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美術館・博物館・デパートでの展覧会を訪ね歩き、近代建築を見て周り、歌舞伎・映画・物語に溺れる日々の『遊びに行った日を記す』場所です。 

橋本コレクション中国書画/中国山水画の20世紀

大阪市立美術館と東京国立博物館とで、それぞれ中国書画の名品を見た。
先に大阪の感想を書く。
なお文字化けしそうな文字は音読みのカナで表記する。

大阪市立美術館の橋本コレクション展は前後期にわたって開催中である。
どちらも楽しく眺めてきた。
橋本末吉というコレクターは戦後の動乱期に桑名鉄城のコレクションを手に入れ、また近現代絵画をも収集した。

明代から清代、民国からつい近年までの作品が時代ごとに並ぶ。

辺文進 柏鷹図 猛禽だということを実感させる。

鄭文英 山水人物図 青衣の童に高士らしき人とがいる。色がほとんど抑えられた中での青が目に残る。

石鋭 探花図 探花とは科挙の第三位合格者をいうそうで、この図は科挙の受験を目指す人に贈られたもの。青々とした山に深い緑を魅せる松が生い茂る。どの山にもめでたき山と緑がある図。
チラシでは、この下には丁度四百年後の任頣の花鳥図があるが、時代の流れを感じさせて面白い。
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周臣 風雨帰舟図 強い風雨が大きく表現されている。その風雨の下、岸辺から離れた二隻の舟がある。船頭の笠がとばされたのを眺める人々、家の中で風雨を避ける人々、小さな人間たちの営みが明るく描かれている。

張路 道院馴鶴図 これはまた与謝蕪村風な素朴な趣があり、その空気がいい。

王諤 高士濯足図 画面下方に川の水に足を浸ける高士が見える。そばにはやや老けた童がサンダルらしきものをもって主人を待つ。またもう少し離れたところにロバと馬子が控えている。暑い日にこうした絵を見るのもいい。

鄭文林 漁童吹笛図 「狂態邪学」と非難される画風だが、室町時代の水墨画に通じる「風狂」とでもいうようなものがある。怪異な人物たちはイキイキしている。

李著 漁楽図 長い長い絵で、川に舟を浮かべ漁を楽しむ人々が描かれている。
これは渡辺崋山の模本が伝わるというから、なるほど日本人好みの図ではある。
言い争いをとめようとする人、酒盛りする人々、鵜飼いと休む鵜たち・・・人々の姿が活写されている。

文徴明 山水図 細密画。非常に繊細な描き込みがある。

謝時臣 華山仙掌図 これは面白い図だった。高さ2mもある巨大な絵の遙か上方に、山肌が見える。その一つに河神の巨大な掌が押されている。とても面白い。実際にこんな景色があるのかどうかは知らないが、とても印象深い。

張龍章 穆王駿驥図 穆王には八頭の駿馬がいたとかで、それらの姿を絵に残している。二頭ずつの連作もの。賢そうな馬と穏やかそうな人がいる。この人がどうも穆王らしい。馬は二頭とも馬具もつけず一見野馬風。しかし背の流れなどが美しい。

呉彬 渓山絶塵図 絖に描く。チラシ表にも選ばれているが、執拗なほどの細密描写。
山の連なりというより、それぞれ独立した橋杭岩のような姿が面白い。
その中に点在する建物だけが画風が変えてあるのもいい。
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孫杕 牡丹図 カラフルな牡丹図。岩と牡丹、そして足下にタンポポ。

徐枋 竹霊芝図 清朝に入り宋風な懐古調の絵を描く。

藍濤 玉堂富貴図 上に海棠、下に様々な牡丹が咲き乱れる。白をベースに薄紫を花弁の端に浮かべたもの、薄ピンクのもの、赤い筋を走らせたもの、そして赤い花もある。華やかなめでたい図。
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虞沅 菊花小禽図 艶やか。白菊、赤菊、宋代院体画に近い雰囲気がある。

顔嶧 荷郷清夏図 蓮の少し咲く池畔。すゞやかな美。

高鳳翰 「揚州八怪」の一人。泉屋博古館でもこの人の野菜を描いた絵巻を見ている。具合がわるくなって右手が使われなくなったが、左手で復活した画家。
晴霞浄艶図 まだ右手の時代。のびやかな美しさがある。
松山一角図 こちらも。絵のうまさを感じる。
この画家は左手の作品しか見ていなかったので、今回右手の作品が見れたことはよかった。

丁観鵬 阿羅漢像 菩提樹の葉に羅漢図を描いた連作もの。それを台紙に張っている。こういうのも面白い。
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湯楙名 松下仕女図 二人の女がいる。体は細いが顔の大きな女たち。

周笠 皆大歓喜図 二重の大喜びの図。松下で万歳している。何に喜んでいるのかはよくわからない。  

李脩易 藤牡丹図 綺麗。白っぽいシルクの服のような。そこに藤と牡丹が。

陳元ピン 故山西湖図 明代の西湖もまた景勝地だった。名所図としても楽しめる。
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謝時中 夷斉山居図 タイトルから「伯夷・叔斉」の故事にまつわる絵だとわかる。
人物も木々の中に同化しているようだった。
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丁敬 墨梅図 清新な美しさがいい。
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呉煕載 蝉過別枝図 柳の細い葉。蝉たちが飛ぶ。ああ、夏の喜びを感じる。

