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美術館・博物館・デパートでの展覧会を訪ね歩き、近代建築を見て周り、歌舞伎・映画・物語に溺れる日々の『遊びに行った日を記す』場所です。 

烏丸ハイカイ 和の美を愉しむ

紅葉のシーズンに京都へ行くのも帰るのも、大変な労力がいる。
早く出ても遅く出ても同じ。しかし早くでないといよいよ予定は遅れる。

今日の予定先は全て烏丸通りに近いので、地下鉄一日券を買う。
北山通りの表千家北山会館に行く。
向かいの府立植物園に行こうかと思っていたが、道を歩くうちに「・・・まぁいいか」になる。
なにが「まぁいいか」かと言うと、思ったより紅葉も黄葉も進んでいないように感じたからだった。

北山会館では「茶の湯 家元の四季」展が開催されていた。
古いものは少なく、意外に新しいものが多い。
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土田友湖の袱紗も可愛らしいものが多く、はっきり言うとハンカチに欲しいと思うものがいくつかあった。
雪月花の二幅ずつの軸がある。書と絵の対になっている。
雪と花は西山英雄、月は東山魁夷の手による墨絵。
魁夷の月は頴川美術館所蔵の芦雪の絵を思わせる。
ほかにつぼつぼの意匠の棗や、春夏秋冬の誰が袖を意匠化した茶入などが特によかった。
一つ個人的にクヤシイのが、大の苦手なトコヨノナガナキドリを図案化した棗があったが、うっかりとそのトコヨノ・・・を可愛く感じてしまったことだった。うううう(悔し涙)。

二階のソファで呈茶を受ける。
松ぼっくりを象ったお菓子が出た。中身は大徳寺納豆をこしあんに混ぜたものを、寒天と卵白でくるんだ和風マシュマロだった。おいしかった。
そしてお抹茶は三島茶碗に。おいしいお抹茶だった。のどを通るときに柔らかな苦味が広がって、気持ちいい。
お茶碗の底には「同」という文字が刻まれている。

裏千家の茶道資料館、この表千家北山会館、共に豊かな心持ちでお茶を楽しませてもらっている。

次に今出川に出た。
同志社大は学祭なのかオープンキャンパスなのか、そんなにぎわいがあった。それを左手に歩いて、相国寺の境内に入る。
承天閣美術館へ。SH3B08440001.jpg

妙に可愛い獅子がいる。SH3B08450001.jpg

肥後松井家の名品「武家と能」展が開催されている。
茶道資料館で見た「武家と茶道」の兄弟展である。
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巨大な陣備図を見る。兵は皆豆粒サイズ。
肥後松井家に伝わる朱印状なども展示されている。
絵と工芸に良いものが多かった。
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伝・明兆 文殊菩薩騎獅像 蓬髪の少年文殊が亀のような獅子に坐している。半裸に赤布を巻きつけ、瓔珞を下げている。つりあがる眉に静かな切れ長の目。きつく結んだ口元。
魅力的な少年像だった。
伝・周文 山水図 この相国寺の画僧だった周文の手によるものだと伝わっている図。ここで見るのが面白くもある。
狩野元信 花鳥図 セキレイが愛らしい。
狩野探幽 渡唐天神図 梅持ち天神。この絵を描いたとき探幽はわずか12才の少年だったのだ。・・・まいった。
宮本武蔵の絵も何点も伝わっている。達磨や野馬などである。

森派の絵も並んでいる。
猿の狙仙の絵もある。群猿図屏風のリアルさがすごい。
徹山の猿はそれよりは少し賢そうな顔つきをしている。
「桜に猿」は桜にぶら下がって遊ぶ猿、「桃に猿」は桃の花を愉しむような猿を描いている。
一鳳の絵はどれもこれも魅力的だった。
熊図 雪の中、若い熊がクンクンと地に鼻をつけている。愛らしい。
群鳥・萩に四十雀・桜に雀図 群鳥たちのカラフルさ!可愛くて可愛くて仕方ない。小さくふっくらした小禽たちの自由な空。霞み網に気をつけて飛べ。  

工芸品は職人の腕が光るものもよかったが、夫人たちの手芸ものがまたよかった。
紙入れがあるが、そこに納められている色々なグッズ一式も出ていた。コンパスまであるのにはびっくりした。日本の知恵と工夫の証を見た気がする。
途轍もなく愛らしい筥迫もいくつかあった。こういうのを見ると、小さいときに晴れ着を着たときの記憶が蘇ってくる。
白粉の実物もある。この白さが凄いが、この頃のものは鉛入りだったものか。
そして可愛い手遊びが、猫型楊枝差しである。三つあり皆後ろ向きだが、猫の仲居・猫の幇間・よだれかけの猫などである。ちりめんの押絵もの。

