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美術館・博物館・デパートでの展覧会を訪ね歩き、近代建築を見て周り、歌舞伎・映画・物語に溺れる日々の『遊びに行った日を記す』場所です。 

ウクライナの至宝 スキタイ黄金美術の煌き

大阪歴史博物館で「ウクライナの至宝 スキタイ黄金美術の煌き」展を見た。
わたしは北方遊牧民族関連の黄金装飾が好きなので喜んででかけた。
'92年に京都文化博物館で「スキタイの黄金展」を見て以来の再会である。
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このあたりの歴史についてもわかりやすい解説がパネル展示されていて、とても役に立つ。
最初に紀元前8世紀の「キンメリオイ(キンメリア)時代」のピンと首輪(トルク)が出た。
既にこの時代から黄金を美しい細工で装飾する技術が、スキタイにはあった。
ボタンが生まれるまでの間、ピンが衣服の留め金として活躍した。
それ以外は着てから縫う、ということが10世紀頃まで続いていた。
これは高校の頃に読んだ「アイスランド・サガ」の「グレティルのサガ」やケルトの人々の民俗・風俗を記した本にも載っていたが、西洋から北方遊牧民族まで、斉しくその技法が採られていたことを、面白く思う。

・スキタイ時代(前7~3世紀)
馬具もまた黄金を用いたものが多かった。型押しで拵えた図柄はヘラジカや獅子の顔を見せている。スキタイはまた、鹿の角に対する特別な意識があったらしく、そこに再生の象徴を見出し、図像として好んだ。

ヘラジカ、獅子、鹿の飾り板はやや横長長方形で、大体が3cm~7cmくらいまでのが多かった。また、裏打ちしたらしき、有翼人の柄の入った板もある。

弓の弦を張る道具で骨製の「弭」ユハズも展示されていた。弓偏に耳。なんだか納得する字面である。

紀元前4世紀になるとそろそろ鉄の時代で、鉄剣などが出てきた。
こういうのを見るとすぐに「王家の紋章」を思い出す。あちらはエジプトだが。
そしてここに猪の頭と動物闘争文をつけた黄金の剣が現れる。
チラシでも光っている剣。
その鞘は25cmくらい。
鹿が前からグリフィンに後ろから獅子に襲われ、獅子の後ろには二匹の豹が待機中という図像。けっこう動物闘争文が多いことにも気づく。

こちらは弓矢いれ。やはり動物闘争文。
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それだけでなく、人々の集う情景とパルメットとグリフィンが浮かんでいる。
猪、獅子、豹、牛、獅子、犬、雌獅子、牡牛、山羊、雌豹の闘い・・・
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人々の様子は、ギリシャ神話のアキレウスの説話かイラン系の英雄説話からしい。
'92年の展覧会の時にはアキレウス説話だとあったが、20年の間にまた新しい研究が進んでいたのか。
剣にしろこの弓矢入れにしろ、儀礼的なもの。

嘴の大きな鳥や鹿を象った竿頭飾りがある中に、一瞬古代中国の燭台に見えたものがある。
スキタイの神・パパイオスを象ったもの。この画像は'92年の展覧会のときに購入した絵葉書。爺さんの頭上に鳥らしきものが翼を広げている。
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ここから次の室へ向うのだが、そこで丘が作られていた。草原の丘。そこに石人が立っている。ファロス形にも見えるが、そばにいたご夫婦が女の人だと言うので、そうか、とも思う。実際のところはわからない。出土地も不明らしい。

リュトンと角杯の違いについての説明があった。
角杯は上から飲むが、リュトンは細くなったところから飲むそうな。
そうと知ってから見ると、リュトンの見方も変わってくる。
道具関係はやはり説明を先に読んでからの方がいい。

大鍋がある。「鍑」フク・・・サガリ、カマとも辞書にあるが、これは肉を入れて炊く専用鍋で、取っ手つき。肉料理で宴会したのか、神に供えたのかは知らないが、よく使われていたそうだ。
他にもアンフォラやシトゥーラといった器が色々ある。

