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美術館・博物館・デパートでの展覧会を訪ね歩き、近代建築を見て周り、歌舞伎・映画・物語に溺れる日々の『遊びに行った日を記す』場所です。 

関西中国書画コレクション展 ・泉屋博古館・大阪市立美術館・黒川古文化研究所

今年正月から「関西中国書画コレクション展」が続いている。
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そのうちの泉屋博古館「住友コレクションの中国絵画展」と大阪市立美術館の「中国書画展1」そして黒川古文化研究所「中国の花鳥画彩に込めた思い展」に行ってきた。
どれも戦前に集まった名品。
今年はそういう贅沢年なので、いつものように一点一点への感想ではなく、順不同ベストということで、それぞれ好みのものを挙げてゆく。

まず京都の泉屋に出かけたが、こちらは住友春翠(十五世吉左衛門)、その子・寛一、東洋史学者・内藤湖南、三人ゆかりの中国美術コレクションが出ている。
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チラシの八大山人「安晩帖」から「猫」
・・・猫らしいといえば、らしい「猫」。
もこもこ丸々な猫。ふわふわ。ニホンネコとはまた違う種類の猫。
(今はあの俯いて寝てる叭叭鳥)zen970.jpg

このシリーズはどれを見てもいいなぁ。
こんなのもいる。zen969.jpg


沈銓 雪中遊兎図 日本に最も影響を与えた画家。沈南蘋。一本の木を中に据えて冬毛のチョウセンウサギのカップルが思い思いの行動を見せている。
木には小禽もいる。ウサギのうちその鳥を見上げるものもいるが、何を思うのか。
猫とウサギでは、小禽を同じように見ても、次の行動が異なるだろう。
動きの止まった瞬間の絵。次に進めばどうなるのかが見たくなっている。
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伝・辺文進 鳩図 岸田劉生遺愛の絵で、箱書きも彼。病弱な寛一は家を継がず生涯を芸術と思索三昧に過ごした人で、当初は西洋美術の愛好者だったが、劉生との出会いから東洋美術のとりこになる。この絵は劉生の没後早い頃に寛一の手元に来たもの。 
鳩が器の縁に足をかけながら、殆ど垂直に身体を下げて、水を飲んでいる。
たいへん面白い構図の作品。劉生は大正11年にこの絵を入手すると、お仲間の河野通勢や木村荘八に見せびらかしてうらやましがらせたそうだ。(劉生日記にその記述があるという)小品ながらたいへん面白味のある絵で、なるほどジマンしたくなるのも納得。

石渓 報恩寺図 sun913.jpg
明末清初の画家のうち、清になびかなかった画家を「遺民画家」といい、この石渓、石濤、八大山人らがその代表らしい。(彼らを二石八大と呼ぶそうな)
無為庵・寛一はそんな画家の作を特に愛して蒐集している。
この報恩寺は南京にある古刹で、「虚実取り混ぜて」描いたそうだが、実際の寺を知らないわたしには全てがフィクションにも、また実景にも見えて、その境界線のなさが案外面白くもある。

石濤 黄山図巻 日本にはない独特の形の山々が見える。それぞれ形態に応じた呼び名がついているそうだ。
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画帳の楽しみを味わう。
 
華嵒 鵬挙図 そう、タイトル通り鵬がどーーんっと飛んでいる図。荘子が書いた「ほら話」だとしても、こうしたスケールの大きい題材を描く絵は面白い。
華嵒は「揚州八怪」の画家たちともつきあいがあった。

「揚州八怪」とは塩貿易で栄えた江蘇省の富豪らがパトロンになって、支えられた画家八人のことらしいが、わたしも今度の展覧会で初めて知った。
・・・教わること・覚えること・知ることは無限にあるなぁ。

虚谷 柳栗鼠図 柳の細い枝先を縦横に走り回る栗鼠。逆落とししてます、おなか見せながら。なめこのような手足の表現がたいへん愛らしい。

伝・閻次平 秋野牧牛図 こちらは先のウサギ同様、春翠が集めたもの。草を食む牛、居眠る牛親子、くつろぐ牧童。
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カラー版が手に入ったのでこちらもあげる。zen969-1.jpg

