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美術館・博物館・デパートでの展覧会を訪ね歩き、近代建築を見て周り、歌舞伎・映画・物語に溺れる日々の『遊びに行った日を記す』場所です。 

湯木貞一生誕110周年記念展1期:季節の演出 湯木貞一の茶会

吉兆の湯木貞一は今年、生誕110周年を迎えるそうだ。
彼は一代で身を起こし、日本料理の粋を極め、茶の湯にも精進したヒトだった。
'97年に亡くなったが、その数年前にわたしは東京の歌舞伎座で偶然みかけたことがある。
当時でも随分高齢だったが、ソフトな感じで、しかしお元気そうなおじいさんだった。
遠目にもよい印象が残ったので、なんとなく勝手にファンになった。
やがてその所蔵品をみせる湯木美術館に出かけ始めた。
最初に見たのは「藍の器・祥瑞・呉須」。いいものを見た、と思った。
それから通うようになり、ほどなく湯木貞一が没した。
没後一年には「白吉兆翁・追想の茶」展が開かれ、そこでもよいものを見せてもらった。
それ以後も、年四回ほどの展覧会を、大体は見ているように思う。
だから初見というものは少なくなってきているが、その分「再会」を楽しみにする品々が年々増えてきている。
sun322.jpg

湯木美術館がほぼ一ヶ月替わりで三期に亙って「湯木貞一生誕110周年記念展」を開催する。
1期:季節の演出 湯木貞一の茶会
2期:数寄者との交流 小林逸翁・松永耳庵・松下幸之助
3期:湯木貞一の茶道具 コレクションから
始まったばかりの1期:季節の演出 湯木貞一の茶会、それを見に行った。

昭和50年4月28日・高麗橋吉兆での茶事の道具組の一部再現展示がある、とリーフレットに載っていた。
展示品のうちからそれらを眺めるのも楽しい。
見ているだけで想像が湧き出し、ついでによだれまで湧いてきそうになるから。

壁面に手書きの茶会記の拡大コピーと、明朝体の活字版が出ていた。
湯木貞一の直筆が巧いかどうかはわからないが、味のある流れがそこに見えた。
さすが一代の稀有な料理人だけに、メニュウ文字を追うだけでワクワクしてくるが、実は一番ウケたのはこれだった。
<ビチャ飯> ・・・・・なんなんですか。
干菓子は以下。梅あんせんべい(大阪)、から板(京都)、花ごぼう(東京)。
一つも知らないが、花ごぼうはもしかすると葩餅かも、と思ったりする。
色んなことを想像するのも楽しい。
他にも「延寿筆の絵アリ 一寸マチガイ」と書かれているのも楽しい。

さて実際のお道具などを見て回ろう。

いきなり○の絵がある。円相図である。大抵こういうものは高僧の手によると相場は決まっている。江雲宗龍筆とある。書名は任雲子に花押である。完全な○ではなく、時計回りに描き始め、頂点寸前で外へ飛んだ円相図。

交趾台牛香合 様々な所蔵を経て今はここにある白牛。昨秋の「上方豪商の茶道具」にも出ていた。形も緑色の深さも可愛い。

次に灰手前で使用の品々が現われた。
・唐物脛当炭斗(すねあて・すみとり)藤田家伝来
・片桐石州作 鶴羽箒 鴻池家伝来
・石州好桑柄火箸・同灰匙 鴻池家伝来
・金盛徳元作 松竹梅金嵌大角豆鉄鐶(きんぎんがん・ささげ)東本願寺伝来
・長次郎作 昔焙烙
これらを取り合わせたのは勿論、湯木貞一なのだ。
当然ながら、わたしなどには出来ないことだが、これらを目の当たりにするだけで、色んな学びになる。
マナヅルの三枚重ねの羽し少し黒みを見せ、ササゲを象った鉄鐶はモコモコ、長次郎の焙烙は本当に使っていたのを感じさせる古び具合を見せていた。

・唐物茶入「紹鴎茄子(みほつくし)」昨秋の「上方豪商の茶道具」以来。一度おもてに出るとなかなか休めないのが人気ものの宿命か。
・信楽芋頭水指 本阿弥光甫作 こちらは一年ぶり。茶色い小芋がごろんとそこにある。
・茶杓「苫」 細川三斎作 飴色が綺麗。11年前に初めて見たと思う。
・古銅桔梗口獅子耳花入 東山御物 全体のプロポーションがきれい。上下の桔梗型△▽の胴は菱形で、こちらには饕餮文。細かい面白さがあった。
・大井戸茶碗「対馬」 宗氏所蔵から「対馬」。添え状に「明和の頃、大坂の××屋に、千金出し求め」というようなことが書いてある。
・嵯峨蒔絵中次 平瀬家伝来 これも好きな一品。桜に眼光鋭い鷹、花筏、夜の煌きのような嵯峨蒔絵。

ここには佐竹本三十六歌仙の在原業平がいる。
今回のチラシには表具も写っているが、その鴛鴦のところが数年前の「友の会」募集チラシにも使われていたもので、今回こうして画像が手に入って嬉しい。
これまで随分多くの佐竹本三十六歌仙を見てきたが、やはり業平は本当にいい・・・。
あな、えおとこや。そんな感じ。これは大正八年の分割事件のとき、ビール王・馬越恭平が引き当てたというが、そこから湯木さんの手元に来るまでの変遷を知りたくもある。
今回、着物の外線が意外と太いことに気づいた。これなら着せ替えなどが出来そうである。

松下幸之助の色紙があった。「無心」と題がある。大きく「心」と書いた下に小さく五つの「心」が並んでいる。六つの心、それで「ムシン」なかなかいいものだ。

・銹絵染付春草文蓋茶碗 乾山 これを向付に使うのが、やはり湯木貞一という人の非凡なところなのだろう。今では不思議ともなんとも思わないからこそ。
春菜に敷ゴマ味噌、レンコンのいとこ煮・・・
器自体はツクシ、ワラビ、スミレ、シダなどが内外に楽しそうに咲き乱れている構造。
・時代絵替碗 蝶々に流水に紫陽花。好きなものばかり。またこれらがモダンな線で描かれている。
・青磁二段菊鉢 南宋から元初らしい色の濃さ。菊柄、その鎬の縦線に入る色が綺麗。
・呉須赤絵花鳥文鉢 鳥が花に巻きつきつつしっかり立っている。
・織部四方手鉢 チラシ真ん中、業平の真上。これを綺麗だと感じるように、日本人の美意識は調整されている。
・瓢吸物椀 蓋は湯木さんが後づけ。全く違和感がない。
・絵唐津沓鉢 グレーと黒の取り合わせがクール。鈍翁伝来品。さすがにステキ。

茶室再現の展示では、昭和の渡邊喜三郎作の膳や碗のほか、先ほどの乾山の向付、絵替碗(蔦絵)などがセットされていた。
見る側に置かれていたら、ますますお茶の客になった気がするかもしれない。

いいものを見せてもらってますます湯木貞一が好きになった。1期は4/24まで。
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