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美術館・博物館・デパートでの展覧会を訪ね歩き、近代建築を見て周り、歌舞伎・映画・物語に溺れる日々の『遊びに行った日を記す』場所です。 

素敵な収蔵品展 滋賀県立近代美術館/神奈川県立近代美術館

大きい企画ではないが、小さくともよい内容の企画展をみたので、それをまとめたい。

滋賀県立近代美術館「ひらけ!!ふしぎのたからばこ」より。
夏休み子ども美術館、ということで行ったその時まさに、子どもであふれていた。
それで子どもさんのお邪魔をしてはならんと現代美術のほうへ行かなかったら、山口晃の「厩図」もコーネルの「月の虹」というボックスも見そこねてしまった。残念。

三橋節子 近江昔話 雷獣 三橋節子は子どもの頃に「湖の伝説」を読んで以来、わたしの心の底でずっと一つの位置を占めている作家。
どんなに好きな作家でも、良いもの・そうでないものなどがあるのは当然ながら、三橋節子といわさきちひろは、その作品全てを受け入れてしまう。
不思議なことに、小説を書く同性に対しては厳しい眼を向けてしまうが、絵を描く同性には非常に深い尊敬やシンパシーを感じることが多い。特に自分が子どもの頃に見た女性画家の作品は、好悪を超えて、ある種のイコンのように自分の心の中に高く活きている。
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節子さんは子どもさんにこの昔話を語ったのだろう、と思いながら画面を眺める。
ふっくらしたほっぺたの子ども、翔る不思議な獣、近江の草・・・
自分もまたその場にいて、この子どもらのすることを間近に見ているような気がするのだ。

山元春挙 しぐれ来る瀞峡 大きな掛け軸。そこに大自然がある。春挙はロッキー山脈ですら掛け軸のうちに収める。小さくまとめるのではなく、大自然の一部を切り取ってそこに姿をみせ、見るものをもっと大きな地点へつれてゆくのだ。
この瀞峡もそう。奥にも手前にももっと深く水はあり、豊かな深みがあり、風が吹き渡ってゆく。そしてしぐれに遭いつつも、その気持ちよさを堪能するのだ・・・

紀楳亭 高士羅浮仙 最初にこの絵だけを見たとき、「古い絵を巧くはめ込んだポップ系な感じの・・・」と思ったら、なんのことはない江戸時代の紀楳亭の作品ではないか。
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ちょっと虚を突かれた感じがする。背景の黒も宇宙空間の黒のように見える。
面白かった。杉浦茂の不条理ギャグマンガでは背景に突然宇宙や西部が出てくるが、あれと同じような精神風土を思う。

吉田善彦 桜 この人の桜はいつももあもあと優しく、しかし捉えどころのない姿を見せている。どこまでが桜の花なのか、どこからが空気なのかもわからない。

岸竹堂 月下遊鹿図 三匹の鹿がいる。シカップル+友人なのか、シェアリングなのか。
・・・わたしはツガイという字は使わず、すぐカップルと書くので、鹿のカップルだからシカップルというのだが、やっぱり三頭の鹿の関係性はわからない。

小倉遊亀のコーナーへ。
谷崎の「少将滋幹の母」挿絵をみる。遊亀の人物画はタブローより挿絵のほうが好ましい。
平安風な描線で描かれた美しい黒髪のひと、そして墨の濃淡と線の肥痩のリズム。
数枚の作品を眺めながら、谷崎の豊かな世界には、多くの優れた画家の挿絵が活きていることを、改めて実感する。

花屑 何のことかと思いつつ絵を見ると、可愛らしい花が投げ入れられている。
さりげなく和やかな風情があるのだが、解説によると、どうも生けるのに向かなかった花のことを「花屑」と言うらしい。そうか、余り花かと思いつつ、それはそれで可愛らしい。
そしてそれを遊亀さんは綺麗な器に生け、花を活かし、絵にするのだ。

