美術館・博物館・デパートでの展覧会を訪ね歩き、近代建築を見て周り、歌舞伎・映画・物語に溺れる日々の『遊びに行った日を記す』場所です。 **自宅でログイン出来ないので、現在「遊行七恵、道を尋ねて何かに出会う」で感想を挙げています。

ザ・ベスト・オブ・山種コレクション(後期)ギャラリートーク

1月8日に山種美術館で素敵な企画があった。
閉館後に山崎妙子館長による列品解説を伺うという企画である。
企画を立てられたのは「青い日記帳」のTakさんである。
絶妙の企画に違いない。

わたしは当初その企画に参加できそうにない、と思ってあきらめていた。
しかしわたしが都内に潜伏していることを知った方々から熱いお誘いが再三寄せられた。
ありがたいことである。

閉館後の山種美術館を訪ねると、百名ほどの参加者さんと、館の方々がおいでである。
存じよりの皆さんがわたしを見て、暖かなご挨拶をくださる。それだけでも「来てよかった」と思った。
やはり、こうした特別企画には出来る限り参加しなくてはいけない。
必ずそこには優しく温かいふれあいと、感動が待ち受けているからだ。

館長の山崎妙子さんは以前に新聞でお見かけしたが、本当にきれいな方だった。
わたしはそのときの新聞を今もファイリングしている。(背景の屏風ともども美しさに満ちていた)

以下、お話された内容をかいつまんで記す。
(わたしの記憶違い・勘違いがあれば気づいた方はどうかお教えください)
その下行にわたしの一言感想も併記する。


古径 静物 劉生の影響を受けて生まれた、古径唯一の油彩画。それも北方ルネサンス+院体画。

黒い碗の中に佇む(あるいは潜む)リンゴは、どこか黒のルドンを思わせる。不可思議な存在感がそこにある。

楢重 子供立像 (この絵と比較して、佐伯の「レストラン」図から話される) 「山種に佐伯があるのか(笑)」楢重は室内で描くが、佐伯は屋外で風景を描くので、その絵にはゴミが塗り込められている。

二枚とも大阪市内育ちの洋画家の手によるものだ、ということを改めて思う。

玉堂 早乙女 戦時中、玉堂に差し入れを続けた。その縁もあり玉堂作品は山種に70点ばかりある。

伸びやかな早乙女たちの姿からはまさに「薫風」を感じる。

土牛 醍醐 売れない土牛を支援し続ける山崎種二。戦後135点ものコレクションが生まれた。
この桜の絵の具は珍しいもので、綿臙脂という。「切手になった名画」の一枚。


館長は日本画の技能を実際に習得されているだけに、お話に実感がある。確かにこの「醍醐の桜」は数多の桜絵の中でも、色の美しさに強い特徴がある。

御舟 翠苔緑芝 解けない謎が今もある。
アジサイの花とビワの実の色についてのお話。
御舟は親戚の薬屋から貰った薬剤を使ったか・卵白を使ったか。ビワの実の黄色は食紅を使用か・油絵の具か。


謎の絵の具・技法ということをこうして教わって、いよいよ御舟への関心が高まってくる。
館長には「速水御舟の芸術」という著作がおありなので、それを読むことに期待が高まり続けてゆく。
この黒猫は近くで見るときと、遠目の時とは表情が違い、そのあたりもわたしには魅力的なのだった。

落合朗風 エバ 楽園には罌粟も咲く。ホロホロ鳥もいる。

以前見たときも思ったが、描かれた時代が大正半ばというあたりに、ロマンを感じる。インドブームはまだ続いていたのかもしれない。
この表現も荒井寛方という先達がいる。
それにしてもエバをアジアンビューティーに描いたのは、この絵くらいかもしれない。

魁夷 満ち来る潮 山種美術館随一の広がりを見せる作品。この作品を展示するために設計された壁面。
白波は銀ではなく(酸化するので)プラチナを使用し、岩の黒は焼き絵の具。フライパンで焼いた。
「フットライトをあてて」という注文がある。輝く絵。


プラチナや焼き絵の具といったお話がたいへん面白かった。作品の良さもさることながら、こうした逸話を知ることで、いよいよ作品への愛情が生まれてくる。

龍子 鳴門 実際の鳴門の渦ではなく、江ノ島の渦を見て描いた龍子。

元・和歌山人のくせにか!・・・と思ったが、和歌山は広いから一概にそう言えないのだったw

土牛 鳴門 こちらには山も描かれている。山に金を使用している。

土牛がこの絵を描くためにスケッチしに行ったときの逸話はかなり面白いが、そちらばかり覚えていて、肝心の絵の話は知らないままだった。こうして教わり嬉しい。

平八郎 筍 こちらも切手になった名画。

何度見ても可愛いし、背景との対比が面白い。

平八郎 牡丹 「知られざる山種コレクション」の一。裏彩色のことなど。院体画は大正十年のブーム。

院体画の靄とした雰囲気が非常に魅力的。平八郎の絵のパブリックイメージと全く違うが、これを進めていればどうなっていたろうか・・・

丘人 入る日(異郷落日) 
永遠 暎
どちらも余白をなくし隙間をなくす傾向がある。


日本画の変容(意図的な)は戦後からだが、こうした隙間のない作風が今の主流だというところに、わたしの関心が向かない要因があるように思う。
ただ、変容しようとした時代に生きていた作家たちの作品には深い関心がある。
もうそろそろ現在の作家は新たな地平を切り開くべきではないのか。

