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美術館・博物館・デパートでの展覧会を訪ね歩き、近代建築を見て周り、歌舞伎・映画・物語に溺れる日々の『遊びに行った日を記す』場所です。 

ザ・タワー 塔と都市の物語

ザ・タワー 塔と都市の物語
いいタイトルだ。とても魅力的なタイトルだ。
これを見ただけで行かねばならない、と思う。
そして行ってみると、予想以上の満足があった。
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江戸博の特別展は東京スカイツリーが完成した記念と言うことだったが、それでなくてもついつい足が向く展覧会だと思う。
ヒトは何故そんなにも塔が好きなのか。
「バカと煙は高いところへ」と言う憎まれ口もあるが、高所恐怖症でない限りは高いところへ行きたがる人は多い。
昔の歌にもこんなのがある。
高い山から谷底見れば・・・   ちょっと古すぎたか。
しかしこれは何も日本人の特性ではなく、世界の人類共通の嗜好ではないか。
嫌いならバベルの塔はありえないし、ストゥーパも地中化する。

会場へ入ると、まず最初の章として「人はなぜ塔を建てるのか」が始まる。
改めて「なぜ」と訊かれて答えられる人はいるのだろうか。
人類は人類として歩き始めた瞬間から、高いところへ向かいたがるのではなかろうか。

バベルの塔を描いた銅版画や本を見る。
画家の手は違うが、イメージは同じである。
螺旋状(あるいは階段状)に積み重ねられてゆく塔である。
古代の土木技術ではこうした大の上に小を重ねてゆく工法が採られたのだ。
わたしはバベルの塔といえばボッシュだけでなく、横山光輝原作の「バビル二世」を思い出す世代だが、あの物語では地球に不時着した異星人バビルが母星への通信塔として現地人に建てさせたが、科学性がないためのヒューマンエラーで壊れた、という設定だった。
それもまたありえそうな話だと思いもする。

薬師寺の水煙の模造品があった。大きい。天女が左右に三人ずつついている。
「凍れる音楽」は塔の上にある。
少し前までの日本では「塔」とは全て仏教用語だったらしい。
谷中の五重の塔の在りし日の錦絵や焼け残りが出てきた。
谷中の人々は今もこの塔の再建を望んでいるのだろうか。

塔で思い出したが、上宮王家が滅びたとき、一族は塔にこもって散華したのだった。
またグリム兄弟の採集した物語に活きるラプンツェルは、高い塔に閉じ込められた少女だった。長い髪を塔の下へ垂らして王子を招く。
諸星大二郎も塔を描いている。「塔に飛ぶ鳥」は非常に魅力的な物語だった。絶望と諦観とがそこにある。
「高い塔の男」、「塔に降る雪」、「幽霊塔」・・・塔を背景にした物語は尽きることがない。

明治になり、江戸時代からの名所・芝の愛宕山に「愛宕館」と「愛宕塔」が生まれた。
その辺りの錦絵や版画を見る。織田一磨のほぼ百年前の愛宕山は静かだった。
わたしは'90年代の末頃しばしば愛宕山にでかけた。NHK博物館へ行くためだった。
まだその頃は御成門に松岡美術館があり、慈恵医大の見事な建物もあって、あの界隈を歩くのが好きだったのだ。
もし今もまだ愛宕塔があれば、わたしはきっと昇っていたろう。

江戸の人々の富士山への愛着はただ事ではない。府内に町内に砂を盛って、富士に見立てたり、低い山を▲▲富士と呼び習わしてプチ登山をし、木造のハリボテ富士を拵えたりした。
中には見世物で偽物の富士の中に活き人形をおいて、リアルに仕立て上げているところもあるのだった。

エッフェル塔の資料を見る。今ではなくてはならないランドマークも、かつては冷遇されていたことを知る。
放射線状に延びる町並みの地図を見るのも楽しい。
他にリヴィエールのエッフェル塔三十六景や東京タワーを描いた笠松紫浪らの版画もあり、楽しく眺めて歩く。

浅草凌雲閣は多くの資料を見ている。
随分前に大阪の土佐堀通りにあるギャラリーで特集展示があり、そのときも楽しく眺めた。
関東大震災でこわれてしまったが、大正時代の人はここで買い物をしたり望遠鏡であちこちを眺めたりしたのだ。
十二階下と呼ばれる私娼窟が出来たのも当然だった。
上村一夫「修羅雪姫」には明治23年のその様子が描かれ、同じく「菊坂ホテル」には大正九年の凌雲閣の様子が面白く描かれている。
ここでは双六が楽しい。
特に三世国貞の描いた双六には、凌雲閣のどの窓からも人が出ているのが面白かった。
そういえば数ヶ月前に西浅草の図書館で凌雲閣関係の資料展があり、実に多くの本が出ていることに感心した。
そのときは久しぶりに「帝都物語」を堪能したのだが。
他にも「浅草紅団」「押絵と旅する男」などがある。

凌雲閣では美人コンテストを行い、その写真を階段に貼り付けて、客を上の階へと誘導していったそうだ。
その写真は小川一眞によるものだというから、豪勢な話だ。
明治美人の数々。

ルナパークというものがあった。跡地は今の天王寺公園である。
橋爪紳也さんのコレクションが江戸博にきていた。それだけでも嬉しい。
丁度百年前の通天閣の絵葉書がたくさん出ている。

明治から大正の内国勧業博覧会は非常に面白い。それを追った展覧会をぜひどこかで見てみたいと常々思っている。
堺の水族館、上野公園のイルミネーション、猩々たちの持つ水瓶から水があふれる噴水、夜光絵葉書、ルナパークのきらめき、ありとあらゆる娯楽がそこにある。

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近代へと展示が進む。
東京タワーの登場である。
以前、INAXギャラリーで塔博士たる内藤多仲博士の展覧会があり、東京展では博士の自邸を見学するという、素晴らしい企画があった。
博士の邸宅では、タワーの構造計算書なども見せてもらえた。
わたしは建物の良さに惹かれたが、さすがに素晴らしい構造だと思った。
そういえば、東京タワーはもう少しすれば、芦屋の原コレクションの鉄道模型展が開催される。
「月刊東京タワー」という本もあったのだなぁ。
そういえば「聖☆おにいさん」でもブッダとイエスがアナンダをつれて東京タワーへ行って一騒動おこすエピソードがあった。あれも楽しい話だった。

各地に建つタワー写真も見たが、それを見ていて思い出したことがある。
以前東京都現代美術館でみた、未構築の建物をCGで作成した写真で、ソ連の「第3インターナショナル」の塔。あれも不思議な塔だった。
また見てみたいと時々思っている。

図録もとてもいい出来。5/6まで。
常設室では千里の太陽の塔の金ぴかな顔が設置されていた。
上からあの丸顔を見て、その大きさに感心した。
通学で毎日見ていたが、改めてびっくりしたのだった。
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