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美術館・博物館・デパートでの展覧会を訪ね歩き、近代建築を見て周り、歌舞伎・映画・物語に溺れる日々の『遊びに行った日を記す』場所です。 

生誕250年 酒井抱一 琳派の華

先日発生した東北・関東大震災に被災された皆様に心からお見舞い申し上げます。
まだまだ予断を許さぬ状況の中で、大変な思いでお過ごしのことかと思われます。
また計画停電などで様々なご不便を忍んでおられる皆様も多い中、「自分の見た展覧会の感想文をあげる」ということに対し、わたくし自身がやはり忸怩たる思いを抱え、様々な葛藤に悩んでまいりました。
しかしながら、わたくし自身の過去の経験を省みまして、やはり「書きたいことを書こう」「もしかすると読んでくださった方がこの駄文で少しばかりは明るい心持ちになられるかもしれない」、そのように思い至りました。

今を去る16年前の阪神淡路大震災の折、わたくしの住まう大阪北部の市は府下唯一の被災地となり、亡くなられた方もおられました。
実際、わが家の道路を挟んだお向かいのおうちでは奥様が一時生き埋めになり、すんでのところで救助されるということもございました。
ニュータウン住まいの友人たちの中にも、震災を機に思いがけない転身を余儀なくされた人もいました。
震災の折、わたくし自身も大量の本に埋もれてしまい、そのとき一瞬ですが、人生も何もどうでもよくなってしまいましたが、不意に「今週のスラムダンクまだ読んでない」ということに気づき、それでわけのわからない棚の下から這い出ることができました。
自分の見たいもの・見るべきものがまだこの世にある以上、生き続けなくてはならない。
そのとき強烈に実感いたしました。

こんなときに不謹慎な奴だ、と思われる方もおいでかもしれません。
けれどこれが偽りのない、わたくしの真情です。
苦しいときだからこそ、少しでも「見たいものを見る」、それがわたくしの活きる力そのものなのです。
皆様もどうか少しでも明るいお心持ちになられるよう、心から祈願してやみません。

遊行七恵 拝


生誕250年 酒井抱一 琳派の華


今年は酒井抱一の生誕250年と言うことで、各地の美術館が豪華な企画を立てている。
出光美術館は「琳派芸術」として前後期に分けて琳派の金と銀の美を余すところなく展覧し、特に後期の「転生する美の世界」では銀を愛した抱一の作品を中心に美麗な作品を集めた。
夏には、酒井家の「本拠」である姫路で、やはり生誕250年を記念した抱一展が市立美術館で開催される。
そして畠山記念館では館蔵品から「琳派の華」として抱一を中心に光悦、宗達、光琳、乾山ら先達と彼の弟子・其一の作品を展示している。
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私が出かけたのは後期展示の頃なので、乙御前図、富士見業平図、扇面月兎画賛、薄鹿蒔絵硯箱などは見られなかったが、チラシに躍る風神雷神図には会えた。

抱一の風神雷神図は出光でも見たが、こちらのそれは「ファイトー」「いっぱーーっ」タウリン2500配合、といった風情のカミさんたちである。
祖である宗達の風神雷神図に比べ、時代が下がるほどに可愛らしい、親しみやすい存在へおりてくる。
眉も鼻も練りもので拵えたような形で、カネテツあたりから販売されても不思議はなさそうだった。

扇面ウサギはいなくとも、賤が屋の夕顔図には猫がいる。
猫は月には上らぬが、屋根の上くらい上るのも平気なのだ。この猫は晩ご飯を待っているらしい。

乾山79歳の立葵図は白と赤の花が咲き乱れ、画面を大きく揺らしている。乾山のサインも良い字で、ミドコロの多い一枚。

立葵から百年後のヒマワリがある。
其一ゑがくヒマワリはまさに「向日葵」である。太くまっすぐな茎の上に黄色と黒の大きな顔がある。真正面とその左右にも花の顔があるところなぞ、阿修羅の親戚筋のようなものだ。どーんと最多この花を見ていると「早く夏になれ!」というキモチになってくる。

