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美術館・博物館・デパートでの展覧会を訪ね歩き、近代建築を見て周り、歌舞伎・映画・物語に溺れる日々の『遊びに行った日を記す』場所です。 

濱田庄司スタイル展 理想の暮らしを求めて

濱田庄司の作品だけでなく、彼の楽しい生活をも主題にした展覧会が汐留ミュージアムで開催している。
濱田の作品の展覧会は昨年、石洞美術館で何期にも亙って開催されており、本人作品のみならずその命脈の人々の作品までも楽しませてもらった。
今回は濱田庄司のモダンライフを展望している。
「濱田庄司スタイル展 理想の暮らしを求めて」
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民藝、という言葉を世に送り出したのは柳宗悦らである。
濱田もその仲間の一人で、思想に共鳴し、そこからまた自分の道を開いていった。
濱田の生涯の仲良しにバーナード・リーチがいる。
リーチは白樺派の人々とも仲良しで、その円満な人間関係は枝葉を伸ばし、図を見ているだけでも「いい感じ」と思う。

会場では最初に濱田の作品が現れる。
正直言うと、わたしの趣味とは合わないので、その良さと言うものがあんまりよくわからない。
わたしは分厚いやきものは重たくてニガテなのだ。
それに触れる指や唇の感触を思うと、やっぱり実用品としては避けてしまう。
工芸品の場合、実用性と言うものも加味して眺める傾向が強い。
そこから嗜好が決定されもする。
そのことを思うと、わたしの工芸品を見る眼が著しく偏っていることがわかる。
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濱田のやきものは柄杓で釉薬をざぁ~とかけて、文様を作る。
これについては有名なエピソードがある。
なんだ、それだけかと失望する客に向かって、「15秒プラス60年だよ」という答えが返る。
そばにいたリーチが深く頷く。
誠に深い話である。
作品の好悪を越えて、よい話だと思う。

その15秒プラス60年の作品群を見て歩くが、それよりなによりよかったのは、その食器類を自宅で使った写真である。
イギリス暮らしでテーブルとイスの暮らしに慣れた濱田は自宅にも大きなテーブルを構え、バイキング形式で食事を楽しんだ。
常に大人数の人々と食事を楽しむ光景がそこに展示されていて、見ているだけで嬉しくなる。
膳ではなくテーブル。モダンな暮らしぶりがよくわかる。
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濱田は何もかも自分らで拵える暮らしを目指し、機嫌よくそれを実行した。
それを実行させる支えは奥さんを始め家族や友人や弟子たちだった。
和気藹々。その言葉が実感としてそこにある。
楽しい毎日は濱田の作品が売れなければ成り立たない。
濱田の作品を好む人々が多い、ということをリアルに思い知る。
世間には「温かみのある」陶器が好きなヒトと、「薄くて冷たい」磁器でないと愛せないヒトがいる。

ところで濱田は益子に近所の農家を何棟も移築して、自宅にしたそうで、これも普請道楽と言えるのではないか。
実に立派な梁が天井を支える。
民藝の人々の住まいした家はどれもこれも本当に素晴らしい。この濱田の家、駒場の民藝館(柳宗悦邸)、京都の河井寛次郎記念館・・・
ドキドキしてくる。
しかしながら益子の家は参考館として活用されているが、地震の被害を受けたと聞く。なんとか復活して欲しい。

民藝仲間総出演の趣があるのが、三國荘。以前から再現された居間などを見ているが、やっぱり素晴らしい。
ポストカードを見ているだけでわくわくする。
ああ、失われた建物たちよ・・・!

ほかに関心が向いたのが、式場隆三郎邸の設計。
「二笑亭」再発見などで高名な式場博士の邸宅。
これは今も市川に現存ということなので、遠目にでも眺めてみたいと思っている。

濱田のライフスタイルはイギリスのギル家を訪問して方向付けされたそうだ。
その濱田のスーツや帽子などがでている。
三越で誂えたホームスパンのスーツ・・・
正直、びっくりした。
ホームスパンといえば花巻の工房を思う。
ホームスパンのスーツは軽いそうで、見た目のゴワゴワ感も味になる。
村夫子、という見栄えも濱田にはぴったりなのだろう。
しかしこのスーツで受勲したというから、本当に好きなのだろう。

いすがある。イームズのいすである。
これについてもいい話がある。
イームズ本人が濱田のために自分のところから送り(5割引)、しかも少し使ったということにして税をかけないようにした、そうだ。
わたしはこういう話が一番好きだ。

濱田の家で使われた食器類をみた。
カレー皿が舟形風なのが面白いが、これではあんまり入らないだろう。
オコワや饅頭を入れる鉢も可愛い。
飼うてる山羊のお乳を入れるピッチャーは呉須だった。

ほかに濱田特製の帯留めがコロコロコロコロあった。
コロコロコロコロと書いたのは大仰な形容ではなく、本当にコロコロしているのだ。
カタツムリの殻にも似ている。
富本憲吉もそうだが、本業の器類より、帯留めやバッヂにいいものが多いように思う。
わたしは着物を日常には着ないが、この帯留めが欲しいと思った。
何かのアクセサリーにしたいと思うのだ。

意外なくらい楽しい、そして1920~30年代の魅力を味わえる展覧会だった。
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コメント
壺の中のオジサン
この展覧会のポスター・デザイン、
かっこいいですねぇ!
こういう人のライフスタイルを見ると、
「豊かな生活」って、高級品を揃える
ことではなく、味わい深く、趣味のいい
調度品に囲まれて生活すること
なのだろうなぁ、とつくづく思います。
あと、どんな時代になっても古臭く
感じさせないものを身の回りに置くことが、
豊かな人間を育てるのでしょうね。
見習いたいものです。
2011/09/09(金) 07:05 | URL | えび #-[ 編集]
壷の中からオジサン、は怪しいヒトだ(笑)
☆えびさん こんにちは

> こういう人のライフスタイルを見ると、「豊かな生活」って、高級品を揃えることではなく、味わい深く、趣味のいい調度品に囲まれて生活することなのだろうなぁ、とつくづく思います。

民藝関係の人々は本当の意味で人生を、生活を楽しんだんだなぁと実感します。
ステキですよね。
わたしはこういう暮らしは現実にはムリなんですけど、家の間取りやテーブルなどの大きな家具類のよさに憧れました。
調度品は趣味の違いを別としても、よかったです。
2011/09/09(金) 12:47 | URL | 遊行 七恵 #-[ 編集]
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