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美術館・博物館・デパートでの展覧会を訪ね歩き、近代建築を見て周り、歌舞伎・映画・物語に溺れる日々の『遊びに行った日を記す』場所です。 

京の小袖 デザインにみる日本のエレガンス 松坂屋・丸紅・千總コレクションを中心に

京都文化博物館で開催中の「京の小袖 デザインにみる日本のエレガンス 松坂屋・丸紅・千總コレクションを中心に」を観た。
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前後期共に素晴らしい名品が並び、二百領近い絹の波に溺れた。
京文博は随分以前にも佐倉の歴博の小袖コレクションを見せてくれもしたが、ここではそれ以来の大がかりな小袖展ではなかろうか。
そのときの感銘が大きく、そこから小袖好きになったのだから、やはり京文博はわたしの大切な修行先の一つなのだった。
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展示は時代ごとに並べられている。
そうすることでその時代の流行や背景の文化や政治のありようも見えてくる。
日本は外見・外装によって厳しく身分を分け隔ててきた。
厳然たるドレス・コードが活きていたからこそ、こうして今日まで見事な小袖が残されているのである。
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第一章 桃山時代 小袖文様の革新
この時代にはまず「辻が花」を想わなくてはならない。
ここにも何領もの辻が花の小袖があり、打敷がある。
また十年ほど前に当時の色柄を再現して、小袖に仕立てあげた現物も並んでいた。
それは丸紅の労作だった。
再現されたものは非常に鮮やかな色調を見せており、四百年前にはこんな艶やかさを誇っていたのか、と想う。
これは淀殿の着用した小袖だという説がある。
彼女はそれをお寺に奉納し、そこで打敷になっていたのが、十年ほど前に再現されたのだった。

現在、大和和紀が小野お通を題材にした作品を連載している。
ファッションセンスの良いお通が、場にふさわしい衣装を提案するエピソードがある。
描かれている小袖は確かに桃山時代の嗜好にそうものだった。
「源氏物語」を描いた「あさきゆめみし」の作者だということを改めて想う。

松鶴亀草花文様肩裾小袖 愛らしく魅力的な一領。草花文様がなかなか大胆な図案である。
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第二章 江戸時代 慶長期 「緻密」への転換、構図のダイナミズム
ここでは松坂屋コレクションの小袖が多くでていた。
慶長年間には大きな戦が三回もあった。それで政権が移行してしまった。
近年、サントリー美術館と大阪市立美術館とで松坂屋の小袖展を開催したが、そのときに観たような小袖もある。

雪持ち柳に草花文様小袖 花火のようだと思った。

草花文様小袖 zen041-1.jpg
田畑コレクションの名品。以前このコレクションの展覧会も見ている。
そのとき以来の再会だと思う。面白い取り合わせの小袖。
そして解説に論理的な質問めいたことが書かれていたが、その答えはきっと非論理的なものが返るに違いない、と思った。理屈よりも感覚ではないかしら、美というものは。
そんな答えが返ってくるような気がした。

雪輪に草花文様腰巻裂 小手鞠の塊のような密集。刺繍が激しい。とても濃い。

第三章 江戸時代 寛文期 あふれる明るさ
小袖の意匠最愛の時代。
むかし、カネボウの小袖コレクションを常設展示する資料室が大阪にあったが、閉鎖されて長い。そこでいいものを見せてもらった記憶が蘇る。

瓶垂れ文様小袖 千總コレクション展でも「楽しい」と見ていた一領。襟のところに倒れる瓶があり、そこから裾に向けて水があふれ流れ行く図。

柳桜に筝文様小袖 zen041-2.jpg
可愛い。チラシにも選ばれている。

コラムがなかなか面白かった。
振り袖火事で衣装が不足し、京都に発注が集中したために裁ききれなくなった京都のメーカーが半分だけ柄を仕上げて江戸に送付した・・・それが大受けしたのが寛文小袖だとある。
「振り袖火事」と関わるところが面白くもある。

菊繋ぎ文様小袖 これは松坂屋コレクションだが、同類を大阪市立美術館、京博などの展覧会でも見ている。
こちらは地は白だが、そちらは薄紅や黒などだった。非常に素敵な小袖。
こうした小袖を身につけてみたい、と思う。

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第四章 江戸時代 元禄期 豪華絢爛、総文様の時代
昭和になっても「昭和元禄」と呼ばれる時代があったそうだが、豪華絢爛な時代=元禄という意識が長く活きていたのだ。
'99年の大河ドラマは忠臣蔵だったが、原作を舟橋聖一のそれから採り、タイトルも「元禄繚乱」と美麗な連なりを見せていた。

