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美術館・博物館・デパートでの展覧会を訪ね歩き、近代建築を見て周り、歌舞伎・映画・物語に溺れる日々の『遊びに行った日を記す』場所です。 

京都千年の美の系譜 祈りと風景

静岡県立美術館での「京都国立博物館」の名品展を見た。
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名品展というものは言うてみれば、一年の総決算に似ている。駄品というものはまず出ない。珍品も出ないからそのあたりはもしかすると面白味に欠けるかもしれないが、しかし改めてそのミュージアムの底力というものを思い知らされ、感銘を新たにしたり、尊敬心が高まったりする。

現在、京都国立博物館の常設展示の建物は新規作成中である。
その間に全国へ出開帳に向かうのは、とても良いことだと思う。
静岡市だとひかり号で1時間半ほど乗ってからバスなり徒歩なりで京博へ行けるが、現実にはなかなかそうはできない。
この機会はだからとても大切なものだと思う。

わたしのような関西のものが静岡まで行くのも思えばおかしなことかもしれないが、普段「見慣れている」と思いこんでいるものの中での新発見や、「えっあれが出るのか」といった期待が胸の底に活きている。
静岡では丁度同時期に「ダ・ヴィンチ 美の理想」展が開催中なので、併せて楽しむことができる。それに乗らなくてはならない。

開館直後に美術館に入ったはずだが、既に多くのお客さんでにぎわっていた。
やっぱり皆さん、こんな機会をずっと待ってはったのだ。
ちなみに展覧会のタイトルは「京都千年の美の系譜 祈りと風景」。
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第一章 信仰の風景

山水風景 東寺伝来の、最古の「山水」図。国宝。剥落しているが、なにやら青々した景色も見える。
まだこの頃は「水墨画」の山水画は出ていない。

山水屏風残欠 南北朝。二幅ある。老高士を訪ねる都の若い貴人とその従者たち。庵にいる高士。そばには白い木花とオレンジの木花が咲いている。それがキンモクセイなら秋なのかもしれない。剥落しているが残る色が綺麗。

法華経普門本(色紙経) 綺麗な絵。山から金色の日が出る様子。蓮池にもその光が射し込む。朝日の神々しさ。

大宝積経巻第三十二(高麗国金字大蔵経) 三対の美々しい仏像の姿がある。紺地金字。実に力強い良い文字が連なる。11世紀初頭の高麗の書体はこうした流行があったのか、個人の手蹟によるものなのかは知らないが、いい書体だった。

華厳経巻第71、72、73、普賢行願品 善財童子の旅。もう終わりに近い。童子と仏たちの姿が描かれている。元代の絵。字は金銀で書かれている。

若狭国鎮守神人絵系図 雲上の騎馬貴人と走る従者。社前には神人が拝礼している。きちんと背景を知っていればいいのだが。反省。

当麻曼陀羅図 鎌倉時代のもので、これは以前にも見ている。かなり剥落してはいるが綺麗な曼陀羅。

仏涅槃図 南北朝のもので、嘆く衆の中にウサギとハトもいた。

ここまで見たら金棺から起きあがる国宝の絵が見たいところだが、あれは来ていなかった。

千手観音香合仏 蓋を開けると仏たち。白檀の香合。

餓鬼草紙があった。後白河法皇遺愛だったそうだが、よく出ているシーンではないものが出ていた。
これは完全に初見。四場面が出ていた。
・目蓮尊者の母が餓鬼道に落ちているのだが、お地蔵様の功徳でごはんを貰える。そこへ他の餓鬼たちも来るが、物惜しみする婆さんはその鉢の上に座り込んで他者に分け与えようとはしない。
・仏に恵みを求める餓鬼ども。
・阿難尊者に救われる、火吐く餓鬼ども。
・餓鬼たちに対して布施をする仏たち。
こういう展示があるからこそ、やっぱり遠くまで出向く価値があるのだなぁ。

第二章 理想と憧憬の山水

遠帆帰帆図 牧谿 うっすらと帆影がある。茫漠たる図。
義満ー義政ー信長ー家康ー田沼ー不昧と伝えられてきた。
日本人に愛される牧谿。権力者に愛好されたこの絵。
今、博物館に入っていることを想う。

輞川図巻 元代の唐氏の作。モウセンとは草堂・精舎・竹林・果樹園のセット。田舎に引っ込まないとこうはいかない。

観月図 張路 詩人の王維の別号。赤壁賦からの絵。満月の下、小舟には茶を支度する侍童がいる。

舟行送別図 伝・周文 六人の賛がある。少年僧の「子渓」君への送別のための。気持ちのいいエピソードである。室町時代の友愛が今にまで活きている。

富岳図 是庵 室町時代の富士山。裾野の民家の壁になぜか「土」の字が並ぶ。倉に「水」の字は見かけるが、なぜ「土」の字なのか?