魁夷 年暮る 今の京都ホテルオークラの屋上からの風景だった。

「日本に京都があってよかった」というコピーがあるが、それを強く思うのが、この絵の前に立つときだ。
実際には描かれた景色はもう失われているが、それでも年の暮れに京都を歩くとき、必ずこの絵を想う。

松篁 白孔雀 胡粉の特性がよく出ている。胡粉を溶くのは大変である。難しい。

思えば私は関西人なので松篁さんの絵には深いなじみがあるが、関東で松篁さんの絵を眺めたいと思えば、この山種と東近美でタイミングが合うのを待つ他はないのではないか。
名品がここにあることを誇りにも思う。
ああ、いつ見ても松篁さんの絵には深い魅力がある・・・・・

ここから三点の「おもしろさ」について解説があった。

蓬春 卓上 ギリシャ皿のモダンさについて。

蓬春のモダンさといえば北極熊や古代思慕の埴輪たちの絵を思い出す。山種にある蓬春の絵はいずれも魅力的だが、まずその色彩感覚のすばらしさに深くときめく。

辰雄 坐す人 マチエールのおもしろさについて。

茅場町時代の山種で「坐す人」を初めて見たときの衝撃は今も大きいままだ。それについてはこれまで書いているのでここでは書かないが、技法についてのことなどを伺うと、また新しい魅力を感じるようになり、いよいよこの絵に惹かれてゆく。

寧 曜 デッサン力の確かさについて。

この絵もそうだが、スケールの大きさがまた好きだ。寧の絵で好きなものは全て山種美術館にある。階段の壁にかけられた絵を忘れることは出来ない。

又造 満月光 浅間山の裾野とそこに咲く草花。

場所などを知らなかったから、そう聞くことも楽しい。

御舟 桃花 院体画ブーム、サインについて(北宋の痩金体を使う)
御舟についての詳しいお話が続く。
非常に示唆に富んだ内容で、また知ることも多いので、ナマイキにもわたしはお聞きしながら頷き続けていた。
安宅産業のこと、吉田さんのこと・・・


ところで大正後半の院体画や痩金体で思いだしたことがある。
今も資生堂で使われている書体の一つに痩金体に近いものがある。
それは小村雪岱が取り入れたものだった。
彼の画風から考えても痩金体の書体はとても合う。
大正時代は魅力的な書体が多かった。
御舟がその書体を選んだのは時代の風もあったのかもしれない。

御舟 炎舞 画家本人が「再現できない色」と言った。その色はなんと薄塗り薄塗りの積み重ねで構成されている。また炎自体は実験分析した結果によると、御舟の動体視力が凄いということがわかった。三ヶ月間毎日たき火を視ていたそうだ。

何度も書いてきたが、わたしが日本画を偏愛するようになったのは、小学校の教科書で「炎舞」を見たからだった。
今もこの胸に炎舞は活きている。

御舟 春昼 農家の奥の柱まで描かれている・・・

気づかぬこともこうして教わり、絵を見る楽しさが倍加する。


そして折々に、実際の絵に追いつけない印刷物のことを話された。
館長はご自身がきちんと日本画の修行を積まれたから、技法にもお詳しく、また広い視野でお話をされるだけでなく、ところどころに楽しいくすぐりも交えて、多くのお客さんを魅了された。
わたしも本当にドキドキした。

ほかにも私の好きな作品が多く並び、とても嬉しく思った。
絵を眺める幸せと、ここで起きていた喜びを、好きな絵にそっと語りかけてみた。
絵はいよいよわたしの心に近づいてきてくれる。
そんな気がした。

トーク終了後にはご挨拶させていただいたが、あがりすぎた私はもぉ本当に何を言ってるのか自分でもわからなくなった。
ただただ山種美術館のおかげで日本画をこんなにも愛するようになったかを、懸命に訴え続けていたように思う。
そんなわたしに館長はじめ学芸部長、学芸課長の皆さんと、この機会を与えてくださったTakさんyukiさんご夫妻が、温かな態度で接して下さり、本当に嬉しかった。

動悸が高まったまま、わたしは同じブロガーさん方への挨拶もそこそこに、この会に参加されていた諸姉につれられ、夜の街へ消えてゆくのだった・・・

本当に、ありがとうございました。

なお、多くの方々が素晴らしい記事を挙げられていて、そちらをご参照されると、いよいよ幸せな心持になります。
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