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美術館・博物館・デパートでの展覧会を訪ね歩き、近代建築を見て周り、歌舞伎・映画・物語に溺れる日々の『遊びに行った日を記す』場所です。 

拾遺 5月8日までの展覧会のうち、書けなかったもの

拾遺 5/8までの展覧会のうち、書けなかったもの

タイダなのはわかっている。他に誘惑が多いこともわかっている。
逆にスルーすればいい、というのもわかっている。
でも書きたい。だから書きます。

◎堺市博物館「堺海浜の旅館にちなむ絵画」
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これは新聞の案内で知ったが、企画展ではなくスポット展示。しかし見ごたえのある作品ばかりが集まっていた。
チラシはなくA3折全面4Pのリーフレットがある。非常に見づらいが作者名・タイトル・作品が12点とそれぞれの解説がある。
そもそも堺海浜の旅館、とあるように明治の頃は随分と堺も観光客が遊んでいた。
明治36年には内国勧業博覧会で堺に水族館が出来たこともあり、当時の堺人の誇りになっていた。
建築界の大御所・辰野金吾が設計したのは浜寺駅舎だけでなく、潮湯の立派な旅館だった。
(そこは現在河内天美の南天苑に一部移転されている)
大正の広重こと鳥瞰絵師・吉田初三郎も堺大濱の繁栄を描いている。
その大濱界隈にあった旅館に掛けられていた日本画を集めた展示なのである。

・狩野由信 花鳥図 和の風景画ではなく粉本を参考にして描いたらしい作品。描かれた鳥も鮮やかな彩色を残している。剥落しているとはいえ、まだ綺麗。
・村田香谷 奇石花実図 いかにも文人画である。奇石を中心に、その背後に牡丹と松を生けた花瓶、阿古陀型の釜に蓮を投げ入れ、地植えのスイセンに、ユリネ、ミカンなどがころころ・・・
・森関山 お多福と鶴 どこかの座敷でくつろぐようなお多福と鶴。着物が非常に豪華。打掛は夜梅に裾は熊笹、帯は花菱亀甲紋。銀砂子をはいた襟元も豪華。
なにやら大奥の局のような風情もある。
・星加鴨東 柿に烏図 「明治壬子 一力楼主」云々とあるので明治45年に依頼して描かせた作品だとわかる。田能村直入のお弟子らしい。カラスは水墨画の濃淡のみ、柿に少し色がある。ああ、カラスの舌も赤かった。柿の実のせいかも。
・森一鳳 青梅に雀図 先般大阪歴博で小さい展示があったが、もっと一鳳も取り上げられるべき絵師なのだ。よく実った青梅めがけて飛んでくる雀の頬の丸い印が可愛い。
・中川和堂 椿に小禽図 遠目からも白椿の愛らしさが目立つ絵で、たいへんよかった。「付立」ツケタテという手法(輪郭線ナシに一気に描く)の椿と、繊細な描き込みの小禽とがいいバランスを見せていた。
・山本英春 美人之図 白梅の咲く季節、ベンチではなく床机に座る娘がいる。羽根突きの羽根を持って微笑む娘。目は上の線と、それに密着する瞳とを濃く描き、下の線は描かない。それが愛らしい。英春は芳年~年英~という系譜の絵師。

こうした展示は小さいものかもしれないが、目的を持って眺める者にとっては、とても有意義な展覧会なのだった。


◎京都国立博物館「法然 生涯と芸術」
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法然上人八百回忌、という記念の年らしい。「鎌倉仏教のトップランナー」とキャッチコピーにある通り、法然~親鸞という道筋がある。
前後期に分かれた展覧会で、どちらも見たのにとうとうこんな日まで書けなかった。
京都市美術館の「親鸞」展ほどの熱烈な門徒さんの見学は無いが、こちらもやはり関西だけに、「美術」として楽しんだり「歴史」として眺めたりする向きよりも、信仰心から拝みに来るお客さんが多いように思われた。
わたしの目的は知恩院の国宝「法然上人絵伝」を見ることだった。

物語絵が好きなわたしはとても楽しませてもらえた。
なるべく物語の筋を追いかけたかったが、前後期にバラバラに出るのでそうもいかなかったのは残念だが、大筋を押さえておけば、まぁなんとかなりました。
この絵伝は以前から部分部分だけ見ていたので、こうして見れるのは嬉しい。
尤も全部を見せてくれるわけでもないのだが。

法然上人絵伝は一個人の生涯の記録と、彼の弟子たちの列伝とを描くだけでなく、同時にその活きた時代の感覚・社会情勢・風俗なども教えてくれる、第一級の資料だった。
巻数を抜きにして、なるべく順を追いつつ好きな情景を選んで一言感想もつけてみる。

