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美術館・博物館・デパートでの展覧会を訪ね歩き、近代建築を見て周り、歌舞伎・映画・物語に溺れる日々の『遊びに行った日を記す』場所です。 

北京故宮博物院200選

東博の北京故宮博物院200選展の感想を書こうと思う。
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先般「清明上河図」のことを記事にしたが、今日は他の名品たちについて感じたことを書きたい。
ただし、わたしの好みに合うものばかりを書くことになると思う。

200点もの名品が海を越えてやって来たのも「日中国交正常化40年記念」の年だからという。
1972年、中国はパンダのカンカン、ランランをくれた。
小さい頃に最前列でパンダを見たが、巨大な白黒の熊だという実感があった。
それでもやっぱりパンダが好きなのは、可愛らしさが先にたつからだろう。
また、旧い中国の文物と、物語に好きなものは多い。
ドキドキしながら展覧会へ向かった。

展示室の入り口から、故宮に装っている。
書画と工芸品の優れものを集めて展示するためには、こうした演出は今や必須だ。
頭の中には「ラスト・エンペラー」の映像が浮かび始めている。

書の名品も随分多くのものがある。
ここでは特に徽宗皇帝の拵えた痩金体が眼を惹いた。
個性の強い文字で、ハキハキした印象がある。
徽宗の書と絵とは別人の手かと思うくらいの違いがある。
絵はまったりしていて、書は鋭い。
面白い個性だと思った。

丁度去年から今年にかけて「関西中国書画展」がリレー形式で開催されていて、そこで見たものがまだ意識に残っているので、今回の展覧会には、ふとした親しみ・懐かしみが胸に浮かんで来ることが多い。

楓鷹雉鶏図軸 李迪  枝を掴む鷹の鋭い視線に慌てて逃げ出す雉。とてもいきいきしている。大和文華館の李迪「雪中帰牧図」にも雉が描かれているが、それを思い出しながらこの雉を見ると、折角鷹から逃げ出したものの、この雉はほっと一息ついたところで、猟師に捕らわれてしまったらしい・・・、とそんな話をついつい捏造してしまいそうになる。

夜合花図冊zen141.jpg
非常に惹かれた一枚。トキワレンゲの花、と解説があるが実物は無論知らない。夜に咲く花だけに、ひどく良い匂いが漂うらしい。
この画像では再現できないが、白い花びらのその薄さと、花びらと花びらの重なり合う薄い翳りに深く惹かれた。
同時代の「出水芙蓉図冊」の牡丹もいいが、しかしこの夜合花の清楚でいて隠れた艶かしさには、かなわない。
まだ完全に開いていない花なのだが、そっと指を添えてその花びらをめくってゆきたい欲望に駆られる。
指にはきっと花のよい匂いがまといつき、夢の中にまで追ってくるだろう。

水村図巻 趙孟頫  今回の展示品の中でも特に世評の高い作品だが、わたしはこの静かな世界が、どうにも落ち着かなかった。
心象風景としての作品だとあるが、わたしがこの静謐な豊かさを悟るには、どれほどの時間が必要だろう。
「清明上河図」の賑わいが恋しい・・・

この世にもうこれ一枚しかないという拓本があった。
碑そのものが崩れて失われてしまったのだ。立派な拓本だった。
・・・・・拓本を見ると必ず、中村不折のコレクションを思い出し、また谷崎潤一郎「瘋癲老人日記」の一節を思う。老人は日記に書いていた。中国人の拓本の巧みさについてを。
そこから老人は自分でも拓本を取ろうとするのだ、仏足跡ならぬモノを。
・・・そしてわたしは必ず脱線するのだった。

行楷書山堂帖 蔡襄  丙午三月帖とも呼ばれている。楷書の文字の中で「花」の字の素晴らしさに強く目を打たれた。
その前年の「行楷書蒙恵帖」でも「花」は良かったが、他に「林檎」の字がひどくよかった。
わたしは楷書がとても好きなのだ。

第二展示室へ行く。
可愛い可愛い工芸品がたくさん待っていた。

・青銅器
饕餮くんの鼎に、ゾウのようなものがついた甗。これらは商代(殷代)の宝。
後世の春秋時代に生まれた「豆」と呼ばれる器は、絡み合う竜を単純化したものを連続化した図案・・・と言ってしまうよりも、ケルト文様にも似た図案、なのかも・・・

戦国時代の方盤は真上から見たので、脚に四頭の虎がいるのは後から気づいた。
プールの中には魚や亀がうようよしている。
これは大和郡山が喜びそうなものだと思った。金魚の世界。