乗輿舟 若冲 この絵巻も来ていたが、いつみてもシィンと静かだと思う。長柄から源八の渡しを越えて、天満橋まで。わたしの親などはまだ子供の頃に源八の渡しを使っていたと言うから、戦後になってしばらくしても、この風景の名残は活きていたのかもしれない。

山水図屏風 与謝蕪村  絖に描かれている。弟子らが師匠の望みをかなえようと講を作って金を集めた。その絖に描いた静かな絵。

奥の細道図巻 与謝蕪村  これは好きな巻物で、また丁度好きな場面が出ている。佐藤兄弟の妻たちの武装図。そしてラストシーン。蕪村は絵もいいが文字が味わい深くていい。
文字の肥痩がリズミカルで楽しい。

銅鐸や平安時代の鏡などの工芸品も出ている。
中でも良かったのは、草花文様四つ替小袖。
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これは前向きだが、展示では背中しか見えなかったが、布の配置が逆になっていた。
つまり四面x2ということになるのか。
楓・白藤・雪笹・紅白梅。可愛らしい小袖。桃山の美。

第三章 移ろう季節へのまなざし

四季山水図屏風 雲谷等顔 寺の下に自家用小舟。水面にはジャンクがある。中国のどこかの山水風景。これを見ていると、マカオの博物館で見た中世の貿易船映像を思い出すのだった。

四季耕作図屏風 久隅守景 田植えにいそしむ人々。田楽も出ている。朱色の前掛けをする人たち。犬を脅す人もいる。・・・ご飯を持ってくる女の姿は見えない。

山水図押絵貼屏風 曽我蕭白 これは京博での蕭白展のときにも見た。無頼である愉悦。しかし、この一連の山水図はひどく静かであり、また和やかでもある。雪山の白さの表現には胸を衝かれる。

漁楽図 池大雅 モノクロなのに、どう見てもカラフルな図。明るい笑い声がするような絵。

柳鷺群禽図屏風 呉春 描かれた「黒丸烏」とやらの顔つきがひどくファンキーで可愛い。江戸時代の絵画では烏も叭叭鳥並みの人気者なのになぁ。鷺が飛んでいる。しかしドウ見ても黒サギである・・・

道八の雲錦手鉢があった。大きくて立派で絢爛な鉢。これも大好きな鉢。

第四章 詠いの風景

古今和歌集巻第十二残巻(本阿弥切) 繊細な字!透かしは夾竹桃の連続文様。非常に美麗な唐紙。浮き上がり方が素晴らしい。

鶴下絵三十六歌仙和歌巻 宗達・光悦 例のあれ。長々と展示されていて、お客さんはみんな喜んでいた。

葦手の小袖や硯箱など和歌に関連した工芸品も色々と出ていて、楽しかった。

第五章 京のすがた

洛外名所遊楽図屏風 狩野永徳 これは永徳展のときにみつかったもので、寄託されているようだった。久しぶりのご対面。右は嵐山観楓、左は宇治の桜狩。

阿国歌舞伎図屏風 数ある阿国歌舞伎図の中でも、大和文華館蔵と並んで特に好きな作品。今回は観客の女たちの着物を気をつけて眺めた。桃山時代の嗜好を見てみたかった。

柳橋水車図屏風 貼り付けの金月。宇治橋。出光でも同系統の作品を見ている。人気度が高かったことがよくわかる。

祇園祭礼図屏風 金型雲がくっきり。飽きずに眺める。いくらでも新発見があり、とても楽しい。今回は四階建ての蔵を発見した。
見ていると、隣の奥さんが「あれはどこかしら」とおっしゃるので、どこそこですと答えようかと思ったが、やめた。
奥さんは答えを聞くよりも、色んな想像をするほうが楽しいに違いなかった。

非常に強く堪能した。面白かった。
機嫌よく見て回ってから、静岡県美所蔵のオールドマスターの絵とロダンの彫刻群を見た。
いい環境の美術館だとつくづく思う。

展覧会は12/4まで。
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