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美術館・博物館・デパートでの展覧会を訪ね歩き、近代建築を見て周り、歌舞伎・映画・物語に溺れる日々の『遊びに行った日を記す』場所です。 

ベルリン国立美術館展 学べるヨーロッパ美術の400年

「ベルリン国立美術館展 学べるヨーロッパ美術の400年」を西洋美術館で見た。
都美で「マウリッツハイス美術館展」を見た後で。

上野にこれだけ世界の名画が集まっている、という事実は大きい。
都美にはフェルメールの「真珠の耳飾の少女」つまり以前大阪では「青いターバンの少女」と呼ばれたあの娘がいるが、こちらには真珠のネックレスをつけてウットリする娘が来ている。

とにかくキリスト教関連の彫刻が多い。
キリスト教の図像学は少しばかり学んだが、知らないことのほうが多いので、解説が詳しいのに助かる。
絵画/彫刻と素描に分かれ、時代区分がされている。
作品数が多いので、特に惹かれたものばかり感想をあげてゆく。
まず絵画/彫刻から。

1.15世紀:宗教と日常生活
聖母子像がいくつもある。さまざまな表現で作られた聖母子がいる。
15世紀から特定の聖母子ではなく、普遍的な母子へと転回した、というようなことが解説にある。あまり考えていなかったが、確かにそれはすごいことなのだ。
神から人への転換期がここから始まりだすのだ。

ベルナルディーノ・ピントゥリッキオ 聖母子と聖ヒエロニムス もうこの幼子イエスは字が書けるらしい。
さらに聖ヒエロニムスも赤い衣の枢機卿として母子の前にいる。
荒野にいたときとは大違いの赤衣である。
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右はミケランジェロの聖母子。

コネリアーノと工房 聖ルチア、マグダラのマリア、アレクサンドリアの聖カタリナ 光を意味する(はずの)ルチアは手にランプを持ち、真ん中に立つ。左には油壺を持つマリア、右に割れた車輪を持つカタリナ。それぞれのアイテムと一緒。
ただ、マグダラのマリアが300デナリの油を持ってきたのかどうかは知らない。あれは丸太の妹の(この変換では「じゃりン子チエ」の友人・平山ヒラメちゃんになる)マリアが油を持ってきたような。
だがわたしは本当に図像学に疎いのでそうなのか~で終わり。

彫刻が実に多くの材を選んでいたのも面白い。
菩提樹、樫、胡桃、大理石、アラバスター、ブロンズ、石灰岩などがあった。
材を選ぶのは彫刻家の手によるものなのか、宗教的見地からなのか。
そのあたりのことも専門家の方なら詳しいだろうが、わたしは何も知らない。

ブリュッセルの彫刻家による15世紀半ばの「聖母の結婚」はくるみ材で、14歳の少女とどう見ても老人の結婚。色々と考えてしまう。ここには書かないが。

アゴスティーノ・ディ・ドゥッチョ 荒野の聖ヒエロニムス 大理石。獅子がかっこいい。そして傍らの強そうな爺さんこそが聖ヒエロニムス。こんな強そうなのは初めて見た。

ドメニコ・ロッセッニ トビアスと大天使 石灰岩。風化しなかったのは国土のおかげですか。2少年が行く、という風情がある。とても可愛い。わんこもついてくる。手には魚。
アイテムは勢ぞろいだが、お兄さんとボクというより「ボクとキミ」な雰囲気がいい。
わんこは少年の旅の道連れでなくてはいけない。

ルーカ・デッラ・ロッピア 聖母子 こちらはテラコッタ。
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ティルマン・リーメンシュナイダー 竜を退治する馬上の聖ゲオルギウス かっこいい。

ティルマン・リーメンシュナイダーと工房 奏楽天使 菩提樹材。♪わわわわ~と合奏もありそう。
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ライン川流域の工房 最後の晩餐 アラバスター。割と細かい造りで、見続けると新発見がありそうな。


2.15~16世紀:魅惑の肖像画 
わたしでさえ知る有名人も二人ほどいる。

アンドレア・デル・ヴェロッキオの工房 コジモ・デ・メディチの肖像 大理石の横顔。
メディチ家の支配を確定した。絵は見ていたが彫刻は初めて。年数を見ると、彼の死の年に製作されている。追悼の意味の製作なのか、それとも生前のものなのかは知らない。

ルーカス・クラーナハ(父)の工房 マルティン・ルターの肖像 以前のクラナッハ表記が好きだったことを思いつつ、ルターとクラーナハ父とは仲良しさんだったそうだ。
わたしがそれを知ったのは青池保子「エロイカより愛をこめて」に載っていて、それから自分でも調べたから。そういう意味で、ルターの肖像画を見るとなんとなく嬉しい。
骨格のはっきりした顔だと思う。顔の大きさで画面がいっぱいになっていた。

