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美術館・博物館・デパートでの展覧会を訪ね歩き、近代建築を見て周り、歌舞伎・映画・物語に溺れる日々の『遊びに行った日を記す』場所です。 

警視庁カメラマンが撮った昭和モダンの情景 石川光陽写真展

旧新橋停車場 鉄道歴史展示室では「警視庁カメラマンが撮った昭和モダンの情景 石川光陽写真展」が開かれている。
昭和モダン、と聞くだけで心浮き立つわたしだが、この展覧会もその期待に十二分に応えてくれる内容だった。
サイトには石川光陽と言う人をこう紹介している。
「カメラマンの腕を見込まれて昭和2年に警視庁に入庁、交番勤務一日のみの特別待遇を受けました。“空襲カメラマン”と称される光陽は、戦時中、警視総監の特命で、東京大空襲の惨状を撮影し、戦後、GHQからフィルムの提出を求められますが、自宅の庭に埋めて拒絶し、当時の貴重な資料を命がけで日本に残しました。」
ホネのある人だ。
しかしそればかりではなく、旧い東京風景を肌理濃やかに写し取ってもいる。
作品は九段の昭和館の所蔵。石川は九段で写真の修行をしたから、その作品がそこにあるのにも、なにかしらゆかりを感じる。
九段の辺りにはまだ「昭和モダン」と、それ以前のレトロな魅力を感じる建物がいくつも残されている。

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昭和十年の東京駅。ドームが活きている。丸の内口。市電、自転車、少ない人通り、ソフト帽の男性たち・・・戦前の、薄い不吉さと穏やかな日々とが、仄かに漂う情景。
数年後の東京駅は、この写真と同じドームを冠せられる、らしい。

ボンネットバスの「乗合自動車」がある。昭和九年の夏、バス車掌の女の人が昔のバス車掌には必携の大きなガマ口バッグを腰の辺りに提げている。
押上-浅草-上野を走るバス。今だとパンダ模様のバスがスカイツリー-浅草-上野を走っているから、同じルートの先達なのだ。
背景の店舗の看板などはローマ字なども見える。敗戦後のオキュパイド・ジャパン時代ではなく、大日本帝國の東京府の看板。

円タクという言葉を知ったのは子供の頃に見た清酒・松竹梅のCMから。石原裕次郎が着流し姿で歩いていてそこへ「昭和初期、一円ブームがあった。どこまで乗っても東京市内は一円で走る円タク、全集本も一円・・・」というようなナレーションが入るのだ。
それで円タクを知った。
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この円タクはとてもステキなクルマだった。クラシックカーの魅力にときめいて苦しくなる。わたしは今の車は別に欲しくないが、こんなクラシックカーなら欲しい、とよく思うのだった。

近代版画で馴染み深い日本橋。昭和初期の日本橋の美貌。左手奥に西川の布団屋さん。
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日本橋の装飾の鋳造は津田信夫。昨夏佐倉市美術館で見た工芸家の作。見事だったな。

石川の写真は当然ながらモノクロだが、色の濃淡の綺麗なところはまるで墨絵のように見えた。モダンさと情緒とが同時に活きている。

昭和11年の二月はよくよく雪が降ったらしい。
昭和11年立春の浅草六区。映画館が並ぶ街に降り続く雪。タイポグラフィがとても魅力的。
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同じ月の26日にあの事件が起こる。そしてその翌日27日に石川が写した一枚。
これまでこんな写真、見たこともなかった。
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かなりショックを受けた。話に聞いたり資料を見てきたが、こういうアングルのものは初見。この写真撮影は石川も緊張していたそうで、気づかれぬように撮影するのも怖かったろうと思う。

最後に出てきた写真は昭和34年の東京タワーの上からのショット。「空から日本を見れば」の大先達というところ。(そういえば先日の放送でスカイツリーの真上からの映像はかなりびっくりした)

展覧会には他にその当時の駅弁の包装紙や絵はがきなど色々と興味深いものが展示されていた。
こんな面白い展覧会が無料だというのも嬉しい。
3/21まで。
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