FC2ブログ

美術館・博物館・デパートでの展覧会を訪ね歩き、近代建築を見て周り、歌舞伎・映画・物語に溺れる日々の『遊びに行った日を記す』場所です。 

利休参上

正木美術館の「利休参上」チラシはインパクトが強い。
121017_2128~01

チラシの出来により「行くか行くまいか」悩むヒトもあるだろう。
わたしなぞはチラシの魅力に惹かれて、都合が悪いのに無理をして出かけた展覧会が数知れずある。
又そういう展覧会は必ず豊かな実りを齎してくれるし、行った記憶も廃れない。
とはいえ、この「利休参上」のチラシがわたし好みかと言われると、そうとも言えない。
しかしこの衝撃度はかなりのものである。
もともと正木美術館は展覧会ごとに行きたいところだが、このチラシの強さには「ををっっ」となった。
東京でこのチラシなりポスターなりを見た人々が「う~~む、行きたい、凄い凄い」と言うのを聴いている。なんだが巨大な茶杓でぶちのめされたような気がするくらいだ。
凄いチラシなのは確かである。

早速その利休の肖像画である。
zen827.jpg
これは生前の利休を描いた唯一の画らしい。前のめりになっているが、あわてているのではなくグッと何か力強いものが感じられる。
62歳。等伯が描いたと伝わる。手には閉じた扇を持ち、口は強く引き結ばれている。
茶人と言うより武人の風情がある、という形容をいくつもの本で見ているが、確かにそんな強靭さがある。ただしそれは心の強さが表に出ている、という意味で。

虎関師錬墨蹟 聯芳偈 これは縦に字が書かれてはいるが、下地は横長に絵が入り込んでいる。大きな木を中に、可愛い童子が二人ばかり見える。その上に文字が流れる。
聯芳不竭 虎関書 二十四番風繞簷
れんぽうつきず 虎関書く 二十四番風簷(ノキ)に繞(マツ)る

墨竹図のよいものが三点並んでもいる。
北宋のものには蘇東坡の賛がある。元に描かれたものが日本に来て僧の賛を加えられたり、室町のものは和の風情を漂わせつつある。

室町時代の水墨画のよさを知ったのは、この正木のおかげである。
わたしはそれまで水墨画のよさを全く理解できなかったのだ。
わびさびという言葉もあまり好まなかった。
しかしわびさびには透徹な意識が生きている。

扇面図がいくつか。
三聖人図、サル図などはどこか戯画的な面白みがある。顔の丸いお猿さんは可愛らしく、ヤンキー座りする聖人爺さんたちは不穏なツラツキである。
三聖人図を描いた「戯墨」の描いた扇面の十牛図は以前から好きな作品である。
とぼけた牛の表情がいい。愛想のいい牛で少年をしばしばからかうそぶりを見せる。
一枚の図の中に何面もの扇を置いて、それで十牛図を完成させる。
可愛い牛と少年に和む。

桃山の扇面花鳥画になると彩色が豊かになる。
緋牡丹の咲く枝に尾の長い鳥が止まっている。鳥は剥落が激しく白い鳥になったが、四百年前はさぞや鮮やかだったろう。花だけは色をとどめている。

南宋の天目茶碗に明や室町の台を合わせたものが並ぶ。
禾目が繊細すぎるほどの建盞天目茶碗には明の黒漆松竹梅文青貝天目台を、玳皮釉双鳳文天目茶碗には朱漆金彩台を。
どちらも美しい。松竹梅文は白く刻まれ、六弁の花びらを持つ台は豊かに開く。

堅手茶碗 銘・浜千鳥 銘は小堀遠州がつけている。白とオレンジ色に発色し、さらに鹿の子文が散る。可愛らしい朝鮮時代の茶碗。

樂が現れる。横目で見る。あの分厚いのは長次郎、隣の薄手はノンコウ、と決め付けてそぉっとその前に立つ。
その通りだった。
鉄錆のような黒樂は長次郎で近衛家伝来の「両国」、薄い口べりの素敵な黒樂はノンコウで「散聖」、赤はやはりノンコウの「武蔵野」。
「散聖」は豊干や布袋といった禅僧の中でも法系本筋から外れた僧をさす言葉らしい。
なんとなくそれをこの茶碗につける心持と言うものが楽しい。
また「武蔵野」は色がやや薄く、荒涼とした風情を指したようだが、私の目にはアメリカ開拓時代の「西部」に見えて仕方ない。

