美術館・博物館・デパートでの展覧会を訪ね歩き、近代建築を見て周り、歌舞伎・映画・物語に溺れる日々の『遊びに行った日を記す』場所です。 

日本のアールヌーヴォー 版画、ポスター、挿し絵を中心に

堺市立文化館は与謝野晶子の資料室とミュシャ・ミュージアムとを有しているが、他にギャラリーがある。
3/15までそこで堺市所蔵美術作品展が開催されている。
12回目の今回は「日本のアールヌーヴォー 版画、ポスター、挿し絵を中心に」という副題のもと、美麗な作品がギャラリー全室を彩っている。
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初めに本家フランスのアールヌーヴォーのポスターなどが現れる。
ジュール・シェレ、ウジェーヌ・グラッセ、テオフィル・スタンラン、そしてミュシャといった豪華な作家たちの作品である。

ミュシャの描く女の横顔、それを飾る宝飾品の美麗さ、シェレの踊る女の紅潮した頬の明るさ、スタンランの黒猫と三毛猫のともだち・・・
見慣れたポスターもこうしたタイトルの下に集うと、新しい喜びを見いだせる。

グラッセの作品はブリヂストン所蔵の「毒殺魔」とか硫酸を人にかけようとする怖い女などの絵ばかり見ているので、ここにあるインクのポスターやカレンダーの優雅な赤毛女の絵は新鮮だった。
ハープを支えに物憂げな横顔を見せる赤毛女、その構図だけでもロマンティックだった。
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ロートレック「ディヴァン・ジャポネ」、ボナール「ルヴュ・ブランシュ」、好きな作品はここにもある。

チャールズ・ウッドベリー 1894年の文芸誌「センチュリー・マガジン」表紙絵には小田原提灯と岐阜提灯が描かれていた。長いのと丸いのとが遠近法も楽しく描かれているのはジャポニズムからか。
クリムトのパラス・アテナが見守る中でミノタウロスと戦う王子。
この絵も好きな一枚。

さていよいよ日本のアールヌーヴォーの登場である。
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藤島武二、橋口五葉、浅井忠、この三者が最初にして最大の作家たちだと言うのは間違いないように思う。
武二は「明星」「みだれ髪」の表紙や明治半ばに爆発的ブームを迎えた絵はがきの製作の立役者として、アールヌーヴォー風な絵を世に送り続けた。
展示されている絵はがきなどを見ると、それだけで嬉しくなる。

たとえば与謝野晶子「小扇」装丁。女の目元とその下を覆う黒い扇。目だけ描くと、こんなにも官能的になる、という見本のような絵。艶かしい目。
同じく晶子の「毒草」の邪悪な笑いを浮かべる女の顔なども武二。
本絵にも、明治の浪漫主義がキラキラする、とても美麗な作品が多く、海景や山を描いたものより、ずっとずっと魅力的だと思う。

五葉の日本郵船ポスターを始めとした明治大正の美人たち。創作版画でのすっきりした美人たちとは異なる、カラフルな美人たちからは意外なくらい強い生命力を感じもする。
そしてここには彼のもう一本の柱、装丁の仕事も出ていた。
「吾輩は猫である」前中後編装丁を改めて眺めると、手の込んだ仕事をしているのを知る。
絵自体もシニカルなユーモアがあり、そこがとても面白い。

杉浦非水と中澤弘光のコラボ作品に「みだれ髪」カルタがあった。
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中澤は「みだれ髪」を熱愛し、暗誦するほどのファンだったそうで、そのカルタが出ていた。
これは以前神保町の古書会館で「中澤弘光展」があった時に見たことがある。
帰宅後本を出すと、出てきた出てきた・・・

北野恒富、岡田三郎助の美人画も多く並び、なんという豊饒さだろうと改めて、このコレクションに感心した。
まだ恒富の作品に触れる前、最初にそうと知らず遭ってときめいたのは、高島屋やクラブコスメのポスターだった。
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艶かしさと清楚さとが同居した、こんな愛らしいのにみつめられては・・・。

近年高島屋史料館の外に出ては人々を惑わすようになったのが、三郎助の「支那絹の前」。これらが並んだ壁は、それだけで暗い輝きを放っている。
こんな絵が見ていたくて、わたしはあちこちをさまよっているのだ。

しはらくして予想外な絵を見た。
清方が晶子「黒髪」を描いていた。晶子の自筆短歌と清方の色紙。ステキな作品である。
まるでアメノウズメのような黒髪の女がいる。足元にはタンポポが咲く。
大正六年の作。清方には珍しくふっくらした女が髪を梳る立ち姿。
大正年間はふっくらした女が流行ったそうだが(六代目菊五郎の女形がウケたのもそこに理由がある)、そうなるとこれは古代の女ではなく、大正リアルタイムの女ということかもしれない。

実に多くの「日本のアールヌーヴォー」近代日本画、日本洋画の美人たちを見た。
とても楽しい企画だった。図録がないのがまことに惜しい。
一方別室では新収蔵品の展示もあった。少しばかり紹介する。

成園 夕涼み  団七格子の浴衣を着た女が洗い髪を風に流している。白い腕、白い顔。純粋に綺麗な女の立ち姿がそこにある。
チラシ左端にいる女。真ん中の五葉美人、右端のミュシャ美人と並んで遜色のない美人。

中村貞以 婦人像sun304-1.jpg
兵庫髷の女が桔梗を手にする。伏目がちの端正な女。着物の色も上品で、貞以が好んだ品の良さが全身から漂っている。

戦前の大阪では女流画家に勢いがあった。ここに出ている島成園だけでなく、木谷千種とその弟子たちもどんどん作品展を開いていたそうだが、今では本当にそれらは日の目も見なくなってしまった。
これからも堺や池田市や芦屋が、昔の大阪画壇の栄光をなんとか世に広めてくれることを願いたい。
展覧会は3/15までJR堺市駅の堺市立文化館ギャラリー。無料なのが嬉しい。
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コメント
こんなにたくさんあって無料!
すごくたくさん展示されているようですが、
無料とは嬉しいですね~♪
東西のアールヌーボ作品が網羅されている
のが素晴らしい。やっぱり、所蔵作品展の
時は、こういう企画でやるのがイチバンですよね。
そして、なによりもタダがいい!(笑)
2011/03/11(金) 08:47 | URL | えび #-[ 編集]
☆えびさん こんにちは
もっと早くお返事をしたかったのですが遅れてすみません。
この展覧会、とにかくとてもよかったです。
綺麗でした。

今とりあえずメール送りました。
よろしくお願いします。
2011/03/14(月) 17:19 | URL | 遊行 七恵 #-[ 編集]
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