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美術館・博物館・デパートでの展覧会を訪ね歩き、近代建築を見て周り、歌舞伎・映画・物語に溺れる日々の『遊びに行った日を記す』場所です。 

ザ・ベスト・オブ山種コレクション 江戸絵画から近代日本画へ

チラシを見るだけで「何があろうと行かねばならない」という気持ちになる。
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右は御舟「炎舞」(後期展示)、左は映丘「春光春衣」

「ザ・ベスト・オブ山種コレクション」前期の「江戸絵画から近代日本画へ」を見た。
やはりベスト・オブと名づけるだけに名品ばかりがあふれている。
「あの絵がない」というちょっとばかり残念なこともあるが、それでも疑いなく、名品ばかりが揃えられていた。

こちらはまだ茅場町時代の頃の山種で手に入れた名品図録。zen083.jpg
当時のわたしには本当に高価だったが、それでも手に入れた喜びばかりが今も活きている。
初めて山種に行ったのは'89年の11月だから、随分むかしのことなのだった。

江戸絵画と浮世絵
岩佐又兵衛、池大雅、田能村竹田から光悦、抱一そして歌麿、写楽、広重の作品が20点近くある。

又兵衛 官女観菊図 大きな人物が画面いっぱいに描かれているが、薄い墨絵に淡彩なので、そうそう押し寄せるようなものはない。これが絵巻の時のような絢爛なものなら、苦しい。

竹田 二橋亭図 椰子の木もある。どこか異郷のような風景。それは絵がある説話を元にして描かれているためだが、不思議なリアリティがにじむのが面白い。
そういえば椰子の木はいつから日本人に知られるようになったのだろう。自生はしていないだろうが、「名も知らぬ遠き島より流れ寄る椰子の実一つ」とも歌われ、「大菩薩峠」の未完の終章のタイトルは「椰子林の巻」だった。

椿椿山 九能山真景図 坊さんとその従者が道を登る。拝みにゆく様子をロングで捉えている。

浮世絵も何点かある。いずれも色も綺麗なもの。やはりベスト展には出てくる名品たち。

春信 梅の枝折り
清長 社頭の見合
これらはいずれも恋のトキメキがある。恋愛進行中と今から始まる恋と。
それにしても「梅の枝折り」は本当に人気がある。ここだけでなく、よそでも大事に愛されているのを折々に見かける。

寛政年間の歌麿の美人画や写楽の役者絵も綺麗な摺りだった。
北斎の赤富士、広重の庄野などもいい。

宗達と光悦の四季草花下絵和歌短冊帖、新古今集鹿下絵和歌巻断簡もある。
さすが山種美術館と思いながら見て回る。

今年は抱一年だが、その締めくくりのように、ここにも二点よいのがあった。
飛雪白鷺図と秋草鶉図。
どちらも魅力的。白鷺の雪はジンジャーシュガーのように見え、秋草は女郎花もススキもステキだが、珍しく桔梗が見えないのも目を引いた。

近代日本画が現れる。
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観山 老松白藤図 めでたいところから始まる。

栖鳳 班猫 こちらは愛でたい猫。いついかなるときも可愛くて魅力的な白にキジ柄の大猫さん。このキジさんと春草の黒猫さんが日本を代表する絵猫なのは間違いない。

春草 月四題 四季それぞれの名月がある。名は春でも秋に魅力の深い春草。この連作では冬の雪笹向こうの月が粋なように見えた。

大観 燕山の巻 タジン鍋のような形の塔を持つ城内。いかにも北京、といった風情がある。雄大で繊細な筆致がいい。大観がいかにその時代の中国を愛したかが伝わってくる。

明治半ば過ぎというより、19世紀末の絵を見る。

雅邦 日本武尊像 松の下に佇むオジサンぽいヤマトタケルノミコト。こちらの表記は日本書紀。物語性は薄い。もう少し可愛い方が、なんてことを思ったり。

玉堂 鵜飼 22歳でこういう絵を描くのか。既にここで晩年への道が見えている。
崖下で働く鵜匠と鵜と。絵に彼らの心が躍っている。気持ちよく働いてください。

玉章 海の幸図 同じ明治の海の幸でも「明治の黎明」を感じさせる青木のそれとは違い、こちらは江戸から続く一連の時間の中での絵。漁村の朝の様子。古い絵。のんびり。

次に異郷を描いたもの。

小村翠雲 海寧観潮 銭塘江の人々が船に乗りながら海嘯の様子を見ようとしている。夏に起こる津波はその地の名物らしい。大正11年に画家はリアルタイムで見ているそうだ。

