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美術館・博物館・デパートでの展覧会を訪ね歩き、近代建築を見て周り、歌舞伎・映画・物語に溺れる日々の『遊びに行った日を記す』場所です。 

ワシントン・ナショナル・ギャラリー展

京都市美術館に「ワシントン・ナショナル・ギャラリー展」が巡回してきた。
既に国立新美術館で開催され、好評を博した展覧会。
NGA展が京都市美術館に来るのは'99年の春以来だと思う。
あのときに感銘を受けた作品がまた並んでいて、嬉しかった。
今回のチラシはこのゴッホの肖像画。
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この「顔」、初来日。印象派オールスター☆夢の競演
と明るいコピーがついている。
一方先行の東京ではマネの「鉄道」がチラシ表を飾り、コピーは
印象派・ポスト印象派 奇跡のコレクション これを見ずに、印象派は語れない。
とある。
どちらもそれぞれ面白い。

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1.印象派まで
コローからマネまでが並ぶ。

コロー ウナギを獲る人々 遠望。左に女と子供らがいる。右の奥に川があるようで、そこでうなぎを取っているらしい。タイトルを見ないと何をしているか全くわからない。ウナギと言えばドイツ映画「ブリキの太鼓」を思い出す。あそこではちょっと気持ち悪いウナギの取り方をしていた。その後にウナギのソテーが出たが、あの映画を見るまでわたしはウナギは日本だけが食べるものだと思いこんでいた。焼き方も蒲焼き、白焼きなどばかりで、ソテーという発想はなかった。ウナギのソテーを食べたのは東近美のレストランだったから、この絵の人々も西洋料理のレシピでウナギを食べたのだろう。
それにしてもうなぎ取りの場は、日本だと四谷怪談の隠亡堀の場ということろである。

一枚の絵を見ていろんな妄想にふけるので、随分時間がかかる。

ジュール・デュプレ 古い樫の木 ドラマティックな一枚。画の真ん中に大きな樫の木がドーンッと立ち尽くしている。大きな存在感がある。しかもそれで安寧感があるのではなく、むしろ不穏な空気すら感じる。
河野通勢の描くような不安さがここにはある。

クールベ ルー川の洞窟sun925-2.jpg
いきなり大きな絵が現れ、ドキッとした。本当に大きな洞窟が開いている。
誰か男性がその奥へ向かおうとしている。どこまで先があるのか。クールベの郷里の洞窟だと言うが、クールベもこの洞窟の奥へ向かったのだろうか。
人の後ろ姿を見ながら、ベックリン「死の島」を思った。
そしてこの洞窟の配色を見て、同じくクールベの「世界の起源」をも思い起こしていた・・・

ブーダン オンフルールの港の祭り 満艦飾とはこのことか。国旗のずらーっと飾られた船、船、船。風がなかなか強く吹いているようだが、鳥も人々も元気があっていい。

マネ 牡蠣 ・・・生牡蠣。レモンもある。くそ~!!フランス人も牡蠣食べるのか。日本以外ではロンドン名物だけだと思っていたが、それにしたかて牡蠣おいしそうやがな!!絵を見てヨダレを垂らすのがくやしい~

マネ オペラ座の仮面舞踏会 二階一部と一階の情景を巧くトリミングしている。二階の手すりからブラブラする足、足、足。女たちはコスプレ、男たちはシルクハット。
カウンターからその様子をパチッと撮ったような一枚。

マネ 鉄道sun922-2.jpg
東京展でのチラシ表。鉄道を見る少女の後ろ姿がいい。白ワンピースに青サッシュ。可愛い。少女の右側になぜかマスカットがある。こちら向きの奥さんの膝にはわんこ。1873年のフランスの鉄子ちゃん(というほどでもないだろうが)。奥さんはカメラ目線。

フレデリック・バジール 若い女性と牡丹 黒人の若い女が牡丹を始め多くの艶やかな花を持つ。耳には大きなイヤリングがついている。花売りの女。背景がなく、彼女と花ばかりがこちらへ迫ってくる。

2.印象派
ピサロからゴンザレスまで

ピサロ ルーヴシエンヌの花咲く果樹園 白い木花がいい。

ピサロ 麦わら帽子をかぶる農家の少女 これは以前のNGA展でも人気の一枚だった。
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わたしも絵はがきを買い、今も手元で眺めている。和やかで健全な少女。

