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美術館・博物館・デパートでの展覧会を訪ね歩き、近代建築を見て周り、歌舞伎・映画・物語に溺れる日々の『遊びに行った日を記す』場所です。 

手塚治虫のブッダ展

東博で、手塚治虫の「ブッダ」を、国内のブッダ像や関連遺宝と絡めて展示する、たいへん興味深い展覧会が開催されている。
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‘87尼崎総合文化センター、’89阪神、大丸、‘90神戸市博物館と手塚治虫展が開催されたが、論考を交えての展示は神戸市立博物館が最初だった。
東博での展覧会は手塚作品の精神を論考するものではなく、純粋に作品「ブッダ」と国内各地で大事にされている仏陀像などを同時に展示するものだった。
東博のサイトにはこんな紹介文がある。
「『ブッダ』のオリジナル原画と仏像そのものを同じ空間に展示するという日本初の試みで、文化遺産と現代文化を融合しながら、手塚が追及したブッダの世界を間近に鑑賞していただこうとするものです。」
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手塚の「ブッダ」は仏伝に沿いつつ、手塚独自の思想とキャラと表現で彩られた名品である。
わたしの所蔵本は文庫型だが、最初期の単行本はその表紙にブッダの生涯を映し出している。
誕生、少年期、苦悩、修行、悟り、布教活動期、そして涅槃へと至るブッダの姿を円内に描いており、それを眺めるだけでも物語の概要を、ブッダその人の生涯を追うことができるようになっている。
宝塚市の手塚記念館では壁面に手塚の単行本表紙を並べているが、そのなかでも特にこの「ブッダ」と「ジャングル大帝」の表紙は心に残る。

ブッダは幾千幾万幾億もの表現でその姿を映されている。
彼の像的表現は当初畏れの心から慎まれてきたが、時代が下がるにつれて、アジア全域にブッダ像が生まれ始めていった。
巨大な涅槃像は特に東南アジアで好まれたが、悟りを開く前の苦行中の姿なども刻まれている。

展示は物語の時間軸を追って展開する。
そして子供向け「ジュニアガイド」はかなり良い作りになっていて、見て回るのに良い案内となっていた。
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生誕の場を表す彫像は法隆寺に伝来した摩耶夫人像が展示されている。
東博の名品の一つである。

シッダールタの結婚の場では、ガンダーラのクシャーン朝の仏伝図が出ている。
宴会シーンで、物語の特定は出来ないが、楽しそうな様子が捉えられている。
また同時代の仏像の美麗さには、ただただときめくばかりだった。
多くのブッダ像の中でもとりわけガンダーラ佛の優美さに惹かれ続けている。

そして「ブッダ」では子どもが出来たことに苦悶し焦慮するシッダールタの絵が現れる。
障害ラーフラだと言い切るシッダールタ。
思えば奥さん側からすればとんでもないヤカラなのだ。
「彼」はその時点ではまだ一人の「悩める人」でしかない。

苦行中の像を見て驚く。奈良博の像は凄まじい骨皮状態である。この像は初見。
骨皮の苦行中の「ヒト」でありながらも既に髪は渦を巻いている。
「ブッダ」では丁度幼女スジャータが「お兄ちゃんがカサカサになっちゃったー!」と驚きあわてるシーンが出ている。
髪はぼうぼう、目は落ち窪んで白目もなくなっている。
手塚の描く幼女たちはみんな見た目だけでない愛らしさがある。性質の可愛らしさが画面からあふれ出している。
(スジャータの原画はここだけで、後のスジャータの悲しみは展示されていない)

やがて「悟り」を開き、走り出すブッダの姿が現れる。
このシーンは何度見ても感動する。
「悟り」を開くとは一体どう言うことなのかさっぱりわからないが、マンガからブッダの知った深さというものがハッキリ伝わってくるからだ。
今「深さ」と形容したが、それが悟りに対する言葉でいいのかどうかはわからないが。

カッサバ兄弟が帰依するシーンの原画を見て驚いた。
床にもう一人の人物がいたのだ。
わたしが持つものは当然ながら印刷物である。
原画を見て初めて、ここで手塚の意図の変容の一部を垣間見ることが出来たのである。
そしてやはりクシャーン朝の仏伝図の美麗さにときめく。
兄弟の礼拝図は平山郁夫美術館の所蔵品だった。
しかし所蔵先は別々ではあっても、元は同じ地域からの流出物なのは間違いないのだ・・・

やがて涅槃が訪れる。
マンガではブッダは気の毒にヒョータンツギのキノコを食べて中毒するのだ。
(ヒョータンツギのキノコは「サルマタケ」とは違い、毒性が強いらしい)
アナンダが懸命に介護する原画が出ていた。

岡寺にある涅槃像を初めて見る。鎌倉時代の木彫彩色ものである。
絵はともかく彫像は日本物ではあんまり知らない。
かなり興味深く思った。
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最後のコーナーでは過去に遡り「ブッダ」のキャラクターを描いた原画がいくつも現れる。
それを眺めるとふつふつと「ブッダ」再読の気持ちが湧き起こってくる。
ファンとして純粋にを楽しませてもらえる展覧会だった。
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