・後の偉人も子供の頃は機嫌よく遊ぶ姿がある。
最初っから人生に対する苦悩とか思想とか持ってる行儀のよい子どもなんか見たくないので、この竹馬で遊んだり犬をだっこする絵を見ると、明るい気持ちになる。
・両親と住まう屋敷に夜襲がある。応戦する人々。子どもの彼も弓を引く。偶然にもそれが敵の大将の眉間にグサリ。敵は引くが父は死ぬ。このシーンは京都文化博物館の映像展示の一つにも採られていて、何十度となく見ている。とても好きなシーンである。
・比叡山に入る。出家は約束されているが、彼は「遁世」を願う。「出家」と「遁世」とは違う、ということを改めて絵を見ながら思う。
・熊谷直実が蓮生坊として生き、やがて往生を遂げるエピソード。2/9の予告は外れ9/4についに死を遂げる。
・念仏行道中、僧たちに混じり毘沙門天もぐるぐる・・・
・東大寺の重源に招かれ講ずる。僧兵たちが聴講する向こうに鹿もいる。奈良らしいとも言えるし鹿野苑をちらっと思いもする。
・安楽処刑。川辺での斬首。弟子たちの行動は法然(指導者であり責任者)に向かう・・・
・明恵上人、後には菅公に「やりすぎたかも」と語る。
・配流。経島では民衆が集まる。琵琶法師もいる。室津では舟をこいできた遊君たちに諭す。罪深いというのならまず客がいるのも悪いのだ、と説くべきではと思ったりする。
・ついに往生を遂げる法然に仏たちの黄金ビームが届く。それにしてもいつも思うが、なぜか弟子たちというのは、必ず師の死まで悟りきれぬままなのだろうか。
・ 弟子たちの列伝は「顛末記」の様相を呈していて、差異はあるものの面白い。

他に面白く眺めたもの。
・浄土五祖絵伝のうち、この絵。
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エメリウム光線のような阿弥陀ビームがきて、黄金の蓮の花びらが舞い散り、子どもらが大喜びで拾い集めている。見ようによっては阿弥陀さんとお坊さんの綾取りにも見える。
・六道絵 やっぱり地獄絵は見てるとなにやらひどくソソラレるのだよな。
・融通念仏縁起 1良忍、千日詣。稚児が可愛い。2弥陀の霊夢を見る46才。3頭上に3佛。勧められ歩く。4町衆たち。足萎えもいる街中。
・絵解に使われたらしき掛軸の法然絵伝のいくつか。たいへんな細密描写のもあれば、やや簡略化されたものもあり、見ていて面白かった。
・当麻曼荼羅 やはりどう見ても極楽ランド。ホトケのテーマパーク。

申し訳ないくらい面白く眺めた。「おかげさま」で楽しかった。


◎虎屋ギャラリー「虎屋所蔵品展 京都の画家たち」
京都の虎屋さんで明治から昭和初期までの日本画家たちの絵を見た。
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案内ハガキは三宅凰白の「春雨」。舞妓の舞からの題。凰白らしい、愛らしい舞妓。着物も可愛いし、その手の表現もいい。

虎屋14代目黒川光景氏はこの凰白とマツ本一洋(マツの字は出字できない)と同じ八白で巳年生まれだということで、三人の会「白巳会」を結成したそうだ。
京都の旦那衆と絵師の交流、というのはええもんですな。

そのマツ本一洋の「官女観梅之図」がリーフレットの表紙になっている。
王朝風俗を多く描いたヒトだけに、ふっくらした頬の可愛い官女を気品高く描いている。
全体的に薄い彩色だが、官女の持つ扇だけが色が濃く描かれている。
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鈴木松年の作品をそもそもまともに見たことがない。父の「百年」共々以前に板宿で展覧会があったが、行けなかったので見ていないのだ。
「水辺螢画」これはたいへんに魅力的な絵だった。最近ブルーナイトというか、青色で表現された夜景ばかりを綺麗だと思ってみていたが、久しぶりに水墨の夜景の美を堪能した。
ぽつんぽつんと小さく光る螢火。その微かなきらめきが一層、水墨の濃淡を綺麗に見せてくれる。水辺の草が風にそよぐのがまたいい。涼やかな夜。

竹内栖鳳「椿樹小鳥図」のよく伸びた樹がいい。たらしこみで表現された、幹の表皮の薄い緑、墨の濃淡で構成された椿の葉の厚さ。赤い椿は半分顔を隠すようにしながらこちらを見ている。そして木の根もと上の分かれたところに、文鳥のような小鳥がちょこんと首をかしげているのが可愛らしい。

上村松園「月下踊之図」は元禄風俗の二人が盆踊り風なものに興じている姿。気軽な作品だが、その分とても楽しい。


いずれも5/8までの展覧会で、とてもとてもよかったのに書けなかったものたち。反省。
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