1.元禄文様
格子に花の丸文様小袖zen041-3.jpg
これは丸紅コレクション展で見ている。近年の展示か十年前のそれかは判然としないが。花の丸というだけでも華やかなのに、背景に細い格子を入れることで、いよいよ花が映える。見事なしつらえだと思う。

籬に梅文様小袖 綸子の地模様は柘榴だった。その上に梅が咲きこぼれているのだ。

椿樹文様小袖 欲しい小袖の一つ。

菊花流水文様小袖 綺麗だが手が込みすぎていて、ややうるさい感じがする。

2.友禅染
藤棚に菊文様小袖 淡茶色のちりめん地に描かれている。優雅な染物。

源氏物語文様小袖 巻を連想させる文字とそれぞれの情景が肩から背にかけて広がり、裾には全く違う景色がある。手の込んだ一領。
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チラシになった束熨斗文様振袖はこの時期のもの。これは別な配色のものを以前に見ている。人気のあった意匠なのだろう。
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3.光琳文様
雁金屋の息子さん、というよりも一枚看板の光琳さんの図案を「勝手に」意匠に取り込んだらしい。光琳が我から進んで拵えた、というわけではなさそうなことが書かれている。
以前、光琳手書きのものを見ているが、常時の仕事ではないのである。
ただし色んな逸話があり、光琳はファッションアドバイザーを勤めたらしい。
石の森章太郎の「大江戸化粧師」というようなタイトルの作品にも、それを元にしたエピソードがあった。

菊文様間着 凄い紫地である。そのことに胸を衝かれた。

御簾に松萩文様振袖 zen041-5.jpg
ああ、埋め尽くされている。

第五章 江戸時代 享保・元文期 内省の美
絢爛な元禄の反動が来た時代。倹約第一である。

籬に萩と笹文様小袖 ちんまりした可愛らしさがある。

このあたりの小袖を見ていると、享保期の雛人形の姿が思い浮かんできた。いずれもちんまりした顔立ちの、人形である。

段に木賊花兎文様小袖 兎の毛羽立ちを刺繍で表現している。

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第六章 江戸時代 宝暦期 散らし文様の静けさ
「京の小袖」ではなく、「江戸の着物」に変わり行く時代。
この辺りから自分の興味が薄れてゆくのを感じる。
しかし着物を着慣れた人々にとっては、この時代からの着物がリアルなものに感じられるのだろう、とも思う。

秋草に蝶文様振袖 ああ、もう揚羽は消えてシジミ蝶のような小さい蝶が小さく飛ぶのか。

梅樹文様小袖 納戸色のちりめん地に白抜きと色差し。茶色い枝に白梅の柄もいい。

曳舟文様小袖 ああ、「粋」になってきた。

第七章 江戸時代 文化・文政期 「華」から「粋」へ 洗練に向かう小袖文様
庶民の暮らしではこの化政期がいちばん面白いのだが、着物はもうわたしなどには殆ど関心がなくなってくる。
江戸の粋とは地味である、というイメージが強まるのもこの頃から。
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1.江戸時代後期の小袖
御簾に唐子遊文様振袖 可愛い。

四季田園文様振袖 紺地の絖。・・・絖にこうした意匠なのか。

2.御所解文様
芦刈文様小袖 複雑な技法が組み合わされている。
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楼閣庭園文様帷子 以前見たときもナゾな一領だったが、今回もやはり不思議である。

春景御所車御殿文様小袖 その拡大部分。本当に優美。
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3.公家女性の小袖
籬に菊椿燕文様掻取 可愛い!肩辺に刺繍で燕と白椿を表現し、下に乱菊の文様。

柴垣撫子に燕文様帷子 上に燕、下に花。
椿桜に蝙蝠文様帷子 先のと同様な図案で、こちらは金色に縫い取られた蝙蝠。

4.吉祥文様の小袖
三色・色違いで同様の図案の小袖が並ぶ。貴重なそろいもの。
田畑コレクションの小袖は以前に見ているが、日本人の吉祥文様への憧れがよく伝わってくる。


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他にも誰が袖屏風のよいものを二点と他にも色々面白いものを見た。
まったく素晴らしい。
細かいことを書くよりも、この空間を愉しみたいと思い、殆どメモも取らずに歩いたが、どこまでいっても絹の海で、自分もその中に包み込まれたいと切望した。
文字では表現できない美の世界がそこにある。
展覧会は12/11まで。
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