住友家に伝わる「中国絵画」では特にこれらが好ましく思う。
それらをいちどきに見れて嬉しかった。
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また、ここの素晴らしい青銅器コレクションは内藤湖南の助言で春翠が集めたもの。
実物だけでなく、そのガラスケースの前にレントゲン写真があり、たいへん興味深い展示になっている。
以前はその写真類はなかったので、今回じっくり楽しんだ。
10/23まで。

次に大阪市立美術館で10/16まで展示していた「中国書画1 館蔵・寄託の優品」の感想を少しばかり。

楊鯤虚 錦堂春昼図 色さまざまな牡丹が咲き乱れている。薄紫、黄色がかったもの、ピンクのもの。牡丹の下にはシャガらしき花も咲く。上には海棠も開く。
ああ、春よ春よ。この絵を見ていると音曲が頭に流れ出してくる。

銭杜 墨梅図 少しばかりオバケな木のようにもみえる。幹の胴に顔がついていそうな。

慈禧 瑶階福寿図 なかなか大きな軸もので、桃がたわわに実っているが、それぞれに雲がたなびいている。西王母の桃なのか?
この絵は西太后の描いたもの。解説を読んでから改めて絵を見ると、また別な感慨が湧き出してくる・・・

胡璋(鉄梅) 木蘭従軍図 多くの画家が「木蘭従軍図」を描いている。
この木蘭は従軍の中、ふと一息ついて、飛ぶ鳥を見上げている。郷里の老父を思うのか、自分の行く末を思うのか。

方済(西園) 松鶴図 彼は日本の若冲より後年の人なのだが、この絵を見ると若冲の弟子筋のように見えてくる。

費丹旭 花下弄璋図 若いママが幼児二人と共にテラスにいる図。19世紀半ばまでの、富裕な家庭の姿が描かれている。

10/16まではこの他に「雲の上を行く 仏教美術1」が併催されていて、そちらでは鎌倉時代の「兜率天曼荼羅図」が非常に面白かった。
緑色のホトケランド。妙に楽しそうに見えた。
他に土佐三起「大寺縁起」、南北朝の羅漢図(居眠る侍童を叱る図)がよかった。

現在は「中国書画2 阿部コレクション」「雲の上を行く 仏教美術2」が開催中で、「生誕120年 岸田劉生展」後期ともども11/23まで楽しめる。

さて最後に黒川古文化研究所「中国の花鳥画 彩りに込めた思い」展の感想。
このチラシのわんこの親子を見ただけで「行かなくては」という思いに駆られる。
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最初に工芸品を見る。
古代の鳥獣文、中世の意匠、文人の書斎、と工芸品の変遷もここで見渡せる。
殷~周の玉では、もず風な猛禽形、アーチ型の魚型が可愛い。
殷(やはりこの文字がいい。商よりこっちが私は馴染んでいる)の饕餮文入り朝顔形青銅器もある。
戦国時代の羽状文地四獣文鏡は四匹の栗鼠に似たものたちが、互いのくるんと輪を描く尻尾を握り合って、一つの輪を拵えている。
前漢の「日光」禽獣文鏡は唐草風な龍、象、鳳凰がいる。なぜ「日光」という銘が入るのかはわからない。
隋の蓮華唐草文三足盤は盆の真ん中に大きな花が咲いているが、蓮華文というより太陽のようでもある。
盛唐になると絵柄も凝り、こんな鏡も現れる。騎獅子人物瑞花文八稜鏡。
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カエル?のつまみを間に、左右の人物がそれぞれ楽器を手にしている。右は手にラッパのようなものを持ち、左は笛を吹く。二人は胡楽を奏でているらしい。アフロヘアで裸体の二人。
金にガラス玉を象嵌した宝冠飾り具の残欠があった。7種類。豪華で優美な造形。
向かい合う鳥と花唐草、宝相華、トルコブルーのような玉がいい具合に嵌められて、本当に愛らしい。こうした装飾品を見ると、無条件で欲しくなる。
他にも銀鍍金鴛鴦唐草文盒子が大きなボタン状で、こういうのもいいと思った。