幕末から明治にかけての工芸品もいいものがあった。
屋形行厨がいい。二軒の家を模したものである。家には工夫が凝らされていて、扇面透かしの建具やガラスも使われている。
そこにセッティングされているお皿なども愛らしい青貝細工ものなど。
また、桜樹文青貝机も爛漫の桜を繊細に、そして華麗に表現していた。

「武家と能」というだけに良い面と装束も並んでいる。
そして松井家の主人の細川家の妙庵の自筆謡本がずらりと並ぶのも凄い。
幽斎の三男で能楽に深い人の手によるもの。
能面では童子面が殊によかった。えくぼと二重まぶたが愛らしい。

再び烏丸通へ戻り、今度は一条へ向かう。途中見かけた近代建築。
ステキ・・・SH3B08460001.jpg


虎屋ギャラリーで「岡重 羽裏コレクション 華麗なる文様」を見る。
昔の人は隠れたところに趣向を凝らすものだとつくづく実感した。
この魚群を見ただけで推して知るべし、という感じ。
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波に虎柄、鶴舞、百美人、キューピー文様、骸骨ダンス、モリス商会風な草花文様もある。
わたしはビル群文様が気に入った。
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以前、湯田中温泉よろづ屋さんに泊まって、女将さんから十五世市村羽左衛門のお話を伺っているとき、ある羽左衛門ファンのご年配のお客さんが、着物の裏に羽左衛門ゆかりの橘文様をつけておられた、というのを聞いた。
そういうのを本当の「粋」だとそのとき思ったが、ここにある羽裏は「イキ」であり「スイ」であり、そしてなにより遊び心が活きていた。

今出川から京都駅へ出て、えき美術館で諏訪の北澤美術館所蔵のガレとドーム兄弟のガラスを見た。
春夏秋冬に分けて、作品を集めていた。
こういうコンセプトで眺めると、見知った作品に新しい顔が生まれてくる。
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ガレ タンポポ形ランプ 綿毛の形のランプ。これは初見というか気づかなかっただけなのかもしれない作品だが、今回非常に気に入った。丸い形に++++文様が並んでいて可愛い可愛い。

ガレ 蘭文白鳥足付け花器 これは購入者が別に白鳥と、口べりに葡萄の輪とをつけさせたものだそうで、それがいよいよこのガラスの魅力を引き立てる力になっていた。
作り手も買い手も、どちらも極上の趣味人なのだった。

ガレが光の媒体たるガラスに闇を招きいれた、というような言葉を見た。
本当にその通りだと思った。
不透明な重さが闇になり、それが光を一層際立たせもする。
眺めて歩くだけで、自分がどこか違う地に迷い込んでいる心地にもなる。
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ドーム 雪景文花器 ジャポニスムの影響が強い感じがある。冬枯れの木に集い寄るカラスたちのシルエット。もう少し後年の御舟の絵を思うような良さもある。
これは侘び寂びの美の範疇に属する作品だと思った。

北極探検があった時代、アールデコ風な白熊文の花器も面白く眺めた。
最後には竹に雀文もあり、楽しく見て回れた展覧会だった。

烏丸御池に戻る。
千總ギャラリーへ入る。婚礼衣装を見る。千總の夫人たちの衣装。
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幸せを願うキモチの込められた衣装たち。綺麗だった。

さて予約していた人形の丸平文庫へ向かう。
歌舞音曲の人形たち。zen038.jpg
非常に詳しい説明を聞かせてもらいつつ、見事な衣装人形・御所人形などを見せてもらう。
五節の舞を見せる人形、「胡蝶」の人形の群、舞楽を演じる人形、そして歌舞伎や能狂言を演じる人形もある。
仁木弾正もあれば、九代目さんの似人形もある。
好きな道だから、こちらからもどんどんお話をせがんだり相槌を打ったりするうちに、話はいよいよ詳しくなり、誠に貴重な時間を味わわせてもらえた。
つくづく自分が東洋、特に和の古美術好きだということを実感する。
そのことばかりにしか目が行かず、アタマも働かないので、最近は少しばかり反省していたのだが、それでいいと改めて思いもした。
有職故実をもっともっと深く知り、和の決まりごとをいよいよ深く覚えたい。

イノダコーヒーのステキな離れでティータイムを愉しむ。
お人形の丸平さんへは五人で行ったのだが、イノダでもいいタイミングで、あのステキな離れに入れたので、まことにラッキーだった。

