美術館・博物館・デパートでの展覧会を訪ね歩き、近代建築を見て周り、歌舞伎・映画・物語に溺れる日々の『遊びに行った日を記す』場所です。

東京拾遺 書きそびれていた感想

そろそろ二月も終わりなので、二月の東京で見たものの感想もここで終わらせよう。
ハイカイ録には大まかなことを書いてるけど、感想文に出来ないままなのが何件かある。
けっこうこうした取りこぼしが多いのを反省。


☆東博の常設展示
丁度おひなさまの展示に変わり、雛道具の愛らしいのを眺めた。
三谷ていさんと仰る方の寄贈品。紫檀象牙の豪華な材に蒔絵を施したものが素晴らしかった。
わたしは関西の子供なので、こちらで見るものと違うのが興味深い。
これまでにも名古屋、柳川、信州、大洲など各地の雛道具を楽しんできたが、江戸の雛道具を見るのも楽しい。
地方により違いはあっても、女児の幸せを願うのは同じ。
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大好きな御所人形も出ていた。
この時季は可愛い白菊さんたちに会えるのがうれしい。
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むろん御所人形は関西で多く会えるのだが、箱根の向うで会えると、また喜びが違う。
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他には嵯峨人形などなど。

ところでこやつは土くれの埴輪のハニーちゃんや土偶のドギーくんとはまた一線を画した、キャプテンdogoo。
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・・・海賊にしか見えないのだった。

神仏系では、薬師寺の聖観音の模造品もあったり、興福寺の仏具も色々。
廃仏毀釈で世に出てしまったものがこうしてまとまっていると、ほっとする。
羅漢図に善財くんの旅に鎌倉時代の絵因果経が並ぶ内に、奈良時代の絵因果経も顕れた。
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茶道具は前月から引き続いて出てるのもあったり。
本体も魅力的だが、それにまつわる逸話がまた好きなので、そのあたりを想像するのも楽しい。

浮世絵では春信を見た。SH3B09780001.jpg
他には雪だるま作りの子どもや、ウサギ抱っこの娘さんの絵に惹かれたり。
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特別展の方では、もう「清明上河図」は北京の故宮奥深くへ帰っていったが、それでも他の麗しい作品はまだ人の眼を心を楽しませていた。
随分な人出で、熱気もあった。
のんべんだらりと見て回るわけにも行かず、好きなものだけに集中して眺めて回った。
やはり「夜合花」が好きだが、絵も疲れたか、少し色あせて見えた。
逆にコスプレ皇帝は人目に晒されて、いよいよ元気を増しているようにも思えた。
楽しい展覧会も今では終わってしまったが、長く心に残るのは間違いなかった。


☆書道博物館
東博へ入る前に根岸の書道博物館へ入った。
「みんなが見たい優品」というリクエスト展。
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書のほうはあんまりよくわからないのでパスしたいのだが、それでも気づけばけっこうマジメに見てる。
北京故宮展に出てる拓本の写しもここにあるそうで、それをチェックしておく。
拓本と言えば必ず思い出すのが谷崎の「瘋癲老人日記」の終盤。老人が京都で颯子(息子の嫁に爺さんは懸想しておる)の足裏を拓本するのだが、その前段で中国人の拓本技術の高さを褒めている。
わたしはそれが意識に刷り込まれているので、拓本=中国人の技術の高さ=瘋癲老人日記、という図式が活きておるのでした。

書のコレクターたる中村不折のおかげでこうした名品は残ったんだろうが、肝心の不折の作品は、書よりも油絵にそそられている。
書では「神州一味噌」「新宿中村屋」のロゴなどが有名。
(後日「神州一味噌」のパッケージでロゴを確認した)

