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美術館・博物館・デパートでの展覧会を訪ね歩き、近代建築を見て周り、歌舞伎・映画・物語に溺れる日々の『遊びに行った日を記す』場所です。 

近代洋画の開拓者 高橋由一

「近代洋画の開拓者 高橋由一」展を東京藝大美術館で見た。
京都にも来るが、出品は会場によって違うらしい。
チラシのキャッチコピーがうまい。
とても同意する。

ところでやっぱり由一といえばシャケ。
これは現代のヒトだけでなく、由一リアルタイムの人々も同じで、由一ブランドのシャケはたくさんあるそうな。
今回、この藝大所蔵のシャケと、山形美術館、笠間日動美術館のが出ている。
わたしはほかに山岡コレクションのシャケも見ているが、いずれも新巻鮭で、顔の向きは別としても、おいしそうなのばかりだった。

だいぶ前に金比羅さんへ行ったことがある。
行ったのは金丸座の芝居を見ることが目的だった。ホテルは琴平花壇で、金刀比羅宮への石段の隣にあるので、がんばって登ってみた。そこで宝物殿に入り、サスケハナ丸の模型などを見た記憶がある。そのときに由一の桶に魚などが入っている絵を見たりしたように思う。
近年になり、やはりこの藝大美術館で金比羅さんの展覧会を見たとき、懐かしい心持がしたが、実際にどれを見たかはわからない。

由一の丁髷な自画像と、原田直次郎が描いた晩年の由一の肖像画を見る。
30年ばかりの時間の流れがあるが、様相はともかく、共にまだ19世紀の油絵だということを感じた。

油画以前、として彼の水彩画時代の作品もある。

幽冥無実之図 これは谷中の全生庵にある幽霊絵で、以前見たように思う。居眠る女の背後にぼーっと男の幽霊が佇んでいる図。たよりない幽霊である。

猫図 これが可愛い。三匹の猫がまるまって固まって寝ている。可愛くて仕方ない。
zen502.jpg

藤田東湖、武田耕雲斎の肖像画もあり、見ているとき後ろで大学男子二人組が吉田松陰と勘違いしていたので、歴女としては黙ってられなくなって説明をしたが、考えればどうでもいいことだったに違いない。

・人物画・歴史画

花魁図 これは新吉原の稲本楼の小稲がモデルだったそうだ。本人はひどい、と泣いたそうだ。稲本楼の小稲といえば池波正太郎「幕末遊撃隊」にも出る美人花魁だった。
やっぱり本人が泣くのも無理はない。

日本武尊 ヤマトタケルの草薙の剣と火打石のエピソードを描いている。わたしなんぞはヤマトタケルにときめいてるクチだから、最初にこのぽっちゃりしたおっちゃんを見たとき、がっかりしたものだった。やっぱり今もちょっとがっかり。

明治初期の油画の歴史画はたくさんあるが、どれもみなその当時の日本人なら必ず知る「物語」ばかりだった。歴史も稗史も等しく認識されて、観客は絵を見るたびに「ああ、あれか」と思ったことだろう。

由一の残した設計図を見た。
螺旋展画閣というミュージアムで、構造的には会津のサザエ堂に似ている。どことなくバロックな感覚もあり、面白い。これを木造でこしらえていて、今も残っていたらさぞかし見ものだろう。惜しい。

・名所風景画

隅田川というのでなく墨堤、というのがまた明治の匂いがする。
その隅田川河畔の桜の様子と、雪の頃の絵が何点かあり、どちらも不思議な面白みがある。
この時代の油絵の風景は重い。

珍しいのが「月下隅田川」。これは清親の作風に一脈通じるものがある。灯りが遠くに揺らぐからかもしれない。

江ノ島図も見ていると、江戸から明治に変わったとはいえ、庶民の行楽地・遊山先であることをひしひしと感じる。そんな風景図なのだ。

長良川鵜飼 闇が濃い。闇の濃さを肌に感じる。鵜飼舟の松明の煙が白く上がる。謡曲のその音声が聞こえてくるような一場。

鵜飼図 働く鵜たちが目立つ。炎が綺麗に上がっている。こちらの綺麗さもいいが先の鵜飼の重さにこそ、魅力を感じる。

水彩画の風景いろいろ。
根津権現、住吉神社などなど。写生帳には浅間山のような山に、ナイアガラのような滝、不忍池のようなものがある。

司馬江漢 二見が浦図 泥絵風な面白さがある。密陀絵だというが、重さの面白みというものがある。風景はそこから決して動かない。

・静物画

厨房具 すりこ木、笊、片口などなど。こういうのを見ると、トウフとアゲを描いた画家だという実感がわいてくる。

鯛図 桶の中にタイ。おいしそ~~。竹内栖鳳のタイもおいしそうだが、こちらもおいしそう。

いよいよシャケのお出ましである。うまい具合に三枚を板にはっつけて展示している。
この三枚並びは磔刑図にも似ている。
一番おいしそうなのはやはり藝大のシャケである。
赤身もいいが、その下の皮のチリリリリと塩で縮んだところが実においしそうだった。
これなら普通に焼いてもいいが、粕汁にぶちこんでも非常においしいだろう。
zen501.jpg

絵というものは一目見て、崇高さを感じたり・綺麗だと感じたり・怖いと思ったり・心が和んだりと色々あるが、食欲を刺激する絵というのもいいものだ・・・・・

・東北風景画

山形の人々を描いた肖像画群がある。明治初期から中期にかけての東北の日本人の顔と姿がそこにある。現代とは断絶した、昔の日本人の顔である。
美麗なものはないが、力強い、しっかりした顔だった。

山形市街図、宮城県庁門前図といった風景画は以前にも見ている。
技法がどうのとかそんなことよりも、明治の日本のあり方、進もうとした道がまず腑に落ちてくる。そして近代日本に関心の深いわたしは、その場に立ちつくしてみたいと思うのだった。

最後に石版画のための下絵群を見た。これが実に大量で、見て回っていると、下絵を見ているというより、道路工事・環境工事をする前の、現状を写生したものを見ている気になってきた。叙情性のないリアルな描写だからかもしれない。

6/24まで。
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コメント
伊勢屋の鮭
以前、藝大のミュージアムショップで鮭のペンダント
を買いました。「このシャケ、藝大所蔵なのね~」と
当時、思っただけで特になんの感慨もなかったのですが
今回の展覧会、すごいですね。鮭ばっかりじゃないけど、
やっぱり、鮭があれだけ並んで展示されていると、
面白いです。板に描いた「伊勢屋の鮭」欲しいかも~。
我が家の屋号と同じなので・・・。
2012/06/20(水) 08:50 | URL | えび #-[ 編集]
伊勢屋のえび
☆えびさん こんにちは
あのシャケのおいしそうなこと、たまりませんね。
ほかにも色々あるんですけど、やっぱりシャケに目を奪われます。
当時も「由一といえばシャケ」の風潮が強くて、みんな「シャケ描いて」と求めたそうですが、よくわかるww
京都にはアゲとトウフのセットもくるそうです。
和食万歳!←チガウ。
2012/06/20(水) 11:40 | URL | 遊行 七恵 #-[ 編集]
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