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美術館・博物館・デパートでの展覧会を訪ね歩き、近代建築を見て周り、歌舞伎・映画・物語に溺れる日々の『遊びに行った日を記す』場所です。 

物語にみる源平合戦

國學院大學伝統文化リサーチセンター資料館へ行った。
オープンキャンパスの日なので休日でも開いていて助かる。
「物語にみる源平合戦」
奈良絵本などから見る源平合戦図である。
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平時物語絵巻 常盤巻 江戸初期ごろ。出ている図は常盤御前が清盛の前に出て、子らの命乞いをするシーン。十二単の背に広がる豊かな黒髪が美しい。
乙若、今若のふたりの年の違いを髪型で示している。牛若はまだ赤ん坊。
向かい合う白い狩衣の男が清盛。
この前段の雪山の中を彷徨する常盤母子の哀れな姿は、奈良絵本によく描かれていた。
出頭してくる図はあまり見ていない。

平家物語 奈良絵本 寛文・延宝期 弘前藩・津軽家所蔵品。弘前藩は家老の用人・楠美家が平曲を伝えて以来、藩を挙げてその伝承に取り組んだと解説にある。
これは非常に興味深いことだと思った。弘前藩は平曲を愛したが、流浪する九郎判官の足跡は持たない。東北では戦前まで、義経一行の1人・常陸坊海尊が主を見捨てて命を永らえた果て、その行いを恥じて「恥と非道の記憶」を町々村々の人々に語って聞かせ歩いた、という伝承がある。
八百年にわたって生きる海尊伝承の残る地(広範囲なのだが)に、平曲を愛する藩があった・・・そのことにわたしはときめいている。
ここでは小督、敦盛、与一、厳島、俊寛と有王の物語があった。

zen593.jpg

左は与一ほまれの図で右は木曾殿最期なのだが、射手は色違いでほぼ同じ形。顔立ちもよく似てるから、同一作者または同一工房の仕事なのがよくわかる。

木曾物語絵巻 寛文~元禄か。 義仲一代記という体裁を持つらしい。この絵は倶梨伽羅峠の火牛の計の図。あわてふためく兵たち。物語として面白いので、講談師などもよくこの倶梨伽羅峠の火牛の計の件はよく語られたようだ。
また、下巻には木曾殿が討ち死にした後(粟津で)、乳母子・今井四郎兼平が太刀を咥えて自害する場が描かれている。のどを貫く刃がくっきり。

堀川夜討絵巻 夜襲にも備えよろしく、静御前までも鉢巻して薙刀を振るって戦う。
右から左へ展開するのは当然の決まりごとながら、スピーディな楽しさがある。
土佐坊昌俊らはアウト。
zen592.jpg

平家物語 元和九年版 五百年ほどが経ったその当時、平家物語はこうした版本によって広く流布していた。
「祇園精舎の鐘の音」に始まる冒頭のこの名文に、平家の興隆・栄華・没落、その全てがこめられている。
わたしも子供の頃から「平家物語」を愛してきた。無論この冒頭を暗誦出来ていたが、今はところどころやや危ない。
こちらのサイトにその冒頭がある
大学の頃に覚一本、延慶本、安居院の唱導、平曲センターなどなど、を学んでいたのも面白かった。今でも古典では「古事記」と「平家物語」と「説経節」がたまらなく好きである。学術的なことはあの当時も今もサッパリだが、物語として本当に面白い。

江戸時代の版本が多く展示されているが、申し合わせたのか全て倶梨伽羅峠の場ばかりである。それで思い出したが、「新八犬伝」の中で「火牛の計」ならぬ「火猪の計」で敵を払うシーンがあった。そこから元ネタは平家物語の倶梨伽羅峠の話だと教わるわけである。
子供のアタマにそうした言葉は刻まれて、少し大きくなってからは本物に触れようとする。
いま、これら版本を見ながら自分の子供時代の文芸の豊かさを思う。

落人伝説についても四国にその伝承が特に多いが、わたしの近くの能勢にもそれはある。
能勢には安徳天皇隠棲伝承があるというが、語り手はいない。
ところで北摂にはほかにも時代は下がるが、隠れキリシタンもいたようで、十字架の柄が入った瓦などがみつかってもいる。
そしてここに「安徳天皇御行方記 天保13年写本」がある。
文化14年に能勢の農家の屋根裏から出てきた本。発見当時、松平定信、馬琴、塙保己一、伴信友らが読んだそうだ。

平曲の本も色々ある。譜本。「平家正節」へいけ・まぶし。これら読み物も特に愛好されたらしい。展示されているのは腰越状の件。

職人歌合せもある。琵琶法師と瞽女が見開きにいる。瞽女歌は近年になり吉祥寺で展覧会のときに、初めて実物の声を録音したものを聞いた。
それまでは芝居の中で太地喜和子、藤間紫ら名女優たちが一心に語るのを聴いただけだった。
ところで昭和初期あたり何故だか琵琶がブームになったそうだが、近年そのあたりのことを書いた本も出ているようだ。
うちの母に聞くと、近所の古い歴史を持つT神社の境内に、琵琶法師が住んでいたそうだ。

