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美術館・博物館・デパートでの展覧会を訪ね歩き、近代建築を見て周り、歌舞伎・映画・物語に溺れる日々の『遊びに行った日を記す』場所です。 

金沢八景いま昔

「金沢文庫」という名称を知ったのは、鏑木清方の随筆からだった。
彼の別荘が金沢文庫にあり、夏の金沢文庫暮らしの楽しさをその文から味わった。
読んだ当時、まだ学生のわたしは金沢文庫が神奈川県とは知らず、石川県の金沢かと思い込んでいた。
ただ、清方は乗り物恐怖症なのにどうやって石川県くんだりまで出かけたのだろう、とずっと思っていた。
同じようなカンチガイは他にもある。

小学生の頃、石森章太郎(当時)の「さんだらぼっち」をリアルタイムに読んでいたが、そこで「大山詣で」が描かれていた。
大山がオオヤマとは知らず、わたしは伯耆大山(ホウキ・ダイセン)だとばかり思い込んでいて、江戸の人はよく歩くと言うが新幹線もなしによく鳥取まで(以下略)。

お江戸の人の大山がこれまたやっぱり神奈川県にあることを知ったのは、金沢文庫より更に遅く、東京ハイカイするようになってからだった。
友人が伊勢原に住まうようになり、訪ねたときに初めて「オオヤマ」を知ったのだ。
なにしろ伯耆大山は志賀直哉「暗夜行路」のラストシーンの場であり、大阪北摂の小学生の林間学校の人気スポットでもあり、そちらはよく知っていたが、オオヤマは関東の人気スポットなので、無縁なのは仕方ないと言うことにしてほしい。
おまけに「さんだらぼっち」の中で「大山土産」としてキャラ蕗を炊いたものが出てくるので、いよいよこれは伯耆大山だと思い込んだのも当然だった。

さて話を戻し、元の金沢文庫。
鎌倉時代の歴史をきちんと学んでいれば「ああ」と来たろうが、なんとなく平家滅亡のウラミがまだ続いていたわたしは、軽くスルーしてしまったのだった。

その地の今昔の姿を追った展覧会が、当の金沢文庫で開催されている。
「特別展 金澤八景いま昔 -初公開 楠山永雄コレクション- 
金沢八景に関する資料の収集家として有名な楠山永雄氏のコレクションを一挙に公開する初めての展覧会。千点を超える楠山コレクションの中から、金沢八景を題材とした刷り物、浮世絵、古写真、絵葉書、パンフレットなどを展示します。]
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またこういうものが本当に好きで仕方ないので、急遽予定を変更して金沢文庫へ出向いた。

吉田初三郎の鳥瞰図などもあり、それがまた面白い。
さすがは吉田で、遠く日本ラインなども描きこまれている。
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金沢八景の細かい名称も知らないので、今回ここで知ることが出来、嬉しい。
本家の中国と、近江八景しか知らないのだ。
旅行パンフ、ガイドなどの類も楽しくて好きだ。また昔のそれは今のと違う魅力がある。
今は全国津々浦々(この言葉も古い)、居ながらにしてどこでも見ることが出来るが、往時は隣のクニのこともわからないほうが多かったのだ。
だから昔の日活映画のドル箱「ギターを持った渡り鳥」シリーズはロケ地を変えて続けていったのだ。
作品に、全国のちょっとした風俗や踊りを取り入れ、他国の面白さをもアピールし、映画をより面白く拵えたのだった。
そのあたりのことは映画プロデューサー児井英生の自伝に詳しい。

広重や北斎の風景画がある。
いずれも刷物。なるほど金沢八景である。
しかしここに出ていた北斎の刷物がひとつ非常に興味深いツクリを見せていた。
牛島憲之のシュールな風景画に似ているように思う。
北斎の風景でこんな形容のものは見たことがない。
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浮世絵などだと画家の個性を除いても、リアリティをどこかしら感じもするのに、この絵ばかりは現実を離れ、時代を飛び越え、温度を失っている。
妙に心に残る絵。

わたしが惹かれたのは小栗判官と照手姫の物語を描いた浮世絵とビラなど。
こちらの小栗の話は説経節のそれとは違い、地に伝承されている小栗満重の子・助重の話。
(梅原毅の戯曲、近藤ようこのコミックは説経節をベースにしたもの)
ここにある絵は「小栗実記」に典拠している。
物語の概要はこちらのサイトが面白く読める。
絵の構成も非常に面白く、1シーン1シーンの連続性にもときめいて、これを見れただけでも良かったとおもった。
相模の国の横山とは知っていたが、この展覧会に出てくるとは予想していなかったのだ。
芳幾の浮世絵。
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ビラは右から左へ見る構成で、丁寧に一こま一こま描かれている。なんと言うても面白いのは上野が原に捨てられている小栗と十勇士たち。蘇生した小栗を見出す遊行寺の上人がいい。秋の野っ原に打ち捨てられている状況を見るだけでもゾワゾワした。
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他に国周の一枚絵で照手姫の松燻しの場などもある。
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清方の金沢文庫の別業(別荘)で描かれた軸も出ていた。

手彩色の古写真がまた面白い。金沢八景だけでなく江ノ島・鎌倉も仲間に入る。
先にここで展覧会のあった鎌倉の古地図も同じものが出ていた。
やっぱりコレクターはいいものをきちんと集めている。

大正時代に復刻された広重の金沢八勝図のうち、「内川暮雪」が特によかった。
雪の夜の静けさが伝わってくる。

それにしても昭和初期からの短い時間の中に生まれた行楽案内パンフの出来のよさは、本当に見事だ。
ずっと持っていた気持ちもよくわかるし、それを後世の人が集めたのもよくわかる。
このレトロ感が今になると却って愛らしくて仕方ない。

コレクター楠山さんは丁寧に集められたのだと知る。
楽しい展覧会だった。

金沢文庫から新逗子に出た。新逗子からJR逗子まではそんなに遠くない。歩くのが楽しかった。金沢八景を歩いて尋ねるのはムリでも、こうしてその地を踏みしめることで、実感がわく。
こういう展覧会を見た後に、実地を歩くのは、本当に楽しいのだった。6/3まで。
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コメント
石川県の方が有名だし~
そうそう、神奈川県民のクセに、私も大人に
なるまで金沢が横浜にあるとは知らなかったですよ。
京急に乗って油壺のマリンパークに遊びに行く時に、
途中の駅に金沢文庫があって「え! ここから
石川県!?」と一瞬思ってしまった(汗)
いまだ金沢文庫へは行ったことがありません・・・。
2012/05/23(水) 07:42 | URL | えび #-[ 編集]
地の人でもそうなのね~
☆えびさん こんにちは
いやぁホッとしました。
神奈川は広いからね~~~

その金沢文庫ですけど、町としててはいい感じでした。
和やかでのんびりしてましてね。
特にどうということもないんですが、雰囲気がよいのでぶらぶらするのも楽しいです。
2012/05/23(水) 09:19 | URL | 遊行 七恵 #-[ 編集]
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