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美術館・博物館・デパートでの展覧会を訪ね歩き、近代建築を見て周り、歌舞伎・映画・物語に溺れる日々の『遊びに行った日を記す』場所です。 

リヒテンシュタイン 華麗なる侯爵家の秘宝

国立新美術館の「リヒテンシュタイン 華麗なる侯爵家の秘宝」展には圧倒された。
実のところ期待はしていたが、前情報をいれずに出かけたので、あそこまで力の入った展覧会だとは思わなかったのだ。
まず空間の設えに驚いた。
これまでも大々的なエルミタージュ展やハプスブルク家展などで素敵な設えは見てきたが、これはレベルが違う。
再現されているのだ、国立新美術館の空間に「夏の離宮」が「バロック・サロン」として!
本当に驚いた。
あまりに圧倒されて、バロック・サロンでかなり長い時間を費やしてしまった。
他を堪能する時間が減ってしまった。
素晴らしい!
実際の夏の離宮の写真は、配布された新聞記事に載っている。

うむ、これを再現したのか。
サイトにはこうある。
ウィーン郊外ロッサウの侯爵家の「夏の離宮」は、華麗なバロック様式を特徴とし、その室内には今もなお、いにしえの宮廷さながらに、侯爵家の所蔵する絵画、彫刻、工芸品、家具調度が一堂に並べられています。本展では、その室内装飾と展示様式にもとづいた「バロック・サロン」を設け、華やかなバロック宮殿の雰囲気を再現します。また、日本の展覧会史上初の試みとして、天井画も展示。総合芸術としてのバロック空間を体感していただけます
実際その通り!
何を見てもどれを見ても「いい、いい、いい!」ばかり思ったのは、これは完全にこの空間に夢中になってしまった証拠。
一つ一つをためつすがめつ、ため息と共に目ばかりキラキラさせて眺め歩いた。
冷静になり、一つ一つを見て小さい感想を言うのは、この場合ふさわしくない。
個にして全、全にして個たるこの展示空間、それ自体を楽しめばよいのだ。
それにしても本当に素晴らしい・・・

チラシは全面を開くとA2ポスター大になる。
それはスキャンできないのでカメラで写す。
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そして肖像画がわれわれを誘う。
「ようこそ、わが宮殿へ」
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ああ、招かれてしまった。この栄誉は公にしなくてはならない。

天井画も壁面に飾られた画も、何もかもが優美。
そして家具や建物の装飾の総合的な美貌。
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まさに王侯貴族の優雅な空間。
佇むだけでくらくらする。

中国や日本の美しい磁器がヨーロッパに流れ出た時代、東インド会社を通じて世界中へその美が知れ渡り、王侯貴族はこぞって東洋の美を蒐集これに務めた。
しかしそれをそのままの形では愛さず、西洋の嗜好に沿う黄金の飾りを施した。
繊細なポーセリンに強固な金属の箍を嵌めて、緊縛する。
それでこそ、欧州の王侯貴族の嗜好に適うのだ。

過剰な装飾を施されたのは磁器だけではない。
キャビネットの美々しい装いを眺めていると、これが実際に使用されたのかどうか疑いが浮かぶ。とはいえ宮殿内のヒトの集まる空間の家具には、それほど実用性のあるものはないだろう。

絵の下に美々しいキャビネットやテーブルがある。一つ一つを眺めつつ、その組み合わせを楽しむ。
一つだけで見ても魅力的だが。
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天井画の作者はアントニオ・ベルッチ。四点の連作。これは東京でしか展示されないというから、やはりここで見れたのは嬉しい。

実際ここで本当に時間をとりすぎてしまった。
リヒテンシュタイン侯爵の持つ名画コレクションにたどり着けない虞れが出てきたのである。

なんとかバロック・サロンの魅力を振り切って次のコーナーへ向かう。
リヒテンシュタイン侯爵家の名画について必ず思い出すことがある。
青池保子さんの「エロイカより愛をこめて」のエピソード「第七の封印」である。
ここでは美術専門の怪盗エロイカが、リヒテンシュタインの秘匿された名画を見る機会に恵まれ、それを盗む計画を立てることから話が動き始める。
物語は東西冷戦の終盤時代だった。ファドゥーツ城の警備のコンピューターをこちらで操作するためにブラックボックスが必要となったが、そこへ旧KGBが自国のコンピューターの狂いを修正させたいがために、ブラックボックスを持ったIBMの技師を拉致する。
作中にはリヒテンシュタインの名画が姿を現すことはないが、今もそのときに感じた憧れは活きている。

名画ギャラリー やっとたどりつけた。
ここでは少しばかり細かい感想を書く。

ルーカス・クラナッハ(父) 聖エウスタキウス 縦長の絵。浮世絵でいえば三枚続な形である。
上部に立派な角の鹿がいる。三本も角があるのかと思えば、それはキリストの十字架だった。
突発的な出会いは衝撃だったらしく、エウスタキウスはキリスト教に改宗する。
主人の周りにたむろする犬たちの表情が面白い。そして木の陰に立つ馬はカメラ目線で、こちらをじっと見つめるのがいい。