関雪 西湖蜀桟道図 桃の咲く時期。歩む人々もあれば働く人々もいる。苔むす塔が立つ。穏和な時間の流れの中で。左側に川が描かれている。そこにはジャンク船がゆく。これは関雪の見た光景なのだった。

西郷孤月 台湾風景 横長の画面に長い檳樃林がある。温熱を感じさせる空気が漂うが、しかしどこか寂しい。遠くに工場も見えるが、そちらにもたどり着けそうにない。
画家は不遇な生涯を終えているそうだ・・・・・

物語性の高い作品。

鞆音 那須宗隆射扇図 「さー射るぞー」な与一。

映丘 山科の宿(雨やどり) 物語の前期。鷹狩の途中。家には柿が生えている。
映丘の物語絵は細部にわたるまで濃やかだった。

古径 道成寺(寝所、日高川、入相桜) 選ばれた絵はいずれも素晴らしい。そしてこの三枚だけでも物語が読み取れる。最後に入相桜というのも無常観の表れのようにも思える。
動きがあっても、静かな世界だということが素晴らしい。

初めて見る絵もあった。
石井林響 総南の旅から 隧道口 二人の農婦が岩壁にもたれるようにしながら一休みする様子。おにぎりでも食べたくなる風景。

春挙 火口の水 大きな絵で迫力がある。春挙は日本画でロッキー山脈などを描くこともあるから、この軸も当然の仕事なのだろうが、その迫力に思わずウンと頷いてしまった。

特によく知られた作品群が待っていた。

靫彦 出陣の舞 幸若舞「敦盛」を舞う信長。衣装なども細かく眺めると、古様な作りになっている。千鳥柄の小袖。こういうところもきちんと見なければならない。

青邨 腑分 いつも思うのだが、この土灰色の若い女の死体、妙にスタイルがいいというか、よすぎるというか・・・首なし美人なのである。

華岳 裸婦図 わたしは山種のベスト・オブ・ベストといえば前述の栖鳳「班猫」とこの「裸婦図」と御舟「炎舞」だと思っている。
長くそう思っているから、もう容易には変わらない。
昔、初めて山種に行ったときに買った裸婦図の絵葉書は今もわたしの机にある。褪色してしまったが、それでも措く気にはならない。
一度、この永遠の裸婦像のスケッチなどを見てしまったことがあるが、それは自分の記憶の底に封じていたい。やはりこの完成された絵こそが、久遠の裸婦像なのだった。

松園 砧 これは京都市美術館「山種美術館名品展」のときのチケットや図録表紙にも選ばれているが、あまりに気品が高すぎて、わたしなどは少しばかりニガテではある。
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却って大正ロマン香る「蛍」などのほうが可愛らしくて好きだ。
今回、どちらも並んでいるのが嬉しい。

御舟 名樹散椿 この絵の椿を見ようと、その木のあるお寺に行ったが、実物より御舟のこの絵のほうが華麗だった、という経験がある。
花の一つ一つを注意深く眺めたが、本当に美麗だった。
木の配置、方角、花の大きさ、何もかもが豊かだった。

蓬春 梅雨晴 アジサイが本当に綺麗で。綺麗なだけでなく、とてもモダンでイキイキしているのが好きだ。蓬春の明朗な配色は理知的でもあり、そこがとてもステキ。

最後に大観の書を篆刻した銘板「嶽心荘」と靫彦の「山種美術館」の文字を見る。
自分が近代日本画のファンになったのは、やっぱり日本に山種美術館があるからだ、とつくづく思った。

前期は12/25まで。後期は1/3~2/5。こちらもとても楽しみ。わたしの見たい絵が出ていると嬉しいのだが・・・。
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