その後は二手に別れ、わたしとあと二人で京文博へ行く。
「京の小袖」後期を楽しむが、その感想はまた後日にまわす。
常設室での企画「金剛家の名宝」を見る。
お能の金剛流。丸平さんで三番叟の翁について色々お話を聞いた直後に見たので、いよいよ感慨深い。
鬘帯や腰帯のよいものを見る。
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二年前の夏に金剛会館で能装束を随分たくさん見せてもらったが、あのときに見たものもあるように思う。
何しろ可愛らしいから、いつ見ても嬉しくなる。
他にも柴田燕文銀襴法被というのがあり、その文様が非常に面白かった。
こういう企画はこれからもどんどんたてていってほしい。

烏丸ハイカイは、和の美の愉しみを与えてくれたのだった。
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コメント
羽裏
 ビル群の羽裏って 初めて見ました。見えないところに意匠を凝らす 
ほんとの粋ですが 男の物は同じような色 もちろん形も それで個人の
持ち物を区別するために だんだんそうなったのではと 粋でないことも
考えております。
日々 絹物の裏表で 遊ぶので あれこれ 思いをはせながら・・・・
2011/11/27(日) 18:50 | URL | 小紋 #-[ 編集]
7777の切り番です!
☆小紋さん こんばんは

表が派手に出来ないから裏に凝る、というのはスイなようであり、
一方でそのお説に「うんうんうん」と強くうなずいたりしてます。
思えばアワレな感じもチラッと・・・
2011/11/27(日) 21:43 | URL | 遊行 七恵 #-[ 編集]
はじめまして
丸平で11月に「丸平の歌舞音曲の人形展」を今になって知り、
ガックリしながらも検索でたどり着きました。

パンフは汐汲みと囃子方でしょうか。ああ見たかった!

私は雅楽をやるものですが、五節舞や胡蝶、その他の舞楽が
あったとのこと知り、なおさら見たかった!との思いが増すばかりです。
2011/12/27(火) 03:27 | URL | とんぼ #uaIRrcRw[ 編集]
こちらここそ、はじめまして
☆とんぼさん こんにちは

> 私は雅楽をやるものですが、五節舞や胡蝶、その他の舞楽が
> あったとのこと知り、なおさら見たかった!との思いが増すばかりです。

胡蝶のお人形が古い時代のものから近年のものまでずらずらと並び、それはもう壮観でした。
みな一緒ではなく、少しずつ改訂されているのも面白いところでした。
五節舞は入ってすぐ右側に展示され、左手に胡蝶がありましたが、出迎えられた心持になり、嬉しかったです。

お話も本当に深くてよかったです。
とんぼさんのように雅楽の専門の方でしたら、いよいよ深いお話も聞けたことと思います。
ぜひ今度はお出かけください。
2011/12/27(火) 11:54 | URL | 遊行 七恵 #-[ 編集]
No title
>五節舞は入ってすぐ右側に展示され、左手に胡蝶がありましたが、
>出迎えられた心持になり、嬉しかったです。
うう、素晴らしい!の一言だったでしょうね。

>みな一緒ではなく、少しずつ改訂されているのも面白いところでした。
少ない資料の中を想像でつくった部分が大きかったのを、徐々に現在宮内庁楽部で
おこなわれている装束に近づけて行ったのでしょうか。

テーマ展なので、同じ内容の展示は当面ないでしょうし、残念なことしました..
2011/12/27(火) 16:34 | URL | とんぼ #uaIRrcRw[ 編集]
☆とんぼさん こんばんは

> 少ない資料の中を想像でつくった部分が大きかったのを、徐々に現在宮内庁楽部で
> おこなわれている装束に近づけて行ったのでしょうか。

そうかもしれません。ただ、演出上人形の身体に即した作り方をされているものもある、ということでした。
たとえば染物を手描きにするとか、そんな感じです。
リアリスティックに作ることで却ってうそ臭くなることもある、というのを感じました。
2011/12/28(水) 00:15 | URL | 遊行 七恵 #-[ 編集]
No title
>そうかもしれません。ただ、演出上人形の身体に即した作り方をされている
>ものもある、ということでした。

なるほど。

女性の衣裳人形で、楽人の赤い襲(かさね)装束を片袖脱ぎに纏い、片手に鳥兜を
提げた御殿女中というものを持っています。
「見立て」なんでしょうが、よくできてるな~と、時おり眺めて楽しんでいます。

もう今年もあと数時間。
よいお年を。
2011/12/31(土) 20:52 | URL | とんぼ #uaIRrcRw[ 編集]
2012年になりました
☆とんぼさん こんばんは

芝居人形を丸平で見ましたが、あれらもリアルさと同時にフィクションが綯い交ぜになっており、非常によかったです。
何もかもリアルではないところが面白いのでしょうね。
見立て精神、すごくステキですね。
2012/01/01(日) 01:57 | URL | 遊行 七恵 #-[ 編集]
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