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美術館・博物館・デパートでの展覧会を訪ね歩き、近代建築を見て周り、歌舞伎・映画・物語に溺れる日々の『遊びに行った日を記す』場所です。 

松伯美術館「野生の神秘を写す 身近な動物から干支まで」

上村松篁さんと淳之さんの描く動物画を見に行った。
松伯美術館の収蔵品と個人蔵の作品などで構成された「野生の神秘を写す 身近な動物から干支まで」展である。
なお、今回は残念ながらチラシがない。

この父子がとても動物好きだということはよく知られている。
就中、鳥類への愛はただ事ではないことも知られている。
平城山の唳禽荘で260種1600羽以上の鳥類を育てているのは知っていたが、そこが財団法人日本鳥類保護連盟奈良研究所でもあることは、今回初めて知った。
日本唯一の鳥もここにいることは知っていたし、なまじの動物園では太刀打ちできないこともよく聞いているが、そんな肩書きまであるとは知らなかった。
上村淳之さんは日本画家であり、なおかつその研究所の所長さんなのである。

最初に松篁さんの作品を見る。
(作品にはそれぞれ松篁さんの言葉が添えられ、さらに描かれた動物たちの学術上の種族や性質、居住地などが書かれている)

母子の羊 昭和12年に描かれたもの。ポンペイ壁画の「花を摘む少女」のあの静謐で和やかな雰囲気を描きたいと思っておられたそうで、家で飼っていた白羊(実はこれは羊ではなくヤギである)の母子を用いて、その静謐で和やかな雰囲気を屏風仕立てにした。
真ん中にいる斑は「白羊だけでなく黒斑も欲しいな」と思っていたところへ生まれたので、松篁さんは涙が出るほど嬉しかったそうだ。
とてもほのぼのしている。白い子どもは蝶々を追って手を上げている。周囲にはアザミも咲いている。
zen184.jpg
羊と遊ぶ 翌年の作。どうやらあの黒斑が成長したらしい。それを可愛がる姉と五歳の弟。
小さい弟は淳之さんがモデル。さすがに父の見たわが子だけによく似ている。
立っている姉は薄紅梅で羊(ヤギ)を撫でている。
小さい男の子がしゃがんで、羊(ヤギ)を見上げる。なんとも可愛らしい情景である。
この時代は松篁さんのおうちは丁度子どもらがわらわらと運動会してるようなもので、大変和やかでにぎやかだったそうだ。

月夜 更にその翌年。青く明るい夜、きび畑の白兎たち。白兎と書いたが、ジャパニーズホワイトという種類らしい。実はアルビノなのだが、日本の場合「ウサギ=白くて目が赤い」のが普通というイメージがあるので、固有の種として定着しているような錯覚がある。

春静 昭和58年のウサギ。こちらはピンクの石楠花の中で、なにやら眠たそうな顔つきの茶色い野うさぎがいる。松篁さんは野ウサギも飼うていたのだ。

兎Ⅰ 昭和62年は卯年だった。この絵が発表されたときのことをなんとなく覚えている。
関西の一得といってもいいか。2vs1の構図。ここにいる白兎は眼がブルーだった。
zen183.jpg

鹿寄せ 松篁さんご自身がその体験をされて、写真にその姿が残っている。昭和7年、シャツに腹巻にステテコの松篁さん。絵はまだ初期の頃の範疇にある。鹿たちはやたら目が大きい。エジプト壁画風な描かれ方。カノコなバンビもいる。可愛い。

早秋 この絵を見るのは久しぶり。昭和16年の作。松篁さんは京都の家で狐を三ツガイ飼うていたそうだ。老・中・若の三組。こちらは「中年夫婦」の狐の姿。
zen185.jpg
今回改めて、萩が咲き、羊歯があり、さらにバッタがいることに気づく。
ところで松篁さんのコワイ言葉がある。(要約する)
「奈良の家の裏山に狐穴があり、その穴の前に鳥の手羽やウサギの頭があり、桔梗や女郎花の秋草が咲いていた。」
・・・・・・ちょっとしたホラーではないか。それを淡々と書く松篁さんが実はいちばん怖い。