装飾品を見る。
スキタイ人にとって首飾り・胸飾りは非常に重要なものらしい。
この胸飾りにも動物闘争文。
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骨製の櫛や青銅製の腕輪、じゃらじゃらした耳輪も多い。
蜻蛉玉の首輪や、このように色んな色の石を集めたものもある。今でも使えそう。
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わたしの好みはこちらの金の方。
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かぶりものなどにつけていたらしい、グリフィンの飾り板(3x4cm大)が55枚あった。
型押しらしい。それからゴルゴン・メドューサの飾り板もある。
なかなか怖い顔である。これらか魔除けになるのは、「毒をもって毒を制する」ということか。7人のゴルゴンと1人のメドューサ。

祭儀用の女性の服飾の再現があった。色んな飾り板がどのように使われていたかも納得する。

・サルマタイ時代(紀元前2~4世紀)
柘榴石と水晶と金が綺麗。

いるか形フィブラ(安全ピン)がある。これは前に見たときも可愛くて可愛くてお気に入りになったもの。フィブラはラテン語とのこと。
下のヘビの指輪はこれより百年以後のもの。
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・黒海沿岸のギリシャ系古代国家
確かにギリシャ的なものがあった。
赤像式皿 魚盛皿で、エウロペの説話、ネレイス、羽のある美青年(エロス)などが描かれている美しい皿。赤像と黒像とはネガとポジの関係なのだと軽く思う。
他にも、綺麗な赤像式の器をいくつも見る。絵がとても繊細。

クリミアから出土した耳飾は金をベースに、紅玉髄、柘榴石の取り合わせや、金に瑪瑙のものなど。これらを見ていると、後の正教会の十字架の装飾などを思い出す。

硬貨がたくさん出ていた。いずれね打刻式。東洋では鋳造のものがメインだが、西洋は打刻式がメイン。アレキサンダー大王の時代のものもある。ときめくなあ。

・中世の遊牧民(4~14世紀)
この辺りからタタール人(韃靼)などが現れてドキドキする。
ポロヴェツ人・・・
わたしのアタマの中では「韃靼人の歌と踊り」が流れ出す。
そしてフン族のアッティラ王の話・・・ゲルマン人の物語「ニーベルンゲンの指輪」の後日譚たる、クリームヒルトの復讐譚などなど・・・

フン族の剣が現れた。紅玉髄と柘榴石の装飾がついている。
「辻金具」という十字型の金具にも柘榴石がついている。赤い石への偏愛があるらしい。

ゴート族のこめかみ飾りも愛らしい。
変なのは「戦士小像」。ポーズがビミョーすぎる。
これは会場前の顔ハメにも出演していた。
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・スラブとキエフ=ルーシ(4~14世紀)
いよいよキエフ公国の出現。
「スキタイの黄金」とは遠く離れた文化である。
だが、装飾の技法は手が込んでいて、美しい。ビザンチン様式を思わせる。
「東方的を起源とする装飾や美術が見受けられる」のは、やはり当然か。
それは「多色象嵌」の技法などから。
ここにある首飾りには確かにそんな風情がある。

こめかみペンダントは金に象嵌したもので、小鳥が対になっている。とても可愛らしくて魅力的。
わたしはビザンチン様式がとても好きなので、こういうものを見るのは嬉しい。

そして実際にビザンツの出土品が色々出ている。
スプーン、盃、行進用の十字架、メダイヨンなどなど・・・

・ウクライナの装飾美術(16~19世紀)
我々のイメージする「ロシア風」な装飾品が多い。七宝、ニエロと呼ばれる黒金象嵌。

聖遺物用十字架 銀に紅玉髄、アメジスト、ガラスの装飾がある。とても綺麗。
正教会の荘厳さを思う。

聖母子像のカバーがある。金製の顔ハメだと思ってほしい。

正教会の主教が持つものが出ているが、これがまた素晴らしい荘厳をされている。
エメラルド、ルビー、サファイア、スピネルなどなどがつけられていて、煌いていた。

最後に現在のウクライナの風景写真がパネル展示されていた。
ドニエプル川、コサック、そして・・
色んなことを考えさせられ、また思い出す。
11/25まで。
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