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美術館・博物館・デパートでの展覧会を訪ね歩き、近代建築を見て周り、歌舞伎・映画・物語に溺れる日々の『遊びに行った日を記す』場所です。 

近代日本の風景画 / 村上豊『小節現代』表紙絵

野間記念館の所蔵品を全て見尽くそうとすれば、どれだけ時間がかかるだろうか。
「近代日本の風景画」と村上豊の「小説現代」表紙絵展とを見たが、なじみの絵だけでなく、知らないものもあり、いつもながら野間コレクションは本当に深いと思った。
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近代日本画を愛するものは、この野間記念館と山種美術館だけは、何があっても変わり目ごとに欠かさず見なくてはならない。
基本的に自家のコレクションを展覧するシステムを採っているが、飽きることはない。
同じものがでたとしても、コンセプトが変わるとまた新しい発見があったり、懐かしい喜びが生まれるからだ。

そういうわけで例によって椿山荘の隣までのした。
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大観 暁山雲 富士が雲の上にぽかりと姿を見せている。霊山というより、機嫌のよい山の姿がそこにある。
しかし次に現れた「霊峰」はまた表情が違う。山頂の雪の流れを金泥で表現し、厳かな佇まいを見せていた。

栖鳳 古城松翆 千代田城のお堀を藻苅り舟がゆく。これは別バージョンもあるが、共に静かないい絵で、実際の皇居のお堀でこんな様子を見ることが出来るのだろうか、と絵の前に立つ度に思う。そんな期待とでもいうものがふと湧いてくる。

印象 雨後 墨絵。和舟に鷺がとまるのだが、中国の水墨画の伝統がここに活きている、という風情がある。
湿気がこちらにまで伝わり、鷺の羽にまといつく滴の感触が手に移ってきそうだ。

大観 春雨 赤松と山桜。春雨の温度、飛ぶ鳥の速度、それらが封じ込められている。

玉堂 渓村秋晴、秋湖帰漁 共に枯れた空気がそこにある。山も湖ももう秋なのだ。

色紙をみる。
丘人の十二ヶ月。昭和13年作。四月「南島」がいい。椿咲く島、海と山並みが見える南の島。伊豆大島あたりに取材したのか。
七月「大川端夕暮」もいい。小さい帆舟が川を下る。ロを持つ人が小さく見える。道には電信柱が並んでいる。手前には柳がある。江戸からの名残と昭和の匂いが混ざりあう大川端の夕暮れだった。

小室翆雲 青緑武陵桃源図 南画風な趣がある。手前に小舟が一隻。ずぅっと奥の橋には渡る人もいる。ロバがゆっくり行く。時間の止まった世界が描かれていた。

春挙 琵琶湖春色図 大正末、彼の建てた蘆花浅水荘で作られた絵。普請道楽の春挙のこの邸宅の素晴らしさについては、以前にかいた。

曼舟 東山緑雨 濃い緑が目立つ。こんなにも大正末の東山は緑濃い地だったのか。

大観 飛泉 どーーーんっと滝の流れがある。黒松がそれにあらがうように活きている。夏によく出る絵だが、秋に見ると、また趣が異なってくる。

弦月 新緑 どこかの山中の新緑。大正十年か。もしかすると信州の田中本家に滞在していた頃に見た新緑かもしれない。

小川千甕 雨将霽 ああ雨がやんで虹が出ている・・・もあもあした空、水の深い地、舟、橋を行く人馬・・・

渓仙 醍醐之春図 勅使門に桜。土牛の桜はずっと手前にある。春になれ、と思った。

豊四郎の十二ヶ月色紙を見る。
一月「富士」は、空の汚れがキラキラしたものになり、雪白の富士を照らしている。七月「瀞潭」では筏師が静かに水面を滑っていた。

シリーズものが現れる。
耕花 江南七趣のうち雷峰白雲 古風な巨大タワーに雲が懸かる・・・このシリーズは好き嫌いが分かれるかもしれないが、私は大好き。

耕花 万里長城 昭和初期の作。こけ蒸したような様子。耕花は実際に大正に中国を訪ねているから、これはその当時のリアルな目で見た万里の長城の姿かもしれない。

蓬春 多摩御陵図 暁闇に浮かび上がるような御陵。しぃんと静まり返っている。衛士の姿も見えない。誰も生者のいない景色。

児玉希望の四季の風景は精進湖・華厳・那智・十和田と四つの地の風景が描かれている。それぞれ対になっているのが面白い。

長谷川路可 欧米十二題シリーズがある。昭和六年の欧米。アッシジ、フヒエゾレ(どこですか)、ローマ、ノートルダム、ヴェニス、セイヌ、マッターホルン(摩太峰とはいい当て字だ)、ロンドン港、フォーレンダム、トレド、ナイヤガラ。一つだけ地名のないタイトルもあるが、後は皆自分らの持つイメージにぴったりな絵ばかりだった。

遙邨の十二ヶ月色紙は京洛を中心にしたものだった。
雪に埋もれる石清水八幡宮、祇園の夜桜に浮かれる様子、紅葉の高雄などがある。

富士百趣というシリーズもあり、玉堂・武山・十畝・龍子・麦僊・岳陵・蓬春らのが展示されていた。いずれも昭和三年の作。野間は競作させていい作品を集めていたのだ。すばらしい。

昭和十二年から十四年の講談社の絵本「東京見物」「日本の名所」はまた贅沢な内容だった。
斉藤五百枝、林唯一ら一流の挿絵画家を筆頭に、寺内萬次郎、遙邨、竹喬、西山英雄、梶原緋佐子らが様々な名所を描いている。ただしいかにもその当時の名所という感じ。

講談社は多くの雑誌を生み出している。
昭和33~34年の「日本」誌の表紙絵は東山魁夷だった。
全て風景画でそれも大胆な描法で描いている。
何度も出ているが、見る度に面白さが湧いてくる。
大作家の大作もいいが、こうした小品の良さも堪能できるから、野間は好きなのだ。

そして村上豊の「小説現代」2007年から2010年の表紙絵が並ぶ。十二ヶ月それぞれの行事が描かれているものが多いが、何年もこの仕事を続けているので、似たような画題のものが出るのは当然だ。しかしそれで飽きるということはない。
たとえばひな祭りなどは「ああ、久しぶりのお雛様、桃の花も白酒も支度してますよ」と声をかけたくなる。
日本の昔話をメインにしたものやファンタジックな絵の他にも、キャミソール姿の若い女の後ろ姿を描いたもの、ベイエリアの高層ビル群の夜景などもある。
それがまた魅力的だった。
ほかに宮部みゆき「おまえさん」の挿絵などもある。

楽しく眺めて、機嫌よく出た。
展覧会は12/18まで。年明けからは没後50年 吉川英治展が始まる。
  
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