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美術館・博物館・デパートでの展覧会を訪ね歩き、近代建築を見て周り、歌舞伎・映画・物語に溺れる日々の『遊びに行った日を記す』場所です。 

江戸の人物画 姿の美、力、奇

府中市美術館は毎年春に見ごたえのある展覧会をする。
今年は「江戸の人物画 姿の美、力、奇」というタイトルにふさわしい様々な人物表現作品を集めている。
前後期とりまぜて、少しばかり書く。
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曽我蕭白 寒山拾得図 京博で馴染んだ絵もここで見るとまた違う味わいがある。白と黒の二人。水墨の濃淡、そのテクニックをついつい見てしまうが、やっぱり寒山拾得は蕭白のがいちばんいいように思う。
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春木南湖 項羽図  「力は山を抜き 気は世を蓋う」と詩もあるが、伝承によると項羽は個人的な膂力では同時代人の誰よりも強いと評判だったのだ。
この項羽もその力強さを示すように、巨大な香炉のようなものを持ち上げている。
項羽は悲劇的な最期を迎えたが、虞美人などのエピソードもあるように、なかなか人気があったのかもしれない。
なにしろ国は建てられなかったが、覇王=項羽である。

伝・土佐光起 乙御前図  狂言面の古怪さはなく、後のお多福にひとしい、柔らかな顔つきの乙御前である。
着物がいい。辻が花風な白地に撫子柄に、赤地に菊の打掛である。烏帽子をかぶるところに「乙御前」の面目がある。

菱川師宣 紅葉下美人図  緑地に藤葛柄の着物の褄を取って歩く女。帯が唐草というのも豪華。時代時代によって着物の柄が違ってくるのを見るのが又、とても楽しい。

勝川春章 花街競艶図  二人のかむろをつれた太夫が見世先を練り歩く。見世の中にはまた別に美しい遊女がいる。こちらにはちょっとトウが立っている地味な装いの女がいるが、遣手ではなく、ブレーンの新造かもしれない。
今、おもて歩くのより、うちの花魁ねえさんがずっといい、という気持ちを捉えられているかも。

司馬江漢 夏月・冬月図  中国的表現法で、透ける描き方をする。灯籠、手水鉢、大きな月にホトトギス、室内の金魚鉢・・・それらと好対照なフルカラー美人。江漢のもう一つのペンネーム「春重」が活きている様子。

祇園井特 観桜美人図  どこかの大店のお嬢さんらが出かけているらしい。母娘に女中に丁稚もいる。面白いことに丁稚の少年以外はみんな二重瞼で描かれている。
井特らしく口紅は笹色を下唇につける。

島田元旦 妓女図  孔雀柄の帯を絞める着物には、薄紫に金の女郎花柄が透けるようにある。そんな着物を着た女が立っている。足下には彼女を見上げる女がいるが、こちらは少し崩れはしているが、変わった髷をこちらに向けていた。

江口君図は随分な人気で、多くの絵師が描いている。基本は白い象に乗る美人という構図で、あとはまぁケースバイケース。今回は春章のがよかった。
煙と共にジャーンッとばかりに現れるのは、ランプの精のようでもある。
願い事は三つまでね♪

金井烏州 孟母抱児図  若い孟母。カチューシャを三つばかりつけている。田中裕子に似ている。西太后を演じたときのあの顔に。牡丹の花と香炉とが優美。

小野通女 霊昭女図  詩歌の才、文字の巧さなどで今も名の残る小野のお通の絵。赤と薄い黄緑だけが目立つのは、衣装がそれで統一されているから。賢そうな美人。お通も賢いひとだったというから、本人にどこか似通うところがあるのかもしれない。

小泉斐 唐美人  文化八年の作。見るからに婀娜な美人。薄物を着て、手には簪を持つ細面の女。柳の下でお供の少女が笑っている。団扇で女主人に風を送りながら。

長沢芦雪 唐美人図  机に向かう唐美人。文具がある。なにをか考えるような顔つき。白い衣がふわふわしている。山を少しばかり読んだが、ここに挙げれるほどには読みこなせていない。

山口素絢 洋美人図  文化14年オランダ人プロンオフの妻子が来日したことは大事件だったそうだ。無論一般の人々は彼らの姿を見ることはなかったが、こうして絵にもなっているのは、その関心の高さを示すものでもある。
鼻に節のはいる婦人と、乳母に赤子など。巻き付けスカートはジャワ風。サロン、という代物に似ている。

