FC2ブログ

美術館・博物館・デパートでの展覧会を訪ね歩き、近代建築を見て周り、歌舞伎・映画・物語に溺れる日々の『遊びに行った日を記す』場所です。 

青梅信金コレクション展

青梅信用金庫コレクション展を青梅市美術館まで見に行った。
関西の片隅に住まうわたくしが青梅の場所を知らぬのも無理はないと思っていただきたい。
路線図で探して「ああここか」と思ったものの、実感などない。
八王子までは入ったがその先を知らないわたしは、朝から随分遠いところへ来たなと思うばかりだった。
やがてうとうとし始め、殆ど寝入ったところで青梅についた。

駅から住宅街を抜けて坂の下に美術館があった。
そこへ入る。いい建物だと思った。
展示室は四つあり二つがその青梅信金コレクション展に当てられていた。
40点あまりの近代日本画が飾られている。
最初に川合玉堂の作品が多く並んでいた。近くの御獄にも玉堂美術館があり、やはり青梅といえば川合玉堂、というイメージが強い。
田植えに勤しむ人々の様子を遠景にした「五月晴れ」、梅の咲く山家を描いた「河畔梅家」、柿の実の赤い、小春日和の昼、母子が庭先で草鞋作りに精出す「小春」、芦刈の人々の「新月銀波図」など、農村や漁業に励むかつての日本人の姿を優しく描いた作品を見た。
zen303.jpg
わたしが好ましく思ったのは松に止まり毛繕いする八哥鳥を描いた作品だった。
墨の濃淡で羽毛の質感がよく出ている。

目を転じると緑の広がる竹内栖鳳「水郷」、雲霞広がる横山大観「杜鵑」があった。
どちらもそれぞれの作風がよく出た温厚な作品。

小林古径の「水仙」を見て、わたしは「たけくらべ」を想った。あの小説のラストシーンには水仙の造花が現れる。少女と少年の心の花・水仙。
ここに描かれた水仙こそ美登里の胸に抱かれた水仙のように思われた。
zen305.jpg

川端龍子といえば会場芸術を標榜した作家だけに、大作を思いがちだが、ここにある「菊三茎」はそんなに大きなものではない。
しかしこの絵を見た途端、激しく胸を衝かれた。
zen304.jpg
赤い菊が三本ある。真ん中はもう明日には散るであろう満開の菊、向かって右は開きかかっているのか散りかかっているのかわからない花のそよぎを見せ、左の花はまだ堅く蕾でいるのだ。
それぞれの花は風に身を躍らせている。緑の葉は表と裏の質感もあからさまに、柔らかさよりむしろ掌や指先に苛立つものを感じさせる。
この赤い菊は薄く血を吸うているように見えた。
非常に魅力的な花だった。

前田青邨の二枚の花の絵はどちらも背景に、抑制された金とも赤さを見せる銀ともつかぬ色を持っていた。
「山茶花」は赤いものが二つ、白にピンクの裾を持つものが多数咲いている。
「梅」は青邨の「梅様式」を外すことなく、くねる枝振りを見せながら、可愛く白梅をそこかしこに咲きちりばめている。
奥にはふくよかな月が出ている。

モダニスト山口蓬春の「瓶花」は回青に包まれた瓶に活けられた散り椿が描かれている。瓶の絵柄も綺麗だが、そこにある椿の美しさには、深いときめきがある。

山本丘人、東山魁夷、奥田元宋らの遠景を描いた風景画を楽しんだ後、伊東深水の「ささやき」を眺めると、不意に現実に引き戻されるような感覚がある。
しかしそれはわるい気持ちではなかった。

花の絵ではほかに佐藤太清の「椿」がよかった。白地に被せる紅が強く、椿の葉の重みが心地いい。
そして濱田台児の「桔梗」は紫の花も良いが、それをいける八角白磁瓶がまたいい。逆立ちするような虎の絵が可愛らしい。
zen306.jpg

福王寺法林「木蓮」は外が濃く中が白い木花を描いている。この花が本当に咲き出せば春も本番になる。

大山忠作の鯉、松尾敏雄の牡丹、加山又造の琳派な鶴、いずれも作家の得意とするテーマの作品が並ぶ。
見て回るだけで和んでくる。好悪とは無縁な感情が湧いてくる。いいものはいい、ということばかりが思い浮かぶのだ。

平山郁夫の「鴨」に少し違和感があった。平山の絵とは思えなかった。どちらかといえば須田国太郎の絵に近い。
そうしたちょっとした違和感も面白い。

機嫌良く見て回ってから、小島善太郎記念室に入ると、さっきまでの近代日本画とは違う不思議な味わいがあった。
小島は晩年はこの青梅で後進の指導に励んだが、それ以前は独立美術協会に属していた。
その時代の小島の絵には激しい力がみなぎっていた。
わたしは独立美術が好きなので、嬉しくて仕方ない。
林武、児島善三郎ら同志の作家の名品を思い出しながら眺めると、いよいよその時代の感覚がこちらの胸に押し寄せてくる。
zen302.jpg

上は1917年の「梅木」下は1972年の「春の喜び」。
どちらも小島の歩んだ時間を感じさせるいい作品。
「梅木」には若い小島のみなぎる力強さが活きており、「春の喜び」はいい具合に力の抜けた、どこかシュールな面白味が生きている。

晩年の1984年「花」はいよいよシュールに深みが加わる。
紫の花瓶に赤いスパティフィラムを始めとした明るい花々が活けられており、その背景は青と黄色で二分割されていた。
どこかこの世の花ではない花に見えた。
フォーヴにシュールな味わい。それが小島の作品の面白味のような気がした。

いいものをたくさん見せてもらい嬉しかったが、時間が詰まっているので青梅を堪能はしなかった。今度は武蔵小金井のオバをつれて青梅で一日遊びたい、と思っている。
関連記事
スポンサーサイト
コメント
青梅!
んまあ、青梅美まで行かれました?
お疲れ様・・・
小澤酒造の 澤の井!
東京都の貴重な酒蔵が青梅にありますね。
青梅は魅力あるところですが、
私は一番に 澤の井 が思いつきます・・・・
2012/03/26(月) 03:13 | URL | Baroque #-[ 編集]
澤の井!
☆Baroqueさん こんにちは
今度行く予定です。澤の井さんだけでなく玉堂や昭和幻燈館など。櫛笄なんてのも本当にいいですね。
わたしはカミガタ人なのでよそのカミガタの飾り物を見るのが楽しみです。
お酒もどうなんでしょう、さっぱり系なのかな・・・楽しみ♪
2012/03/26(月) 16:09 | URL | 遊行 七恵 #-[ 編集]
コメントの投稿
管理者にだけ表示を許可する
最近の記事
月別アーカイブ
カテゴリー
全ての記事を表示する

全ての記事を表示する

フリーエリア