っても人気があるが、わたしも本当に一時は熱狂していた。
近年は少し納まったかと思うが、それでも展覧会があると飽きもせずに見に行く。
同じ作品を見ても「やっぱりいいなー」と思うくらいだから、コンセプトを立てて集めたような展覧会だと、やっぱり図録がほしくなる。
多作の棟方だからこそ「出てくる出てくる」状態なのだが、展覧会ごとに必ず新たに「すてき」と思う作品が現われるのも事実だった。

今回の展示は棟方板画美術館の所蔵品と、彼にカレンダー制作を依頼していた安川電機の作品などで構成されている。
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最初期の川上澄生の影響下にあった頃の作品も数枚出ていた。
そして新潟の「亀田・長谷川邸の内庭」二点あたりから、段々と志功オリジナルが現われ始める・・・
この長谷川邸の内庭図は太い線に水色着色のみで庭園が表現されていて、わたしは好ましいと思った。陶器の椅子や灯篭もあり、可愛いお庭を明るく作り出している。

華狩頌の大きい作品がある。これも好きな作品で、初代龍村平蔵が復元した獅子狩文錦と共に、わたしの中では「狩文様」の2トップなのだ。

おなじみの「華厳譜」「善知鳥」「鐘渓頌」「女人観世音」などがならぶ。
どれもこれも好きな作品ばかりで、何か書こうにも書けないくらい自分の心に根をおろしているのを感じる。

東北鬼門譜を見るのは久しぶりだった。
こうしたオオモノ系を見ると、「彫る 棟方志功の世界」といったドキュメント番組がアタマの中で再生され始める。棟方の青森弁の声が耳の奥に響いてくる。

湧然する女者達達  この作品を見ると「これはニョシャタチタチではなくニョモノタチタチだ!」と勅使河原蒼風が言ったエピソードを思う。
わたしも同感なので、勝手にニョモノタチタチと呼んでいる。

大原孫三郎の依頼で拵えた「大世界の柵」や万博のための柵、釈迦十大弟子、青森県庁の壁画なども来ていた。いずれも本当に大きい。

青森県庁の作品は初見だった。連銭葦毛の裸馬に乗る女、笛を吹く女、月兎などのモティーフが大胆に配置されていて、大きいキモチになる。

いちばん好きなのは「大和し美し」だが、これは表から彩色したヴァージョンで、ちょっとわたしはニガテなものだった。
あれはやはり色なしか裏彩色の方がいい。
珍しく「焔」が出ていて、嬉しいのは嬉しかったが。

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倭絵の名品も多く出ていた。
以前は板画ばかりが好きだったが、近年は倭絵にも強く惹かれるようになった。

最高傑作と名高い弁財天の柵がある。
これはよく展覧会のチラシのオモテになる作品で、わたしもわりに好きだ。
今回は初見の「御八大龍王妃神尊尊之図」に特に惹かれた。
少しばかりつつましい口元をしていて、目には赤色が点じられている。群青の髪が豊かで、頭に龍の飾りをつけている。オレンジの衣も綺麗だった。

そして安川電機の依頼で制作した東海道、九州、四国、東北の風景をモティーフにした版画(カレンダー)がまた随分よかった。

なにしろムヤミヤタラに元気なのがいい。繊細さにかけるかもしれないが、見ていると間違いなく気合が入ってくる。楽しいし、明るいキモチになるのだ。
志功の色鮮やかな作品を見ていると、彼が年中口ずさんでいたベートーヴェンの第九がこっちのアタマにまで流れてくるようだ。
しかしモノクロ板画の素晴らしさはまた格別だった。

谷崎潤一郎「鍵」挿絵屏風が出ていた。
わたしは谷崎ファンで、特別偏愛する物語もたいへんに多いが、老境に入ってからの「鍵」、「瘋癲老人日記」はまた別格だった。
中公文庫版なら志功の挿絵が入っているのに、わたしはこの2本が収まる新潮社版を持っているので、時々くやしくなる。
その口惜しさは比較すると中也の「くやしい人」に近いような気がする。

さてその「鍵」は物語そのものも面白いが、この挿絵がまたそれだけで名品なのだった。
小説を思い出しながら絵を見ると、彼らの声が聞こえてきそうで、ついつい黙って笑ってしまいそうになるのだ。
(「鍵」は市川箟が映画化した。ラストには狂笑してしまったが、他はちょっと・・・)

他に挿絵で’72年の新装版「行人」を倭絵で描いているのを初めて見たが、しっとりしてとてもよかった。
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ああ、書きそこねるところだった。
アメリカツアーの倭絵が出ていた。珍しい、と思った。
しかしこれは「旅と祈り」展だから、やっぱり出てくると嬉しくなる。
白人女性の描き方が、最初期の「星座の花嫁」を思い出させてくれたりするのだ。
それが楽しい。

何回見ても、いつ見ても楽しめる棟方志功の展覧会・・・
「祈りと旅」は9/27まで。巡回はちょっとわからない。
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