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美術館・博物館・デパートでの展覧会を訪ね歩き、近代建築を見て周り、歌舞伎・映画・物語に溺れる日々の『遊びに行った日を記す』場所です。 

三都画家くらべ 京、大坂をみて江戸を知る 1

「春のまつり」と言えば、ストラヴィンスキー「春の祭典」、山崎パンやPascoの「春のパンまつり」、そして府中市美術館「春の江戸絵画まつり」が思い出される。
その府中市美術館「春の江戸絵画まつり」をいつも大いに楽しませてもらっている。
今年は「三都画家くらべ 京、大坂をみて江戸を知る」展。
何かと忙しない近頃だが、ここで浮世の春を楽しもう。
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2期に分かれての展示は3/17に始まり、4/15までを前期・4/17から5/6を後期とする。
二日目に出かけたが、これは早く来ていてよかった、と思う展示だった。
なにしろ面白い。
面白すぎる、と言ってもいい。
「春のまつり」とはいえ、この企画の面白さは尋常ではない。
「京、大坂をみて江戸を知る」とは言うものの、京と大坂の絵の面白さがフツーではないので、江戸がとてもおとなしく見える。

江戸時代の絵画はこの二十年の間にその面白味が多くの人々に認識されるようになり、ことに18世紀の京の絵師たちの百花繚乱ぶりには、見た人皆がファンになるくらいだった。
その京と江戸の陰に隠れるというより、殆ど打ち棄てられていた大坂の絵画の諧謔味が少しずつ世に知られるようになり、こうして遠い府中で展示されるのは、感慨深いものがある。
これまでは大坂の絵師の仕事を見ようと思えば、本拠の大阪ではなく隣接する西宮や芦屋で見なくてはならなかったのだ。(頴川美術館、芦屋市美術博物館など)
その意味で今回の府中市美術館の企画は、大阪の片隅に住まう一ファンとして、まことにありがたくもあった。

展示は5項目に分かれている。比較展示である。その方法はいいと思う。
そうすることでワクワク感が生まれ、眼もまた広がってゆく。
それぞれの展示を、時間をかけて楽しんだが、膨大なので少しずつピックアップしていきたい。

1.三都に旅する
このタイトルを見てJRのCMを思い出した。谷村新司の歌声が蘇る。
♪昨日今日明日~というあれ。チンペイちゃん(かつて関西では彼はそう呼ばれていた)の歌う三都は京阪神なのだが、ここでは無論京・大坂・江戸である。
(後に図録を読むと、冒頭にこのCMのことが書かれていた。やはり現代の共通認識なのだった)

<京>
比喜田宇隆 四条河原夕涼図 賑わっている。描かれた人々に個性はないが、その楽しげな様子は遠目にもよくわかる。
床というより床机または露台のようなものを川に出して客を寄せる茶店もあれば、開け広げた店の中から客を呼ぶ女もいる。ちょっと酔っ払って客にも誰ながら歩く芸者もいれば、笛を吹きつつ流す按摩もいる。
南座らしき芝居小屋が夕闇に隠れながらも見えている。現代の場所と比較すると、「ああ、あの店はあれか」と知るものはまた楽しめる。二階を持つ店にはすだれが掛かっている。
今でもしばしば見かける様子である。そこでは三味線を弾く手も見えるから、もうダレゾはあがっているのだろう。
しゃがんでなにやら楽しげに語らうカップルもいた。
それを思うと、現在の鴨川の河川敷の等間隔に座すカップルたちの先祖のようなものか。

比喜田宇隆 やすらい祭・牛祭図巻 こちらは先のと違い、ロングではなく近くからの様子を眺める。赤い装束の人々が鉦や太鼓を打ち鳴らしながら練り歩くのは「やすらい祭」である。花の咲く頃だったか「やすらえ、花よ」と言うて厄神を払う祭だったように思う。
装束だけでなく緋のシャグマもつけて歩き、先頭には花傘を持つ人もいる。
一方の「牛祭」は太秦・広隆寺のお祭で、お面をつけて近辺を練り歩く。他の絵師の手によるものも見たし、実際に使われる「マダラ神」の面なども京都文化博物館で見ているが、これも奇祭としか言いようがない。
わたしはどちらも現物を見ていないので、ちょっと来年あたり見に行きたいと思っている。

山口正鄰 岩倉・松ヶ崎村祭礼図 洛北の祭と言うものはまたわたしは無縁で、絵を見て感心するばかりだった。岩倉は7/14、15の灯篭祭で、松ヶ崎は題目祭ということだ。
絵はなかなか近代的で、それが却ってイミフなものにする。
松ヶ崎は五山の送り火(大文字焼)のとき「妙法」の文字を山に浮かび上がらせるから、妙法と題目との関連があるのはわかる。きっとあの界隈は法華宗の住人が多かったに違いない。しかしこの居並ぶ女たちのポーズはなんなんだろう?手つき・腰つきだけを見れば早乙女にも見える。
岩倉のそれは女の人がそれぞれ頭上に式台のようなものを載せている。その上には拵え物がある。向って左から、唐獅子と牡丹(石橋)、大ハマグリと城の幻(蜃気楼)、紅葉とヤカンなどである。男たちが音曲を担当している。

京都は365日いずれの日もどこかで祭が行われているのだ。

<大坂>
丹羽桃渓・玉東・関玉 住吉汐干狩図 三人の絵師の合作。母と娘にオジサン。左手奥に住吉さんの高灯篭が見える。昔はこのあたりで潮干狩りも出来たらしい。先般東博で見たボストン美術館所蔵の名所図会にもそんな絵があった。
母と娘は彩色がやや重いが派手な柄の着物を着て楽しそうに笑い、後ろのおじさんは指をカニに挟まれて笑っている。
全般に和やかで楽しそうな雰囲気の絵。
昔はここから徒歩か駕篭というところだが、今なら路面電車の阪堺電気軌道で帰宅してほしい。