次に淳之さんの作品を見る。
昭和56年にシカ類のブラックバイン家族を描いた対の作がある。
「月に」「夕日に」 牡の逞しいのが月を見上げ、和やかな母と無邪気な子の姿が夕日に包まれている様子。

初めての冬 二匹の狐の遠吠えの姿。平成5年くらいから淳之さんの作品がだんだんそれまでの侘しさをなくし始めるようになった、と勝手に思っている。この絵にはまだどこか侘しさがあるが、それでも所在無げなところはない。

十二支 初見。平成18年に連作として描かれたもの。横長色紙に描かれたような感じ。金茶地に、赤茶色で一つずつ描かれる十二支。仲良しなねずみさん、トロイの木馬のような馬、賢そうな牛、羊とヤギの区別がつかない(!)もの、耳の丸いニャーなトラ、黙って並ぶ大小のサル、茶色いウサギ、朝鮮の壁画風な龍、賢くて勇敢そうなわんこなどなど。
特にわんこがよかった。

大極殿上壁 四神之図試作 平成21年に描いたものだが、玄武の目つきの悪さ、オオトカゲで青銅器風な色合いの青龍、どこかにいてそうな朱雀、賢そうな白虎など。
実際の壁画制作風景の写真もあった。
 
春宵 白兎が木の根元から黙って月を見上げる図。平和を望むような青い眼。平成20年 に描かれたこの作品には淳之さんの良い言葉が添えられていた。
宇宙のどこかに「宇宙の動物センター」があり、動物たちに争いはやめようと厳しい指令が降りてきている、と。
この絵を見ているとわたしもその存在を信じる気持ちになる。

水辺の朝 二年前の展覧会で観たもの。そのときの新作。個人蔵ということになっている。
いいなぁ。これは横長の大きな絵で、銀地にシギ、チドリ、カワセミなどが元気にあふれている図。好きな作品。

ほかにも松園さんの「人形つかい」の本絵と下図などもあり、いつもながらの楽しい展覧会だった。
明日まで。
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コメント
因幡の白兎
 ああそうなんだ 兎は 白いものと思っていて あまみのくろうさぎや 動物園の茶 
 灰色が 特殊と思ってました。
 はるか昔 4年生までの頃 兎と蚕を そだてたことがあるの。 タンポポ採り 
 桑ちぎり 楽しかったですね。父の家の 木のミカン箱 あっという間にそれ一杯
 になった兎の体を思い出します。一月の予定の美術館に行けて 
 ゴースト・プロトコルもクリアしたので、今年は松柏か文華館に いけたらいいな。
2012/01/29(日) 07:52 | URL | 小紋 #-[ 編集]
皮を剥かれて赤裸
☆小紋さん こんにちは

>  兎は 白いものと思っていて あまみのくろうさぎや 動物園の茶灰色が 特殊と思ってました。

いや実はわたしも白兎が一般やと思い込んでまして、茶とかパンダ柄は特異な奴らかと。
そうやなかったのですねー。

うちの親も子供の頃学校の宿題でお蚕さん育てたことがあるそうですが、母はとにかく「ぎゃーっ」だったそうです。
「シルクは好きだけどその前のはイヤ」と言うてます。

奈良は三月からが本格的に面白いので、また春においでください。
ところでわたしは今「Jエドガー」が見たいです。
2012/01/30(月) 12:35 | URL | 遊行 七恵 #-[ 編集]
予告篇
 フーバーと 入れなかったところが すごいらしい。
 イーストウッド監督の上に 母親役が ジュディ・ディンチらしい !
 私も見たいです。予告編の ジュディは はっきり わかりませんでした。
  ディカプリオは かなりな年齢までメイクしてました。
2012/01/30(月) 19:38 | URL | 小紋 #-[ 編集]
コマーシャルしかみてませんが
☆小紋さん こんにちは
イーストウッドの才能には全く恐れ入るばかりです。
うちの母は「♪ローレンローレンローレン・・・ローハイド」からリアルに見てるので、「あのにーちゃんだった人がここまで名監督になるんやなぁ」と毎回言うてますw
どの映画を見てもイーストウッドの眼には驚かされますね。
なんとか二月の真ん中に見に行こうと思います。
2012/01/31(火) 10:38 | URL | 遊行 七恵 #-[ 編集]
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