梨材の彫刻もあり、それにも感心した。

3.16世紀:マニエリスムの身体
これはかなりわたし好みの章だった。

ルーカス・クラーナハ(父)ルクレティア 未成熟な身体のエロティシズム。そんなものが漆黒の中にある。
丸顔がこちらを見ている。足先から見上げると、面白い効果を感じる。

アポロの彫刻が2体ばかりある。
細マッチョのものとそうではないものと。美しい身体造形を眺めるのは愉しい。

パドヴァの彫刻家による「ヘラクレスとアンタイオス」が実に好ましかった。ためつすがめつしつつ、妄想が湧き立ち、煮え立ってくる・・・16世紀半ばの作品にはギリシャ的な愛が活きていた。

ヤコポ・サンソヴィーノに帰属 ラオコーンとその息子たち ヘビ~~~。いまやどうしても「ラオコーンといえば、シャンプーハットでアタマ洗う人」というイメージがある。
ヤマザキマリ「テルマエ・ロマエ」の影響は深刻だ・・・

バルテルミ・プリウールの作品かと思われるものとそうであるものとが3体ある。
いずれも非常に興味深いポーズをとっている。
あられもないポーズをとる女性たちに、逆立ちする美青年・・・楽しくてならない。

フランチェスコ・ファネッリ 幼いヘラクレスとヘビ スーパーベイビーである。まことに強そう。

レオンハルト・ケルン ガイア、もしくは人喰いの擬人像 ・・・足喰ってます。日本の彩色木彫の大家・平櫛田中の作に人物を飲み込むのがあるが、あれはむしろ「喰われるもヨシ」と思ったりするが、こちらは「おつかれさまです」と言いたくなる。

4.17世紀:絵画の黄金時代
やはりこの章がいちばん混雑していた。

ベラスケス 3人の音楽家 ベタッとした塗り方。少年も含まれている。スペインも暑いのだろうに、と絵を見ながら考える。

ルーベンス 難破する聖パウロのいる風景 上の方に虹も出ているらしいが、あまりに暗い。助かるものも助かれないような風景。

ロイスダール 滝 無論白雲はある。それがなくては寂しい。

フェルメール 真珠の首飾りの少女 zen605-1.jpg
わたしはこの少女のほうが実は青いターバンの「真珠の耳飾の少女」より、「共感しやすい」ことから、好意を抱いている。
虚栄心だろうと何だろうと、この表情はとてもわかりやすく、かつ共有しあえるものがある。
ウットリする眼、口、指。深いときめきが少女にある。
豪奢な毛皮と可愛い黄色い服。欧州での黄色の意味するものはわかっているが、それでもこの黄色は可愛らしく、わたしも好きな色だ。リボンもとても可愛い。
いい気持ちでじっと眺めた。

レンブラント ミネルヴァ 美術館前で彼女を使ったポスターを見た。赤衣を身にまとい、座してこちらを見る。薄い金髪の女神。

イグナーツ・エルハーフェンのツゲ材による「いのしし狩り」と「鹿狩り」とが楽しい。
これは壁に貼り付けたくなる。

5.18世紀:啓蒙の近代へ

セバスティアーノ・リッチ バテシバ 絵の中の黒人少女に惹かれる。

ジャン・アントワーヌ・ウードン 大理石でこしらえた「死んだ鳥のいる静物」「えびと魚のいる静物」はどちらもやはり欧州でないと生まれ得ない作品だと改めて思った。
日本のみならず東洋ではこうした作品はないのではないか。
自然との対立、自然との融和、といった比較論を思い出す。実感のある話。

マテウス・ドンナー ウェヌスとアドニス ちびクピドのふて寝が可愛い。

素描
6.魅惑のイタリア・ルネサンス素描
いいものが色々出ている。

ボッティチェリ ダンテ「神曲」「煉獄篇」挿絵素描より
「愛の原理を説くウェルギリウス(第17歌)」
「地上の楽園、ダンテの罪の告白、ヴェールを脱ぐベアトリーチェ(第31歌)」
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どちらもとても繊細で描きこみも多く、見ていて愉しい。ボッティチェリはタブローよりこちらの素描のほうがわたしは好み。
「神曲」は通読するのに挫折したが、こんな挿絵が大量に入っているのなら、もう一度チャレンジしようかと思ったりする。

ジョバンニ・アゴスティーノ・ダ・ローディ ゴリアテの首を持つダヴィデ 少年の美しさを感じる。ときめく。

ルーカ・シニョレッリ 人物を背負うふたりの裸体像 青年の美を感じる。
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ジュリオ・ロマーノ キリストの復活 みんな飛んで逃げる。面白い。

フェデリコ・バロッチ 「キリストの割礼」のための祈る天使と手の習作 天使と手の美しさ。

ラファエッロ・サンティ 幼児キリストと洗礼者聖ヨハネ ちびっ子二人が可愛い。
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特に右のヨハネは美童。ときめくなあ~

