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美術館・博物館・デパートでの展覧会を訪ね歩き、近代建築を見て周り、歌舞伎・映画・物語に溺れる日々の『遊びに行った日を記す』場所です。 

藤田傳三郎の軌跡

藤田美術館の今期展は「藤田傳三郎の軌跡」として、傳三郎の集め・愛した名品たちが列んでいる。
大正13年の傳三郎十三回忌追悼茶会に使われた品々である。
二日をかけて12席。豪勢な茶会はこの美術館のある場所、藤田邸で開催されたのだった。

今回は仏画の良さに圧倒された。
それについては後に詳しく書きたい。
先にやきものなどについて書く。

古染付雁文様詩入火入 明代の古染付らしい色の薄い絵柄。雁がいっぱいいる。どことなく動物園のような面白さがある。

金銅柄香炉 河内の観心寺から出たもの。

銅製笹蟹蓋置 利休と宗旦の書状が添えられたものだという。うまい細工もので、こういう手の込んだ金物を見るのは楽しい。

硬玉勾玉 弥生~古墳時代のもので、緑色。8個ある。大小色々。可愛い。
憧れるなあ。

ほかにも佳いものがたくさん出ているが、今回はとにかく仏画の良さについて延々と書き述べたい。

中釈迦左右文殊普賢菩薩像 伝・明兆 鎌倉時代 
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海龍王寺の印が押されているそうで、またこの絵師は東福寺の画僧らしい。
右の文殊の青獅子が可愛い。女人の仕えるものがいる。文殊も優美な女主人に見える。如意を持つ手が優しい。
左の普賢は白象に乗る、白い顔のひと。右の文殊は背景の色と同化しているが、こちらは真っ白である。
童子が捧げ持つものを静かに見下ろす。片方の手の甲にもう片方を乗せて童子を見る。左右三本ずつの牙を持つ白象も優しく童子をみつめる。

薬師三尊十二神将像 鎌倉時代 右に日光、左に月光菩薩が佇み、その背後に十二支の動物を冠に置いた十二神将が居並ぶ。必ずしも十二支順ではないらしい。ウサギの冠が可愛い。虎も可愛い。そして真ん中の薬師如来の緋衣と日光のそれの朱色が濃く残っている。
向かい合う月光は白衣だった。三尊の朱唇が艶めかしい。

虚空蔵菩薩像 鎌倉時代 周囲に松葉文様のようなものが連続している。それが何を示しているのかはわからない。
真正面向きの菩薩の円満な笑み。ふくよかな頬、はれた瞼の下の黒目。蓮を持つ指、その掌の肉厚さ。実にいい。

普賢十羅刹女像 鎌倉時代 何度も見ているがやはり素晴らしい。
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白象に座す普賢菩薩は金色に輝いている。截金細工の精妙さが光る。そして先導する二人の童子の愛らしさ、二人の天部の立派さもさることながら、周囲の十羅刹女の美貌に深く撃たれた。
向って右端の、菩薩の隣に位置する羅刹女は緩やかなカールの髪を肩に置いている。
まるで中世の天使像のような佇まいである。
その対にあたるのが、左端の袈裟衣の羅刹女。
こちらも冠なしだが、完全な垂髪の和美人である。
ガラスの正面からではわからないものがあるだろうと、端に展示されているのを幸いに、ガラスの横に回って絵を見た。和美人らがよく見える位置に立つ。
他の羅刹女らの白い頬に朱唇、半円を描く眉、直ぐなる鼻梁、衣装の繊細さとも相俟って、非常に優美なのを改めて知る。
なんとも美麗な仏画であった。

十六羅漢図 詫磨栄賀 鎌倉時代 第八羅漢図が特にいい。木魚のような顔をした羅漢がみづらの美少年が語りかけるのを、椅子から身を乗り出して聞いている。
聞いているというのは実はただのフリで、単に美少年を眺めているだけかもしれない。
その辺りがとても面白い。

聖徳太子勝鬘経講賛図 鎌倉時代 立派な風貌の聖徳太子の周囲には、蘇我馬子、小野妹子といった配下の人々と、まだ童形の山背上兄らがいる中、花びらが降って来る。丁度その花びらが床についたところの図。人々の表情がそれぞれ描き分けられている。

玄奘三蔵絵 8巻第5段 鎌倉時代 宮殿で講義をした玄奘。門前には乗り物のゾウたちの姿も見える。室内では平伏する人々の姿もある。感服する人々と静かな玄奘。

華厳五十五所絵巻残闕 鎌倉時代 これも好きなもの。善財童子の旅。今回は第一番から第四番までの善智識ツアーが出ていた。可愛い。いずれも外でのご対面である。
第四番では可愛い小鳥さんたちもきていた。

両部大経感得図・龍猛図 藤原宗弘 鎌倉時代 何年前か、この絵を最初に見たとき、寒さに負けて「中に入れてください」と頼む旅の僧を「いやなこっちゃ」と断る人々のオニの心の絵、かと思った。つまりエジプト脱出のマリアらを宿屋の主人が「お泊めすることは出来ません」とお断りしたり、旅僧実ハ空海を追い払った無慈悲な婆さんの家が、いきなり湖の真ん中の離れ小島になったり、というものかと思ったのだ。
そうではない。
これは龍猛という僧が立派なお経を得ようと塔に入らせてくださいと訪ねて来た図なのだった。そして塔の中にいるのは「いやじゃ~」な鬼の心ではなく、お経を大切に守る鬼たちなのだった。
絵だけではわからないものだなあ。

ときめきの仏画が多く出ているこの展覧会も、明日6/17まで。
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コメント
帰京の友は鱧の皮ときんつば
お世話になっております 一昨日の16日に 当方 二度目 行って参りました
仏教絵画のおさらいで 100分滞在のほとんどを費やしました
再見で 「あら」も目立つかと危惧したのですが まずは杞憂にて・・・
大げさな物言いになりますが 「この(絵画の)揃い方でもう一度(展覧会が組まれること)はないな」と考えてのことでした

当方風情が申すも不遜ながら この記事 嬉しいものでございます
この展覧会のことを書いている方々の絶対数も少ない
混雑されても困るのですが もっと触れてもらっていい展覧会であったかと

これからも ご自愛ご健筆を それでは

(追伸) 次回があったら 当方も側面から羅刹様を拝んでみます・・・
2012/06/18(月) 19:16 | URL | TADDY K. #1xXJNkSU[ 編集]
帰阪のお供はシウマイ弁当と舟和の芋ようかん
☆TADDY K.さん こんにちは

> 大げさな物言いになりますが 「この(絵画の)揃い方でもう一度(展覧会が組まれること)はないな」と考えてのことでした

激しく同意です。ほんと、そう思いますよ~~!

> 当方風情が申すも不遜ながら この記事 嬉しいものでございます

鑑賞しながら・書きながら、TADDY K.さんに喜んでもらえたら、と思ってましたよ。

ほんとに今回の仏画の美麗さには圧倒されました。
鎌倉時代の絵画はあまり関心がなかったのですが、今回から目が開いたようです。
2012/06/19(火) 09:00 | URL | 遊行 七恵 #-[ 編集]
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