沈南蘋 雪梅群兎図 まだ若かった頃の作品だというが既にどう見ても南蘋。
白梅と雪をおいたような白椿の木下に三匹の兎。それぞれの目つきがたまらなく面白い。
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右手の白黒は何か談合しているようだし、左の白水仙をクンクンする白兎は不審気な面もち。
カワイゲはないのだか、妙に心惹かれる。
日本で大ブームが起こるのもよくわかる。この暑苦しさがいいのだ。
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高乾 春王双喜図 沈南蘋の弟子で再来日もしてくれた画家。岩に牡丹とカササギのカップルと。タイトルは無論そこから。支障とは違う情緒がある。
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何元鼎 侯禄図 吉祥画。木の上にはサル、それを見上げる鹿。メジカは流れの方へ顔を向けている。秋のある日。
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方済 富士真景図 来日の際、千葉に漂着し、そこから長崎へ護送されたが、その旅の間に各地を写生して歩いたらしい。残っている唯一の肉筆画。
誰がみても富士山は美しい形を見せている。山頂のモコモコと滑る稜線と。そしてちょっとばかり中華風な民家があるのはご愛敬。
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江稼圃 清渓重嶺図 蜀山人や竹田らと交友したそうだ。本来は船主として来日したというのも面白い。だから役人である蜀山人ともスムーズに会えたのかも知れない。
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羅清 蘭竹石図 明治初に来日して、松本良順らと交遊した。これは彼のために浅草寺で描いた指頭画。竹と石とが濃淡も美しく描かれている。

虚谷 金魚図 わたしは「ちょきんぎょ」が大好きだ。こちらは赤い出目金たち。木につられてるようにも見えるが、機嫌よく泳いでいる。イキイキと。
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陳崇光 群鳥争鳴図 四羽の叭叭鳥がわめきあっている。下には水仙が咲く。元気そうな図。

いよいよ呉昌碩の登場である。
京博で見て以来、その面白さを知るようになったが、今回もいい絵がある。
藤花爛漫図 これもまたにぎやかな図で、何百年も前の絵とはやはり全く違うのを(当たり前だが)つよく感じる。
木与石闘図 木と石の闘う図。押し合いへしあいの木と石。面白いなあ。
浅水芦花図 この言葉がまた好きなので楽しく眺めた。
雪山飛瀑図 雪をいただいた木が可愛い。電柱のくねったような木が特に可愛い。
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王震 蘇武牧羊図 匈奴の国で蘇武は羊飼いをしている・・・山羊にも羊にも見えるが、黒二匹と白一匹がいる。望郷の念はその厳しい面から読みとれないが、何か激情を抑えているようにも見える。

陳衡恪 古木栖鴉図 この画家は梅蘭芳のサロンにいた人だという。八羽の鴉。赤目のやつら。

張聿光 春苑狸奴図 リドとは何かと思ったらどう見ても黒猫だったのだが。それが何か石の上に座ってこちらを向いてニャーッ・・・可愛い。

干悲闇 柑子小禽図 くっきりした線で色も鮮やか。これを見ていた小学生女児二人が「これを宿題の感想文かこう」と言い合うのが聞こえたが、確かにこの絵が一番はっきりした線と色とで構成されている。
小学生にはたぶん、これ以外は曖昧なわかりにくいものばかりなのかもしれない。

張大千 水殿清風図 この絵は不忍池の蓮を描いたもの。水気たっぷり筆に含み、それで大きく葉を描く。魅力的な一枚。19歳で京都にきて、それから敦煌へそしてブラジル、アメリカ、台北に移り住んだそうだ。
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前後期ともども大変みごたえのある展覧会だった。
9/2まで。

続いて本日までだった東博の「中国山水画の20世紀」について多少。
北京の「中国美術館」から来た名品。
良くできたリーフレットを無料でいただけたのも嬉しい。
そこには「よくわかる!中国近現代絵画のながれ」のチャート表があり、画家たちの派閥が把握できるようになっている。

前述の呉昌碩からが中国近代絵画の幕開けだというが、ここでも呉の強い線が目立っていた。

斉白石 滕王閣図 縦長の画面が三部に分かれている。
山脈、林、町。それぞれにつながりはなく、白い空間が広がる。あえて描かないところが新しいのだった。

張大千 山水画冊 豊かな自然を描写している。色の付いたものもあるが、むしろ墨絵の良さに惹かれる。

呉湖帆 廬山東南五老峰図 翡翠色の岩の美しさに惹かれた。大飛瀑、豊かな流れ、そして濃く紅葉した木々。
とても綺麗な風景だった。
個人的には廬山・五老峰といえばやっぱり聖闘士の修行先というイメージが、ある・・・
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左には陸ゲン少の朱砂冲哨口図 ああ、たしかに朱の砂が。

林風眠 水上魚鷹 墨の濃淡で表現された世界。しかしここには伝統的な山水画だけでなく、西洋のポスト印象派の影響もあるらしい。非常に面白い一枚。
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この人はパリに留学していたというが、その時代は丁度20世紀の絵画芸術の大きな変遷の時代だった。

藩天寿 雲岩澗一角図 力強さと繊細さが融合したいい絵。
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高剣父 漁港雨色 この画家も先般の京博で知ったのだが、山元春挙、竹内栖鳳らの影響を受けたというのも納得できる。美しい滲みがいい。そして水面が白だけでなく複雑な淀みを見せるのが印象的。

20世紀の中国絵画の流れなどは、宋から明清に至るまでの時代のそれよりも、わたしには難しい。
まだまだ鑑賞することも未熟なので、ただただ眺めて歩く。
正直、近年になればなるほど関心が薄れてゆく。
いいと感じた作品はみな半世紀前の、文革前までものばかりである。
今後も「見たい」と思うものは、やはり宋から明清そして20世紀第一四半期頃までの作品になるだろう。
尤もそれは私の場合、どこの国のものでもほぼ同じなのだが。
色々なことを教えてもらえた良い企画展だった。
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