前川五嶺 松下美人図  唐美人風。瓔珞風ネックレスがきれい。ピンク地のスカートに花火か綿毛のような柄のパターニング。遠目には鱗にも見えた。

大久保一丘 伝大久保一岳像  父が描いた洋風な息子の肖像画。天パー少年にっこり。カラヴァッジョ風に見える。平安時代からそうだけど、案外日本人はクセ毛のヒトも描いているよな。

円山応挙 三美人図  タイトルは3人の美人ということだけど、リアリズムなのですよ。賛にあるのを読むと、なにやら応挙や穆如斎、淇園の三人がなじみの玄人さんなのだ。
京都の芸妓にしては、拵えも地味な感じ。

井特 立美人図  せいとくにしては、まだナマナマしさのない美人だった。頬の肉付きがリアル。着物は柳に燕、帯は扇柄。首の後ろに汚れ防止の布がついている。

太田洞玉 神農図  しんのうさんは薬のカミサマです。大阪の道修町にはちゃんと祀られている。
白髭に黒目がちなオジイサンが小さいツノをのぞかせながら、柏の葉っぱで綴った腰蓑をバンド代わりに巻いて、こっちを見ている。爪長じいさん。でも妙に可愛い。

漢方のカミサマに対抗するように、西洋医学(蘭方医)のカミサマとしてヒポクラテス像が挙げられている。四点みた。チラシのは渡辺崋山。日本初のヒポクラテスは石川大浪の。
石川のにはこんな意味の賛がある。「病気は雄弁で治らない。薬で治る」
・・・・・今時のヤツラ、ヒポクラテスも知らんのとちゃうかしら。

京博に寄託されている美人舞踏図(チラシ)、これは前期のみだが、出ずっぱりなのです。実はこの後は即、奈良の大和文華館へ出演するのだ。人気のダンサーたち。

近世風俗画の美人図には好きなものが多い。
作者不詳 文使い  左に髪を背に流した美人がいる。白地に玉柄の着物で三味線を着いている。右にはおかっぱのかむろがいるが、こちらはちびのくせに黒尽くしで、細帯のみ臙脂色という渋好み。そのまま遣り手になりそうな勢いがある。

宮川一笑 遊里図  二階の部屋はシルエットで表現、見世をのぞく遊客、太夫も行く。万歳らもいるから正月なのか。才蔵ともどもイケメンなコンビ。海老つきの注連縄が見えた。ああ、やっぱりお正月なのだな~

司馬江漢 円窓美人図  チラシで見て惹かれたが実物もたいへん良かった。配色がいい。椅子がいい。

葛飾北斎 花和尚図  ‘86~'90年代初頭、わたしは水滸伝にのめりこんでた。読んでたのは平凡社版の120回本で駒田信二の訳。その前に村上知行の抄訳も読んだが、そちらの挿絵は井上洋介だった。いちばん印象に残った挿絵は花和尚魯知深が円寂するシーン。
そこから水滸伝がわたしの中で始まっているので、花和尚が暴れてても、どうしても彼が円寂する様子が思い浮かんでしまう。
北斎の花和尚は刺青がない。棒を持っての立ち姿。松葉が散り小鳥が飛び立ってゆく。
水滸伝関係を見ると、絶対に国芳を思うのだが、北斎も水滸伝は描いているのだ、ただし彼の好漢たちは背に花を負うことは無い。たまに描かれていてもそれは華やかではない。
国芳が梁山泊の好漢たちに負わせたのは、無残なほど美麗な刺青だった。
その絵に狂わされて、多くのものが背に針の痛みを求めたそうだ。
北斎の孫は無頼に走り、やがて「グワエン」になった。ガエンの者はなんとしても背を煌びやかに彩る。祖父の描いたそれではなく、国芳の描く世界へ走る若者・・・

月僊 仙人図押絵貼屏風  色んなポーズの仙人たちがいる。麻姑は優しい顔立ち、呂洞賓は白髭で「夢一瞬」と書かれている。彼も盧生同様一炊の夢で道を変えたのだ。

司馬江漢 学術論争図屏風 外人の町。長持ちから取り出される本、妙に静かな空間。どこかポール・デルヴォーの世界に似ている。

亜欧堂田善 海浜アイヌ図  奇岩と奇怪な波とが打ち寄せるその場にアイヌのカップルがいる。男はちょっと高橋睦郎風で、女は大正から戦前のモガ風。男にキセルを渡そうとする女。いちゃつくよりもっと深い何か。

