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美術館・博物館・デパートでの展覧会を訪ね歩き、近代建築を見て周り、歌舞伎・映画・物語に溺れる日々の『遊びに行った日を記す』場所です。 

宮沢賢治・詩と絵の宇宙 雨ニモマケズの心

大丸が四条烏丸に出店して今年で百年だという。
その記念として「宮沢賢治・詩と絵の宇宙 雨ニモマケズの心」展が19日まで開かれている。
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チラシは東逸子さんの「銀河鉄道の夜」。東さんの幻想的で美麗な作風は、この物語にとてもふさわしい。

今回の展覧会は大丸の記念というだけではなく、東北人たる宮沢賢治の、その「雨ニモ負ケズ」の詩を心の糧にして復興をめざそうという気持ちもあるらしい。
実際会場には義援金の箱も設置されていた。

最初に「雨ニモマケズ」の手帳の現物と高村光太郎の手蹟による詩碑の原書が展示されていた。

よく知られているようにこの詩は、賢治の没後に高村光太郎や賢治の弟らが集まったときに、偶然賢治のそのトランクから出てきた手帳に書かれていたのを発見されたのだった。
賢治の詩編のうち最もよく人口にカイシャしているのがこの詩ではなかろうか。全編を知らずとも冒頭の「雨ニモマケズ 風ニモマケズ」と最後の「サウイフ者ニ私ハナリタイ」これらを知らぬ人はまずいないだろう。

棟方志功の'36年の版画があった。青森の志功と岩手の賢治と。賢治の没後三年後の作品だということを想う。

賢治の描いた絵が何点か出ている。
「日輪と山」や電信柱などなど。
ここには出ていないが賢治の描いた猫の絵も好きだ。
「ケミカルガーデン」というタイトルもすてきだった。

ここからは賢治作品を絵画化した絵本原画が現れる。
作品ごとに見て行く。
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「注文の多い料理店」 スズキコージ、飯野和好、高野玲子。スズキコージはスクラッチボードで描き、飯野は水彩画で描く。
実は私は大学の頃宮沢賢治の研究者の先生にも教わっていて、この「注文の多い料理店」での「風」による世界の変化というのを考えたりしていた。

「どんぐりと山猫」 高野玲子、畑中純、田島征三、司修、李禹煥。
昔は「まんだら屋の良太」などのコミックを描いていた畑中純も、今では木版画で絵本制作に専念しているのか。
田島の迫力あるどんぐりたちもよかった。

「セロ弾きのゴーシュ」 名倉靖博、茂田井武。 茂田井の「ゴーシュ」は折りあるごとに見ているが、本当に飽きない。茂田井自身もこのゴーシュへの愛着が深かった。
今ふと思ったが、'80年代初頭に才田俊次が作画監督をしたアニメーションは、茂田井作品に構図が似ているような。
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「よだかの星」 工藤甲人、黒井健、伊勢英子、ささめやゆき。 先般亡くなった日本画家・工藤甲人の「ヨダカ」。私が最初にみた工藤作品はこの原画だった。もう随分前の話だが。
ヨダカがついに宇宙で小さな星になるラストの絵は実に感動的だった。
工藤の作風は幻想的なものだが、それを思うとやはりこの画家が「よだかの星」を描いたのは、とてもよいことだと思った。生まれた作品は何十年たった今でも「よだかの星」のようにきらめいている。
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「オツベルと象」 スズキコージ、荒井良二、武井武雄。
スズキコージの白象たちの襲撃はかなりかっこいい。これは見ていてこっちまでドキドキしてくる。
武井は象よりオツベルがいい。それぞれの違いを楽しめるのは、こんな展示ならではか。

「雪わたり」 堀内誠一。 可愛い。堀内は多彩な作風を見せた、本当に多才な人だったが、彼の仕事では絵本が一番好きだ。

「風の又三郎」 伊藤英子、田原田鶴子、畑中純、吉田佳弘。 畑中の又三郎は端正な少年だった。どの画家もマントを着た又三郎を描いている。ただし吉田佳弘はタイポグラフィーで「どうどどどどーどっどっ」・・・・・ここでは表現できない。

「おきなぐさ」 いわさきちひろ ちひろの墨絵。「黄色のトマト」もちひろの墨絵だった。ちひろの墨絵について、以前面白い展覧会を見た。筆でなく割り箸を削って拵えた筆で描いた墨絵を見ている。

「ひかりの素足」 赤羽末吉、太田大八。 共に「和の美」を描くことに長けた画家。この物語は近年になって読んだが、それだけに印象が深い。二人の幼い兄弟が雪で遭難し、気づけば鬼たちにせかされながら苦しく歩いている。そこへひかりの素足をもつひとが現れ、これからも弟をかばった気持ちを忘れるなと言う。
やがて目覚めた兄は生き返るが、弟はもう冷たくなっていた・・・
赤羽の鬼は「大工と鬼六」などでもなじみの鬼、大八は白い雪のなかで目覚めるシーンが胸に残る。

ほかに驚いたものがいくつかある。
先ほどの「どんぐりと山猫」では李禹煥にびっくりしたが、李はほかに「蛙のゴム靴」も描いていた。
そして中西夏之が「土神と狐」を、高松次郎が「鹿踊りの始まり」「水仙月の四日」を'80年代半ばに描いているのには、本当にびっくりした。
ただしこの三人は抽象画で表現しているので、なにが言いたいのか・どれがどうなのか、全く私には伝わらないのだが。

それにしても本当に賢治作品は多くの人によって絵本化されている。
ここにあげた以外にも多くの作品が出ているし、ここにない絵本も多く知っている。
「カイロ団長」などだとわたしは村上勉のそれが大好きだがここにはないし、片山健の「狼森と笊森と盗森」もないのは惜しい。
一方「ひのきとひなげし」のえぐい話を描いた画家は全く知らない人だったりする。

「春と修羅」「永訣の朝」の賢治の原本があった。
それらを見ているといつも胸がいっぱいになってくる。

冒頭にあげた東さんのほかに司修の「銀河鉄道の夜」もある。さすがに司修らしい、やはり美麗な絵だった。
しかし今回、司修の作品では「雁の童子」の装飾美と、昨年制作された「グスコーブドリの伝記」の小さな連作タブローが非常に魅力的だった。
シュールな美しさが活きている。

それにしても本当に宮沢賢治の作品は深い魅力に満ち満ちている。
そしてその詩文を、思想を絵画化した絵本は、いずれもが心に残るものばかりなのだ。
これまでにも何度か賢治作品を絵画化した展覧会に出向いているが、いつも本当にいいものを見た、と思っている。
この展覧会は3/19まで。
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コメント
銀河鉄道の夜といえば
「銀河鉄道の夜」といえば、そのモチーフを使って、
最近萩尾望都の『なのはな』が出ていましたね。
震災・被爆に絡んでの追悼的な色彩の濃い内容でしたが。
2012/03/15(木) 12:14 | URL | 寧夢 #-[ 編集]
999ではなくに
☆寧夢さん こんにちは

> 最近萩尾望都の『なのはな』が出ていましたね。

近年の萩尾さんの作品は社会性が高いというかメッセージ性の強いものが多くなりましたね。

松本零士は原作に沿った「銀河鉄道の夜」と「グスコーブドリの伝記」を描いてまして、以前読んだときとてもよかったことを思い出します。
2012/03/15(木) 12:49 | URL | 遊行 七恵 #-[ 編集]
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