今回は島崎藤村「若菜集」の表紙絵がいい。
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☆菊池寛実記念智美術館
ここで備前焼の金重有邦さんの近年の作品群を見る。
ザリザリ感のある備前焼は大物ならともかく小さいものはニガテである。
しかし「用の美」を措いて造詣の美を楽しむなら別である。
独特の景色を楽しんで、明るい気持ちで見て回る。
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ここは「展示する」こと自体にも力を入れているから、一点一点を楽しめるだけでなく、遠景でも楽しめるようになっている。
梅や桜だと「一目千本」というところだが、そんな喜びがある。

それにしても副題の「生まれくるもの」というのは巧い。
なるほど確かにその通りだと思う。

備前焼の赤だけでない色が出ていた。
なんだろうと解説を読んで膝を打ちたくなった。
炭に竹を加えることで、青の発色が生じるのだ。
こうした工夫は体得してこそのものだ。
化学反応により生じることとはいえ、経験から発想がわき、それを実行するのは人の手とその感性なのである。
いいものを見た、とつくづく思った。


☆出光美術館
こちらは三世山田常山の愛すべき急須たちである。
本当にこの展覧会のおかげですっかり急須愛に目覚めてしまった。
深い愛らしさにときめいた人はどれほどいたことか。
常滑焼の面白さを存分に堪能し、自分のお気に入りを勝手に決めて、楽しい楽しい展示に喜ばせてもらった。
再訪して、特に好きになったキューシーにウィンクしてから、去った。


☆石神井公園ふるさと文化館
常設では練馬大根の歴史や練馬駅の再現や祭礼などのジオラマがあったが、なによりも屋外展示の「旧・内田家住宅」がよかった。
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明治20年代初に建てられた民家で、大きな板間にはいろりと神棚と仏壇があり、土間には竈がある。
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上座敷・下座敷・前座敷があり、それぞれ釘隠しも趣向を変えている。
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建具もよく、硝子もいい。
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こういうものを見るのも楽しい。


☆フェルメールからのラブレター展
この展覧会は既に京都で見ているが、今回ブンカムラで見てみると、一層楽しみが深くなった。展示の配置やちょっとした工夫に関しては、ブンカムラのほうが演出力が上だということだ。作品への印象まで変わるほどだから、やはりブンカムラは侮れない。
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☆ルドンとその周辺 夢見る世紀末 展
こちらもやはり京都で見ているが、ただしこの三菱一号館には大きな特徴がある。
「グラン・ブーケ 収蔵記念」という副題の通り、下記の絵が目玉なのだった。
たいへん大きな絵で、びっくりした。
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花瓶の青が綺麗で、こぼれる花々がいい。


二月の東京ではこういう風に楽しませてもらったのだった。
次は3/16~20まで予定。


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コメント
No title
眼福の日々の記録ですね(^ ^)
うらやましか~

旧・内田家住宅はいい建物ですね~
釘隠しも使われてて、零落した元旗本なんかがとうとう邸を処分して、ここに引越したんでしょうか?岡本綺堂なんかにでてくる「古老」が、ここで毎日端然と漢籍を読みながら静かに暮らしていそうな佇まいです。
2012/02/27(月) 23:39 | URL | とんぼ #uaIRrcRw[ 編集]
三浦老人?
☆とんぼさん こんばんは
どうも農家だったようです。

半七にはこうした佇まいは似合いませんが、確かに三浦老人あたりには合うかも。
それや池波正太郎だと「剣客商売」の小兵衛の友人辺りが住んでそうです。
周りが練馬大根の畠ばかりならのんびり出来そうですが、これがスイカ畑だとたちまち怪談へ・・・
2012/02/28(火) 01:10 | URL | 遊行 七恵 #-[ 編集]
No title
ああ、農家でしたか。しかし、いい雰囲気ですね。しかも、よく残ってましたね。

>これがスイカ畑だと
いいですね~!

