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美術館・博物館・デパートでの展覧会を訪ね歩き、近代建築を見て周り、歌舞伎・映画・物語に溺れる日々の『遊びに行った日を記す』場所です。 

静嘉堂文庫「サムライたちの美学」 感想補正版

先日軽く挙げた静嘉堂文庫「サムライたちの美学」の感想文の補正版。

静嘉堂文庫で「サムライたちの美学」を見た。
新刀と刀装具にみる粋の心、という副題がある。
チラシは原羊遊斎の「雪華蒔絵印籠」と山浦清麿刀など。
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平安時代から鎌倉あたりの刀はよく博物館で眺めるが、新刀ばかりの展示というのは案外見ない。
江戸時代も太平の世が続くと、刀そのものの存在価値に色々と異議を持つ向きも現れたり、形骸化することもあったりしたが、やはり「刀は武士の魂」というタテマエは生きていた。
化政期の末から天保年間あたりだと暮らし向きのよくない御家人なぞは質屋に刀を預け、竹光を差して歩き、鍔元にだけ本物の剃刀なぞをそっとしのばせて光を見せるという、殆ど「キセル状態」の者もいた。

幕末に異例の出世を遂げ、明治になっても色々と動いた勝海舟の父親・小吉なぞは剣の腕前はそれこそ当代随一だったようだが、生涯無役の貧乏御家人で、町人とも深く交わり、自身も世話役さんの紹介で刀剣ブローカーとして食っていた。
小吉の「夢酔独言」にそんなことがあからさまに書いてある。
剣では食えない武家社会、それが太平の世なのだ。

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南北朝の刀が一振り。長船兼光。これは二尺六寸四分というから80cmの長さを持つ。
刀拵えは明治のものなので、代々伝えられた名刀を、廃刀令以後にも大事にしてきた心根が偲ばれる。

見てゆくと、山城国、摂津国の住人(!)の刀が多い。
桃山時代から江戸初期のものだと埋忠のそれがよく並ぶ。
刀に不動明王図を刻んだものもある。

ほかに堀川国広刀には龍が刻まれている。
播磨守輝広短刀は「星」の字と||の護摩箸が刻んでいる。
初代肥前国忠吉刀には倶利伽羅龍がいる。この刀拵は印伝塗り。

藤原正弘、和泉守国貞、河内守国助、このあたりの刀を見ると池波正太郎の描く人々が思い浮かぶ。

虎徹があった。近藤勇の愛刀も虎徹だった。
時代小説・歴史小説が好きな者は、キャラの使っていたと同じ刀を見ると嬉しさが湧きだしてくる。

薩摩の藤原朝臣正清が享保11年に拵えた刀もかなり長かった。関係ないが梅原猛の戯曲「オグリ」の主人公小栗判官は本名が藤原正清だった。

水心子正秀の文化五年の脇差があった。正秀は復古刀(古刀うつし)の名人だったそうで、その孫婿の水心子秀世は正秀の晩年には代わりに多くの刀を打ったそうだ。
刀剣ブローカーの勝小吉は水心子秀世とも交流があったようで、下母沢寛「父子鷹」では麟太郎を噛んだ犬の逸話などに秀世が現れる。
また石川淳「天門」でも水心子秀世の短刀が主人公の心に常に生きていた。

最後に明治末の帝室技芸員の月山貞一の刀が出ていた。
廃刀令以後の刀。しかしこれは芸術品としての刀になったのだろう。そう思うと何か哀しい。

刀装具を見る。
後藤家代々の宗家の仕事を見る。
倶利伽羅図、十二支図、稲穂図、宇治川先陣図、屋島合戦図など。小さくても繊細な仕事。
刀ツバも手の込んだものが多い。それぞれの職人技が光っている。
小柄や印籠やツバなどは後藤家の作品が多かったが、埋忠のものもいくつかあった。
埋忠(ウメタダ)は「忠義を埋める」とも読めるから「梅忠」にせよと施主の板倉所司代に言われた。
その名で拵えたツバがある。
「梅忠」・・・梅川忠兵衛しか思い出せないが。
他にもブドウなしのブドウにリス、飛瀑猛虎、植物柄などなど・・・
カザール・コレクションや芦屋の俵美術館のコレクションを思いながら見て回る。

その中でも文字透かし文鍔が非常に面白い。
小野篁歌字尽から採ったもの。「慕募暮蟇墓幕」。
蹲に「吾只足知」があるが、ニュアンスは違っても日本語の面白さを楽しめる。

羊遊齋の雪華蒔絵印籠はキラキラキラキラしていた。
雪の結晶をモティーフにしただけに、煌くと眩しい。
「雪花」ではなく「雪華」。その言葉にわたしは赤江瀑「雪華葬い刺し」を想う。
雪の膚に刺青を施すあの物語を。

蒙古襲来蒔絵印籠は幕末のものだが、この絵を見て山口晃画伯を思い出した。
人人人が勢いを見せる構図。

また四条河原遊楽屏風の左隻を見た。
川魚を掬う人々、ヤマアラシの見世物、風流踊りの小屋などなど。
ヤマアラシの表情が存外はっきりしているのに気づいた。
檻の中にいて何かフーッと怒っているらしいが、杖の先の肉は食い散らかしている。
小屋の入り口に掲げられたヤマアラシの絵看板はリアルで、お客はそれを見て中に入ってゆく。
風流踊りの花笠が綺麗。
向こうでは佐渡島座の歌舞伎興行の最中。「うきよ▲▲大かぶき」とある。
太夫二人が三味線をジャカジャカ弾いている。
その外ではワケありいちゃいちゃカップルが行く。
さらには南蛮装束の芸人による犬芸の小屋、大女の見世物などなど。
駕籠かきもまた洒落ている。
装束の柄もされざれ凝っている。タコ柄、花柄。

興味深い展示だった。3/25まで。
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