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美術館・博物館・デパートでの展覧会を訪ね歩き、近代建築を見て周り、歌舞伎・映画・物語に溺れる日々の『遊びに行った日を記す』場所です。 

京都非公開寺院特別公開 報恩寺・宝蔵寺・安養寺

秋はやはり関西に楽しみが多い。
京都の非公開文化財の特別公開・特別参拝などには出来る限り足を運びたい。

昨日、まず堀川寺之内近くの報恩寺に行った。
むかしの洛中洛外図に「ほうおん寺」と表記されている古刹であるが、何故か全く関心が向かなかった。
向かなかったはずである。
普段は非公開の寺院で、寺宝の「鳴虎図」も寅年の正月三が日にしか出さないというシステムなのだから、洛外どころか摂津者の意識の外にあるのは当然なのだった。

毎年春秋のこの非公開文化財特別公開を楽しみにしているが、今回のチラシにはその鳴虎が写っている。
虎の丸い枇杷のような目、赤いベロ、シマシマの毛並み、そんなものを見過ごせるわけがなく、ベトナム帰りの疲労を残したまま、朝早くから地下鉄と徒歩で報恩寺へ入った。

なおこの日は京都市営地下鉄の一日券で動いている。

寺の号を写す。
「堯天山 佛牙院 鳴虎 報恩寺」ギョウテンザン・ブツガイン・ナキトラ・ホウオンジである。
略縁起によると、後柏原天皇御下賜の中国伝来の虎図を秀吉が気に入って、聚楽第へ持ち帰って掛けると、虎が夜通しうなり続ける。これには太閤も参り、翌日には報恩寺へ返したそうな。
堺の南宗寺のソテツも、北野天満宮の梅も、江戸の置いてけ堀も、みんななかなかやるが、この虎もさすがである。
ベロ出してお水をペロペロやるだけではないのだ。
それにしてもギョウテンとか仏の牙とか、虎にぴったりな名ではないか。

その虎さんはこちら。zen847.jpg

毛並みの良さといい、表情といい、たまらない。
しっぽのくねりもいいし、太い手が最高だ。
腹の白いのは裏彩色で。牙も爪も白さが残る。カルシウムが行き渡っていて、実に健康そうである。
拝啓には松と川の流れがあり、こういう背景は中国東北地方の、と解説にある。カササギが二羽いて、構図だけをみると朝鮮の虎のようにも思えるが、中国東北地方の虎なら、アムール虎かもしれない。
zen848.jpg

ここにはほかに千体佛があり、それが実に細密で驚いた。1グループ七仏が延々と並び続ける。凄まじい描写である。よく彫れたものだ・・・
これは真ん中に地蔵がおられるが、その前に閻魔王と冥官らしき姿がある。

繧繝縁の畳に座す秀吉の肖像画や、筋骨隆々な仁王像もあり、庭にはびんずる尊者の祠もある。杉戸には鷹の絵。
また、この寺に滞在していた黒田長政が持病のため急死したので、ここには大きな位牌がある。その長政の辞世の歌も残る。
「このほどは浮世の旅に迷ひきて 今こそかへれ あんらくの空」


このたびは幣もとりあえず、ではないわたしのハイカイは、この日ほんとうに徘徊もいいところだった。

車内で中信美術館の宣伝を見、そのそばの府庁の公開も知ったのだが、なにかしら衝き動かされて、地下鉄を乗り継いで、裏寺町の宝蔵寺に入った。

ここは前述の「非公開文化財」とは別枠の、非公開寺院である。この寺は若冲の実家の菩提寺で、そこで彼の絵をいくつか眺めた。

受付でいただいたカード。
仁王像の阿吽が可愛い。zen849.jpg

右のアさんは「じゃりン子チエ」のテツにそっくりだったが、「アッ」とか言うてる間にパンダ柄のネズミに逃げられている。
しかし左のウンさんがしっかりそのネズミを捕まえた。
ウンさんの左手に注目してみると、ネズミがギュッとされている。
こういうカイギャクこそなくてはならないものだ。
それにしても、アさんの歯並びはいい。

モノクロのトリシリーズがある。丁度同じ日に金ぴか地にサボテンとトリの襖絵が大阪の某寺で公開されている。
わたしのご近所ではあるが、トリがニガテのわたしが見に行く日はない。

さてここのはモノクロで福々しいが、やっぱりトリはトリである。あんまりみたくはないので目を伏せるが、妙に可愛らしいのがつらい・・・

ドクロ図がある。版画である。ここには売茶翁の賛がある。
「一霊皮袋 皮袋一霊」86歳の売茶翁のサイン入り。
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ゾウさんの真正面顔もある。鼻先はくるんと巻き、目はやや寄り目。紙の枠から体がはみ出すのがいい。

