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美術館・博物館・デパートでの展覧会を訪ね歩き、近代建築を見て周り、歌舞伎・映画・物語に溺れる日々の『遊びに行った日を記す』場所です。 

シャガール 愛をめぐる追想

シャガールの人気はいつまでも衰えない。
よく知られた作品だけでなく、今になってからどんどん未公開作品が出てくる。
なにしろ多作だったので遺族や財団の人々の真贋チェックもたいへんだろう。
公式な全作品把握ということも出来ないままらしい。

ジュネーヴのコレクターの所蔵品39点と岐阜県美術館所蔵の連作版画「サーカス」38点とで構成された展覧会「シャガール 愛をめぐる追想」を難波の高島屋で見た。
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この展覧会は「シャガール10のナゾ」を打ち出して、パネル解説にも力を入れていた。
たとえば「なぜシャガールの描く人々やどうぶつは宙に浮かぶのか」というナゾの答えとして、「イディッシュ語の慣用語で、(嬉しくて)(驚いて)『空を飛ぶ』『浮いた』という言い回しがあるから」という意味のことが書かれていた。
そうなのか、とシロートのわたしは納得したり感心したりする。
シュールな風景なのではなく、イディッシュ語という背景があるからこその構図なのか、と。

イディッシュ語といえばアイザック・シンガーの「イェントル」を思い出す。
映画ではバーブラ・ストライザンドが主演した。
それから映画「耳に残るは君の歌声」。こちらはイディッシュ語を奪われた少女の遍歴の物語だった。

その言語の持つ含み・広がりは他言語を母語にする者にはなかなかわからない。
ましてやそれが絵画化されているのでは、到底読み取れない。

最初期の作品が一点出ていた。他は皆おおかたシャガールがその様式を完成させた以降の作品である。
なおこれらは日本未公開作品だという。
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婚約者たち 大きな花束を背景にした恋人たちがいる。
この絵のおかげで後にシャガールはフランスからアメリカへ亡命できたのだった。
カーネギー財団から三等賞を貰ったことで。

ソファの恋人たち '48~'49 仲良くしている恋人たち。女の胸に手を伸ばす男。
いちゃつく様子がほほえましい。線太な人物と背景との差異がいい。

テルトル広場 '53 真っ赤な夜。黄色い月。青い裸婦。寺院と逆になった木。こんなところに立ったことはないが、楽しそうな夜だと思った。

窓辺の大きな裸婦 '54 墨絵。室内にいるネックレスだけの女。男の横顔が優しい。

窓辺の母と子 '65 現代の風景。しかしこの母と子は聖母子らしい。時代を超えて活きる聖母子というあり方。
外には三日月、壁にはオレンジ色の牛。

泉のリベカ(レベッカ) '56 青い夜。白い月。ヤギたちニコニコ。赤い女(レベッカ)。水瓶を持つ。

エルサレムのダビデ王 ’72 群集の真ん中にひときわ高い台に立つダビデ王。赤いコートに白いマフのついた装束、白いかぶりものをした王が竪琴を持っている。
竪琴はダビデ王の必須アイテムだが、これは王と言うより町の祭りの一番の楽士に見える。
シャガールは他にも多くのダヴィデ王を描いているが、この王はそんな雰囲気がある。

ロバの横顔の中のカップル ’80 晩年のシャガールは何分割かにした構図を好んだそうだが、左上の黄色・右上のオレンジ・下の黄緑の鮮やかさにときめいた。
チラシの印刷ではそれぞれの色が濃いが、実物はそんなに濃くもない。黄色い月が特にいい。どういうわけかほのぼのといい。

赤と黄色の背景の人たち ’82 木がある。バイオリン弾きがいる。見上げるトリと優しく見下ろすロバと。オジサンと母子と。関係性はよくわからないが、どこか温かい。

この連作版画「サーカス」はヴォラールの依頼を受けて製作したそうだが、完成はヴォラールの死後の1967年だった。
今回の展示は岐阜県美術館の所蔵品だが、国内では他に三重県立美術館なども所蔵している。

「サーカス」の中では特に二人の美人に惹かれた。
緑の馬の上の女曲馬師 金髪で赤いレオタードを着ている。
扇を持つ女曲芸師 青い光を浴びる女。彼女にささげられる花束もある。
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ロシアから欧州の人々のサーカスへの愛着というものを、私は本当には理解できていない。
だから画家の描くサーカスへの想いの深さは、わからないままである。
ただただ、その世界を美しく愛しく思うばかりだった。

この展覧会は京都、横浜、東京日本橋の高島屋を巡回するのだった。

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コメント
先日買った本がシンクロ
私もこの高島屋の展覧会見ました。よかったですね。
タイムリーなことに、その三日前にたまたま買った本。
まだ読了しておりませんが、
「ああ、誰がシャガールを理解したでしょうか?  
―二つの世界間を生き延びたイディッシュ文化の末裔」
が、ますます楽しく読めそうです。

2012/03/15(木) 12:19 | URL | 寧夢 #-[ 編集]
いいタイミング
☆寧夢さん こんにちは

> 「ああ、誰がシャガールを理解したでしょうか?  
> ―二つの世界間を生き延びたイディッシュ文化の末裔」

文化や言語が抹殺される恐怖が深いです。
シャガールのような立場の人が生涯に亙って、自分の母語を作品に仕立て直して世に送り出し続けた、と言うのはすごいことだと思います。
イディッシュ文化は今ではやはり衰退し続けてるのでしょうね。
世界が一つの色に染まるのは、いややわ・・・
2012/03/15(木) 12:53 | URL | 遊行 七恵 #-[ 編集]
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