北イタリアの画家 塔と騎手のいる風景 青写真のようで面白かった。建築図面の関西予想図のようで。小さく跳ねているのが馬。たくさんいる。ここは馬場かもしれない。
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ほかに猫、いや豹らしきもののいるタピストリーがあった。
「学べるヨーロッパ美術」ということで、わたしもちょっとばかり謎が解けたりした。

9/17まで。
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コメント
No title
遊行さん、ご無沙汰しています。
とりあえず暑中お見舞い申し上げます。
梅雨あけて暑そうな日本ですが、スイスはずーっと猫の目のように天気が変わる毎日でした。
でも、そのせいで気温があまり上がらなかったからすごしやすかったです。今日みたいに30度になると厳しい(笑)
甘やかされてますねえ~

ところでレポート楽しく拝読しました。
クラナッハのルター像はワイマールでみたのと同じものかしら。
「エロイカ」再読したくなりましたわ!
遊行さんの言及されてる箇所、すっかり失念ですけど。
「図像学」、映画「ダ・ヴィンチ・コード」の冒頭で主人公がやった講義は面白いと思ったけど、あれですかね?!!!

ともあれ暑さの折ご自愛ください。
で、どんどん楽しい記事をお願いします(笑)
2012/07/26(木) 21:41 | URL | OZ #-[ 編集]
暑中お見舞い申し上げます~
☆OZさん こんばんは
「暑中お見舞い申し上げます」・・・いい挨拶言葉ですよねえ。
近年そのはがきを出さなくなったのですっかり御無沙汰してた言葉です。
ついでにいうと、フシをつけるとキャンディーズの歌になりますなあw ←なつかしいでしょw

スイス、30度ですか。おおーやっぱりしのぎやすそう。
わたしは亜熱帯の大阪ですからもぉ36度。笑うしかない暑さですが、まぁなんとか。

> クラナッハのルター像はワイマールでみたのと同じものかしら。

クラナッハ(この表記が大好き!)はルターと仲良しさんだから他にも描いてるのかもしれませんね。
なんだか白~い大きな顔のおじさんでした。

> 「エロイカ」再読したくなりましたわ!
> 遊行さんの言及されてる箇所、すっかり失念ですけど。

「パリスの審判」ですわ。
ナチの戦犯の爺さんが絡む話で、クラナッハの絵を保管するロシア政府が、友好の証明みたいな形で元の所有者に返還するのに、エロイカが横から攫おうとして・・・という話でした。
それで少佐が「クラナッハとルターは仲良しなんだぞ」とかいうわけです。
部長から絵の説明を受けて「エロチックな三人娘」という少佐がさすがww
やっぱり「エロイカ」はいつ読んでも面白いですよね~

> 「図像学」、映画「ダ・ヴィンチ・コード」の冒頭で主人公がやった講義は面白いと思ったけど、あれですかね?!!!

そうですわ。杖もって豹柄巻いてたら洗礼者ヨハネとか、百合の象徴とかいろいろ。
子供担いでたら、と・・・名前忘れちゃいましたわw クリストフォロスだっけ・・・
わたしなんぞはついつい「千本桜」の局と安徳天皇とか言いそうになりますがねw
そうそう、シュレンドルフの映画でトゥルニエ原作の「魔王」も子ども担ぐヒトの図像をモティーフにしてたんでした。

まあ夏も始まったばかりですが、お元気に過ごしてください。
それでまたおいでください。
四方山話でもいたしましょう~~
2012/07/27(金) 00:42 | URL | 遊行 七恵 #-[ 編集]
ベルリン美術館展
この展覧会でもっともしびれたのは、素晴らしいリーメンシュナイダー達の木彫でした。地中海の大理石彫刻とは全く異なるゲルマンの森の芸術ですね。TVでリーメンシュナイダーの物語を放映していたので、メモを取って画像を探して記事にしてみました。お時間があれば・・http://cardiac.exblog.jp/18729965/(こちらからTBが飛びませんので)。それから、上野の二つの真珠ですが、個人的には、大きなフェイク・パール耳飾りのよりも、普通のサイズの真珠の首飾りをつけた少女のほうが・・・と感じました。
2012/07/28(土) 16:49 | URL | とら #8WYMted2[ 編集]
ドイツの森、地中海の石
☆とらさん こんばんは
彫刻がどんな風に飾られているのかを考えながら見て歩くのも楽しかったです。
職人の技芸と宗教観と、それらを踏まえて眺めると、自分もまたかつての時代に生きている気がします。

わたしも首飾りさんにうっとりでした。彼女の丸顔がまたとても愛らしくて・・・
2012/07/30(月) 00:58 | URL | 遊行 七恵 #-[ 編集]
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