合作 浪華勝概帖 幕末に近い頃の大坂の名所図会。1ページ物に仕立て上げられていて、楽しく眺めることが出来そう。絵師により雰囲気も違うが、総じていい絵である。
桜ノ宮の桜、町内で盆踊り、堂島の米市場の賑わい、秋の難波橋(この頃はまだ今のようにライオン像はない)、天神祭(えべっさんの人形まである)、松ヶ鼻、大坂一低い「天保山」。今なら海遊館とツタンカーメン展で賑わっているだろう。

中村芳中 盆踊り 琳派というより蕪村や呉春のような俳画味のある楽しい図。町人たちの楽しさが表情や身振り手振りからにじんでくる。
ああ、わたしはドンドンパンパンくらいしか踊れないなあ。

<江戸>
歌川豊広 両国夕涼ノ図 若い女(長い袂が風に泳ぐ)、やや年上の女(黒の絽が涼しそう)、荷物を背負い傘を持つ小僧の三人が、川端を歩く図。
娘の帯は宝尽くし柄。対岸には店屋も多く見える。判の位置が夕日のように見えるのも面白い。

鳥文斎栄之 品川・佃島風景図 たいへん静か。ずぅっと遠くの眺め。

2.花鳥くらべ
これは前期だけの展示。たいへん見ごたえがあった。
後期は人物画くらべに変わる。そちらも楽しみ。

<京>
俵屋宗達 春日野図 薄墨でくつろぐ牡鹿を描く。頭が大きく口元の細い鹿。藤らしき植物が見える。ちゃんとツノが生えているが、まだまだ少年ぽい鹿。耳が可愛い。

土佐光起 秋草雉子図 雉のカップルが秋草の中をデート中。楽しそうに語らっている。
さすがに大和絵らしい上品さがある。

尾形光琳 桔梗・水仙図団扇 金地にそれぞれ桔梗と白い水仙が描かれている。
地の白さが残る水仙と、躍るような桔梗と。それぞれいい感じの団扇絵。

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吉村孝敬 竜虎図 敵対なんかしません~それぞれの立ち位置でポーズを決めてるだけです♪、な竜と虎。特に手前の虎の可愛らしいこと。ふと短い手足も伸びた尻尾も毛並みがよくわかる。爪もきれいに並んでいて、得意げな顔も可愛い可愛い。

長澤芦雪・呉春ほか 花鳥図 長春花に白梅、小禽たちと黄色い蝶々と水面に亀。吉祥図と見てもいいと思う。手の違う絵師たちのコラボはなかなか面白い。
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<大坂>
林閬苑の描く鶴や白孔雀は妙な質感があり、鳥が苦手のわたしは逃げ出したくなった。
中国絵画に学んだらしいが、南蘋派とはまた別系統のようだ。
孔雀には牡丹がつきものだが、ここに描かれているピンクの牡丹と青灰色がかった紫の牡丹とは、日本の絵にはないような迫力がある。それが中国絵画を勉強した成果なのだろうか。

森狙仙 猿図 出ました、猿の狙仙。これはまた可愛らしいエテさんたちで、一匹は手の甲の虫取りに熱中し、その丸い背中にもう一匹が肘をついてくつろいでいる。
仲良しさんな二匹のエテ。いかにも狙仙の描く可愛らしさが活きている。
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泉必東 菊花小禽図 紅白の菊が派手で岩上の黒いトリがまたいい味を出している。
蘋派の絵師と言うことで納得する。

上田公長の孔雀がいた。さっきも応挙の孔雀がいたが、どちらもスルーしている。
公長のベストは逸翁美術館の猫図だと思う。そちらを関東の人にも紹介したい。
しかしこの孔雀の背後の白牡丹は花びらの質感がリアル。

森徹山 寒月狸図 見上げる狸。尻尾がくるんとしている。可愛い。狸には違いないが、猫にもこんなのがいる。大概可愛らしく思う。この狸もちょっとばかり撫でてみたくなる。

<江戸>
狩野探幽 四季花鳥図 探幽が狩野派の伝統を変えた、ということを改めて考える。
確かに前代の狩野派の人々の絵とは違う。
この四季図を見ていると、非常に静かなものを感じる。わたしは夏の燕が飛び交う図が気に入った。
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宋紫石 柳汀双禽図 南蘋そのままとは違う、一種の静けさがある。キンケイとかいう鳥のオスは派手な着物をまとうが、メスは地味である。まるでアリアを歌うテノールのようなオスだが、目線はしっかりメスにむいている。メスは知らん顔なのがいい。

酒井抱一 白梅雪松小禽図 信楽か常滑か、そんな大瓶に白梅が活けられている。元気のいい生け花。こういうセンスはかっこいい。
一方では楽しそうな福良雀が仲良くおしゃべりする図。可愛くて掌にしまいたくなる。

葛飾北斎 宝珠を搗く月兎 杵の中に赤や青の宝珠がコロコロ入っていて、茶色い衣を着た兎がマジ顔でそれを搗こうとしているところ。吉祥図と言うよりちょっとホラーに見える。

ここまで見終えたとき、スライドレクチャーがあるというので、折角だからと飛んでいった。かなり面白く伺った。自分の思っていることもあながち間違いではないなと思ったり、「なるほど~いいことを聞いた!」があったりの、楽しい時間だった。

続く。
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