光悦&宗達の人気作品のうち、今回は小謡本が特に良かった。ページ替えをしていて、私が見たのは右が「玉井」、左が「鴨」のサビ部分だった。
サワリがスルスルと綺麗な文字で書かれ、下地には銀で桔梗を描く。光の加減で激しく輝きもすれば、重く沈みもする。下地の躍りを墨の文字が封じているような作りにも見えた。

やがて当時も今も人気の抱一「十二ヶ月花鳥図」が現れる。後期に見たので七月以降の軸があった。
畠山記念館でも以前からよく出ていたのでナジミな気分で対するが、改めて「抱一250年」を思いながら眺めると、やっぱり深くいいと思う。
一枚一枚、一月一月楽しんで眺め、自分の好きな月をみつけたりした。
わたしは木花が好きなので、そこへ飛んでくる小鳥を見ると嬉しくなったりした。

工芸品にもむろん良いものが出ている。
乾山のやきもの、光悦の孫・光甫の茶杓などが集まっている。
私が好きなものは結鉾香合、色絵牡丹文四方皿など。
そしてその中でも特に良かったものは色絵絵替り土器皿。
半分黒地に上から色絵で様々な植物を描いている。
笹、葦、梅、八重葎、菊などなど。以前この別物の白地版を見ているが、そちらの方が今風な感じがし、この黒版の方が古い面白さがあった。
白椿の可愛らしさも存分に堪能できて、たいへん楽しかった。

いいものをたくさん見て、春の琳派はこれで終わり。
次は夏に姫路へ向かおうか・・・・・
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コメント
まってました
 いつから書くか 楽しみにしていました。
 たぶん東北在住で ブログ更新のない人が お一人いるんです。気になっていますが・・・・
 自粛なさっていた方が 更新なさるとほっとします。
2011/03/18(金) 14:55 | URL | 小紋 #-[ 編集]
No title
はじめまして。
1年ほど前から密かに拝見しておりました。
今回初めてコメントをさせていただいたのは、

> 自分の見たいもの・見るべきものがまだこの世にある以上、生き続けなくてはならない。

という一文にはっとしたからです。
仕事や個人的な事でずっと悩む日々を過ごしていたのですが、自分が本当にしたい事に目を向けて生きていこうと、勇気付けていただきました。
ありがとうございました。
2011/03/18(金) 21:05 | URL | NR #zHAUYs2U[ 編集]
「待っていたとはありがてぇ!」歌舞伎舞踊「お祭」より♪
☆小紋さん こんばんは
実はわたしの友人は福島在住で、無事が確認されましてほっとしたものの、毎日の暮らしの悲惨さを伝え聞く度に、色々思い悩んでいたのでした。
本当に一刻も早く「日常」が人々に戻って欲しいと思っています。

生きてる限りは何かしら更新するつもりでいます。
2011/03/18(金) 23:39 | URL | 遊行 七恵 #-[ 編集]
はじめまして
☆NRさん こんばんは

こちらこそありがとうございます。
少しでもお役に立てて嬉しいです。
「反省はしても後悔はしない」をルールに日々生きております。
(それでもやっぱり後悔もしてますが)
生きてる間くらい意志を貫こう、と努力するのが大切なんだろうなぁと思いつつ。
2011/03/18(金) 23:46 | URL | 遊行 七恵 #-[ 編集]
No title
20日に出光に行きましたら、震災で打ち切りになっており、気を取り直して弥生に行きました。
途中の大観記念館も震災の被害にあったようで、塀の一部にブルーシートが被さり、大棟にもビニールに包んだ重しのようなものが載せてありました。
弥生の姉妹館の立原道造記念館は2月20日で閉館したそうです。
2011/03/21(月) 12:08 | URL | 飛行鬼 #91CvM.Pg[ 編集]
☆飛行鬼さん こんばんは
そうですか、大観記念館も・・・。
あそこは戦争中も持ちこたえたのですが。
なんでも家の地下に清酒「酔心」を蔵元から届けられていたのをしまっていたそうです。

弥生の挿絵の黄金時代を見損ねたのは一生の痛恨事になるな、と覚悟しております。
27日までだけど行く予定が立たないのでアウトです。
本当にそんなのばっかり。

立原はまことに残念ですが、ちょっとばかり運営方法もどうかと思ったりもしてました。
残念ですが・・・・・・・
2011/03/21(月) 23:46 | URL | 遊行 七恵 #-[ 編集]
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