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美術館・博物館・デパートでの展覧会を訪ね歩き、近代建築を見て周り、歌舞伎・映画・物語に溺れる日々の『遊びに行った日を記す』場所です。 

龍子とロマン主義 神話・伝説の絵画化

久しぶりに川端龍子記念館へ出向いた。
西馬込から歩くのだが、大体迷子になる。今回はたいへん親切な奥さんのおかげで、地元の人の通る近道を案内してもらった。ありがとうございます、奥さん。

先に挙げた清方が「卓上芸術」を標榜するのとは対極の位置から、川端龍子は「会場芸術」を宣言した。
だから彼の設計したこの美術館も、その巨大作品を展示するのにまことに適う場である。
そこでスケールの大きい物語絵が出ていると、やっぱりドキドキするのだった。
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チラシは「源義経(ジンギスカン)」である。
昭和13年の作と言うところにちょっとひっかかりも感じるが、画家本人は大して本気でそう信じていたわけではないそうである。
(作家の高木彬光はわりに強くその説を推していたなぁ)
この絵は20年くらい前の「龍子記念館 案内」リーフレットの表紙に使われていたのだが、これまで全く無縁だったので、今回実物をはじめて見ることが出来て、やっぱり嬉しい。
戦前に流布した説によると、衣川から蝦夷地経由でモンゴルへ渡った義経がジンギスカンになった、そうだ・・・。
そのイメージを龍子は描く。
なにやらコワモテな四頭のラクダと、共に海を渡ってきた白馬と共に、鎧直垂姿の、目つきの鋭い義経のいる図。不穏な雰囲気がある。

使徒所行讃
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役行者のお使いとしてよく働く前鬼・後鬼夫婦の姿が描かれている。
山中でくつろぐ夫婦は山の仲間たちと仲良くしている。
青鬼の女房は肩に停まるリスを眺めている。その手にはアケビなどの載った籠がある。
毛皮を腰に巻いた亭主の赤鬼は、見るからに逞しくて、肩や背の辺りに鮮やかな強さがあった。その斜め後で毛づくろいする白狐、夫婦の周囲の黄色い大きな葉っぱ、色のコントラストがハキハキしていて、長く印象に残る絵だった。

戦後になってから「奥の細道」を自分も歩いて、その地その地を描くこともしている。
松島、気比大社などが展示されている。
「奥の細道」は小野竹喬のシリーズが有名だが、龍子にもあったのだ。

火生tou597-1.jpg
両手を挙げる若き不動明王の姿がそこにある。
金の火と赤い体と。腰を覆う金色の植物、金の火の煤影、本当にそこに炎があるようだ。
この不動はいまだ若く、これまで何をしていたかわからない。自分の中の荒れ狂うものを制御できずに暴れまわっていたようにもみえる。
しかし今、何かに目覚めた、何かが覚醒した。
降魔の利剣を掲げて、己が何者であるかを自覚した、そんな若い男に見えた。

龍子は河童が大好きで、河童の戯画を多く描いている。
魚籃観音、不動明王とそれぞれタブローがあるが、この二人はどうもカップルぽくもある。
女河童の三本の指が肉感的で、その指の着き方が妙に艶かしかった。

夢 tou597-2.jpg
奥州藤原氏の栄華の跡から生まれた作品だが、わたしが最初に見たのはここではなく、茅場町時代の山種美術館でだった。
最初に見たときの衝撃の大きさは、今も細胞のどこかに残っている。
もともと蝶が好きで、それで御舟の「炎舞」を酷愛しているが、ここに描かれた蝶や蛾にも強く惹かれている。
蝶たちは長く棺の中で主と共にいたのだろうか。
それとも後から来たのだろうか。
わたしはどうしても、蝶たちは公と共に長い時間を過ごしたように思えて仕方ない。
そこでは蛹だったかも知れず、冬眠していたのかもしれない。
それが七百五十年ばかり後の世にこうして開かれたとき、透明なまま羽化して宙に出て、そして舞い戻ってきた・・・
物語はどのようにも道を開いてくれる。

小鍛冶  小学五年のとき音楽の授業で「小鍛冶」を聴いた。
ソレ唐土に傳聞く 龍泉太阿はいざ知らず わが日の本の金工・・・
今でもここだけは暗誦していきなり謡いだす。
その小鍛冶を描いている。いちばんドラマティックなシーンである。
三条宗近と小狐丸の共闘である。
刀鍛冶の熱い気迫がこちらにも来るようで、何度見ても気合が入ってくる。

やはりこうした物語絵を見るのはとても楽しかった。
展覧会は12/15まで。
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コメント
でっかい龍子!
私も一回だけ龍子の記念館へ行ったことがあります。
知人のニット作家さんの個展が近くのギャラリーで
開催されていたので、帰りに寄ってみたわけです。
予備知識があって観たわけではないので、驚きが
半端じゃなかったですよ。図録でしか龍子の絵は
見たことがなかったので、これほど大きいとは思い
ませんでした。しかも、モチーフがすべて、スケール
の大きな物語だというのがいいですね。
それにしても、子どもの頃に聴いた音楽の絵が
描かれていたのは、いいですね。その曲が絵に
よって思い出されると、絵がさらに活き活き見えて
映画を見ているような臨場感が増してくるのでしょうね。
2010/11/26(金) 13:15 | URL | えび #-[ 編集]
現代日本画の祖みたいな感じが。
☆えびさん こんばんは

今の日本画って大作が多いんですけど、その直接のご先祖みたいな感じがします。
わたしは画集で最初に見たのが足立美術館の「愛執」だったかな、鴛鴦の。
それでサイズの大きさについてそこに書かれていたから「ほほー」だったんですね。
しかもその後すぐに本物を見たので、「うぉっ」はなかったのですが、
「マジすか~~」なのは確かでした。
なにしろ画面全部に気抜けも隙もないのが凄いです。

> それにしても、子どもの頃に聴いた音楽の絵が描かれていたのは、いいですね。

結局今も物語絵が好きなのは、きっとこういう下地があるからなんでしょうね。
2010/11/27(土) 00:47 | URL | 遊行 七恵 #-[ 編集]
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