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美術館・博物館・デパートでの展覧会を訪ね歩き、近代建築を見て周り、歌舞伎・映画・物語に溺れる日々の『遊びに行った日を記す』場所です。 

夢の南洋別荘地

いきなり母から「実は南の海の底にうちの地所がある」と言われた。
うちは北摂には多少まだ地所は持っているが、農地解放でヤラレた没落地主の家だから、もうなんにもないと思っていた。什器一切、着物のよいのや家具まで売り払う暮らしぶりだったので、いまだに恨みが深い相手もいる。
それが何で縁もゆかりもない南の海の底なのか、深く考えもせずに車に乗った。

何時間かかったか、ついたらもう目の前は海である。
わたしは都心ハイカイ型なので海にも山にも無縁なのだが、とりあえずスキューバしなくては、その地所も見れない。
妹はスキューバダイビングも出来るが、わたしはチャプチャプ泳ぐくらいなので、あまり期待は出来ない。
しかしボートにその支度がされている以上、わたしが飛び込まなくては誰がする。
もとより母に沈んでみてくれとは言えない。

存外ラクに海に沈むと、どうやらその地所とやらがわかってきた。
一旦ボートへ顔を出すと、ハンマーと杭とを手渡された。
地所の範囲をきっちり打って来いとの仰せである。
水中でボクボク打ったり出来るんか、と思いながらそれを持って沈むと、案外うまいこと打てた。
それにしたかてわたしもなかなか有能やないか、と感心しながらロープもつけて地所を押さえておく。

海から上がってどこかのコテージに入り、うちわえびを食べていると、星があっという間にピカピカきらきら瞬きだした。随分早く満天の星空になるもので、非常に綺麗である。
こんな星空は大阪では見れない。いや、プラネタリウムがあるか。
よく働いたし、おいしいエビも食べてるし、星もキレイし、地所は手に入るしでホクホクしていると、勝手に笑いがこみ上げてくる。
ソヤソヤ写メしとこ、と星空やうちわえびをパチパチ撮ったが、それからどう時間が経ったか、もう大阪の自宅にいる。

妹が上田から戻っていて、世間話のついでにあの地所の話をすると、前から知っていたという。しかしわざわざ水中に潜って杭打ちなんかしたくないから、あんたがしてくれて助かると言う。
わたしとしてはちょっとばかり腹が立つし忸怩たる思いもあるが、あの星の綺麗さや海底の気持ちよさは忘れがたいので、まぁエエかと思う。
やっぱりわたしは嬉しくて笑っている。
しかしこれは夢だろうと思う。
思うのだが、写メを見ると、やっぱりデータに星空や杭を打った地所やうちわえびがある。
本物らしい、と確認してわたしはまた笑った。

少しして自分の笑い声で目が冴えた。先ほどまでの続きというか、同じ意識の流れの中でのはっきりした覚醒である。
時計が鳴っているので、止める。
止めてしばらくしてから、写メを開く。星空もえびも海底の地所も消えていた。
データ更新を怠ったのかもしれない。

階下に降り起きてきた母に「南洋の地所はどうなった」と尋ねると、「夏になるたび死んだろかと思うママが、なんでそんな暑いところへ地所なんか持つねん」
ついでにうちわえびの話をすると、「ママが甘えび以外食べへんの知ってるくせに、なんでそんなわけのわからん海老なんか食べるねん」と返ってきた。
おかしいな、わたしはシアワセのあまり笑ってたんだがなあ。
「笑うのは幸せの証拠やからええやないの」と言われたが、あの地所はやっぱり惜しい。
今度いつ行けるだろうか・・・・・・


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2012/10/03(水) 20:54 | | #[ 編集]
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