絵に向かう。
伝・毛益 遊狗図 両手をちんまり揃えたわんこが振り向く。奇岩とユリの花が見えるが、わんこの興味を惹くような虫はいないように見える。
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紀鎮 春苑遊狗図 桃が咲き、蝶が舞う。手前には秋の芙蓉も咲く。麿眉の親犬の前で二匹の子犬がじゃれあっている。親に似て麿眉の可愛い双子だが、柄は違いを見せている。
親犬のふさふさ尻尾に比べて子犬らはチョロンな尻尾。
彩色も子犬らは裏彩色で鉛を地にしてから、表に毛並みを描くという凝りようだった。
この画家の紹介に「花鳥画家」ではなく「畜獣画家」という文字を見て、「そんな分け方があるんだ!」とびっくりした。

寿平 桂花図 日本で言う金木犀。オレンジの小さな花びらの集積が可愛い。

李鱓 蕪菁図 これはラディッシュですね、大きなカブラだ、うんとこしょ、ではなく。

陳撰 罌粟図 淡彩ながらどこか艶やかな花が風に揺れているように見える。
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李鱓も陳撰も前述の「揚州八怪」の一人。
続いていよいよ沈南蘋とその影響を受けた人々の作品が出る。

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胡湄 花鳥図 南蘋の師匠。鴛鴦が首を伸ばしている。白梅に紅椿。椿は花柱が長く伸びている。見たことのない椿だと思った。
数時間後、頴川美術館で偶然「花鳥画」関係の本を開くと、その椿が昔はあった「椿属のラカンマキ」だとわかった。 

沈南蘋 花鳥図 ざくろに薔薇とユリ、そして露草もある。ざくろを噛む小禽たち。
ざわざわした触感があるような南蘋の絵。

張 梅花叭叭鳥図 叭叭鳥らのじゃれあい。2対1。いじめの現場か?仰向けのヤツは足を使って一羽のくちばしを捕まえている。動きがある、面白い絵だった。

大友月湖 枯木巣鳥図 日本の絵師。蘋派の影響を受けている。枯れ木のその枝の突端に親鳥がいて、バッタか何かを噛んでいる。巣穴には大きくなっている四羽の小鳥たちが大きく口を開けてエサを催促する。

黒川は11/13まで。道のりは遠いが、行く価値のある展覧会だった。
これら「関西中国書画コレクション展」は来年2/26まで、リレー形式で9館が12の企画展を開催している。 
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コメント
黒谷の前に
 過日 京都の地下鉄に やっと乗れて蹴上で降り 南禅寺まで歩き 奥丹によって 
 ぶらぶら歩き 泉屋美術館をみつけ この表のわんこ みました。行列のうどん屋 
 日の出屋をみて やっぱりタクシーのお世話になって 金戒光明寺に行ったのですが 
 読んでも位置がわからなかったのが ひとつわかるとうれしいものですね。
 山王美術館で ルノアールの バラ色の背中みてきました。 
2011/10/30(日) 18:43 | URL | 小紋 #-[ 編集]
歩かないと実感が・・・
☆小紋さん こんばんは
なかなか土地勘いうのはムツカシイですね。
わたしも歩いたからこそ、博多や太宰府の感覚がつかめましたよ。
また行きたいわ。

泉屋は平家物語の俊寛らの謀略の地・鹿ケ谷にあるんです。
それを思うと面白いです。

>  山王美術館で ルノアールの バラ色の背中みてきました。 

言われて「あっ」です。行かなくては!
泊られたんですね。
2011/10/31(月) 18:23 | URL | 遊行 七恵 #-[ 編集]
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