曽我蕭白 東方朔・西王母図  対幅。例によって変な人々。朔は桃を持ってるけど盗んだんじゃなくて、西王母に持たされて帰る、そんな感じ。二人の視線の絡み合いが妙にナマナマしい。

伝土佐光起 菊慈童  左右にはそれぞれ赤・白・黄色の菊。真ん中の幅にカシコそうな菊慈童がいる。ちょっと顔が大きいが、眉端の吊った、なかなか中国的に賢人風な美少年。

中国の色んな仙人の中でも特に人気なのは、やっぱり蝦蟇仙人ですな。
四枚出ていた。洞玉、蕭白、森周峰・・・
それぞれガマがブサカワで、仙人もむろん不細工だけど、妙に楽しそうに見える。
ばっちいオヤジなんだし、蝦蟇も不気味だけど、なにかしら愛嬌もん。

司馬江漢 王昭君  一枚だけ柱にかけるような感じで展示。彼女の孤独さがいよいよ染み渡るような演出がされている。
松に寄りかかり琵琶を弾いている。かすかに歯が見えているが笑っているわけではない・・・

円山応挙 元旦図  初日の出へ向かう壮年のヒト。その後姿をロングで捉える。なんとなく荘厳なものを感じる。そして静かな感動がある。
日本人であること、それをこの絵で思う。

東東洋 夕陽人影図  中華風な人が立ってるとズーンと静かに影が伸びている。こういうのがけっこう楽しい。これで影が好き勝手したら福田繁雄や井上洋介になるけれど。

曽我蕭白 美人図  これは奈良県美で最初「狂女図」と呼ばれていたが、いつの間にやら『美人』ということになった。今は亡き舞踏家・大野一雄がこの絵からインスピレーションを得て、「枯れた狂気を舞う」という作品を発表した。そのドキュメントをTVで見たが、大野の舞踏譜が公開され、舞踏家にしかわからないような動きの設定が書き込まれていたのが印象的だった。
絵の女は素足で水辺にいる。足の爪の汚れがたまらない。
彼女の周囲の草が枯れている。薄い水墨で表現された草は、本当はまだ活きているのかもしれない。しかし、もう二度と明るく咲くことはないように見える。
彼女が噛む文はまるで鳥の羽のように分かれている。二度と取り戻せない何か。
「狂女図」とも「美人図」とも名づけられない絵。しかし本当のタイトルはみつけられない。

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「可愛い」というコーナーがあったが、実際「可愛い」絵が多かった。

・林閬苑 妖怪図  可愛い。戯画風な妖怪たち。ヒトコママンガ風。
・センガイ 凧揚げ 腹掛けの子どもが嬉しそうに凧を揚げている。こういう光景ももうないなぁ。
・センガイ 指月布袋図  そばにいる二人の子供らが喜んで手を挙げてるが、その手がMの字つまりカニ手で可愛い可愛い。
・狩野探幽 唐子遊戯図屏風  以前から好きな屏風だが、とにかく左よりの獅子面の子どもらが可愛くて仕方ない。撫でてやりたいくらい、愛らしい。
・長沢芦雪 唐子睡眠図  これも好きな一枚。唐子ではあるがモデルは近くの子でしょう。可愛いなぁ。リアルです。イキモノの子どもはみんな可愛い。
・柳沢淇園 睡童子図 朱い机によって寝てる唐子。地に○がボワボワあるのは多分シミか汚れなんだろうが、まるでこの少年の眠りの空気のようで、わるくない。
・柳沢淇園 福禄寿図  上向いて笑ってる。でもアタマが長~~~いから90度くらいですな。
・伊藤若冲 付喪神図  真筆かそうでないかは別として、可愛いのは可愛いよ。特に顔だけの湯呑みが可愛い。
・小川破笠 なぞなぞ(瓢箪と茄子)  擬人化された二人がそれぞれお化粧している。マジメな顔つきでお化粧するけれど、吉田戦車のキャラぽく見えて仕方ない・・・
・池大雅 柳下童子図屏風  チラシでは実はこの子らが主役だった。巧い構成。
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長々と書いたが、この展覧会は5/8まで。いつもいつも府中市美術館にはヤラレてしまうなぁ。ああ、楽しかった。
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