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美術館・博物館・デパートでの展覧会を訪ね歩き、近代建築を見て周り、歌舞伎・映画・物語に溺れる日々の『遊びに行った日を記す』場所です。 

中村雀右衛門追悼

先月亡くなった歌舞伎俳優・中村雀右衛門は本当に綺麗で、そして可愛らしい役者だった。
わたしが実際に舞台で見ていたのは1990~21世紀初頭までなので、晩年の姿かもしれないが、雀右衛門はいつ見ても若くて、とても綺麗なひとだった。
特に赤姫などの拵えは絶品で、大仰な理屈も持たぬ深窓の姫君という風情が活きていた。

随分前の日経「私の履歴書」に彼の連載があった。
写りはわるいが、「妲己」の写真や佐々木小次郎を演じたときの写真があって、それを喜んで切り抜いて保存した。
うちの親などは映画俳優としての大谷友右衛門は知っていても、歌舞伎役者の中村雀右衛門は見なかったので、彼が歌舞伎に復帰してからが雀右衛門だと教えると、仰天していた。
映画俳優としての彼は非常に綺麗な青年だったようで、ファンも多かったそうだ。

歌舞伎が地盤沈下していた頃は多くの役者が映画界に行き、日本映画の黄金時代を輝かせるスタァとしてさまざまな役を演じ、その後にはたくさんの作品が残った。
たとえば東映のお子様時代劇では中村錦之助、澤村精四郎、中村扇雀らが活躍し、大映の現代物には二世中村鴈次郎が名演を見せた。
雀右衛門が前名の友右衛門だった頃は美男スターとして人気を集めていた。
わたしは無論リアルタイムには知らない。
しかし調べ物をするうちに色々とそのあたりのことをまなんでゆく。
そして歌舞伎界に復帰し、雀右衛門になった彼の苦労も、芸談や昔の劇評やほかの役者の評伝などで知ってゆく。

今日の夕方、13年前の「本朝二十四孝」の「十種香」が雀右衛門追悼番組として放映された。わたしはその月の芝居を見ていた。
収録された日ではないが、確かにその月の出し物として楽しんだ記憶がある。
綺麗な雀右衛門の八重垣姫と、体調がすぐれぬのが隠し切れず、やせてしまった宗十郎の濡衣、貴公子然とした菊五郎の勝頼、厳めしい羽左衛門の謙信らの姿が懐かしい。
ここに出ていた人のうち、菊五郎と白須賀六郎の団十郎だけが健在で、後はとうとう皆「過去の名優」になってしまった。

雀右衛門は自分の息子や孫世代の相手役が多かった。
芸談で彼は自分の化粧時間の長さとその理由を述べている。
恋人同士で寄り添ったとき、相手役に年寄りだと思われたらげんなりさせる。そうさせないために熱心に顔を作る・・・
まことに良い話だと思った。
だからこそ彼はずっと、若く美しく可憐でいたのだ。

雀右衛門の芝居では赤姫が圧倒的に似合うと思うが、その赤姫も時代物でなく世話物に行くと、また妙な魅力が湧いてくる。
四世鶴屋南北の「桜姫東文章」を雀右衛門は二度ばかり演じている。
最初は昭和40年頃に八世三津五郎の権助を相手に、次に平成に入ってから今の幸四郎の権助を相手に桜姫を演じた。
無論先のはわたしは見ていない。劇評と芸談と資料などで見た限りだが、後年の幸四郎との共演はかなりよかったと思う。

前世で白菊丸と言う美少年だった桜姫が現世で零落して、小塚っ原のお女郎「風鈴お姫」になるわけだが、赤姫が似合う雀右衛門の「お姫」はどうだろうと妙に心配して出を待っていた。
お姫は枕元に前世の相手だった清玄の亡霊が出るばかりに客足が途絶え、とうとう宿元へ返されてしまうのだ。
ここではすれっからしと姫様とのちゃんぽんを見せなければならない。
雀右衛門はニンでいえばやはり赤姫なのだが、さすがに巧い芸を見せてくれた。
このときのお姫の姿は、一時期何かの宣伝に良く使われていた。
世話物でもこれはとても似合っていたと今も思う。

富十郎との舞踊劇「二人椀久」もよかった。
夢幻的なものがとても似合う美貌だとそのとき思った。
小町桜の精、鷺娘、それらも同様だった。

晩年の歌右衛門と島田正吾の共演した建礼門院の芝居では、前半の徳子を雀右衛門が演じた。剃髪して大原に庵を結んでからを歌右衛門。
まだ平氏の盛んだった時代の徳子である。現代語の脚本もいきいきとこなしていた。
門前で兄弟らと語らう立ち姿が忘れられない。

ここまで書いて、他にも多くの綺麗な姿があるのを想う。
脳裏に浮かぶ雀右衛門は本当に綺麗だった。
そしてそんな綺麗な姿を離れた素顔をTVで見たときのことを思う。
コシノジュンコは彼と仲良しで色んなエピソードを話していた。
意外なお茶目振りが楽しかった。
「ジャッキー」と呼ばれて親しまれる理由もわかった気がした。
今度3/23に追悼番組があるらしい。
今はそれを待っている。

本当に綺麗な役者だったなぁ、ジャッキー・・・
ありがとう、中村雀右衛門。
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