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美術館・博物館・デパートでの展覧会を訪ね歩き、近代建築を見て周り、歌舞伎・映画・物語に溺れる日々の『遊びに行った日を記す』場所です。 

仏教の来た道 シルクロード探検の旅

初めて龍谷ミュージアムへ行った。
特別展「仏教の来た道 シルクロード探検の旅」を見るために。
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下は美貌のガンダーラ佛、上は砂漠を行く大谷探検隊。
このチラシを見ただけでも行かねばならぬ気になるではないか。

子供の頃からシルクロード探検に関心があった。
それはたとえばTVドラマ「西遊記」や紀行番組「シルクロード」映画「敦煌」などに心を囚われたからだろう。
また、なによりも教科書で読んだ龍村平蔵の「獅子狩文錦」再現と大谷探検隊の物語、それに強く惹かれたことが大きい。
そして'90年代初頭に龍村平蔵展、旅順博物館展を見たことも、いよいよその思いに拍車をかけたのは確かだ。

うちは法華宗なので西本願寺とは無縁だが、それでも大谷探検隊への憧れから、なんとなく優しい気持ちを西本願寺へ向けている。
またその大谷探検隊を組織した門主・大谷光瑞の大アジア主義のその大きさにも惹かれた。思想に惹かれたのではなく、スケールの大きさに惹かれた、というのが正しいが。彼は伊東忠太のパトロンの一人になり、忠太ファンであるわたしはいよいよ憧れを抱くようになった。

これまでに芦屋市立美術博物館で大谷光瑞の住んだ六甲の「ニ楽荘」の展覧会が二度ばかり開かれた。
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わたしはどちらもたいへん楽しんだが、そのときに、ニ楽荘で大谷探検隊の将来したシルクロードの遺物をお披露目していたことを知った。
いよいよ大谷探検隊への憧れが増幅して行くのが止まらない。
また龍村美術の仕事をみる度にときめきが強くなる。
こんな状態でこの特別展へ向かった。

前置きが長くなったが、この先まともな感想は書けそうにないので、そのいいわけをしているのだと思っていただきたい。

展示は二階から始まり三階へ至る。
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1.仏教の源流
ガンダーラ佛、インド・マトゥラーの佛傳浮き彫りなどがある。

チラシに選ばれているこのガンダーラ佛は松岡美術館所蔵のもので、最初に見たのはまだ内幸町に松岡美術館がある頃だった。
今の白金台の松岡は整然とした美しさに満たされているが、内幸町時代は混沌としており、その薄暗さもまた魅力の一つだったことを忘れられない。
そこにこの美貌の佛はあったのだ。肉体の豊かさはローマの彫像の影響を受けているだろうが、それがアジアの美意識と融合して、こんなに美しい像として、今の世にも生きる。その優雅さにわたしも深く溺れる。

多くの仏像、仏伝レリーフを見ていると、可愛らしい象さんや獅子をたくさん見かけることになり、刻まれた物語よりもそちらに眼が奪われることも多い。
特に霊夢のレリーフで白い象さんが摩耶夫人のもとへ「コンバンハ~」とやってくるところなど、可愛くて可愛くて仕方ない。そばの天人たちも和やかに微笑んでいて、とても惹かれる。胸の形などを見ると、これはインドの彫刻だと感じる。

2.西域の仏教文化と多様な宗教
コータン、キジル、トルファン、そして元代の中国あたりの出土品が多い。

東博所蔵の有翼天使像壁画があった。以前から何度か見ている、ややオジサンぽい天使である。これは橘瑞超が将来したらしい。
橘瑞超は前述どおり、中学のときからの憧れの人なので、彼が齎したものだと思うだけで素敵に思ってしまう。
大谷探検隊の将来したものはこの龍大、東博、そして旅順博物館などに散逸しているが、今回の展覧会はその意味では本当に有意義だと改めて感じる。

ドイツのル・コック隊が入手した壁画断片などをみる。
仏教の宇宙観などはよくわからないのだが、これら断片を見るだけで壮大なものを感じる。
菩薩の衣文に鍵卍型があるのにもちょっとドキッとしたり。

そういえばやはり'90年代初頭にベルリンの東洋博物館だったか、そこのコレクション展を見たが、やはり西域の美しい遺宝にときめいていたことを思い出す。
ここにも眉の長い、はっきりした二重瞼の横顔があり、その美貌の男性像にもときめく。

マニ教の暦、ソグド語の経典、ウイグル文字などを見る。全く読めない。読めるはずもない。しかし文字だということだけはわかる。近年、京博でロシアの所蔵する西域の文字ばかり集めた展覧会を見たが、あれも途轍もなくドキドキするものだった。

MIHO MUSEUMのソグド人のお墓のベッド飾りも来ていた。
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これはMIHOさんに行くたびに「素敵!」と眺めていたもの。今回はレリーフの一枚一枚の説明があり、それを見ることができただけでも来た甲斐があるように思えた。
本当に細かくて、とても興味深い。風習・習慣の違い=文化ということも実感する。