エビ図 墨絵だがこれがまたおいしそうに肥えたエビで。

童子遊之図 可愛い。右はねそべる子とホウズキを口に含もうとする子。
左はやじろべえを持って「べぇ~」する子と、でんでん太鼓を放り出して欲しがると子と。
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こういう子供らの生き生きした表情がとても愛しい。

若冲に影響を与えた中国絵画として、この寺に伝わる三点がでている。

伝・呂紀 枇杷鷲猿図 目の大きな鷲が枇杷の生る木に止まる。ランランとした目はよそを見ているが、その足下の木の洞にうまいこと猿が入り込んで、カメラ目線でこちらを見ている。動くに動けない状況である。丸顔の猿ではなくニホンザルのように赤い、面長の猿である。
うむ、救われまい。

伝・呂紀 芭蕉鶴図 丹頂鶴のアタマと椿のみ紅い。霊芝が足下にムクムク生えている。
この構図は吉祥とか関係なしに描かれたような雰囲気である。

伝・牧谿 虎図 可愛い虎である。おっちんして、大きな目をむいている。丸顔の虎。爪は大きい。

いいものを色々見た。
また嬉しいことに近所の安養寺の割引券をもらったが、ここで一つ悲しいお知らせが。
いや、そうでもないか。まだ安養寺が開いていなかったので、急遽わたしは丸太町まで戻ったのだった。

中信や府庁の件はまた後日として、そこでいくつか新発見もあり、やはり文化の日はよいものだと思ってから、再び一時過ぎに新京極へ向かった。

安養寺ではキリ金のきれいな阿弥陀来迎図や遊化地蔵などの仏画に面白いものがある。
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頭陀図 ブッダを先頭にぞろぞろと坊さんたちが寺外へ向い始める。ちょっと白隠を思い出すようなツラツキである。行道という趣もある。

地蔵説法図 緑と朱の多い絵で、地蔵を中心に多くの仏たちが集う。色合いを見ると朝鮮風な味わいもある。

伝・恵心僧都 眼明尊 光背がまるで満月のようで、顔や肌色が金色と言うのが妙に惹かれる。なんの仏かはわからない。

明るい地蔵説法図がある。蓮を持ってしゃがむ観音に、手を合わせる勢至菩薩。
ほかの来迎菩薩たちは楽器演奏や踊りに余念がない。いちばん下の正面向きの顔は官能的ですらある。こんなにぎやかな説法図はしらない。もしかすると、ラッパーなのかも、と勝手なことを思う。

芦雪のわんころが可愛くて仕方ない。三匹のうち茶色のついたのは、雀を見ているのだ。
zen853.jpg
この画像からは雀は消えているが、実物には雀がいた。撫でてやりたくなる。

森安石象という近代日本画家は初めて知った。「京のみやび(若宮愛子)」として若い女を描いている。文字入りの着物は面白いつなぎあわせをしている。旅装のようにもみえる。
この女の故事来歴を知らないのが残念。

田能村竹田 漁者 水上と言うより田植えのような風情がある人々。蓑笠をまとうている。

大友洞麟 萬歳楽・山伏・紅葉 公家たちと雅楽は普通だが、山伏はだらけており、戯画風。紅葉は舞台に居並ぶ僧や僧兵を描いている。山伏はゴハンをもらうのだが、これは何者なのだろう、態度がとても大きい。

英一蝶 やすらい祭 三人が踊り舞う。鼓を持つもの、扇を開くものなど。
ああ、一度くらい見に行きたいが。

狩野探幽 山水図 墨絵の静けさがしみてくる。
狩野山雪 蝦蟇鉄拐図 右の蝦蟇は白く、口から気を吐く。左の鉄拐は口から気を吐く。
それぞれの吐いた気は絵の枠の外で一つになるのかもしれない。
蝦蟇仙人より鉄拐仙人の方が毛深い、とつまらないことを考えている。
蝦蟇仙人はちょっと面白い口元をしていた。

この後、元・立誠小へ行くがそれもまた後日。
とりあえず非公開文化財の特別公開のうち、お寺篇はここまで。


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コメント
截金
 以前 江里佐代子さんの展覧会の記事を読み 
 みたいなと 思っていたんです。
 着物リフォームで 読むようになった「いきいき」10月号に
 娘さんの 左座 朋子さんが 跡を継いで 福岡の西新で 
 作品を作られておられるそうです。
 福岡ならいつか チャンスがあるような気がします。  
2012/11/05(月) 19:16 | URL | 小紋 #-[ 編集]
截金のすばらしさ
☆小紋さん こんにちは

>  娘さんの 左座 朋子さんが 跡を継いで 福岡の西新で 

そうです、そのことを知りとても豊かなキモチになったものです。
江里さんの急死は悲しいことでしたが、彼女が復活した技法が後進たちに引き継がれていく・・・
そのことにとても嬉しさを感じたりしました。
2012/11/06(火) 08:53 | URL | 遊行 七恵 #-[ 編集]
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