谷焼というものが出た。樂茶碗である。17世紀の堺の谷氏が五世宗入に学んで拵えた茶碗。
こういうものがあるのが正木の面白いところである。

大名物の唐物肩衝茶入「有明」の来歴が凄い。実物を目の当たりにしつつ、そこまで愛される理由がわたしにはわからない、とは表立ってクチには出来ないが。
足利家~大友宗麟~徳川家光~会津松平家~徳川家斉~会津松平家~正木孝之・・・
茶道具の面白さは形や色だけでなく、その来歴にもある。

金輪寺茶器 春慶 桃山時代の春慶塗の「春慶」が拵えた茶器。綺麗な絖のようだ。
堺春慶。わたしはやはりこうして綺麗に塗られて、落剥しないものが好きだ。

白地鉄絵蝶文水指 磁州窯 北宋~金時代の名品。丸い白胴に黒い蝶が列を組んで飛んでゆく。非常に魅力的な絵柄。リアルではなくやや大雑把なところを味わいたい。
黒泥をまぜ、掻き落とす。蝶の翅の筋が美しい。

古備前算木花入 ハキハキした算木ではなく、摩滅したようにも見えるところがいい。
その花入れには、須田悦弘の白桔梗が一輪生けられている。そぐう。

古信楽蹲花入 いい具合の高さである。飴色に光る部位と鈍く重い良さが共にある。
ここには須田の白椿がある。
須田悦弘の作品を知ったのは、この正木美術館でだった。
今度千葉市美術館で回顧展があるが、そのときもこうした古美術と共に在ればいい、と思った。

利休好みの釜がある。辻与次郎。天正三年(1575)の釜。雲竜文がある。
わたしはそこに並ぶ古芦屋釜がいい感じだと思った。室町時代のものだから「古」のつく芦屋釜。

小さい香合や猪口などが並ぶのを見るのも楽しい。
中にはオランダ焼というのもある。賞玩する、ということを考える。

竹図屏風 寛永年間の屏風。これが非常にいい。様式美。
zen826-1.jpg
作者はわからないが、こうした屏風には特に強く惹かれる。
麦、ススキ、菊などなど、純粋にその植物だけを描いた美しい屏風。
シュールな美を感じる。いいものを見た。

最後に柳橋水車図屏風を見る。銀月はない。蛇籠がみえる。波のうねりは静かである。
音のない世界で永遠に波は生きる。
zen826.jpg

利休以前・利休最中・利休以後、と三つの時代のよいものを見た。
あのチラシのインパクトに撃たれた方は、ぜひともこの正木美術館へ。
多少の展示換えもある。12/2まで。
関連記事
スポンサーサイト
コメント
素敵な記事拝読しました!
とても興味深く読ませて戴きました。確かにポスター、大変な衝撃ですね…!利休展でこの様なポスターが出来るとは。(笑)展示内容を拝読し、わたしも出向きたくなり居ります。
2012/10/17(水) 22:38 | URL | Genji_Samurai #-[ 編集]
ありがとうございます
☆Genji_Samuraiさん こんばんは
ほんとにこのチラシにはびっくりでした。
正木美術館は企画力のある美術館で、
学芸員さんによる解説も面白く、
いつも訪ねるのを楽しみにしていますが、
それにしても今回は参りました~~

いつかおいでください。
泉州の古い町の中にあります。
2012/10/18(木) 22:25 | URL | 遊行 七恵 #-[ 編集]
コメントの投稿
管理者にだけ表示を許可する
最近の記事
月別アーカイブ
カテゴリー
全ての記事を表示する

全ての記事を表示する

フリーエリア