マニ教のマニ降誕図を見る。マニは母の胸から生まれたそうだ。
赤ん坊が雲に乗っている。地に足をつけはしない。元代のものだが、どこかフレスコ画のようで面白い。

羅漢図が一枚だけあった。元代。異様に美貌な羅漢。口元のにやりと笑うところまでが魅力的。ひげもなく、若く美しい羅漢。彼の周囲の人々のまなざしが熱い。

3.中国への伝播
北魏や唐の仏像の美しさを多く眺める。

泉屋博古館の弥勒佛立像は鍍金されたものだが、弥勒がどう見てもニヤーと笑っている。
しかも足を開いて立っているので、妙にナマナマしい。
チラシの画像には台座はないが、この台座では色んな鳥が刻まれていて、それがまた可愛い。

名取洋之助が麦積山の仏像を撮影したものを見たことがあるが、それを思い出しながら眺め歩く。ロマネスク、という言葉を思う。狭義の意味ではなく。

壁面には大谷探検隊の写真がパネル展示されている。それらを見ていると、百年前の偉業と、それに伴う苦難が偲ばれて、胸が熱くなる。
ああ、本当にこの展覧会へ来てよかった・・・

4.西域の文字と言語
先ほど少しばかり出ていたものたちがここで特集されている。

維摩経や妙法蓮華経などがある。これらは敦煌、トルファンなどから将来されたもの。
黄色の綺麗な紙に仏陀と共に書かれたものがあり、説明によるとそれはネパールのもの。
サンスクリット語である。文字もここまで読めないと、雅な生物に見えてくる。
丁度ハイジがアルプスからフランクフルトに降りてきて、アルファベットを見てヤギの動きを思い出すのと同じに。

これはウイグル語の神呪経。赤文字は仏や菩薩を意味する単語。
どうやってこれを縦書きしたのか。想像もできない・・・
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残念ながら西夏語のお経は今回展示変えで出ていなかった。
「敦煌」で見て以来トキメキが止まらない言語。

写真があった。大谷光瑞と弟・妻・妹、彼の側近たちと共に、紋付袴姿のヘディン。
みんなで記念撮影している。
これは光瑞がヘディンを招いたときのもの。このときにローランの位置を聞き出し、速攻で現地にいる橘瑞超に電報で連絡し、瑞超はそのおかげで貴重な文書を手に入れることが出来たのだった。

楼蘭といえばミイラの出土もあったが、わたしはやっぱり'90年代初頭に見ている。
そして今思い出したが、小学生のときからの愛読書「世界のなぞ世界のふしぎ」にロプノール湖や楼蘭、ミーランの話があってドキドキしていたのだから、やはり子供の頃から中央アジアへのトキメキが培われていたように思う。
また神坂智子「シルクロード」シリーズのファンだということも、ここで書いておこう。

トカラ語で書かれた出納簿が面白かった。無論面白く思ったのは翻訳されたその内容。
エジプトのピラミッド造りの休暇願いもそうだが、何千年も前々から人間はあんまり変わっていないのだった。

5.大谷探検隊と仏教伝播の道
大谷探検隊の隊員たちのカメラや色んな資料が並ぶのを見ると、本当に万感迫るものがある。

伏義女媧図が何点かある。足だけしかないものは、歩くイカにしか見えない。
コンパス持った仲良し夫婦図である。

四神の形に残された文書の断片もある。青龍と玄武である。
東アジアだけでない四神。

トルファンから出土した俑も面白い。丁度8世紀なので、唐のそれらと同時代なのだが、素朴でしかもリアルな表情が楽しい。

ルンビニーのアショカ王の碑文の拓本も三種ある。三人が取ったもの。
これらは大谷探検隊隊員たちの遺物なのだが、説明に彼らの渾名まで書かれていて、とても嬉しくなる。イタチ、クリ、カスミといったものは可愛いし、どんな人間関係なのかも想像できそうだ。

吉川小一郎のカメラもあるが、彼は光瑞の指導を忠実に守った人で、その資料を読むのもたいへん興味深かった。
採取した植物の押し花など、学術的資料としてみるより、旅の思い出として眺めるほうが良さそうなものも多い。

ああ、いくら見ても見飽きない。最後に映像コーナーがあるが今回は諦めて、その裏にあるスポットへ入ると、なんとベゼクリク石窟の派手派手な再現が成されていた。
これはちょっとわたしはコワカッタナ~~
東洋文庫のあれもたまらなかったがww

なにはともあれ図録もよく出来ていて、本当にいい展覧会だった。7/16まで。
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コメント
No title
>このときにローランの位置を聞き出し、速攻で現地にいる
>橘瑞超に電報で連絡し、瑞超はそのおかげで貴重な文書を
>手に入れることが出来たのだった。
むちゃくちゃ熱いドラマを感じますね。

先週より滋賀の病院に頚椎症の手術で入院していますが、
あさって15日に退院しますので、滑り込みで看にいかせてもらいます。
2012/07/13(金) 23:30 | URL | とんぼ #uaIRrcRw[ 編集]
☆とんぼさん こんばんは
ほんと、熱いドラマです。かっこよかったです。

それにしても大変ですね、ご無理なさらないでください。
お大事に。

けっこう展示、首まげて見るのあるから気をつけてください・・・
2012/07/14(土) 00:07 | URL | 遊行 七恵 #-[ 編集]
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