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美術館・博物館・デパートでの展覧会を訪ね歩き、近代建築を見て周り、歌舞伎・映画・物語に溺れる日々の『遊びに行った日を記す』場所です。 

水墨画アラカルト

泉屋博古館の「水墨画アラカルト」を見た。
チラシは南北朝時代の黙庵霊淵「布袋図」
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正直なところ、この布袋さんがにや~と笑う顔はわたしなんぞにはコワい。
こういう「笑い」というものがニガテなのだ。
浮世絵の笑いは好きだが、中世の「笑い」の概念がよくわからないので、ニガテだともいえる。
タイトルの副題は黙庵から鉄斎まで、とあるから中世から近代までの水墨画が集まっているのは確かだった。

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漁樵問答 雪舟  岸辺に二人の姿が見える。遠景。こちらからそちらへ近づくことはない。アングルも動かせない。この二人に焦点が合わされ、遠くの山は霞み、近くの柳は湿気を含んだように薄暗く膨らんでいる。
禅のことはよくわからない。
しかしこの絵には深い静けさと同時に、ある種の諦念やそこからの和みとでもいうものを感じる。
子供の頃にはニガテだった水墨画に感じる特性が、今では徳性に感じるようになった。
それがこうした絵を見たときに、自分のうちからにじんでくる。

白衣観音図 伝・黙庵霊淵  岩上でくつろぐ白衣観音がいる。ひじを突き、どこかを見上げている。人間世界のことなど知ったことではない表情である。
仏の無慈悲というものではなく、夢見る若い女に似ていた。

琴高仙人図 伝・狩野元信  おどろおどろした<気>の波を跳ぶ。鯉も力強く、仙人も気合が満ち満ちている。今から天へ昇る。そんな気迫がある。それを絵師は見てしまった。
見てしまった以上は描かずにはいられない。
・・・観客は仙人と絵師とを見ているようだった。

雪中売炭翁図 英一蝶  さっむいさっむい雪の積もる道を爺さんが炭を背負って売り歩いている。その爺さんに気づかず、家の中では唐子二人と首に赤いリボンをつけた猫が丸々・ぬくぬくと過ごしている。

白丁図 中村芳中  貴人の下僕を指す言葉。この男はぼんやりさんな感じがする。片っ方だけ草履を履いて、もう一方は素足のまま。雇い止めにならないようにもうちょっと身なりも整えないと。

十時梅ガイによる池大雅「十便十宜帖」が出ていた。本物は川端康成が愛したものだった。
これはこれで面白い。

利市三倍図巻 坤 鉄斎  コンの巻が出ている。これは街中の人々の色んな様子を風俗絵巻風に綴ったもの。中国を舞台にしているらしい。
唐子たちが楽しそうに元気に遊び、寝そべって安気に過ごす人もあれば、「我々周旋」と書いた幟を立てている人々もいる。
儲かれ、というような意図がタイトルに含まれていたとかどうとか。
鉄斎もやかましいことは言わず、クライアントが喜んでくれたらいいか、というような作品を残している。

秋暮帰牧図 下村観山  もあ~~な茶色で統一された画面。馬に乗り帰る人々を遠くから捉える。朦朧体の和やかさ。
つい昨夜、'93年の下村観山展図録を見ていて、面白い一文を読んだ。河北倫明氏が安田靫彦から聞いた話として、昔は「観山は大観よりもずっとすぐれていた、当時は靫彦も古径も青邨も紫紅もみんな当初から観山を目標に置いていた」と書いている。
今では観山は忘れ去られつつあるので、改めてこの文をあげる。

円山晩雪図 河野秋邨  大正時代の円山公園の枝垂桜が白雪に覆われた景色が描かれている。非常に魅力的だった。
重たくはない筆致で桜も雪にまみれ、遠くの山も寺も白く埋もれ、しかしイキイキした風景だった。「行きたい」と思った。この景色の中へ。

深山猛虎図 橋本雅邦  静嘉堂の竜虎図の親戚。ここではカップルらしき虎がいるだけだが、牝が座ったままガオーッで、牡は立ったまま口をつぐんでいる。

鉄斎の扇が何本か並ぶ。梅月図が特にいい。というより、以前高島屋でこの扇を見てから、鉄斎のファンになったのだった。

椿図 尾形乾山  白椿を竹に活けた。いかにも乾山らしい白い椿が清艶でとてもいい。薄墨で描く椿の美にすっかり惹かれた。 

衝立をいくつか見る。屏風というても衝立屏風。中心は一つ。
墨松図衝立 呉春  松ぼっくりが可愛い。
梅図屏風 彭城百川  力強い幹!
梅実図衝立 山口素絢  梅の実がくるっと咲いている。
寒月照梅花図 岸連山  雪で寒そう・・・
梅鶯図 芳中  鶯が薄墨で描かれて可愛い。

猿猴捉月図 狩野常信  丸顔のお猿さんが腕を長~く伸ばしあって水面の月を取ろうとする。おろかで可愛い。

狗子図 円山応挙  可愛い!!白いわんこが丸くなって寝てるその背にあごと右手を乗せて、こちらを見る黒いわんこ。可愛い可愛い!応挙のわんこはいつ見てもどれを見ても、めちゃくちゃ可愛らしい!どきどきするくらい愛らしい。これを見ただけでも来た甲斐がある。

双鯉図 応挙  これは大阪市立美術館での大掛かりな展覧会にも出ていたと思う。
彩のはっきりした(しかし明るくはない)二匹の鯉を縄でくくって吊ってる様子。
うろこのリアリティがたまらない。

こうして眺めてみると、自分がどんどん水墨画が好きになってきているのを感じる。
展覧会は12/11まで。
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