・陶磁器
北宋の汝窯の青磁については近年、東洋陶磁美術館で名品をたくさん見せてもらった。
そのときに学んだこともあるので、その知識を脳から引きずり出しながら、盤を見た。
本当に綺麗なブルーだった。それ特有のブルー。
他に耀州のオリーヴグリーンの瓶、南宋官窯の青磁瓶が鮮やかな色彩を見せていた。
特に後者は貫入が素晴らしい。

・漆器
堆朱の可愛いものが二つばかりある。
梔子を刻んだ盆と、牡丹に梅などの花々を刻んだ壷と。
どちらもとても愛らしい。くどさのない、愛らしさは賞玩したくなる。
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ウィリアム・モリスが原画を拵えたような絵柄の「花果鳥虫彫彩漆大合子」、黄色と赤の「花卉存星盆」もいい。どちらも明の宣徳年間のもの。華やかで愛らしい。
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琺瑯では香炉にいいものがあった。サイドの文様がこじゃれている。
萬暦年間の図案は、現代にも引き継がれているのかもしれない。

・刺繍など
皇帝の衣服などを見る。
乾隆帝のそれにはただただ絶句。やっぱり「中華」は凄いものだ・・・・・
刺繍で拵えられた軸物などを見る。 
刺繍三羊開泰図  可愛い。鳥たちも飛び交い、平和な時間の流れを感じる。
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緙絲極楽世界図軸  仏の世界でも主役は乾隆帝。

・装飾品など
蜻蛉文宝石飾簪、花盆文宝石飾簪 、花文宝石飾髪留・・・清の高貴な婦人はこんな装飾を楽しんでいたのだ・・・本当に可愛い。髪留めは今でもそっと使いたい。

清朝の絵画を見る。
康熙帝南巡図巻 第11巻と12巻 王翬等 康熙30年(1691)  海陸をゆく康熙帝。街中の様子もしっかり描かれていて、「清明上河図」のように人々のさまざまな様子が描かれている。
大きな絵巻物。当然皆さん辮髪。赤い帽子をかぶっている。
12巻のラストでは、人民の人民による皇帝のための人文字がある。
このあたりはもう殆ど、絵師が実は安野光雅ではないかと思うような、とぼけた面白味がある。

更にスゴいものが出た。
雍正帝耕織図画冊、雍正帝行楽図像冊である。
・・・・・雍正帝によるコスプレ画、と言うてはいけないかもしれないが、そうとしか言えない連作もの。
庶民の仕事をする・庶民の装いをする・皇帝と皇后の絵姿。
しかしこれはマリー・アントワネットがプチ・トリアノンで遊んだ「田園ごっこ」ではなく、一種の啓蒙絵画でもあるらしい・・・・・
働くオジさんな雍正帝。
あるときは蓮見を楽しむ高士、またあるときは奇岩の中にいるラマ僧、そのまたあるときは猫に魚を狙われる釣り人、しかしてその実態は~~~ 
ほんと、「七つの顔の男だぜ」というところである。

乾隆帝紫光閣遊宴画巻 姚文瀚  功績のあった臣下たちをねぎらう大宴会の様子。何かパフォーマンスが見える。スケートをしているのか空を飛んでるのかはわたしにはわからない。空を飛んでても不思議ではなさそうである。
食べ物もなかなかはっきり描かれている。

謎解きものがあった。
乾隆帝是一是二図軸  注意力の足りないわたしにはわからないままだ。後ろへ回って正解を見る。納得する。
そしてそこには軸に描かれたと同じ実物の展示がある。
こういうところがいちばん楽しいのかもしれない。

昭陵六駿図巻 趙霖  金代の馬の絵。脚の長くない黒馬が可愛い。唐の頃の馬の三彩像では確かもう少し脚も長かったのだが(笑)。

乾隆帝の部屋の再現があり、それも興味深く眺めた。
満州族の乾隆帝は漢民族の文化を積極的に取り入れている。
先般、出光美術館で「明清陶磁の名品」展を見たが、そのときも清の文物の豊かさに目を瞠った。

ところで乾隆帝はラマ教を熱心に崇めたそうで、ラマ教の仏像がたくさん出ていた。
数年前にラマ教の展覧会を見て以来の実見だった。
しかし自身を菩薩に見立てての「乾隆帝文殊菩薩画像」にはひっくり返りそうになった。
色合いの華やかさもさることながら・・・そうだ、非公認の「料亭」の飾りに似ている、と思ったのだった。

万国来朝図軸、乾隆帝生春詩意北京図軸などはところどころに「・・・だったらいいな~」が含まれているのがご愛嬌な巨大な図。

青玉紅宝石象嵌稜花洗の愛らしさ、銅製鍍金琺瑯亭升降塔飾置時計の七宝部分の細密描写。
見ていて楽しいものが本当に多かった。

これらは2/19まで。
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