ピサロ カルーゼル広場 明るい!緑の木陰がいい、建物の並びもいい。都会の一隅に憩いの場がある、そんな絵。遠景からの眺めでも心が浮き立ってくる。
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ドガ 障害競馬―落馬した騎手 馬はクッキリハッキリ描かれている、色に縁取りという描写が馬にメリハリをつけている。その反面、横たわるピンクシャツの騎手はぐったり感がよく出ている。

ドガ 舞台裏の踊り子 解説によると、中に入れる権利を持ったシルクハットの紳士と、それに対してツンツンする踊り子の少女、ということだった。
場の空気が伝わってくるような一枚。sun920-1.jpg

モネの夫人と息子の絵が三点来ている。
「ゆりかご、カミーユと息子のジャン」「日傘の女性、モネ夫人と息子」「モネ夫人とその息子」。日傘はいつ見てもいい。以前TVCFでその絵が動画化されたのを見たときも、ときめいた。わたしはモネは睡蓮や花の方が好みだが、こうして眺めると、何かしら優しい風がこちらに吹いてくるのを感じる。日差しの暖かさ、気持ちのよい空気、そんなものが。

モネ ヴェトゥイユの画家の庭 夏らしい昼間、ヒマワリ花壇。こちらへ歩み寄る幼児。ああ、すがすがしい。夏の歓びを感じる。

モネ 太鼓橋 池の睡蓮は白が多く、くっきりしている。太鼓橋は木製ではなく金属製だったのか。植物の繁茂が空間の音を飲み込むのを感じる。

モリゾ ロリアンの港 手すりに座る女。日傘。青い空、白い船。ツアー先での一枚、そんな雰囲気がある。
ロリアンといえば志摩ようこ「ロリアンの青い空」という名作を思う。あの空はモノクロで表現されていたが、この絵を見ていると、あの物語の空の色がここにあるものと同じだと思った。

ルノワール ポン・ヌフ、パリ 空色の綺麗な絵。ルノワールは暖色だけでなく、ブルー系の魅力も深い。空も川も建物も水色が印象的。人の影さえも水色。
この橋の上をわたしも歩きたい、そんな気持ちにさせてくれる。
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ルノワール 踊り子 この絵は'99年の京都展でのチラシ表だった。わたしはそのチラシを保存し損ねた。当時書いていた日記帳の表装に使ってしまったのだ。惜しいことをしたが、しかしその日記を使っている数ヶ月は表紙を見ると楽しい心持になった。
ルノワールらしい可愛らしい少女の立ち姿、それと親しんだことが今も幸せの一つになっている。
ルノワールの絵にはそんな力があると思う。見ていて幸せな心持になる絵を多く描いた画家というのは、案外多くはない。

ルノワール シャトゥーの漕ぎ手たち 彩色多し。川辺の遊び。楽しそうな表情。声まで聞こえてきそう。息子ジャンの映像作品のような1シーン。
 
カサット 青い肘掛け椅子の少女 退屈でふくれてるような少女。犬も寝ている。椅子のカヴァーの綺麗さにも感心する。こんな布、ほしいなと思う。少女のポーズを見ていて、この絵を描いたのがカサットでよかったと思った。バスキンやバルテュスではまた・・・

カサット 浜辺で遊ぶ子どもたち 丸々した幼児ふたりが楽しそう。スコップで砂をかくのかな。可愛い。

カイユボット スキフー(一人乗りカヌー) リアル!ルノワールの並ぶ壁から眼を何気なく向けたとき、この絵が飛び込んできたが、遠目には写真家と思ったくらいだった。
日差しもリアルで、櫂で飛び散る波もリアル。1877年の絵とは思えなかった。百年後の絵。

ゴンザレス 家庭教師と子ども 薄ピンクの服、転がる日傘、教え子のお嬢ちゃんは門扉で遊ぶ。1878年当時、家庭教師の地位は決して高いものではなかった。そんなことを思いながら絵を見る。このゴンザレス、カサット、モリゾの三人の展覧会を以前に見たが、その後モリゾもカサットも企画展が立ったのに、エヴァ・ゴンザレスだけない。残念だ。

3.紙の上の印象派 
版画など。

マネ 葉のあるキュウリ 墨絵風。水彩、灰色の淡彩とリストにあるが、文人画風に見える。浮世絵風ではなくに。そういう感性も面白い。

ドガ ディエ=モナン夫人 肖像画というものはリアルに描くことを喜ぶ人と、誇張した表現を楽しむ人と、美化されることを願う人とに別れると思う。モデルの夫人が受け取り拒否したのは、同感するなぁ・・・

