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美術館・博物館・デパートでの展覧会を訪ね歩き、近代建築を見て周り、歌舞伎・映画・物語に溺れる日々の『遊びに行った日を記す』場所です。 

木村荘八の挿絵 /  うるわしの女性たち

うらわ美術館で野口久光のポスターを見た後、別室で木村荘八の挿絵展を見た。
わたしは挿絵が大好きなので、こちらも楽しく眺めた。

荘八といえばやっぱり「濹東綺譚」「花の生涯」なんだが、それらがともに出ていたのは嬉しい。

邦枝完二「媚薬」 本の装丁は中尾進で、三味線に撥なのでてっきり時代物かと思いきや、昭和27年のリアルタイムな風俗小説だった。水色を使っていることで、効果がやわらかくなる。

同年には舟橋聖一の「花の生涯」がある。これは第一回目の大河ドラマだったそうだが、生まれていないので資料しか知らない。見たヒトに聞くとたいへんよかったそうな。
連載終了後に、「花の生涯 画譜」も出ているくらいだから、大変な人気があったのだろう。
1シーン出ていて、そこには村山たか女がクモの糸の中心に落ちている図だった。
なかなか象徴的なシーンである。

挿絵原画はほかにも、井伊直弼・長野主膳・村山たか女の三角関係、桜田門外の変、主膳の死などが出ていた。
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「濹東綺譚」の新聞連載切り抜きもある。75年前の仕事。こういうファンの愛情があるから、挿絵は命をつなぐのだ。

昭和8年に出た大仏次郎「霧笛」が戦後すぐの苦楽社から再刊されたときの装丁と絵もあった。
「霧笛」はハードボイルドなのだが、わたしは大仏次郎の作中ではニガテな方。
しかし挿絵を見る分にはやはりかっこいいと思う。

戦前・戦中にほかの画家らと共に出した「挿絵の描き方」や「近代挿絵考」などの著作も出ていた。

また講談社の「キング」昭和6年の付録「明治大正昭和絵巻」も展示されていた。
これは講談社の野間記念館でもしばしば見ているが、三代の時代相がよく描けていて、とても面白い。
荘八や小村雪岱らをはじめとした挿絵の大家の熱のこもった名品。

こうした作品を見たいわたしには、とても有意義な企画展だった。6/24まで。


次に中京区の中信美術館での「うるわしの女性展」のことなど少し書く。
こちらも毎回楽しい企画展を開催し、しかも常に無料というありがたい美術館なのだ。
いつもいつも本当にありがとうございます。

伊藤清永 裸婦 いかにも伊藤らしいふくよかで明るい裸婦が、さまざまな光の鏤められた中にいる。肉付きのよさと光はルノワールのそれにも似ているが、肌の質感は伊藤独特の味わいがある。

堂本印象 少女の顔 きりっとした表情がいい。戦後にしかいない顔立ちの女。印象の描く女は日本映画黄金期に活躍した女優のようだ。
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舞妓ばかりで一室を占める展示室があった。
広田多津、梶原緋佐子、鬼頭鍋三郎。
描かれた舞妓たちはそれぞれの画家の個性に基づいて生まれているが、その並び方でまた面白い効果が現れていた。
多津と緋佐子とを交互にし、〆に黒地に裾松文様の舞う鍋三郎の舞妓を置くことで、描かれた舞妓たちの心持やら話し声やらが聞こえてくるようだった。
緋佐子の賢そうな舞妓、多津のちょっとばかりおてんばそうな舞妓、みんなイキイキしている。
妍を競うというが、単品で見るのもいいが、こうして舞妓ばかりを集めてみると、それはそれでまた楽しい展示になっている。

北沢映月 みやこわすれ しぐさや表情を見ているとルネサンスの画家による美人画のようにも思える。愛らしさが全面にあふれていて、賞玩したくなる。
舞妓の愛らしさとは天使のそれだというヒトもある。この絵を見ていると、それも納得する。
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猪田七郎 傘と太夫 真っ暗な背景に浮かび上がるようにあおりの構図で太夫がいる。
傘を差す男衆の姿は見えない。この絵はイノダコーヒー初代社長の絵だそうだ。

石踊紘一 赤い衣 更紗の上に赤を着た若い女が寝そべっている。おかっぱの女。

柴田米三 みのり 豊穣な果実を担ぐ娘、彼女もまた実りの時を迎えている。屈託のない表情がいい。
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中山忠彦 少女 やはりクラシックなドレスを身にまとっているらしい、そんな少女の横顔。ティア・ドロップスの形のイヤリングが目立つ。

林武 花帽子の少女 黄色と赤の強靭さ・エネルギッシュさが押し寄せてくる。太線で体の枠を定められた女、肌の激しい黄色、うねるような盛りの絵の具はそのまま肉になる。
とてもかっこいい。
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宮本三郎 裸婦 寝そべりつつ物思いに耽っている。

ドレスデンのやきものがある。黒髪の美女図の皿。情熱的な美貌、黒髪に花を差している。南洋風な良さがある。

アントル・デ・サルトウ 裸婦 いつの時代の絵かはわからないような、ちょっとアカデミックな裸婦。
しかしこぎれいに描かれているのではなく、腿の奥のきしみまでが見えるような。

寺松国太郎 白布の上 黄色い肌の美しさ、確かさがいい。人形を可愛がる女。クッションの刺繍もいい。肉付きのよい日本の女。

ほかにも多くのうるわしの人々があり、眺めて回るうちにこちらの気合も満ち満ちてきた。
7/8まで。
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コメント
功さん
 邦枝完二の名前で 思い出すのは 申し訳ないけれど 本でなくて
 ご長女が嫁いだ 木村功さんなんです。
 私が幼いころ亡くなった叔父が 功という名前でした。
 彼が生きていたらと 誰もが思い 功の名前をひいきにしたのだと
 子供心に思っていました。
 「花の生涯」は 見たのだろうけれど 全く 覚えていません。
 キャストを見ると そうそうたる方々ですね。
 やはり強烈なのは 長谷川一夫の忠臣蔵 からでしょうか。
   
2012/06/20(水) 06:43 | URL | 小紋 #-[ 編集]
うちの父もその名でした
☆小紋さん  こんにちは

ご縁を感じますね。
しかし木村功さんが邦枝の娘婿とは知りませんでした。
ハンサムなひとでしたね。

>  やはり強烈なのは 長谷川一夫の忠臣蔵 からでしょうか。

おにょおにょ方~ですね。
わたしは「勝海舟」からしか知らないのですが、よくおにょおにょがた~は聞いてましたw 
2012/06/20(水) 10:02 | URL | 遊行 七恵 #-[ 編集]
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