旧・内田家住宅で蚊帳を吊って、蚊取り線香を焚いて雨戸も閉めずに寝てみたいです。
2012/02/28(火) 23:56 | URL | とんぼ #uaIRrcRw[ 編集]
☆とんぼさん こんにちは

> 旧・内田家住宅で蚊帳を吊って、蚊取り線香を焚いて雨戸も閉めずに寝てみたいです。

いいですね~
ところで練馬は「うどん文化圏」のようです。
併設レストランにそんなことが書いてました。
関東でも群馬はうどん文化圏ですし、そのあたりのことを調べるとまた面白そうです。
2012/02/29(水) 09:42 | URL | 遊行 七恵 #-[ 編集]
No title
ああ、練馬は知りませんでしたが、西はうどん、東は蕎麦という
ばかりではないというのは聞いたことあります。東にも「飛び地」
のようにしてうどん圏の地域があるらしいし、西にもその逆があるらしい
ですね。たぶん、その主な理由は土地の土壌や気候なんでしょうが。

あ、砂場は関西からでてきたんでしたっけ?江戸も昔はうどんだったとも
なにかで読んだ気もします...
2012/02/29(水) 11:18 | URL | とんぼ #uaIRrcRw[ 編集]
そば<うどん
☆とんぼさん こんにちは

蕎麦は土質のわるいところでも健気に育ちますね。
うどんはやはり小麦がどうなんか・・・

> あ、砂場は関西からでてきたんでしたっけ?江戸も昔はうどんだったとも
> なにかで読んだ気もします...

江戸は江戸でやはりうどん食べてたのですが、江戸文化と言うものが成熟し始めると同時に、蕎麦へ移行していったようですね。
永山久夫さんでしたか、昔のお料理の研究家の方の本にそんなことがありましたし、池波正太郎も小説やエッセーでそばとうどんの文化論について面白いことを書いてはりました。

因みに私はそばぼうろが大好きです。
2012/02/29(水) 17:15 | URL | 遊行 七恵 #-[ 編集]
No title
>因みに私はそばぼうろが大好きです
おっと、ズッコケましたよ。
私は小さい頃には普通だった、ダシの利いた黄金色の汁に甘いアゲののった
きつねうどんが好きでしたが。でも、もうそんなのにはお目にかかれないようです。
東京のお蕎麦の方がいいですね、今は。まずは、もりで。

今日、午後から逸翁美術館行ってきましたよ。うなぎはなし..
はじめて入りましたが、あいかわらず、あのあたりは道が悪いですね。
旧宅一階がレストランになっていて、二階の浴室まで公開されてたのには
驚きました。ここまで公開しなくとも..
しかし、財団法人化しないと維持できないほどに日本の民法、とくに
相続税法は特異なんでしょうね。
近衛文麿首相と座卓を囲んでいる写真に見事な成り上がりっぷりを拝見しましたが、
庶民の私ですら、現況を鑑みるに少し寂しく感じました。

コメントがブログ趣旨とちょっと逸脱しすぎですが、まあ、逸翁に免じてお許しを(爆)

池波正太郎は読んだことないので、これからちょっと読んでみます。
お返しに、もしご存知でしたらすみませんが、関西人の加藤一雄という人の
「無名の南画家」、「蘆刈」はいいですよ。最近読んだばかりなんですが(^ ^;
2012/03/01(木) 00:22 | URL | とんぼ #uaIRrcRw[ 編集]
☆とんぼさん こんにちは
逸翁の界隈,道わるいですか。子供の頃から変わらないので何も感じません。
雅俗山荘の公開は、近代建築を学んだり愛したりするものにとっては、「よくぞここまで見せてくれた」と嬉しく思うばかりでした。
随分前に建物の撮影をさせてもらい、色々と説明を受けましたが、なんにせよ建物が守られるのは良いことです。
活用され、穏健な保存がなされるのは、やはり安心いたします。
近代建築を見て回りますと、あれよあれよで失われることが多いので、こうした公開こそ、現在では有効かと思いますね。
丁度ティータイムに行くと、いいムードで給仕され、楽しかったです。

近代の実業家では、わたしは逸翁小林一三がいちばん好きです。
2012/03/01(木) 09:36 | URL | 遊行 七恵 #-[ 編集]
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