ドガ 浴後(小型の版) 白の目立つリトグラフ。背中の流れ、髪の流れ。いい。
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この大型の版は丁度今、田辺市立美術館「版画に見る印象派」展に出ている。

ルノワールは版画でも明るさが活きている。
「ボールで遊ぶ子どもたち」の女の子たち、けっこう暴れてて楽しそうだし、「田舎の踊り」のカプもニコニコと音楽に合わせて踊り、「画家の息子クロード(ココ)」も丸々と愛らしい。

カサットの版画のうちドライポイント三点が、大正新版画の範疇に含まれそうな画風だと思った。諸肌脱ぎの背中が見える「浴女」、赤ん坊をタライに入れる「入浴」、亜熱帯の地のような「果物狩り」。いずれもアジア風な味わいがある。魅力的な版画だった。

セザンヌ 水浴の男たち 楽しく眺めました♪

ロートレック アンバサドゥールの粋な人々 なにやら・・・なムードがある。水色や群青色の配色がいい。
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ロートレック マルセル・ランデ嬢の胸像 版画コーナーにはやはりこの人がいないとね。
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4.ポスト印象派以降

セザンヌ 赤いチョッキの少年 初来日。日本にセザニズムという波があったのを思う。この絵は日本に始めて来たそうだが、当時の人々のセザンヌへの尊崇の念というものが、なんとなく実感としてわかる気がする。私は無論絵は描かないし、研究者でもないからきちんとした理屈も何もないけれど、この絵からは何か新しいものを感じた。なんだろう、それは。わからないままに長くみつめた。

セザンヌ りんごと桃のある静物 堅そうな果実が二種ある。水差しと布の質感と。やはりこれも凝視してしまう。

ゴーギャン ブルターニュの踊る少女たち、ポン=タヴェン 可愛い民族衣装に身を包んだ少女たちが後ろ手に手を取り合って輪になる。胸の赤薔薇と木靴がまた可愛い。
当時、パリなど都会との風俗の違いを面白く思った画家は、やはりこのゴーギャンだけだったのか。描かれた女の子たちも背景も優しい。

ゴッホ 薔薇sun925-3.jpg
綺麗な背景の色に白薔薇。遠目に豊かな喜びを感じたが、近くによって段々と心持が変わってくる。花は盛りを過ぎかかっていた。背景も色は綺麗だが、妙な気が漂っているようにも見える。劣化の始まりがそこにある。それを見ず、遠目からの印象を大切にするか・・・

スーラ オン・フルールの灯台 非常に静かな情景だった。白砂が広がるオン・フルール。
砂の粒子まで見えそうな細かさがあるが、本当に静かだった。
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スーラ ノルマンディーのポール=アン=ベッサンの海景 丘を覆う緑、それは単色ではなく赤や黄色の粒子が含まれて、いよいよ緑を豊かに見せている。海と空と。空は煌く蒔絵のように見えた。
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ロートレック 犬を抱く女性 チワワかな?疲れた感じの女がそこにいる。

最後の最後に今回の「顔」たるゴッホの肖像画があった。
ここにいたのね、と心の中で挨拶をして、会場を出た。
ショップでは描かれたわんこたちのピンバッジがあった。わんこみんなに名前があるが、名無しの奴にはお店で名前がつけられていた。
可愛い。いいお土産だと思う。sun923.jpg

京都では11/27まで。
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コメント
ベックリン
遊行七恵さん、こんにちは。
何度か目にしている(といっても画集などで)作品が沢山出品されていますね。
しかしクールベの「ルー川の洞窟」は初見でしたけど、私もベックリンの「死の島」を思い浮かべましたよ。
それにルノワールのブルー系の作品はちょっと吃驚でした。
2011/10/24(月) 23:39 | URL | sekishindho #7JPwz3bk[ 編集]
冒険には見えません
☆sekishindho さん こんにちは
先の見えない暗い地へ向かう後姿、怖いですよね。
「死の島」も3枚存在するようですが、どれも怖いです。

ルノワールのブルーは本当に鮮やかな明るさがあって(とは言えベタなのではなく)、一目見ると心に残りますよね。実はルノワールのブルーがすごく好きなんです、わたし。
2011/10/25(火) 12:46 | URL | 遊行 七恵 #-[ 編集]
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