吾妻鏡、玉葉、山槐記の写本なども展示されている。
梁塵秘抄に徒然草、十訓抄もある。十訓抄には清盛の心遣いの巧さが記されている。
「福魚大相国禅門」というような文字が見えた。

戀塚物語屏風がある。文覚上人の譚である。絵は稚拙な雰囲気もあるが可愛らしい。
尼と姫、男女、室内の女、二人の女と男、男と嘆く女たち、尼たち、出家する男。
こうした絵から文覚上人の横恋慕とその悲劇の顛末を見出すのだ。

平家公達草紙絵巻 これは解説によると原本は冷泉為恭の手によるものらしい。明治の模写が出ている。白描の美しい絵巻で、重衡が内親王や女房たちに別れを告げるシーンが展示されている。唇に朱が落とされていて、なまめかしい。

7/21まで。

常設展示を見る。
今回、吉田神道の特集があった。
吉田神社は知人も氏子で、色々行事の大変さや楽しさを聞いている。
ここでは吉田神道についてわかりやすく解説してくれているので、興味深く眺めた。
実感のある事象であっても、正確な知識を得られると、いよいよ理解が深まってゆく。

会式に供えられる造花が並んでいた。特に誰の手によるものかは書かれてないが、吉岡幸雄さんの仕事ではないかと思う。可愛らしい花々で、見ているだけで嬉しくなる。
ミニチュアを楽しむ気持ちでもある。

ほかにも見所が多いので、楽しい。
絵葉書などなどいろんなお土産ももらい、喜んで國學院を去った。
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コメント
No title
予定通り退院したけれど、雑用やものぐさの性から龍谷ミュージアムへは行けませんでした..

國學院、なかなか面白そうな展示ですね。

>大学の頃に覚一本、延慶本、安居院の唱導、平曲センターなどなど、
>を学んでいたのも面白かった。
うわぁ、渋いですね〜 こういうものはテキストのみならず、譜本がいまでも解読可能であったり、
音源が残っているのでしょうか?
「説教節」というものにも、非常に興味があります。

語りの芸能というと、スターウォーズで、イウォークの住む星でルーク様御一行が
捕まり、生け贄にされそうになった時に咄嗟の機転で金ぴかのC3POを神様に仕立て上げ、
その後、帝国軍との戦いを神々の戦のように彼らに語る「文化人類学的」なエピソードを
いつも思い出してしまいます(笑)緊迫したシーンでは、たき火を囲むイウォークの群れの中の子供が
驚いて大人の陰に隠れたり,,,

北摂の隠れキリシタンといえば、あの妙見山の、十字軍やバセロン・コンスタンタンのマークみたいな
十字架は一体何なんでしょうね?矢という話ですが..

吉田神社、実は数回、楽でのご奉仕を手伝わさせていただいたことがあります。
都名所図会の絵図との差が激しすぎるんですが(笑)、割と近所なんですよ。

しかし、神社に限らず、誰もが知っている総本山の大寺院の祭祀すらも
楽はもちろん、声明の実践すらも怪しいところがあるようで、これは心密かに憂いています。
少しでも形としてもキチンとしたものをお供えさせていただけなければと思っても、
私自身の力量はもちろん、周辺の状況的にもキツいものがあるのも事実です。
2012/07/21(土) 01:58 | URL | とんぼ #uaIRrcRw[ 編集]
おだいじに
☆とんぼさん こんばんは

> 譜本がいまでも解読可能であったり、
> 音源が残っているのでしょうか?

音源などは薩摩琵琶、筑前琵琶などの近代のヒトビトのがあります。
本もたぶんわかる人にはわかるのでしょうね、わたしにはわかりませんがw

説経節はたまに本願寺系の語り手がいるようで、イベントが開かれたりしてます。
説経節の中でも「刈萱道心」は絵解きされる方が信州にいて、聞きに行くたび泣いてしまいます。

> 語りの芸能というと、スターウォーズで、イウォークの住む星でルーク様御一行が

神話のないアメリカではSWこそが神話になったようで、そこでこうしたエピソードが入る、というのは非常に面白いと思います。
そういえばジョン・ヒューストン「王になろうとした男」も蛮族を騙くらかすのに話芸を用いていたような。


随分前の発掘で見つかったものたちをみたとき、非常に怖かったです。

知人に多摩地方で神に仕える人がいますが、全く同じ苦しさを話されてました。
2012/07/22(日) 00:08 | URL | 遊行 七恵 #-[ 編集]
No title
「刈萱道心」とは何ぞと検索してみて、高野山の絵の中の、稚児輪の息子の健気さに
ちょっと眼がウルル..

私が無知なだけというのもありますが、いろんな口承が途絶えてますね。
2012/07/24(火) 15:01 | URL | とんぼ #uaIRrcRw[ 編集]
☆とんぼさん こんにちは

そうですか、わたしはつきあいが限定されているからか、「刈萱道心」はメジャーなものかと。
でも小川未明「赤いろうそくと人魚」を知らん子も多い時代ですからね。
2012/07/25(水) 10:08 | URL | 遊行 七恵 #-[ 編集]
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