グィド・レーニ マグダラのマリア かわいい。上を見るその目つきがいい。

「切り取った敵の生首を持つ」人々がいる。
クリストファーノ・アッローリ ホロフェルネスの首を持つユディト 黄色い衣装の女。どことなく親しみやすい顔立ちである。
ジロラモ・フォラボスコ ゴリアテの首を持つダヴィデ このダヴィデの美少年ぶりにはときめいた。ヤマトオグナがクマソ兄弟を倒した故事に通じるものを感じた。

チーロ・フェッリ 井戸端のキリストとサマリアの女 親愛な空気が感じられる。この和やかさがいい。


こちらはルーベンス・ルーム。
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ルーベンスといえばまず「フランダースの犬」である。
ネロが死の寸前に見たルーベンスの大作、ネロは満足しての死を迎える。
また堀辰雄「リューベンスの偽画」も。

聖母を花で飾る聖アンナ 聖アンナはやや年輩婦人として描かれ、マリアの祖母のようにもみえる。マリアは金髪の美少女である。天使たちがころころいる。音楽が流れてくるような作品。

キリスト哀悼 鼻血の伝う死骸。あちこちの血がナマナマしい・・・

実に多くのルーベンス作品を所蔵しているそうだが、その一端に触れることができて本当に嬉しい。

次にうつる。
モノスゴい細密な技術と装飾が待っている。

イタリアのさる工房で作られた「貴石象嵌のチェスト」が余りにすばらしくて目がくらんだ。

再び名画ギャラリーが始まる。

群衆を見る。主人公がどこにいるのかわからない絵。
ヤン・ブリューゲル 若きトビアスのいる風景 本当にわからなかった。

ピーテル・ブリューゲル ベツレヘムの人口調査 しかしいつもながらの猥雑な農村風景なのである。
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ヴィジェ・ルブラン 虹の女神イリスとしてのカロリーネ・リヒテンシュタイン侯爵夫人 この図を見て明治初期の日本洋画、本多錦一郎の女神像を思い出した。
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フリードリヒ・フォン・アメリング 夢に浸って 可愛らしさにときめいた。こうした表情はやはり19世紀絵画のものだとも思う。
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フランチェスコ・アイエツ 復讐の誓い この女の表情の厳しさから、迫りくる惨劇の時を想う。

バロック・サロンに溺れて時間を傾けすぎてしまい、こちらの作品を楽しむ時間が少なかった。
惜しいことをした。

12/23まで。

最後に愛らしい幼児を。
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コメント
No title
こんにちは。はじめまして

新美のリヒテンシュタイン展、すごいですね。うらやましいです

いきなりですいませんが、ちょっとお尋ねさせてください
来年の京都展をいまから楽しみにしているのですが、巡回先には展示されない作品があると聞きました。遊行さんのブログにあるように天井画がそのようですね
他にも新美だけの作品はあるのでしょうか…?よろしければこの関西人に教えてやってください

たくさんあれば、東京まで観にいこうかなとも考えているのです。天井画だけでも、悩ませます
2012/10/17(水) 23:01 | URL | salome #X.Av9vec[ 編集]
はじめまして
☆salomeさん こんばんは
まずルーベンスの連作「デキウス・ムス」が来ないのは確かです。
わたしは図録を買わなかったので、リストで見るしかないんですね、
ところがそのリストには出る・出ないが掲載されていない。
ちょぃと困る状況です。
今のところそれくらいしかわからないんですが、あの雰囲気を味わえないとやっぱりつらいです。
うーんうーん・・・
どうもすみません。
2012/10/18(木) 22:35 | URL | 遊行 七恵 #-[ 編集]
No title
ありがとうございます!

あの巨大な「デキウス・ムス」も東京だけですか……泣きそうです

充分でした。助かりました。このすばらしい空間のために、東京まで行く価値がありそうです
2012/10/19(金) 22:34 | URL | salome #X.Av9vec[ 編集]
☆salomeさん こんばんは

> あの巨大な「デキウス・ムス」も東京だけですか……泣きそうです

そうですねん、あれをみるだけでも新美に行く価値があるかもしれません。
それに東京へ行かれたら、11/4までなら近所のサントリー美術館の「御伽草子」展も見れますよ。
ハコの都合でしょうけど、惜しいことです。
2012/10/19(金) 23:39 | URL | 遊行 七恵 #-[ 編集]
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リヒテンシュタイン 華麗なる侯爵の秘宝 その1 @国立新美術館

 ウィーンのリヒテンシュタイン美術館には、2007年に訪れた(記事はこちら)。建物はもちろん、展示物も超一流だった。  ↓左は今回の展覧会のチラシ、↓右はウィーンの図録の表
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