清水卯一のやきものがいくつかある。今回は田舎饅頭のような肌のものはなく、さらさらとした肌のものばかりがあった。暑い時期にはさらさらしたやきものがよろしい・・・

9/2まで。


次に鎌倉の神奈川県立近代美術館別館での収蔵品展の感想。

洋画家の朝井閑右衛門といえば、そのマチエールが一目見れば忘れられない様相を見せている。変な喩えだが、シリアルのクリスピーの細かいのが寄り集まったような、それがいちばんしっくりくる。

その閑右衛門の三部作があった。鶴岡八幡宮を描いている。
しかもただの風景画ではなく、上空に神様が現れている。人と神様が一緒にいる空間。
1977年のある日に生まれた作品。
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祭Ⅰ お狐 手前の赤い鳥居の左右の白い影がお狐さんなのだっ!
祭Ⅱ 巫女さん 白い道は砂利。そこを歩く巫女さんたち。その上空には・・・
祭Ⅲ 鶴ヶ岡 ここではⅡに続いてとうとう義経や不動明王に天女まで現れ、絶頂に達している。祝祭空間の頂点はここに極まった。
 
なんだか異様な喜びが湧き出してきた。自分もこの空間に入り込んでしまったのかもしれない。祭りだ祭りだ・・・わくわくしてきた。
絵がどーのとかいう必要はなく、このわくわく感を言葉にしよう。
絹谷幸二は絵の中に歓喜とワイワイガヤガヤといった騒ぎ声を封じ込める作家だが、閑右衛門はその先達として、このジャカジャカしたマチエールの中に、音声と歓喜とを封じ込めたのかもしれない。

今回はフジタの「キキ・ド・モンパルナス」を収蔵したということで、チラシにも大きくキキの身体が横たわっている。
このグラン・ブランと謳われた乳白色の肌を拵えるのに、天花粉を用いていたとは、フジタは凄い・・・!
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珍しいものを見た。伊東深水の歴史画である。尤も「静御前」だから美人画と言うつもりで描いているのかもしれない。しかしこの鎌倉に収蔵されているということを考えると・・・
描かれた動機は別にどうでもいいか。楽しく絵を見る。それだけでいいのだ。
鶴岡八幡宮で静御前が白拍子姿で扇を持つ姿を見ていると、「賤や賤、賤のおだ巻き・・・」という歌声が聞こえてくる。

絵を見て、名前を見るまで完全に忘れきっていた。今も名前は思い出したが、何の作家だったかはわからないままなのだが・・・
砂澤ビッキの裸婦のラフスケッチがよかった。

松篁さんの美人画があった。
花野 天平美人が二人たたずむ。リンドウを手にする人と、今一人は白リンドウを取ろうとしている。
周りにはキキョウ、白萩が咲いている。
松篁さんの美人は優しい自然の中にいても調和を乱すことなく、そこになじんでいる。

ここにも遊亀の絵がある。金地に白牡丹が美しい。
そういえば鶴岡八幡宮では蓮は見るが、牡丹園には入ったことがなかった。
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アルビン・ブルノフスキという銅板画家は知らなかった。
'35'~97の人生。既に新作は望めない。幻想的な作風で、とてもかっこよかった。
特に'77~'92年の作品がよかった。

こちらは9/9重陽まで。
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コメント
No title
絵を見る遊行様の楽しげなご様子に、いつも引き込まれます。
それで、ついつい自分まで見たような気になって、すぐ近くにあるのに鎌倉別館にいまだ行かずじまいw
ココロの手帳に見たい絵が、見たいけど見てない絵が増えるばかりなり、です。
2012/07/31(火) 23:53 | URL | nanatoshina #-[ 編集]
暑中お見舞い申し上げます
☆nanatoshina さん こんにちは

鎌倉は気合を入れないとわたしのような関西人にはなかなか行けないんですよ(笑)。
近所やと却って「いつでも」なココロモチになるのかもしれませんね。
わたしなんか神戸は京都より近いですが、なかなか神戸に行きませんし。

また涼しくなったらお出かけください♪
2012/08/01(水) 09:55 | URL | 遊行 七恵 #-[ 編集]
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