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美術館・博物館・デパートでの展覧会を訪ね歩き、近代建築を見て周り、歌舞伎・映画・物語に溺れる日々の『遊びに行った日を記す』場所です。 

アルプスの画家 セガンティーニ 光と山

アルプスの画家 セガンティーニ 光と山
そのタイトルどおり、アルプスの光と山がそこに広がっていた。
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セガンティーニの絵の実物を見た(最初の記憶がある)のは大原美術館の「アルプスの真昼」だったと思う。
今回の展覧会があるまで殆ど見ていない。
近年に少しばかり見ているが、いずれもアルプスが舞台のものだったと思う。
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ところでわたしが最初に「セガンティーニ」を知ったのは坂田靖子「孔雀の庭」からだった。
鎖された庭園(=パラダイス)の中で、意図的に作られた木が、セガンティーニの絵に現れる木によく似ている、と狂言回しの画商が思うシーンがある。
それはセガンティーニの象徴主義の作品の一つだった。
「嬰児殺し」と画商はつぶやく。
その後トレヴィル辺りからの美麗な本にセガンティーニの象徴主義の絵が集まっていて、わたしはその部分しか知らずにいた。
今回の展覧会でもそうした傾向の絵は殆どなく、「アルプスの画家」の健全で明朗な世界ばかりが並んでいる。
心も晴れ晴れとなる、アルプスの光と山が。

1.ミラノとブリアンツァ初期
暗い色彩と重い構図の作品が多い。
一言ずつ感想を挙げる。

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・死んだカモシカ 一見してクールベかと思った。妙にリアルな死骸がそこにある。
・鐘つき番 暗い。カンテラの灯りが少しばかりあるが、室内の暗さよりも「こういう描き方」でないといけない暗さに見える。
・小屋に帰る羊の群 聖母子がそっとその絵の中にいる。
・階段の習作 無人だからというだけでない静けさがある。グレーの色が音を吸い込んでしまった。
・羊たちへの祝福 モコモコ羊たち。暗い空の下、司祭が少年の侍者らと共に羊たちを祝福する。
・羊のいる風景 雪は汚れていた。重い空が広がる。
・居眠りする羊飼い 少年と顔の長い羊たち。
・農夫 羊の小屋で。
・水飲み場で んぐんぐんぐ・・・飲む。女に飲ませてもらう水。羊たちは心配そうに見上げている。
・白いガチョウ 白地に白い羽根。
・キノコ 「どんこ」なキノコ。もこもこしておいしそうではある。
・11月の寒い日 油彩版とコンテ版と。コンテの方が光の表現がいい。焚き火する人々の様子。
・山のアヴェ・マリア 祈っている風な羊もいる。

確かにどこから見ても「アルプスの画家」の絵だった。
しかしまだこの時代は空気が重たい。

2.肖像画
働き者で熱心なセガンティーニ。
四枚ほどの仕事と資料としての手紙などを見ていると、本当に一生懸命なのがよくわかる。
ただ、あんまりわたしの好みではないなと勝手に思った。

3.サヴォニン 山岳の光 1886年
13歳のバーバ少女を小間使い兼モデルにして、「光と山」を描いている。

羊の剪毛 羊の毛刈り。モコモコからツルツルへ。既に刈り取られた連中もやってきて、なかなかにぎやか。
女の赤いバンダナだけが華やぎを見せている。

わがモデルたち 油彩版とコンテ版と。百姓男女の健康そうな様子を捉えている。「自分らがこんな風になるのか」と感心しているのか何なのか、彼らがのぞき込む姿を見ていると、「松山の鏡」の説話を思い出す。

小屋に帰る羊の群 一目見て「デルフリ村かな」と思った。ハイジはアルムの山にいるが、そのずっと下界の村はデルフリ村だった。ペーターが寄託されている山羊たちの大半はこの村の人々の財産なのだ。
山羊でも羊でも別にかまわない、こんな絵をたとえばフランクフルトで見れば、ハイジはやっぱりノスタルジーに胸をかまれて泣くだろう。

水を飲む茶色い雌牛 分割主義。色の混ざりあいはない。厳格な分離がある。すごくきっぱりしている。そしてそのことで明るい日差し・明朗な陽光が感じられる。
牛の影が濃く地に広がっているのもいい。
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アルプスの真昼 先行の佐川もこの損保もこの絵をチラシに選んでいる。一年違いで同題の絵があるが、本当にアルプスの真昼とはこうなのだという実感が迫ってくる。
晴れ晴れとした空の下で、よい温度の中、この上ない心地よさ。そうしたものを感じる。

母山羊と子山羊 羊でなく山羊。立ったままお母さんのお乳を飲む子山羊。元気そうでいい。幼い命へ暖かな目を向ける。

死んだノロジカ まだ若い茶色いノロジカ。これを見て思い出すのが、陸奥の佐藤兄弟の里を通り過ぎようとしたとき、鹿の死骸が道にあったこと。料理屋さんに連絡したが、やはり山の暮らしにはこうしたことも少なくはないらしい。

森からの帰途 橇に木など乗せてそれを牽いて帰る農婦。雪の村への足取りは力強い。

日陰の憩い バッタリとうつ伏せに休む女。「アルプスの真昼」女さんがこんなところでイキダオレておる。一休みすれば立ち上がるのだろうか。
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湖を渡るアヴェ・マリア 夜、羊たちを乗せた小舟に。羊は人間の象徴でもある。救い主としてのマリアなのか。

4.マロヤ アルプスの象徴主義
私が見たかったのは前述したようにセガンティーニの象徴主義の作品なのだが、ここでは数点ばかりが出ていた。
他にはミレー風の絵もあり、そうかと思えば「生」と「死」の習作もある。

生の天使 「樹冠に座し」という状況はこういうことを指すらしい。抱いた子に頬ずりする女。青灰色でまとめられているが、優しさを感じる絵。

虚栄 思えばいかにも19世紀末な絵。小さな水たまりに自分の影を見いだす女。金髪を持ち上げ、白い素肌をさらして。周囲は「何もない」高原。彼女は何を求めるのだろう。

5.自画像
ジョヴァンニ・セガンティーニの貌。四点ある。
二十歳の自画像、23くらいの自画像(生首風)、35の自画像(神話風な顔つき)、そしてイコン風な自画像もある。

6.シャーフベルクでの死、マロヤでの埋葬
ここでは友人で弟子のジョヴァンニ・ジャコメッティの作品があった。
「死の床のジョヴァンニ・セガンティーニ」が二枚ある。鼻の高さがよくわかる絵だった。

そして二人で完成させたのがこの「ふたりの母たち」だった。
ひとの母子と羊の母子と。母羊が人の母を慕うというより、とめようとするような仕草を見せているのが心に残る。

開催されて本当に良かった。展覧会は12/27まで。
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